とある不動のGMC   作:はち   .

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GMCは姿が見えぬ

 西住みほは混乱していた。アンツィオのL3を偵察に出し、そのウチの1両がT28を含む主力本体から離れて大きく迂回し、国道沿いを走る1両のヤークトパンターと2両のスーパーパーシングを見付けたのだから。しかも、そのヤークトパンターの車長はあのメンゲレで、パーシングにもローデリアとミラコが居る。それに、車上に無線機と観測鏡を持った偵察要員と思われる生徒が騎乗しているらしい。

 

「一体、どういう事なんでしょう?」

 

 砲手の華がみほの話を聞き、首を傾げる。

 

「痺れを切らして、攻撃を仕掛けてきたとか?」

 

 無線手の沙織が首を傾げる。

 

「ないな。まだ、1時間しか経っていない。メンゲレは勝つためなら、5時間だろうが6時間だろうがあの平原で待っているぞ」

 

 それを操縦手の麻子が即座に否定する。

 

「うーむ・・・

 西住殿、ほかの隊長さん達にも意見を聞いてみてはいかがでしょうか?なんなら、私が聞いてきますよ?」

「そうだね。ケイさんやカチューシャさん、アンチョビさんにお姉ちゃんに聞いてみよう。

 申し訳ないですが、優花里さん、聞きに行って貰える?」

「任せて下さい!」

 

 優花里が車外に出た瞬間だった。

 

「!?優花里さん!戻って下さい!!」

「ほえ?」

 

 みほは今まさに飛び降りんとした優花里の襟首を掴んで、車内に引きずり込む。直後、シャシャシャシャと何かが空気を裂く様な音がし、Ⅳ号の装甲を震わせた。ズズンと凄まじい衝撃だ。

 

「なっ!?」

「敵が撃ってきた!?」

「被害状況確認!!」

 

 みほがキューポラからそっと周辺を覗く。周囲のビルや家が綺麗に粉砕されているではないか。

 

「敵の射程に収まらない、市街地に陣取った筈なんですが・・・」

『ミホーシャ!大丈夫!?!』

 

 そこにカチューシャから連絡が入る。

 

「は、はい!大丈夫です!!

 カチューシャさん達はどうですか?」

『こっちは無事よ!それより、聞いて頂戴。敵の本隊が市街地全土を射程に収める距離に陣取っちゃったわ!』

「えぇ!?せ、攻めてきたんですか!!」

『分からないわ!偵察に1両出したけど、すぐに見つかって慌てて帰ってきたの!』

「分かりました、有難うございます。

 それと、ヤークトパンターとM26E4が2両、大量の観測要員を連れて街に近づいているそうです」

『わかったわ。ミホーシャも気を付けてなさい!ヤバくなったら呼べば、近くのKV-2(カーベーたん)すぐに駆けつけるわ!!』

「ええ、分かりました。カチューシャさんも、無理はしないでください」

 

 無線を終え、素早く地図を確認する。市内を一望できる場所を探す。丁度、北に3km行った辺りが開けており、攻撃するにあたり格好の場所だ。

 

「また砲撃!?」

 

 遠くでドドーンと発砲音が聞こえるた。暫く待つと、見当違いな場所に落っこちたらしい。盲撃ちなのか、それとも、何かを狙っているのか分からない。砲弾観測にしては余りに適当過ぎるだろうし、本当に何が狙いなのか分からないのだ。しかし、今はその砲撃元の場所である。

 

「ちょっと、厄介な場所に位置取られましたね・・・」

 

 脇で地図を覗いている優花里が眉を顰める。

 

「ええ、しかも相手は偵察と観測を出してきています。観測係に見つかると、砲弾が降ってくるでしょうから・・・」

『大洗連合L3軽戦車撃破』

「え!?」

 

 偵察に出ていたL3が撃破されたのだ。

 

「何をして来るのかわかりませんが、どうやら、向こうは動き出したようですね、西住殿!」

「そうみたいね・・・

 L3の人達は大丈夫ですか?」

『L3大丈夫です!猛スピードで市街地に向かっているので気を付けてください!』

 

 無線を聞いたみほは素早く戦車の上に立ち、双眼鏡を覗いた。

 

「やっぱり、優花里さん」

「はい!お任せ下さい!!」

 

 優花里がビシッと敬礼をして戦車から飛び降りる。地図とコンパスを片手にカチューシャやケイが待ち伏せている場所に走るのだ。

 

「隊長、どうする?」

 

 そこにヘッツァーと杏がやって来る。相変わらず干し芋を齧っていた。

 

「取り敢えず、相手の行動が読めない今は、情報を出来る限り集める事を先決します。それに、固まって居ては危険ですから、できるだけ少数で行動する事も検討しましょう」

 

 みほが地図を広げ、全体の配置を確認する。

 

『大洗連合KV-2二両撃破!!』

「え!?」

「あちゃ~・・・」

 

 みほは慌てて地図を開き、KV-2が2両いる場所を確認する。そこは、僅か路地1本挟んだ隣だった。

 

「っ!?」

 

 そして、みほが視線を上げると、目の前をヤークトパンターと2両のM26E4が脇目も振らずに前進していくではないか。

 

「西住ちゃん!!」

「お、追って下さい!!」

「かーしま!小山!!」

 

 杏が叫ぶと、ヘッツァーが急発進して3両の重戦車の後を追う。

 

「会長、下手に攻撃せず、後を着いて3両が何処に居るのかを逐一報告して下さい!」

『任せろ!』

「フラッグ車より各戦車に告ぎます!

 現在、私達のいる場所は敵の砲撃下です!なので、余り固まらず、2両以下で散って下さい!!」

 

 その直後だった。ドドーンと砲声が聞こえ、シャシャシャと砲弾が上空を飛んで行く。砲弾は真っ直ぐ飛んでいき、そのままプラウダ校が守るエリアに落っこちた。

 

『大洗連合T-34三両撃破!!』

「カチューシャさん達は!?」

『ミホーシャ!私は無事よ!

 でも、5両中3両が直撃で、私の乗ってるT-34は履帯が、もう一台は砲身を折られたわ!でも、安心して!プラウダ校はこの程度じゃ怯まないんだから!!』

「はい!!」

 

 士気は高い。だが、街に潜む観測係が居る限りは、一方的に狙い撃ちされるだけだ。報告を聞く限りは、ユークレインの方が数は少ない。だが、戦力的に見て、重戦車しかいないユークレインと中戦車が圧倒的に多い大洗連合とでは戦力は拮抗、いや、上回っているといっても過言ではないだろう。

 

『みほさん』

 

 そこに、通信が入る。相手は聖グロリアーナのダージリンだ。

 

「は、はい!」

『ここは、私達聖グロリアーナが本陣に攻撃を仕掛け、少しでも攻撃を減らしてきましょう』

 

 聖グロリアーナはチャーチルをチャレンジャー巡航戦車に変え、マチルダもクロムウェル巡航戦車に変えた機動戦と攻撃力を大幅に上げた戦車を使用している。勿論、その分の防御力は落ちているが、今回のフラッグ車はみほの乗るⅣ号戦車である。また、相手の重戦車はマチルダやチャーチルの装甲を2km先から平然と撃ち抜く化物ぞろいである為、この際、防御よりも足の速さで回避率を上げたのだ。

 

「で、ですが、17ポンド砲や75mm砲ではM26E4を撃破するのは出来ても、E-100やマウスは・・・」

『いいえ、みほさん。相手が私達に方向を向けている間は、貴女方には砲弾は降り注がないわ』

「で、ですが、それではダージリンさん達が・・・」

『ふふ、貴女は優しいのね。でもね、みほさん。いいえ、隊長。

 私達は貴女に仇を取って貰う為に此処に居るのよ?だから、私達は貴女が仇を取れるように、頑張るのよ』

「分かりました。でも、余り無理はしないで下さいね」

『ふふ、善処しますわ』

 

 ドドーンと砲撃がある。弾はシャシャシャと上空を通過していく。何処に行くのか・・・着弾地点は黒森峰が守るエリアだった。

 

『こ、こちら、黒森峰のマウス1号車!履帯付近に砲撃を受け、走行不能です!!』

「分かりました、ヤークトパンターと2両のスーパーパーシングが市街地に潜んでいるので注意して下さい!」

『了解です!!』

 

 事態は動き出したが、それが何処に向かい、どのぐらいの速さで動いているのかはまだ分からない。みほには秘策があった。ここでマウスを失うのはあってはならない。最低でも1両は保持しておかねばならないのだ。

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