座敷わらしと幸せうさぎ   作:中に座敷わらし

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前話(三羽)で言っていた小話になります。
短いですがどうぞよろしくお願いします。
時間軸としては一羽と同じころになります。


小話・一.五羽目

 

 外の世界では妖怪などは忘れ去られていっている。忘れ去られた妖怪たちはそのまま自らの存在すらも消滅(わすれ)てしまう。私――八雲紫はそんな妖怪たちを幻想郷に(いざな)っている。

 

 そして、今日の目的は存在すら危うい状態である座敷わらしを誘うことである。

 

 住んでいた家を失い、存在が薄れかけている彼女の前にスキマを開く。

 

「どうも。座敷わらし……でよかったかしら?」

「……そうですけど。ところで貴方は?」

 

 彼女は首を傾げる。当然であろう。なんせ突然現れた私の名前を知るはずはないのだから。ここは幻想郷に来てもらう以上自己紹介は必要である。

 

「私は八雲紫。幻想郷の管理者よ」

 

 そして、彼女に本題を告げる。

 

「貴女を幻想郷に招待するわ」

 

 と、説明したところで彼女が口を開いた。

 

「あの。幻想郷って一体?」

 

 …えっ? 私説明してなかった? ウソ…やっちゃった? ど、どうしよう…。い、今からでも説明しても遅くはないわよね? ああ、こんなことなら藍を連れてこればよかったわ…。はあ…早く家に帰って藍の尻尾に埋もれたい…。そして橙の頭を撫でてあげたい…。……いいえ、八雲紫。こんなところで落ち込んではいけないわ。

 

「……コホン、幻想郷と言うのは忘れられたものが集まる場所よ」

 

 とりあえず説明はしたわ。でもこれで彼女は幻想郷に来てくれるのかしら? と、心配していた私の期待を裏切るように

 

「わかりました。幻想郷に行けばいいんですね」

 

 即決した。

 

「えっ……そんなに簡単に了承していいの?」

 

 ちょっと彼女が心配になってつい訊いてしまった。

 

「貴女はいい人そうですし住む場所を提供してくれるのなら私はそんな条件でも付いていきますよ。さ、幻想郷とやらに行きましょう」

 

 なぜか彼女は物凄くワクワクしている。前言撤回。ちょっとじゃないわ。かなり心配よ…。

 

「そ、そうね。幻想郷に行きましょうか」

 

 とりあえず彼女の前にスキマをだして彼女に入るように伝える。あ、そういえば名前を聞いていなかったことを思い出した。

 

「そう言えば貴女の名前聞いてなかったわね」

 

 彼女は歩みを止めると、

 

「私は幸っていいます。『幸せ』って書いて『さち』って読むんですよ。この名前は今はもういないお爺さんにつけて貰ったんですけどね」

 

 ふぅん…、幸ね。いい名前ね。そう伝えようと思い幸のほうを向くとすでに幸の姿はなかった。

 

「あ、あれ?」

 

 

 

▽  △  ▽

 

 幸がスキマに落ちてから幻想郷に戻った私は、幸がどこにいるのか幻想郷中をスキマでのぞいて周った。そして、見つけた。どうやら永遠亭のいたずらうさぎと一緒にいる。悪いことを吹き込まれてなければいいのだが……、と心配だったがどうやら幸を永遠亭に連れて行くらしい。

 

「これは……」

 

 私は急ぐようにスキマを開くと、その先――永遠亭にお邪魔することを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは。永琳」

「あら、妖怪の賢者さんがどうしたのかしら?」

 

 これから幸のことをお願いする、って頼まないといけないし幸が来る前に終わらせたいわね。……うまく説明できるかしら?

 

「ええ、貴女に頼みたいことがあるのよ」

「? 私に頼みたいこと?」

「ええ、たぶんここに幸って娘が来るのだけどその娘のことを頼めるかしら?」

「…貴女が頼むなんて少し怪しいけどわかったわ。その話引き受けたわ」

「ほ、本当!? 助かるわ!」

 

 それと私が頼んだことは幸には秘密にしておいて、と言おうとしたタイミングで部屋の襖が開かれた。

 

 

 

 

「お師匠さまー! ちょっと診てもらいたい娘がいるんだけど…? 誰かいましたかね?」

 

 

 

 

 間一髪スキマに潜り込むことでバレずに済んだけど大事なことを伝えられず仕舞いである。…永琳のことだ。きっと察してくれるであろう。

 

 やることを終えた私はスキマで藍の後ろに現れそのまま尻尾に向かって飛び込む。

 

「らぁぁん!」

「ちょ、紫様!? 尻尾はやめてください! 先ほど整えたばかりなんですから!」

 

 やめてと懇願する藍を無視して尻尾でもふもふし続ける。ああ、なんて幸せなのだろうか。だが、幸せの終わりは突然来るものである。藍が私がもふもふしていない尻尾を使って私を尻尾から引きはがし、面と向かいあう。

 

「…紫様」

「ら、藍? そのー…表情が怖いわよ? 乙女は笑顔が大事よ?」

 

 藍の口角を指で動かそうとする。だがピクリとも動かない。さらに藍の顔には青筋が浮かんでいる。

 

「藍…あ、あのね? それには深いわけがあって…ね?」

「紫様。今日のお夕飯抜きです」

「そ、そんなぁ……」




ちなみに最後のほうは勝手に指が動いたんだ。私の意思とは無関係なんだ。
きっと近くに古明地(妹)がいたんだ!
という言い訳は置いといてこの小話自体急に思いついたわけですから…。

…コホン。これからもよろしくお願いします。
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