とある不動のGMC   作:はち   .

16 / 25
GMCはスゲェ

 秋山優花里は大洗で一番のミリタリーオタクだろう。他にもアリクイさんチームの3人もいるが、彼等は知識では優花里には及ばない。ゲームの中しか興味を示さない為、例えば、チハ系戦車の常識である回転数が合わないとギアが入らないという事を知らず、ギアチェンジに戸惑い、前進から行き成りバックになったりしている。

 

「どうぞ、汚くて狭い部屋ですが」

 

 そして、現在、彼女達は目下最大の敵であるユークレイン高等学校の文化祭に来ている。サンダースが『戦車道部』としての保有数が全国1位ならユークレインは『学校』としての保有数が1位だ。更に、通常は『戦車道部』と表記するのだがこの学校は元来より『優秀な戦車を製造する人を育てる』ことであり『戦車部』の方針としては『戦車を乗ってみて、何処がどういうふうに損耗するのか』と言うのを調べる感じである。

 彼女達が戦車を揃えて()()()()()()試合を行うようになったのは本当につい最近だ。それまでは適当な戦車道をやっている学校に練習試合を申し込み、勝敗度外視で重戦車がフィールドを単機で爆走し、エンコして自滅、単機で敵の戦列に突っ込んでいって一発も撃たずに唯唯『装甲の耐久調査』と言わんばかりに受け続けて撃破され、勝手に坂を転がり落ちて、中の人がどの程度怪我をし、稼働率はどのぐらいか?等をやっているのだから、対戦校もやってられないのだ。それゆえ、ここ最近はユークレイン校の対外試合はメンゲレ以前は無勝必敗だった。

 

「スッゴ・・・」

「広いですね」

「近代的だ」

 

 汚くて狭いと案内された部室は何処のモデルハウスだよと言わんばかりに綺麗で、更に言えば、大洗の戦車倉庫レベルに広い。

 

「と、言うか、漫画が・・・」

「ゲームもあるぞ」

 

 沙織と麻子が棚一面に並べられている漫画やゲームを見て絶句した。

 

「何か飲む~?」

「あ、好きな飲み物勝手にとって飲んでください。お菓子も勝手にどうぞ」

 

 T28の操縦手、カナリスが脇に置いてあるデカい冷蔵庫を開けて中からコーラを取り出していた。周囲にいた全員が驚く。特に黒森峰何か動揺しすぎて、隊長であるまほをチラチラ見ているのだ。

 

「取り敢えず、ジュースやお菓子はいっぱいあるので好き勝手に飲んだり食べたりしてください。

 椅子が足りなかったら言って下さい、持ってくるんで」

 

 先ほど、みほにサインを求めたローデリアと呼ばれた少女がソファーやら何やらに置かれたクッションや散らかっているゴミをゴミ箱に放り込みながら100人近い強豪校や大洗のメンバーに告げる。正直、敵の本拠地であり、何故呼ばれたのかすら分からないのに行き成り適当に寛げと言われても困るのだ。

 

「あ、あのぉ」

「はい、なんでしょう。えっと、秋山先輩でしたよね?」

 

 堪らず、優花里が尋ねると、ローデリアは動きを止めて振り返る。背は小さいが、しっかりしている。

 

「え、ええ。それで、何故、我々を文化祭に招待を?

 てっきり、また嫌味を言う為かと身構えてきたんですが・・・」

 

 優花里が告げると、全員が同じ事を思っていたらしく、コクコクと頷いた。

 

「さぁ?部長の考える事なんて、それこそ、部長にしかわかりませんよ。

 基本的に、我が校は()()()の全員、戦車道真面目にやってませんもの。あそこに、ミラコ先輩っていう副隊長がいるんですよ」

 

 ローデリアが指指す先には、サイダーを片手にアンチョビにちょっかいを出しているE-100の車長がいた。

 

「あの人が何か?」

「彼女は、剣道部部長です」

「は?」

「で、あっちで漫画読んでるのは野球部です」

「え?」

「それから、あそこでゲーム始めちゃってる人達は数学研究部です」

「へぁ?」

 

 ローデリアの説明に優花里は変な声しか出なかった。何故なら、ああも巨大な戦車を整然と動かしているのだから、全員がちゃんとした部員だと思っていからだ。それは脇で話を聞いていたカチューシャやケイも吃驚だった様で目を丸くしていた。

 

「じゃ、じゃあ、戦車部の正式な部員は、貴女と部長さんだけ?」

「いいえ。えっと・・・」

 

 ローデリアがキョロキョロと首を巡らす。そして、大きく落胆した顔で指を指す。全員がその指の先を辿ると、ノンナを何処かに連れ出そうとしている女子生徒がいた。T28の砲手で、ミーナと呼ばれた女子生徒だ。ノンナの腰辺りに手を回し、何やら楽しそうに一方的に話しかけている。

 

「ミーナ先輩!ノンナ先輩をどこに連れてく気ですか!!!」

「げ、バレた」

 

 ミーナがローデリアに呼ばれてギクリと振り返る。脇に居たノンナも振り返る。

 

「ノンナ!どこ行くのよ!!」

 

 カチューシャが叫ぶとノンナとミーナが戻ってくる。

 

「いや、ちょっとそこ等辺を散歩しようと思って、この美人さんと一緒に」

「気を付けて下さい、皆さん。あのミーナ先輩はホモだろうが、ノンケだろうがレズだろうが平気で食べる淫乱ですから。ノンナさんも本当にウチのビッチが申し訳無いです」

「し、失礼ね、人をまるで阿部さんの女版みたいに・・・」

「まだ、阿部さんの方がマシです。もう、カナリス先輩の相手でもしてて下さい」

「わ、わかったわよ」

 

 ローデリアが脇でゲームをしているカナリスを見遣る。

 

「で、このミーナ先輩とカナリス先輩に私と部長が正式な戦車部部員です。他の人達は全員、他の部から生徒会命令でこっちに参加して貰ってるお雇い戦車部員です」

 

 ローデリアが告げるとその場にいた全員が絶句するより他なかった。

 

「わ、私達って・・・」

「戦車部員ですらない人達に負けたわけですか・・・」

 

 リプトンを飲んでいた聖グロリアーナのダージリンとオレンジペコが告げる。

 

「その通りよ」

 

 そこに戦車部部長、メンゲレがやって来た。後ろにはイザールとリーナスが続く。優花里は自然と、メンゲレを睨んでいた。彼女の戦車道を否定する気はない。だが、どうしても、みほと共に戦車道をしている優花里にはメンゲレの戦車道は邪道にしか思えないのだ。

 

「貴女達、世間では強豪校と呼ばれている、貴女達は。不真面目な戦車部員と昨日まで戦車の事なぞ授業でしか関わっていない生徒が、諸君等を倒した訳だ。悔しいかい?悔しいだろう?悔しくないわけがない!!」

「フン、アンタがそんなに威張ってられるのも今日までよ」

 

 そういうのは先程までミラコに弄られていたアンチョビだ。

 

「うぅん?スマンが、君は誰かな?」

「んなっ!?

 アンチョビよ!アンツィオの!!」

 

 アンチョビが言うとメンゲレがああ、と思い出したようにアンチョビに視線を合わせる。

 

「スマンが、アンツィオなんて()()()()()()()な学校は忘れていたよ」

「なっ!?」

「ほら、何て言ったかな、あのマリオカートみたいな奴?」

 

 メンゲレがユックリと優花里の前にやって来る。

 

「君、名前わかるだろ?豆鉄砲がついた、()()()()()()、なぁ?」

 

 メンゲレがポンと優花里の肩に手を置いた。嘗て黒森峰のマウスと対峙した時以上の凄まじい重圧を感じる。ガンダム風に言えば『このプレッシャー・・・シャアか!!』レベルの重圧だ。

 

「あ、あれは豆戦車であって、マリオカートじゃありません!カルロ・ヴェローチェCV35、またをL3軽戦車っていうちゃんとした名前があるんです!!」

「ん、ん~そうだったか、あれはちゃんとした戦車なのか。てっきり、()()()()だと思っていたよ。と、言うか、何であんな戦車採用してるの?

 えっと、君のところも、ほら、日本が作った尻尾付きの軽戦車持ってるわよね?」

「「「「八九式は中戦車!!」」」」

 

 バレー部全員が声を揃えて叫ぶ。

 

「中戦車?へぇ~中戦車、か・・・」

 

 メンゲレが驚いたという顔で、優花里の肩から手を離す。周囲の、ユークレインのメンバーが失笑にも似た笑いを浮かべた。優花里の前にいるローデリアはメンゲレを親の仇の様に睨んでいるのに優花里は気がついた。

 そして、メンゲレはそのままユックリとバレー部の前に歩いて行った。彼女は何が目的なのか、分からないが少なくとも、交友を深める為に呼んだとは考えられない。

 

「君以外は全員デカイが・・・あの()()()、じゃ狭くないのかな?」

「八九式は狭くないです」

「そう?まぁ、良いけどさ・・・

 そう言えば、ウチでも鋳潰すほど一杯ある、パーシングって重戦車で登録されてるけどさ、実は中戦車だったりするのよねぇ~・・・」

 

 メンゲレはバレー部のキャプテン、磯部典子の視線に合わせるように少し屈む。

 

「だからなんですか?私達は八九式で黒森峰に勝ったんです。貴女に兎や角言われる筋合いはないです」

「ふふん?君達の八九式が黒森峰戦でやったのは囮と()()()だろう?」

「そう言えば、マウスの上乗っかってたわね、あの尻尾付き(八九式中戦車)

 

 ミーナが苦笑しながら告げた。

 

「あの戦いで灰色首無(Ⅲ号突撃砲)とBisを()()にして、チビ首無(ヘッツァー)を踏み台に、あの尻尾付きをマウスの上に乗っけて()()()

 正直、あれを見た瞬間、私はもう死ぬかと思ったわ。ねぇ?」

 

 メンゲレは背後にいるミーナやカナリスに告げる。二人は全くだといった感じに頷く。

 

「まぁ、あの組体操でマウスを倒した時は感心したよ。あんな使えない尻尾付きに活路を見出す大洗の西住は凄い奴だと。此奴なら、私を倒せる作戦を考えられるんじゃないのか?と。

 基礎的な戦術は勿論、あんな突拍子もない作戦を即座に考えられるとは、君が西住流みたいな堅物に居たとは1mmも考えられないわ」

 

 メンゲレはみほの肩に手を置き、ニィィっと笑う。みほはビクリと震える。

 

「君には、期待しているよ?君が、私に勝てたら本名を教えてあげよう。えぇ?」

 

 メンゲレはクルリと背を向け、全員に宣言するように告げた。

 

「まぁ、諸君等が糞みたいに雑魚い戦車どもが何両集まろうが、我が校の戦車に勝つ事は、まぁ、無理だろうが頑張り給え。

 大洗の西住が参謀だからね。ハッハッハ」

 

 そして、メンゲレは去っていった。その場に残った全員が、ローデリアを見る。

 

「ええっと・・・取り敢えず、()()()()()()()()()としては部長の言葉に全面肯定し、西住先輩の肩を叩いて“諦めろ”というべきなんでしょうし、そうあるべきなので、そうします」

 

 ローデリアはみほの下へやって来ると、肩を叩き、我が校に勝つのは無理だ、諦めろと告げる。そして、再び、同じ位置に戻って来る。

 

「ですが、()()()()()()()()()()()()としては」

 

 ローデリアはまほの下に駆け寄って、その手をグッと握り締める。

 

「頑張って下さい!応援しています!!ユークレインを絶対に倒して下さい!!

 西住さんなら絶対出来ます!素晴らしい仲間がいる、西住さんなら!」

 

 そして、一歩下がり深々と頭を下げて部屋を出ていく。

 

「何と言うか」

「真面目な方ですねぇ・・・」

 

 優花里が感心したように告げると全員が頷いた。本音と建前と言うのをうまく使い分けているし、自分の立場を理解している。そして、本音の方が遥かに強いと言うのも理解した。

 

「ただの馬鹿よ。カナリス、売店巡りしましょう」

「いーな!」

 

 ミーナとカナリスがじゃあねと部屋を出ていく。

 

「取り敢えず、部長も正式な部員も全て消えてしまったから、必然的に臨時副隊長であり副部長の私が君達の相手をする羽目になったわけだ。

 取り敢えず、君達と対戦をする日取りや詳しい内容を決めよう。各校の隊長達は別室で話し合いをしよう。ほかの部員達はまぁ、戦車を見るなり適当にやっててくれ。副部長、案内してやれ」

 

 ミラコが告げると、剣道部副部長が前に出てきて戦車置き場に案内をしますと優花里達をガレージに案内した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。