TERA・SWORD・STORY 〈テラ・ソード・ストーリー〉 作:OLPAWS
第一話 最強の二刀流
――――――気味の悪い暗雲の下、その暗雲に届きそうな程に高い塔の屋上部にて、俺とその目の前に居る、逆立ったダークブルーの頭髪、そして伸ばした後ろ髪を尻尾の様に二本に結った髪型の男――――《Kiseki》との決勝戦が今まさに行われようとしていた。俺は現実世界の学校で行う、テストなんぞよりも遥かな緊張感と、闘志が溢れている。
何故たかがゲーム内の大会の、たかが決勝戦で、こんなに熱くなるのか、そう思ったのならばそれは正しい答えだろう。だがこのオンラインゲーム、《TERA・SWORD・STORY》の総プレイヤー数は、世界の人口の五割に及ぶ。
そのほぼ全プレイヤー達が参加し、対人戦のトーナメント形式で行われたこの《Blazing Sword》という大会の予選は、約6ヶ月前から始まった。熱くなる理由はそれだけではない。
その理由は―――――――このゲームで俺は、《TERA・SWORD・STORY》最強の片手剣使いとして多くのプレイヤーに名が知られているが、《TERA・SWORD・STORY》通称《TSS》最強とは言われていない。仮に俺が今の実力でTSS最強のプレイヤーだったとすれば、この世に存在するゲームの全てはクソゲーと化しているだろう。
俺の目の前に居る、《Kiseki》が居る限りは―――――。
何故ならこの男は、大剣を二本も装備している。大剣とは通常、両手で一本を握り、振るう剣の名だ。にもかかわらず、あろうことか彼は、腕一本に対し一本の大剣を握り、戦闘を行う。
さらにコイツは、大剣を二本装備し、がくりと下がった筈のスピードが、本来のステータス以上のスピードを引き出すのだ。俺自身、一度体感したことがあった。それは、俺が最強の片手剣使いだと言われる様になった直後、開催された小規模な大会に参加した俺が初戦でぶつかった相手が、運悪く《Kiseki》だった時の話だ。
彼の剣は一秒の間隔も空く事は無く、大剣の重みと、彼自身のスピードが交差した故に、あの恐るべき強さが保たれているのだと、俺はあの時思い知らされた。
すると、俺の視界の中央に【Cowntdown】と、蛍光色の紫で映し出され、その下には一秒単位で減少して行く【60】の数字。俺は眼を閉じ、頭の中で何度も何度も、彼に勝つためのイメージをした。最強の敵を、今ここで倒すため。全ては――――――自分自身の名を轟かせ、そして自分自身が最強のプレイヤーになるために――――――!!! 俺はゆっくりと眼を開くと【Cowntdown】の数字は、残り【30】。右手を背に回して、そこにぶら下がった鞘(さや)から黒き光沢を持った愛剣―――〈黒剣・月夜〉を引き抜き、左足を一歩前に出し、姿勢を低くする。キセキも大剣を二本構え、膝を少しだけ曲げた。
カウントダウンの数値が一秒減少する毎に、俺の身体を駆け巡る緊張と狂気が速度と激しさを増して行く。きっと、モニター越しにこの様子を見守る他のプレイヤー達も、この感覚を味わっている事だろう。
残り秒数、5、4、3、2、1――――カウントが0になった瞬間、表示が【Cowntdown】から【Start!!!】に変わり、俺達は、ほぼ同じタイミングで地を蹴った。だが、不可能だ。スピードは、遥かにキセキの方が上だ。それなのに俺は、開始と同時に地を蹴ってしまった。なんなら、キセキが攻撃してきた所をかわして、カウンターを喰らわせる戦術の方が、より効率良く戦えただろう。いや―――――イメージしていた筈だ。開始直後の早期決戦じゃなく、相手の攻撃をかわし、可能な限り喰らわせるイメージが。
イメージしていた筈の動きをさせない様に仕向ける何かがコイツには有るのか、それとも単純に、俺が焦ってしまったのか。今はどっちでも構わない。とりあえずは、今の状況をどうにかしなければ。
キセキは二本の剣をクロスにし、俺に向かって突っ込んで来る。
俺は剣を縦に振り、それを受け止めた。その圧倒的なパワーに何度も吹き飛ばされそうになりながらも、じりじりと火花を散らし、足に全体重を賭け、持ち堪えた。だが、奴はそんな俺を軽々と吹き飛ばす。俺の身体は空中で弧を描く様に宙を舞い、塔の屋上部から落下しそうになってしまったが、塔の側壁に〈黒剣・月夜〉を突き刺し、場外負けを阻止する事に成功した。
俺は、灰色の煉瓦で作られた側壁の煉瓦と煉瓦の間に左足の爪先を掛け、愛剣を引き抜き、通常通り構える。そして爪先に力を加え、側壁を猛ダッシュで駆け上がり、最後に勢い良く壁を蹴った。
奴の遥か上空に跳んだ俺は、急降下しながら奴に向けて斬撃を繰り出す。これで奴の防御を貫ける――――!!!そう、確信してしまった。確かに先刻、俺を場外負けギリギリに貶めた時点で奴はかなりのパワーを要した筈だ。それと同時に、その攻撃力故の硬直は例え奴でも硬直と呼べる瞬間は十分にあった。それに現在、放っているこの斬撃は、奴のその硬直の隙を突いていたのに――――――。
奴はその手に握る二本の剣を、天――正確には俺――に掲げ、視線を真っ直ぐ俺へと向ける。
その瞳に映っていたのは紛れもない、底の知れない狂気―――それは俺の闘志と遜色無い狂気とは真逆と言って良い、本当に殺すという目的しか持たない、深い闇を感じさせる物だった。
キセキの二本の剣は雷鳴を纏い、それは今も尚、さらに激しく光を増し続けている。俺の斬撃が奴に直撃する寸前、二本の剣が纏う雷鳴は、俺を標的にして迸った。俺は思わず、声を上げた。
「何………ッ!?」
キセキが放ったのは《ブレイブスキル》と呼ばれる、いわゆる必殺技である。《ブレイブスキル》を習得するには、極限までのレベルアップと、同じく極限までの武器熟練度。習得していたとは予想出来たが、俺に発動されるとは思いもしなかった、と言うのが本音だ。何故ならキセキは、今までどれだけ手こずった相手にも、《ブレイブスキル》を使用しなかったからだ。それ故に、奴の《ブレイブスキル》の情報は誰も持ってないし、更に全プレイヤー最強と言われるこの男のものとなると、全てのスキルはプレイヤーそれぞれの自由型なので、予想は付かない。
俺の視界の中央には、【Kiseki is Skill The Inferno Burst】ジ・インフェルノ・バースト――――それがキセキのスキルの名だろう。俺も自身のスキルを持っているが、この体勢では、発動出来ない。俺は奴の放ったレーザーを全身に浴び、激しく失速したせいで落下し、身体を地面に打ち付けた。まさか、とは思ったが、俺の悪い予感は見事に的中。
Kisekiの剣は今も尚、蒼い光を帯びていたのだ。人によって色に違いはあれど、淡い光を帯びると言うのは、《ブレイブスキル》発動中の証拠になる。
Kisekiは横たわる俺の腹をかちあげ、宙に浮いた俺をその図太い二本の大剣で突き落とした。そこで、奴の大剣が帯びていた蒼く淡い光は消え、その剣を二本とも背にクロスさせ、収めやがったのだ。つまり――――――――奴は自らの勝利を確信した、と言うことだろう。俺が立ち上がろうとすると、視界の中央に【YOU LOSE】の文字が浮かぶ。
こうして、俺の世界一への挑戦は終わった―――――――――。
その時、確かに奴は俺に言った―――――。
「その程度で片手剣一のプレイヤーか?俺も舐められたものだな」
――――――――と。
TERA・SWORD・STORY第一話 最強の二刀流を最後まで読んでくださってありがとうございます。感想はお構い無くお願いします。
この物語は何話まで進み、何話まで僕の気が続くのか解りませんが、今後とも僕とこの作品を、宜しくお願いします!