GMCは暴れる
試合当日。天候は雨だった。場所は、富士演習場だ。雨だというに観客は多く、世界中からテレビカメラや記者が来ていた。試合は既に開始され丁度1時間が経った。今回はお互いに参加車両を知らせずにある。参加車両も不明で台数も不明だ。外からの情報は撃破情報だけで、それ以外は一切無い。携帯の持ち込みも不可だったりする。
「ふふん、ローデリア」
部長が黒い女性用の傘をさしてニヤリと笑っている。何時もながら、惚れ惚れすぐらいにあくどい笑みだった。
「敵は市街地に陣取っているようだな」
部長は地図を広げ、笑う。
「多分、動くつもりはないでしょうね」
「ええ、そうでしょうね。取り敢えず、私は貴女に新しい戦術を見せると言ったわね?」
「はい。どういう戦術ですか?」
「名前は決めてないわ。さて、ヤークトパンターとM26E4スーパーパーシングを2両準備しなさい」
「は、はぁ・・・」
私は言われたとおりに車両を手配する。今回、我が校の車両はT28が1両、マウスが12両、E-100が3両、シュトゥルムティーガーが4両、ヤークトティーガーとヤークトパンターが5両づつ、ケーニヒスティーガーが10両、スーパーパーシングが20両と言う計60両の編成だ。
正直、向こうの方が多いだろうけど、ぶっちゃけ、乗員の問題から60両で限界なのだ。まぁ、独ソ戦前半でのソ連軍戦車兵レベルの人員になっても良いのなら後100両程用意できたが、ぶっちゃけ、そんな的ばかり用意しても恥ずかしいだけと部長が拒否したのだ。
「カナリス、ヤクパンの操縦、ミーナは砲手ね。ミラコとローはパーシングね。
全車両に通達。この陣形を保持したまま、市街地全体を射程に収めるポイントZに向かえ」
部長はそれだけ言うと、ヤークトパンターに乗り換えた。元々、パンターやパーシングに乗っていた人達も乗り替わって、私達の3両を置いてドロドロと時速10km程で走り出す。一体、何を考えているのだろうか?また、今出ている観測班以外の観測係が無線機と観測鏡を片手にデサントしていた。いやいやいや!?!何やってんだ此奴等!!
『こ、こちら、パーシング!敵の豆戦車発見しました!!偵察かと思われますが、どうしましょうか?』
『捨て置け。機関銃で破壊されるほど柔な戦車は我が学校にはない。着いたら、街に適当に砲撃しなさい。3射したら、待機。それ以降は私の指示で砲撃しなさい』
全車両が了解と報告。そのまま去っていった。
「あ、あの部長!『アンタはそこに立ってなさい。指示は全て私が下す』
言うと、部長が傘を右手にさしたまま、左手に何かを持ち出す。アームスコーのMGLリボルビンググレネードランチャーだ。
「た、隊長!?そんなモノ持ち出してどうするんですか!!」
『まぁ、見てなって』
隊長は相変わらず、不敵な笑みを浮かべたままだ。
「ね、ねぇ、もう少し、中入って貰える?」
私の隣に座る観測係の先輩が申し訳ないと言う感じで私を見た。
「ええ、構いませんけど、何で乗ってるんで?」
「えっと、部長さんから止められているので言えません」
申し訳ないと観測係が謝る。そして、大体30分程してから準備完了という報告が入った。
『ンじゃ、適当に砲撃して良いわよ~
全車縦隊で前進』
そして、私達もゴロゴロと走り出す。時速は20kmほどだろう。昔の戦車のように全速力出してエンコしたり、履帯がすぐに外れるなんて事は、ほとんどないが、やはり、全力で走る事なぞ殆どない。
「部長、一体、何するつもりなんですか?」
『内緒。そして、今から無線封止よ』
取り敢えず、嫌な予感しかしない。陣取っていた平原を抜け、森に入り国道を進む。ふと、視線を感じて振り返ると遠くに1両、CV35が付いて来ている。ミラコ先輩もそれに気がついているのだろうが、暇そうに、車上で竹刀を振っている。いや、周囲警戒しろよ・・・
「そろそろ、市内に入りますね」
『全車停止。さぁ、行ってきなさい』
部長の合図でデサントしていた観測係達が一斉に街に散る。
『後方のマリオカートを撃破しなさい』
『了解』
背後のミラコ先輩が乗るパーシングが一発撃つ。
『大洗連合L3軽戦車撃破』
ちなみに、これが試合開始後初の撃破だったりする。
『さぁ、行くわよ!!』
部長の号令に合わせ3両の重戦車は走り出す。先頭にヤークトパンター、後方二両がスーパーパーシングだ。ヤークトパンターは攻防速全てにおいて優れた駆逐戦車である。速度も市街地のような整地なら55kmまで出る。パーシングも40kmは出るし、何よりも、砲塔が旋回し、90mm砲は強力だ。
ヤークトパンターは時速35kmと言うスピードで荒廃した市街地を進む。ここは自衛隊が市街地戦を想定して作った街で、生活感を出すために、街頭には自販機等をおいている。勿論、電気は来ていないので、街灯はつかないし、自販機も空なので、こじ開けてもジュースは入ってない。
『こちら、偵察班、ポイント335に敵KV2を2両発見しました』
『了解。カナリス、335に前進』
前方を走るヤークトパンターはギャリギャリとドリフト気味に角を曲がると。スピードを落とさず、それでいて、殆ど足回りに負担をかけない綺麗な操縦だ。カナリス先輩は本当に、どうしようもないぐらいに馬鹿だが、乗り物の操縦にかけては多分、学校一だろう。
地図を開き、現在地とポイント335の距離を調べると5分程で着く事が分かる。多分、敵の迎撃もあるだろうが、ギガントと呼ばれた152mm砲は装填速度が遅い上に、砲塔の旋回速度は糞の様に遅い。向きさえ気をつければ、何の問題もなく撃破できるだろう。
『隊長達を見つけました。次の角を曲がった先に距離300の正面に出ます!』
『OK』
「正面!?部長!正面はヤバイですって!!」
『ミーナを見縊るなよ?
後続、ちゃんと撃破しろよ、左の奴を撃て』
『『了解!!』』
そして、パンターが華麗なドリフトを決めつつカーブを曲がる。正面にKV-2を捉えた。向こうの戦車長が驚いた顔で車内に引っ込んだ瞬間、部長がMGLをポキュンと撃つ。それは150m程の所で見事炸裂、一瞬目を潰す程の閃光が瞬く。思わず、私は目を閉じた直後、耳にはガウンと凄まじい砲声。ヤークトパンターの77口径88mm砲である。直後、私の乗るスーパーパーシングも砲撃し、右に急旋回。思わず、頭をぶつけそうになる。
『大洗連合KV-2二両撃破!!』
「は!?」
慌てて後方を振り返ると、黒煙が上がっていた。
『次!』
『ポイント445にT-34が5両屯ってます!カチューシャが見えま『砲撃しておけ!次!』
『ポイント579にマウスが1両居ます!』
慌てて、地図にマッピングしていく。すると、遠くでドドーンと砲声が聞こえ、シャシャシャと上空を砲弾が通過、ゴーンと爆発音がする。
『大洗連合T-34三両撃破!』
「なんつー・・・」
『マウスは砲撃して、撃破出来なかったら、砲身を
部長がトンでもない事を言い出す。今、砲身を折りに行くって言ったわよね?
「砲身折るんですか!?!」
『128mm砲に88mmと90mm2発ぶち込めば折れるでしょうよ』
「いやいやいやいや!?!?
折れる折れないの問題じゃなくて、当たらんでしょうよ!!」
『当てるのよ、馬鹿ね』
部長が振り返ってニヤリと笑う。慌てて振り返って、ミラコ先輩を見るが諦めろと言う顔で首を振っていった。ああ、なんと言う事でしょう。
部長の新戦術とは、速度が出る重戦車で市街地に潜む敵の重戦車共を破壊し尽くす事にあったのです・・・
「部長」
『何かな?』
「あんたって人は・・・」
『フフーフ?心躍るだろう?