探せ、パーソナリティー   作:卯月極夜

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しばらくはアニメに沿った展開となります。


第一話 禁じられた夜のデュエル

デュエルアカデミアにはいくつもの校則がある。

数多のそれを暗記することは難しいが、そのいずれも常識的に行動していれば違反することはあまりないものだ。

 

しかし、己の敵を潰したいとき。

 

どんな優等生であろうとも、自ら規則を破りにいくことがある。

 

 

***

 

 

オベリスクブルー女子寮の自室にてデッキの調整を行っていた飛鳥はふとカードを選別する手を止めた。

窓の外から見える月の高さが、現在の時間帯を教えてくれる。

 

 

「結構時間かかっちゃったな…」

 

 

デュエリストの悲しい性だ。

熱中してしまうと時間を忘れて延々とカードを見て、デッキを弄ってしまう。

もうすぐ時計の針が頂点で交わろうという時間、即ち日付が変わろうとしている時間であることを確認する飛鳥だったが、あまり眠る気もしない。

 

消灯時間は過ぎているものの、すぐ帰ってくればバレることはないだろう。

夜の散歩というのもなかなか乙なものだ。

 

そんな考えのもと、足音を忍ばせて自室を後にすることにした。

 

 

 

 

 

 

秋も深まりつつある最近、太陽の出ていない夜の気温はあまり高くはない。

むしろ肌寒ささえ感じるものの、ここで帰るのも馬鹿らしいため目的なく歩き始める。

 

夜のデュエルアカデミアは静寂の一言に尽きる。

普段女生徒やデュエルを挑みに来た男子生徒の声で賑わっているだけに、静かな空間には不気味ささえ感じた。

小さな物音一つに反応してしまい、外に出たことを早くも後悔し始めてしまう。

 

 

「やっぱり帰ろうかなぁ…」

 

 

そもそも夜間の外出は校則違反だ。

見つかっても退学にはならないだろうが、先生方の心象は悪くなること間違いない。

今にして思えば、なんてハイリスクな散歩だったのだろうか。

 

それでも帰る気分にはなれなくて、周囲に警戒しつつ歩いた飛鳥はある一箇所で足を止める。

 

 

「……?」

 

 

デュエルフィールド。

オベリスクブルーの生徒が使用する、最新機器の揃ったデュエルするにはもってこいの場所。

 

そこから、何やら声が聞こえた気がした。

 

 

「…誰かが、デュエルしてる?」

 

 

消灯時間はとっくに過ぎている。

この時間帯のデュエルは間違いなく校則違反だ。

まさか、と思いつつも足は勝手に建物へと動く。

 

なんだろう、私はあそこに行かなければいけない気がする。

 

 

理屈ではなく、感覚。

そんなあやふやなものに導かれて足を踏み入れたその先には、確かに人影がいた。

 

 

 

 

「罠カード、【ヘル・ポリマー】発動!【リボーン・ゾンビ】を生贄に【E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン】のコントロールを得る!」

「…っ!【フレイム・ウィングマン】!

 

 

一人はオベリスクブルー、もう一人はオシリスレッドの制服を身に着けている。

なぜオベリスクブルーのエリートがドロップアウトの集まりと呼ばれるオシリスレッドの生徒とデュエルをしているのだろうか。

見つからないように観客席から隠れて様子を窺う飛鳥だったが、よくよく彼らを見ているうちに疑問が解けた。

 

 

「あの人、確か…」

 

 

オシリスレッドの赤い制服を身に纏い、どこか楽しそうに相手と対峙する男子生徒には見覚えがある。

デュエルアカデミア高等部入学のための実技試験に遅刻してきたが、実技最高責任者であるクロノス・デ・メディチ教諭を倒した強者だ。

 

遊城十代(ゆうきじゅうだい)

 

同じく高等部からの入学者である飛鳥も勿論あのデュエルの場にはいた。

受験番号110という、決して良いとはいえない筆記試験の成績も彼には何の関係もないらしく、"俺がこの学園の一番だ"とか言っていたような覚えさえある。

 

誰に笑われても、罵られても、デュエルでその存在を示し、認められた彼は、飛鳥にはやけに眩しく見えていた。

 

 

 

そんな彼が現在少し劣勢のようだ。

相手のオベリスクブルーも学園内では有名な人間だから飛鳥の記憶にも刻まれている。

 

万丈目準(まんじょうめじゅん)

 

万丈目グループの三男で、中等部からの生え抜き。

その実力は確かで、次期デュエルキングとの呼び声も高いとか。

やや高慢なところが目についたが、それもまた彼の絶対的な自信からだろう。

 

そして、フィールドの周りに立ってそのデュエルを眺めている人物が二人。

 

一人は確か遊城十代の友人、丸藤翔(まるふじしょう)

ここ、デュエルアカデミアにおいて"帝王(カイザー)"と呼ばれる絶対的存在の丸藤亮(まるふじりょう)の弟だ。

 

そして_________。

 

 

 

 

「…天上院さん」

 

 

 

 

天上院明日香。

彼女が校則を好んで破るとは思えないが、なぜここにいるのだろうか。

明日香と翔、そして万丈目のそばにいるオベリスクブルーの生徒二人が見守る中、デュエルは進む。

 

 

「悔し泣きかい、110番?」

 

 

【E・HERO フレイム・ウィングマン】、そして万丈目が新たに召喚した【ヘル・ソルジャー】による怒涛の攻撃をうけ、十代は膝をつく。

彼を守るモンスターはおらず、伏せカードはたったの1枚。

誰が見ても劣勢の場。

 

 

なのに。

 

 

「くっくっく…感動だぜ。デュエルアカデミアは楽しいな。お前みたいな奴がごろごろしてるんだろ?」

 

 

彼はこんな状況下で笑っている。

心底楽しそうに、本当にまだ見ぬ敵に対して期待を膨らませて。

 

 

「…どうして…?」

 

 

どうして彼はこんなにも強いのだろう。

どうして彼はこんなにも輝いて見えるのだろう。

 

その強さの理由が飛鳥には分からなかった。

分からないまま、二人のデュエルを静かに見つめる。

 

 

「罠カード、【異次元トンネルーミラーゲートー】発動!」

「なに?!」

 

 

相手の攻撃モンスターと対象となった自分のモンスターを入れ替えて戦闘させる罠カード。

まさかここでこのカードを出してくるとは。

 

 

十代劣勢だったデュエルに動きが生じる。

 

万丈目のフィールドにいた【フレイム・ウィングマン】と十代のフィールドにいた【E・HERO スパークマン】が入れ替わり、【フレイム・ウィングマン】の効果も合わさって万丈目のライフは大幅に削られた。

 

しかし万丈目も伊達に時期デュエルキングと呼ばれているわけではない。

手札から魔法(マジック)カード【ヘル・ブラスト】を発動し、【フレイム・ウィングマン】は破壊される。

 

更にその効果で【フレイム・ウィングマン】の攻撃力の半分のダメージを与えて、十代のライフを550にまで削ってみせた。

 

 

そして、彼はまだ終わらない。

 

 

 

 

「【地獄将軍(ヘルジェネラル)・メフィスト】を召喚!」

 

 

 

罠カード【リビングデッドの呼び声】で復活させた【ヘル・ソルジャー】を生贄に召喚された悪魔族の上級モンスター。

十代の前に立ちはだかり、彼を見下ろすその姿はまさに将軍と呼ぶに相応しき佇まいだった。

 

 

「これで終わりか…」

 

 

特にどちらを応援していたわけではないが、このデュエルの終了が近づいていることを飛鳥は残念に感じる。

クロノス教諭を破った彼がどういう戦いをするのか、もっと見ていたかったと思っている自分に気付いて苦笑した。

 

まるで彼のファンのようだ、と。

 

 

「アンティ・ルールにより、お前のベストカードをもらうぜ」

「アンティ・ルール…?」

 

 

 

 

ぴくりと飛鳥が震える。

何をしていたかと思えば、そんなことのために深夜にわざわざこんなところまで来ていたのか。

アンティ・ルールといえば校則で禁じられた、互いのカードを賭けたデュエル。

 

 

何の理由で、なんて考える必要もなかった。

 

十代という目立ちすぎる存在を、早めに叩き潰そうとしただけだろう。

 

 

 

 

「…ばっかみたい」

 

 

 

それが、何を生むというのか。

相手の大切なカードを奪い、優越感に浸って何になるのか分からない。

 

ほんの少し目つきを鋭くさせて万丈目を射抜く。

 

 

彼のその高慢な態度が、今はたまらなく気に入らなかった。

 

 

 

 

「………」

「…っ!?」

 

 

 

 

 

刹那、視線が交わる。

 

 

 

 

 

 

さりげなく見上げたその先に見知らぬ女子生徒がいたことは、当然彼にとっても予想外。

驚きに軽く目を見開いたその姿を見るより前に、飛鳥は即座に身をひっこめた。

ばくばくとうるさい心臓を深呼吸で黙らせ、こそこそと場所を移動する。

 

 

(…やばいやばいやばい!!)

 

 

まさかこちらを見るなんて思いもしなかった。

ちょうど彼に対していい感情ではないものを抱いていたから、きっと彼は自分が睨み付けていたと思うに違いない。

 

名前を呼んでほしいと思っていても、それは平穏な生活があって初めて成り立つもの。

万丈目準に喧嘩を売っては、その生活さえ望めない可能性が十二分にある。

 

 

 

逃げるが勝ち、そう思って動き始めた飛鳥の耳に、凛とした女生徒の声が届く。

 

 

 

「ガードマンが来るわ!アンティ・ルールは校則で禁止されているし、時間外に施設を使っているし…校則違反で退学かもよ!?」

 

 

 

もちろん声の主は明日香だ。

ガードマンの存在にいち早く気付いた彼女の警告により、ソリッドビジョンが消えていく。

 

 

「…いけない、私も逃げよっ」

 

 

結局決着はつかなかった。

最後に十代が引いたカードが一体何だったのか、それは分からずじまいだが、あのカードは果たして万丈目勝利という誰もがそう思った未来をひっくり返せたのだろうか。

 

 

ガードマンの目をすり抜け、誰もいない通路を走りながらそんなことを思う飛鳥だった。

 

 

 

(そうだったらいいな、なんてね)

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

デュエルフィールドから無事抜け出し、再び外の暗闇へと飛び出す。

時間は分からないが結構な時間なのだろう、遂に飛鳥にも眠気が襲ってきた。

 

これはさっさと帰って眠らなければ。

ふぁ、と大きなあくびをして小走りに駆け出したその時。

 

 

 

「おい、貴様」

 

 

背後で声がした。

大方、万丈目さんが取り巻き達に何か言っているのだろう。彼らも大変なことだ。

しかし好きでやっているようだし自分がとやかく言えることでもない。

 

 

「…無視とは言い度胸じゃないか」

 

 

あれ、そういえば万丈目さんの近くにいる二人は取巻(とりまき)くんと慕谷(したいたに)くんだったはず。

名前のままに生きているなんて凄い。そういう生き方もまた選択肢の一つだ。

 

 

「しかし飛鳥の名前のままの生き方って何だろう、まさか飛ぶわけにも…」

「おい!!貴様だ貴様!!」

「ひぇあ!?!?」

 

 

突然肩を掴まれて強引に止められる。

そこそこスピードが出ていたため危うく転びそうになるが、それは肩を掴んできた人物が前に回り込んで支えてくれたため防がれた。

 

来ると思われた痛みに耐えるように目を瞑っていたものの、自分が何やら温かいものに包まれていることに気付いた飛鳥は恐る恐る瞳を開く。

 

 

「ったく…手間をかけさせるな」

「…この刺さったら痛そうな髪…っまさか、万丈目!?」

「万丈目“さん”だ!!貴様、助けてやったのにその言い草はなんだ!?」

「そもそもあなたが止めるからでしょ?!」

 

 

支えてくれていたのは先程まで遊城十代と互角以上に渡り合ったオベリスクブルーの優等生。

 

 

 

万丈目準。

 

 

 

互いの第一印象は_______最悪。

 




万丈目との出会い。
それが飛鳥をどう変えていくのか、お楽しみに。

ようやくGXキャラと絡ませることが出来ます。
次回も様々なキャラと絡ませていくつもりですが、三沢くんとかどう絡ませようか…


感想下さった方、ありがとうございます。
デッキの提案もしていただいたおかげで、デッキ構成も少しずつまとまってまいりました。

少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。


誤字脱字、不適当な言葉などご指摘ありましたら是非。
もちろん、感想だけでも大歓迎です!
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