とある不動のGMC   作:はち   .

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対プラウダ戦
GMCは揺るがない


 ユークレインとプラウダの試合日。事前の告知もあって、かなり注目を浴びている試合で、ユークレイン社が新型戦車のE-100を発表するとも言われているので非公式試合なのだが、公式試合なみの注目度だ。テレビカメラが入り全国放送され、戦車道連盟から派遣された審判団もいる。

 ユークレイン校生徒会会長であるイザールもそれを関係者控え室で見ていた。会場はプラウダが得意とする雪が降り積もる大洗で敗れた会場だ。つまり、地の利はプラウダにある。しかも、足を取られる雪上と言う事で、非常に重量のあるユークレイン校側が圧倒的に不利である。

 しかし、部長は不敵に笑い『コノぐらいのハンデでちょうど良い』と宣いやがったのだ。イザールはここで負けてくれるなよと心の中で願いながら、テレビに視線を移す。

 

『さぁ、全国戦車道ファンの皆様、こんばんわ。ご機嫌如何でしょうか?ヨナ・カミラです。

 つい先日までは第63回全国戦車道大会でしたが、今回は違います。前回は大洗校が数と力に劣る戦車達を奇抜な作戦と圧倒的なチームワークで土壇場での大逆転を果たしましたが、今回もまた一味違った戦いが見られるようです。

 実況はこの私、ヨナ・カミラです。解説は西住流師範の西住しほさんです。よろしくお願いします』

 

 爽快な喋りとハーフらしい容貌で見る者を魅了する戦車道実況でお馴染みのヨナ・カミラと隣に座る姫カットの女性、西住しほが頭を下げた。二人共、ユークレイン社が態々大金を払って読んだのだ。イザールの隣には寒いだのさっさと始めろだのとユークレイン社社長がワイン片手に喚いている。

 

『よろしくお願いします』

 

 しほは軽く頭を下げるだけだ。にこりともしない。

 多分、凄く頭が固い女なのだろうとイザールは思い、やはり、隣に座る副会長のリーナスをちらっと見た。彼女もまた、頭が固い。権力に魅了されやすい面もあるので、自分が抜けた後はこの女に生徒会は任せられないと思っている。

 

『さて、今回は戦車道には無くてはならない戦車を、取り分け、重戦車を製造しているユークレイン社が経営しているユークレイン高等学校が名だたる強豪校を打ち負かしているという自体が起こっています。

 既に、聖グロリアーナとサンダース校が彼女達の手によって撃破されてしまいました。この試合はユークレイン社の新型重戦車E-100のデモンストレーションを含んでいるとの事です。そして、今回、そのデモンストレーションの相手となるのは、前大会での優勝校、プラウダ高校であります。

 さぁーて、西住さん。今回は30対30と言う史上類を見ない大規模な戦車同士でのぶつかり合い。どう言う展開になるでしょうかね?』

『ユークレインがプラウダの戦術に乗ってしまえば、いくら重戦車と言えども危ないでしょう。

 しかも、今回は、IS-2とKV-2が4両づつ、更にはISU-152が2両居ますからね。確実に重戦車を意識した編成になっています』

『成程。さぁ!今、試合開始のホイッスル!』

 

 ピーっと音が鳴ると、各校が一斉に動き出す。プラウダ校は真っ直ぐ前進して行くが、ユークレインはホイッスルがなったと言うのに一切動かず、何やら戦車から降りて準備をし始める。

 

『おぉっとぉ~・・・これは!

 ユークレイン校、何やら食事の準備を始めたぞ!!これは一体、どういう事でしょうか、西住さん?』

『ユークレインは戦車部としての歴史は長いですが、練習試合をメインにしているだけで、公式試合にほとんど出てきてませんからね。私も、彼女達が何を考えているかわかりません』

 

 さすがのしほも驚いた表情を隠せないまま答える。イザールの胃がキリキリと痛み始めたのは言うまでもない。

 

「イザール君。彼女達は、一体何をしているんだね?」

「ぼ、僕が見る限りでは、何やらシチューを作ってるようですね・・・」

「そんな事を聞いているんじゃない!!何故、彼女達は戦車を動かさずに、料理を作っているのかと聞いているのだ!!」

 

 ンなこたァ知るか!と言ってやりたいが相手は社長。将来の上司だ。平に平にするしかない。

 

『おぉっと、審判団に動きがありました。どうやら、事情を聞きに行くようです』

『当然でしょう』

 

 画面には審判長と副審判長2人がバルバルとT-20牽引車に乗ってユークレイン校の陣地に向かう。この間、試合は一時中断しザワザワと観客席も動揺が広がっていた。

 

『えーカミラさん?カミラさん?』

『はい!カミラです。紹介遅れました、フィールドレポーターにはフロイル・タバディさんです。

 タバディさん、一体、どうしたんですか?』

『えーユークレイン校部長の話では『試合中にシチュー作っちゃダメなんてルールはないはずだが?』とのことです』

 

 一瞬の沈黙の後、カミラが何とか言葉を捻り出した。流石、プロの実況と言った所だろうか?

 

『え~っと・・・つまり、それは腹拵えの為に料理をし始めた、と言う事でしょうか?』

『その様に捉えて貰っても構わないとおもいます』

『わっかりましたぁ~有難うございます、タバディさん。

 さて、前代未聞です!試合開始直後に料理を作り始めた。どうですか、西住さん?』

『ええ、彼女達は連戦で気を抜きすぎなのではないでしょうか?マウス9両にE-100が3両。

 プラウダを軽視しているみたいですが、プラウダを侮ると痛い目を見るのは間違いない筈です』

 

 その通りである。イザールはどんどんと部隊を展開していくプラウダと対照的に、エンジンが凍り付かないように暖気してあるだけで、シチューを作っているユークレイン。油断しきっているのだ。

 

「会長、胃薬飲みます?」

「貰うよ」

 

 リーナスが差し出す胃薬を飲み、イザールは背凭れに体を預けた。となりでは社長が夕食のステーキを食べているが、今のイザールには物を食べれるほど鋼鉄の胃はない。

 

『おっと、漸くユークレインに動きがありました!

 M26パーシングの部隊が動き出しましたね』

『ええ、ですが、同じ場所をぐるぐる回っているだけなので、多分、車両が凍らないように動いているだけでしょう。ほかの車両も同じ様に一寸づつ動いていますから』

『成程、対照的にプラウダ校は村を占領し、着実に罠を敷いていますね。

 これは、大洗戦と同じ罠をする気でしょうか?』

 

 大洗戦で、大洗が窮地に陥った村にプラウダ校が辿り付き、“アニマルキラー”達が家や建物の影に潜む。そして、フラッグ車であるT34とその護衛のT34が真っ直ぐ、ユークレインの陣地に向かっていく。

 

「イザール君、彼女は本当に恐ろしいな」

「え?」

 

 社長の言葉にイザールは思わず驚いた。画面でのユークレイン校はキャンプファイアーをし始めた事を伝え、カナリスやミーナ達が踊っているのだから堪ったもんじゃない。画面の隅では、ミラコ達剣道部が竹刀を降っているし、野球部やソフトボール部が雪合戦をしている。

 

「パーシング達はどこにいる?」

「パーシングですか?」

 

 イザールが言われて、慌てて画面を確認する。画面には既にパーシングの姿がないではないか!

 

「い、いない・・・」

 

 慌てて、携帯を使って、外で記録している放送部に探させる。

 

「い、居ました。現在、彼女達が集まっている場所から20kmの位置に等間隔で潜んでいるようです」

「彼女は“間抜け”を演じているんだよ。周囲に完全に相手を舐めきっていると見せかけて、実は周到に準備を進めている。

 見たまえ、実況も解説もパーシングの事に触れず、彼女達の戦法とプラウダの戦法を対比させている」

 

 社長がハッハッハと呆れた様に笑い、ワインを煽る。

 

『おっと、ここでユークレインが動き出しました!』

『プラウダのフラッグ車達が近づいてきたのに漸く気が付いたみたいですね』

『これは、間に合わない!

 T34の部隊が停車し、砲撃を開始したぁ!距離は800mだ!視界不良で接近されるまで気が付かなったようです!!』

 

 そして、T34達は一通り砲撃すると、方向転換して一目散に逃げ出す。漸く、砲撃準備が整ったマウス9両、E-100が3両、そしてシュトゥルムティーガーとT28が細やかな砲塔や位置調節をして、一斉に砲撃を開始した。

 

『闇雲に撃っても、この風と視界不良では当たらないでしょう』

『そうですね』

 

 カミラとしほが所詮は素人という感じに吐き捨てる。その直後だった。

 

『プラウダ校T34が3両、フラッグ車撃破。

 ユークレイン校の勝利!』

 

 審判団側からの撃破報告及び勝利アナウンスが流れたのだ。

 

「やりやがったぞ!あの女狐!!」

「そうですね、社長・・・」

 

 社長はハッハッハと笑い、イザールは気が抜けたと言わんばかりにクッタリと椅子に凭れた。リーナスが携帯を片手に外に飛び出て何が起こったのかを聞きに回っていた。




今回は、イザール視点でやってみました

アニメは殆どが選手視点なので、外ではこう言う感じじゃないのだろうか?という妄想です
実況の元ネタはジョン・カビラです
フィールド・レポートはフロラン・ダバディです
解説はニコ動でカビラとコンビの北澤豪も考えましたが、無難に西住母ちゃんにしました
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