とある不動のGMC   作:はち   .

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大洗の西住
GMCはいやらしい


 ユークレイン校対プラウダ校戦の翌日、みほが学校に向かうと、校門前が凄まじい事になっていた。カメラや音声マイクを持ったマスコミが押しかけていたのだ。風紀委員であるそど子こと園みどり子や後藤モヨ子(ゴモヨ)金春希美(パゾミ)が変えるよう叫んでいる。

 

「西住流だ!」

「西住さん!お話をお聞かせください!!」

 

 そして、一人の記者がそれに気がついたらしく、一斉にマスコミがみほを囲う。

 

「あ、あの、えっと、えぇ?」

「昨日の、ユークレインとプラウダの試合をご覧になって何かありますか!?」

「ユークレインとの試合をする際には、聖グロ、サンダース、プラウダに黒森峰と共同で戦線を春ということですが!」

 

 記者たちの矢継ぎ早の質問にみほは完全にパニクっていた。何をどう答えて良いのかわからないからだ。それに、全国大会で優勝した時でさえ、こんなに事には成らなかった。

 

「みぽりーん!」

「西住殿ぉー!!」

 

 ギュラギュラとみほの耳に聞き覚えのある騒音が聞こえる。

 

「Ⅳ号!?」

「せ、戦車が突っ込んでくるぞ!!」

 

 マスコミ達が慌ててみほから離れると、Ⅳ号がみほの前にドリフト気味に止まる。

 

「乗って下さい!西住殿!!」

「う、うん!」

 

 みほは優花里が差し出した右手を掴んでⅣ号に乗る。

 

「OKです、冷泉殿!」

 

 そして、Ⅳ号は全速力で校門を潜る。それと同時に、そど子達が門を閉めてマスコミが侵入するのを防ぐ。Ⅳ号はそのまま戦車置き場にすすんだ。

 

「あ、あの、これは一体?」

「ええ、みほさんは昨夜のユークレイン校の勝者インタビューをご覧になりましたか?」

 

 戦車から降りたみほが尋ねると、砲手の五十鈴華が尋ねた。

 

「えっと、インタビューは・・・試合は見たんだけど、流石に眠くって・・・」

 

 8時から始まった試合は4時間近くの放送で、流石にみほも最後の方の記憶が飛んでいる。

 

「えっとですね、勝利者インタビューでユークレインの隊長が西住殿を名指しでライバル宣言と言うか・・・」

「ユークレインを倒せるのは『大洗の西住だけ』と言ったんだ」

 

 優花里と麻子が答えると、みほがエェェ・・・と困った様に華と無線手の武部沙織を見た。二人は同情するという顔で苦笑を浮かべる。

 

「やぁやぁ、西住ちゃん」

 

 そこに生徒会メンバーが現れた。相変わらず、会長の角谷杏は干し芋を齧り、その右後ろに広報担当の河嶋桃、左後ろに副生徒会長の小山柚子が立っている。

 

「あ、会長・・・」

「今朝はすんごいねぇ~

 で、ユークレインとの試合だけど、受けるから」

「え?」

「あそこまで言われたのだ。受けんわけにはいかん。幸い、サンダースや聖グロリアーナ、プラウダも復讐戦に燃えているらしく、午後には第一回隊長会議を開く。頼んだぞ、西住」

「頑張ってね、西住さん」

「えぇ~・・・」

 

 そして、杏がポンとみほの肩を叩き、さっそうと去っていく。みほが再度あんこうチームの面々を見るが全員が諦めたという顔で笑っている。

 その日の午後、聖グロリアーナからダージリンとオレンジペコ、サンダースからケイ、ナオミ、アリサが、プラウダからはカチューシャ、ノンナが、そして次に戦う予定の黒森峰から西住まほ、逸見エリカ、そして、ユークレインからは一切相手にされていないアンツィオからアンチョビとカルパッチョがやって来た。

 無言の重圧と言うか、ピリピリとした雰囲気に早くもみほの胃は悲鳴を上げている。

 

「そんじゃ、対ユークレインの作戦を考えよー」

 

 杏が干し芋を齧りながら告げ、みほを見る。

 

「え、えぇっと・・・

 ユークレインの隊長さん、な、なんて名前でしたっけ?」

 

 みほが全員を見る。みほはユークレインの隊長の名前を知らない。何故なら、テレビでも取り上げられなかったし、気にもしなかったからだ。しかし、いざ考えると本当に知らない訳で、全員も、そう言えばと首を傾げた。

 

「そう言えば、彼女だけ名乗らなかったわね。メンゲレって言ってたけど」

 

 ケイが告げると全員が首を傾げた。

 

「メンゲレとは、第二次世界大戦中に人体実験をした死の天使、ヨーゼフ・メンゲレの事ですよぉ!」

 

 そして、オブサーバーの優花里がズズイと前に出る。

 

「へ、へぇ~・・・じゃ、じゃあ、彼女はメンゲレさんで」

 

 みほが告げると一同が頷く。そして、桃が用意したユークレインのデータを見ながら、告げる。

 

「えっと、彼女達の布陣を見る限り、野戦砲運用をしています。また、昨晩の戦いや対サンダース戦の時を見ると、パックフロントの陣形を組んでいます」

 

 みほがスライドに昨晩の戦いや、サンダース戦、聖グロリアーナ戦の映像やキャプチャを見せる。

 

「確かに」

「あの女、意外に考えてるのね」

「ただの傲慢で偏屈な嫌味だと思っていた・・・」

 

 その場にいた全員がみほの指摘に少し驚いた様子で頷いた。

 

「また、えっと、昨晩のインタビューや月刊戦車道の記事で、彼女は『完全勝利』と呼ばれる戦い方をする様です。昨晩は自軍の戦車の特性を見極め、苦肉の策として囮役であるフラッグ車を叩きのめしていました。

 一件、完全にプラウダ校を舐めているかの様子でしたが、実は、パーシングが凍結防止のために動き出した後、暫くして陣地から消えています」

 

 みほが午前中に大慌てでユークレインの作戦行動やインタビューを見直してそれを解説していく。色々な学校がやっているだろうが、改めてその意見を告げる事で確認と周知を徹底するのだ。

 

「なるほど」

「それで、カチューシャ達の囮が撤退する時も正確にフラッグ車達を攻撃できたのね!!」

 

 ノンナとカチューシャが悔しそうに顔を歪ませる。周囲もその悔しさがわかっているので、声は掛けずとも、同情するような視線を向けた。

 

「戦車道は戦争ではない・・・そして、制限時間も無い。

 彼女、メンゲレはそれを逆手に取って、相手が仕掛けてくるのを待っているわけですね?」

 

 紅茶を一口飲んだダージリンが静かに告げた。

 

「その通りです。彼女の作戦は徹底的な“待ち”です。最初の聖グロリアーナでの戦闘も、純粋に正面からぶつかっても、勝てた試合で、あ、す、すいません・・・・・・」

 

 みほがダージリンに慌てて謝るが、ダージリンは首を振ってそれに応える。

 

「いいえ、確かに、我々のマチルダやチャーチルではフラッグ車は倒せませんでしたもの。どうぞ、お続けになって。今は彼女達をどう倒すかが問題です」

 

 ダージリンの言葉にオレンジペコが頷いた。

 

「で、では・・・

 彼女は戦車道初心者と言う事で、一応、大会公式記録やユークレイン校の対外戦の試合を見ても、彼女の行った芋虫作戦を使用したありませんでした」

「芋虫?」

 

 みほの名づけた作戦名にその場にいた全員が首を傾げた。みほのネーミングセンスを知っている生徒会チームは苦笑し、みほが少し恥ずかしそうにその説明をする。

 

「え、えっと、芋虫みたいに、殆ど動かないので、芋虫作戦って名づけたんですけど…おかしいですかね?」

「いや、みほらしくて良いと思うぞ」

 

 そう言ったのは次にユークレインと戦う事になる、黒森峰の西住みほ、まほの姉である。隣に座るエリカもそう言えばそうだったという顔で呆れた顔をしている。

 

「あ、ありがとう、お姉ちゃん・・・」

 

 みほが少し照れた様に告げる。姉妹は決勝戦以来、度々電話やメールのやり取りをしたりしている。相変わらず、母親のしほは苦手だが、それでも、みほの戦車道については『勝手にしろ』というだけで何も言ってこない。

 

「それで、芋虫作戦を破るにはどうするの?」

「えっと、先ず、ユークレインの目となるM26E4スーパーパーシングを潰す事が第一の条件でしょう」

 

 みほがチラッと優花里を見る。優花里は頷いて、前に出てくると、ユークレインのスーパーパーシングの写真を見せた。

 

「えっと、キャプチャですが、ユークレインのスーパーパーシングは砲隊鏡を持たせ、砲撃時の着弾観測や、風を図り、それを逐一本部である、M28に送っているようなのです。

 そして、スーパーパーシングは隠密性を重視しているのか、巧妙な偽装と単機での活動が確認されています」

 

 優花里が昨晩のプラウダ戦で試合終了後に写真に撮られたM26E4の拡大図を見せる。遠目では完全に夜間の雪原に隠れる迷彩が施されていた。

 

「しかも、スーパーパーシング自体も追加装甲がなされ、防御力がアップしています。これを見付けて撃破しても初弾で失敗すると、反撃を受け、並の戦車だと90mmの餌食に成ってしまう可能性があります」

 

 優花里がスライドを切り替えてパーシングを見せていく。

 

「でも、パンターやティーガーⅡが有れば問題ないわ」

 

 そう告げたのはエリカだ。

 

「目さえ潰せば、マウスが居ようがE-100が居ようが、我々に倒せない事はないわ。ねぇ、隊長!」

「ああ、パックフロントだろうが、なんだろうが、彼奴は我々西住流をコケにした。私は西住流として、彼女を倒さねばならないのだ」

 

 まほが静かに、しかし、怒りに燃えた言葉を紡ぐ様に告げた。パンツァーカイルとはソ連軍のパックフロントを破る為に開発された陣形である。そして、西住流はそのパンツァーカイルを使い、あの芋虫作戦を突破しようとしているのだ。

 

「だが、奴は必ずや、我々を破るだろう」

「なっ!?た、隊長!!そんな弱気では「弱気ではない。事実だ。こちらはマウスが2両あるが、向こうは12両、更にE-100がいる。そんな物に守られた全面装甲が300mmの化物を倒せる戦車を我々は持っていない」

 

 みほは、まほが拳を握りしめて居るのに気がついた。強く握りすぎて、血が垂れている。

 

「お姉ちゃん・・・」

 

 みほはその手をとって告げる。

 

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。

 お姉ちゃんが負けても、私が、私達が仇を絶対取る!」

 

 みほが告げるとその場にいた全員が頷いた。黒森峰はユークレインに敗北するだろう。それは誰の目に見ても明らかだった。

 しかし、黒森峰は負けに行くのではない。己等の強さの証明のために、黒森峰の沽券の為に戦い、敗れるのだ。

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