GMCは歓迎委員会を招集する
「初めまして、月刊戦車道の佐々木です」
私の前に座ったメガネの男が名刺を差し出す。イザールがそれを受け取り、自己紹介。
「こっちは、カメラマンの鈴木です。インタビュー中は適当に写真を撮るので余り気にしないで下さい」
「ええ、分かりました」
イザールがすべて受け答えをする。佐々木さんは視線を私に向け、メモを準備した。音声録音のテープは既に回っているのだろう。
「え~先ず初めに、聖グロリアーナ女学院とサンダース校への勝利、おめでとうございます」
「有難うございます」
礼を言うのはイザールだ。この場には、私、ローしかいない。ローはガッチガチに緊張し先程から一言も発しない。外ではドーンドーンと128mm砲や150mm砲、105mm砲がその砲声を轟かせている。取材中は練習していろと部長命令を下したからだ。
また、私も『すべて僕が受け答えするから、喋んないでね?』と言われているので私が喋ったのは、佐々木さんと鈴木さんに『よろしくお願いします』と言っただけだ。
「え~っと・・・部長さん、何かありますか?」
佐々木はこのままではイザールとの対話になると感付いたらしく、私に矛先を向ける。イザールが余分な事は言わないようにね?という顔だ。失礼ね。
「何か、とは?」
「そうですね、強豪校を打ち破った事に付いてとか、次に控えるプラウダへの対策などを・・・」
「強豪を打ち破った事については、別にどうとも思いませんね。勝てて当然でしょう?逆に、あの装備で負ける奴等とか居るんですかね?」
「それでも、何か、こう来るものはあるでしょう?」
佐々木さんが困った様に私に告げる。どうにもヤッターウレピーボクサイコー的な感想を言わせたいらしい。
「そうですねぇ・・・
やっぱり、戦車道はどれだけ戦車に金が払えるか、で決まる課金ゲーと思いましたね」
「え?」
「だって、そうでしょう?純粋に勝ちに行くなら、態々、軍で揃えずに、ウチの学校みたいに重装甲で高火力な戦車を揃えれば良いんですよ。
黒森峰だって、決勝では重装甲な戦車を前面に押し出し、マウスを投入してるんですから。そう言う意味では、大洗の西住は賞賛に値すると思いますよ。決勝戦で、マウスを倒すシーン。使えない八九式で砲塔を固定し、ヘッツァーを潜り込ませてその場に足止め、止めを機動力と火力のあるⅣ号でエンジングリルを撃ち抜いて終わり。大洗の西住はが元西住流とは思えませんね」
「成程、部長さんは、みほさんに一目置いていると?」
佐々木さんが食いついた様に前のめりになる。イザールが少しホッとした顔をしている。こいつ、あとでぶん殴る。
「そうですね、大洗の西住は
「ええ、そう言えば、聖グロリアーナ戦、サンダース戦では一度も相手の戦車部隊へ突撃を仕掛けず、射程外からの一方的な砲撃を行っていましたね。それに付いてはどうでしょうか?」
「確かに、なんか、文句が来たみたいですけど、『だからなんだ?』って話ですよね。
正々堂々と正面から撃ち合うのが戦車道みたいな事が送られてきましたけど、正直、それは『お前の戦車道』であって『私の戦車道』では無い訳ですよ」
「と、言う事は今後もあの砲兵隊もどきな運用をすると?」
佐々木さんが意地悪く告げる。
「ふふん?そんなに我々の戦術が気に食わないのなら、戦車をすべて固定すれば良い話だろう?どの学校も、パンター5両とかT-3410両とかさ。
佐々木さん、私を怒らせたきゃ、もっと頭使いなよ。えぇ?砲兵運用が気に食わないのなら、テメー等で連盟に抗議するなり何なりしろって話でしょうが」
告げると、佐々木さんは少し焦った様に笑う。
「いえ、怒らせるとか、そう言う意図はありませんよ、本当です。
ですが、我社にもかなり批判が寄せられていましてね?」
「知らん。そんな事は、知らん。私はその批判している阿呆共の為に戦車道をしている訳ではない。私は、“完全なる勝利”の為に試合をしているのだ。負け犬共の遠吠えなんぞ、聞く価値すらない。
私に戦術の転換をさせたくば、“完全なる敗北”をさせてみろ」
言うと、イザールが脇で額押さえ、ローが何言ってんだテメーという顔で私を見ていた。
「ち、ちなみに、完全なる勝利と完全なる敗北、とは?」
「完全なる勝利、とは即ち『1両の損耗無く敵の決定打と成りうる戦車をすべからく排除』する勝利ですよ。先のサンダースを例に取れば、将軍と蛍を片付ければ、残るは
次のプラウダで一番厄介なのは、
「E-100ですか!?」
佐々木さんが驚いたように私を見る。何?知らなかったのかしら?
「では、次に我が校が保有する戦車を紹介しましょう」
イザールが待ってましたと言わんばかりに立ち上がる。そして、外で待機していたらしい腰巾着、リーナスが扉を開ける。
「ほら、ローも行くわよ」
脇で緊張しまくっているローの頭を引っ叩き、再起動。
「い、行きましょう、部長!」
そして、右手と右足を同時に出して歩き出す。もう、あのアホは知らん。
「E-100はどう?」
隣りを歩くイザールが私を見ずに聞いた。
「上等よ。マウスと同じでマウスより高火力。運用はマウスと一緒だけども」
「そう。それと、本社から報告があって、黒森峰がマウスを新たに1両を発注したらしいよ。砲弾も600発追加発注したし」
「そう。それで?」
「いや、相手もマウスを使って来るって話だよ」
「だから何?喧嘩売ってるなら、買うわよ?戦車部全力上げて生徒会を叩き潰すわよ?
最低でも150mmを3つに128mmが9つに105mmが1つあるけど?」
「謹んで遠慮しておくよ。それと、プラウダだけど。大洗と同じ戦場で数は30だ。こっちも30で良いって言ってたから、謹んで30両で行かせて貰うよ」
30両・・・人が足らんってレベルじゃねーぞ!!
「取り敢えず、M26パーシングで数を埋めるわ。一杯あるでしょう?」
「ティーガー2やヤークトティーガーもあるよ」
「まぁ、そこらは追々考えておくわ」
「うん、分かったよ。あと、部員だけど」
「計算得意な奴と運動部の追加を」
「了解、了解」
上履きを履き替え、ガレージへ。丁度、休憩中らしく、全車両が停車して搭乗員が汗を拭いたり、水分補給をしていた。基本的に重戦車ばかりなので、高身長でかなりデカい。
「これは・・・」
「凄いですね・・・」
佐々木さんと鈴木さんが9両のマウスと3両のE-100を前に絶句していた。かなりデカいのだ。隣に並ぶ生徒達が子供のようだし。
「取り敢えず、E-100は先行量産型だっけな?取り敢えず、E-100を3両生産して、この3両で問題点を発見次第、改修型をだして~って話だったはず。
まぁ、この戦車自体、台車しか完成していない代物だからどこまで改造して良いかってのが連盟側との協議って問題もあるらしいけど」
まぁ、足回りは正直、どうでも良いのよね。私の戦術だとほんとど動かないし。
「E-100の外見は撮っても良いですけど、中とか足回りとかはダメです。
本社の正式発表があるまでは、遠方から眺めていて下さい」
イザールが言うと、鈴木さんの脇に風紀委員らしき生徒が2人付いて、動向とカメラの動きを見ていた。監視とか、パネェッす。
その後、一通り写真を撮って、インタビューは終了した。後日、装丁した本を送ってくれるとか。