探せ、パーソナリティー   作:卯月極夜

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第五話 プライドの咆哮

「私が引いたカードは通常モンスター、【サファイアドラゴン】。魔法カード、【凡骨の意地】の効果を発動してもう一枚ドローする!……随分、この子と君は縁があるね。思わず笑っちゃったよ」

「そのようだな」

 

 

飛鳥と万丈目を再び繋いだ一枚のカード。

風属性、ドラゴン族。

青く輝く宝石の名を持つ一頭の龍。

 

このカードが今手元に来た理由は、きっと。

勝利をくれるため。

 

 

「次に引いたカードは通常モンスター以外。よって【凡骨の意地】の効果は発動されない。私は伏せていた罠カード【正統なる血統】を発動」

 

 

【正統なる血統】罠・永続

自分の墓地の通常モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。

このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。

 

 

「もう一度私の元へ!【エビルナイト・ドラゴン】!!」

「この瞬間、【ヘル・バーナー】は効果により攻撃力は2500となる!」

 

 

【メフィスト】が場にいることで攻撃力を下げることは出来ているが、それをしても飛鳥がモンスターを出せばその分【ヘル・バーナー】の攻撃力は上がる。

何とももどかしいこの状況。それでも、飛鳥は笑えた。

 

 

「…貴様、何がおかしい」

「おかしいんじゃないよ。ただ…デュエルって楽しいって思っただけ」

 

 

久しぶりに、楽しいと思える。

デュエルを心から楽しんでいる自分がいる。

今までは心の片隅にどうしてもあった黒い感情がなくて、飛鳥は心の底から楽しそうな笑顔だった。

 

 

「ね、万丈目。デュエルって楽しいね」

「万丈目“さん”だ。……楽しむのは勝手だが、勝敗が全てだ。負けてはどうにもならんぞ、俺も貴様も」

 

 

勝ちしか許されない。

それが万丈目準にとってのデュエル。

楽しいなんて感情、彼がどこかで忘れてしまったものを今取り戻して笑う飛鳥が理解できない半分、どこか眩しくて。

 

 

「…楽しい、か」

 

 

万丈目の心が、小さく音を立てて動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はカードを一枚伏せてターンエンド!」

「終わりかっっ!!」

「…え、ダメ?」

「あれだけヘラヘラして楽しいとかぬかして何もしないで終わるのか貴様っ!!」

 

 

一瞬で後悔した。

こんな女に何かを感じた自分が馬鹿だった、そもそも関わったこと自体が間違っていたのかもしれない。

 

今まであまり発揮されることのなかった万丈目のツッコミスキル。

その感覚に本人も流され、怒りに流されてカードをドローする。

 

それ故に、彼は伏せカードへの注意を怠った。

 

 

「貴様とのデュエルに意味などなかったな、このターンで決めてやる!【ヘル・バーナー】で【エビルナイト・ドラゴン】を攻撃!」

「君には分からないかもしれない。力無き者の苦痛が」

「はぁ?」

「いつだって上と比べられて、もがいたってどうしようもなくて。強い者に押し付けられたルールに従うしかない…弱者の思いが」

 

 

飛鳥の瞳はどこか虚空を見つめている。

彼女が今、何を思い返しているのかは分からない。

 

 

「でもこれだけは今分からせてみせるよ。私たち(・・・)にだって……プライドがあるってことを!!」

 

 

【ヘル・バーナー】と【エビルナイト・ドラゴン】が激突する。

その衝撃が生まれた瞬間、飛鳥は叫んだ。

 

 

「罠カード、発動!【プライドの咆哮】!!」

「…なっ!!」

 

 

【プライドの咆哮】罠

戦闘ダメージ計算時、自分のモンスターの攻撃力が相手モンスターより低い場合、その攻撃力の差分のライフポイントを払って発動する。

ダメージ計算時のみ、自分のモンスターの攻撃力は相手モンスターとの攻撃力の差の数値+300ポイントアップする。

 

 

「【エビルナイト】と【ヘル・バーナー】の攻撃力の差は150。よって【エビルナイト】の攻撃力は2800になる!!」

「しまった…!」

 

 

SAOTOME

1850→1700

 

 

押し負けられそうだった【エビルナイト】が咆哮を上げて、少しずつだが押し返していく。

やがて【エビルナイト】の力が【ヘル・バーナー】を上回り、爆風が巻き起こる。

 

 

「っ、く…!!」

 

 

MANJOUME

LP 3050→2750

 

 

炎を纏った魔人が消えた。

今フィールドにいるのは【メフィスト】と【エビルナイト】。当然【メフィスト】では【エビルナイト】を倒すことはできない。

 

 

「【メフィスト】を守備表示に変更。カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 

乗り切れたか。飛鳥は安堵のため息をこぼす。

正念場だったこのターンは凌いだ、フィールドの様子も自分の方に傾き始めている。

それならば相手が盛り返す前に勝負を決める。

 

 

「私のターン、ドロー」

 

 

手元に来たカードは罠カード。【凡骨の意地】の効果は発動されないものの、今あって困ることはないカードだ。

 

 

「私は【サファイアドラゴン】を召喚してこのままバトル。【サファイアドラゴン】で【メフィスト】を攻撃!」

 

 

【サファイアドラゴン】☆×4

風属性 ドラゴン族

ATK/DEF 1900/守1600

全身がサファイアに覆われた、非常に美しい姿をしたドラゴン。

争いは好まないが、とても高い攻撃力を備えている。

 

 

青い体躯のドラゴンが飛翔する。

守備表示である【メフィスト】めがけて滑降し、その体を引き裂いた。守備表示であるために万丈目にダメージは与えられないが、これで彼のフィールドにモンスターはいなくなった。

 

 

「【エビルナイト・ドラゴン】でダイレクトアタック!」

 

 

飛鳥の高らかな宣言のもと、【エビルナイト・ドラゴン】は万丈目に向かって飛び立つ。

鋭い咆哮のなか、彼に攻撃しようとしたその瞬間、万丈目が声を上げた。

 

 

「リバースカード、オープン!【炸裂装甲(リアクティブアーマー)!!」

 

 

【炸裂装甲】罠

相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃モンスター1体を対象として発動できる。

その攻撃モンスターを破壊する。

 

 

「【エビルナイト・ドラゴン】を破壊だ!」

「ちぇ、そんなもの伏せてたのか。油断した」

「お互いな。俺も【プライドの咆哮】があるとは思ってなかった」

 

 

悔しそうにしつつも変わらず飛鳥は笑顔だ。

そして、どことなく万丈目の表情も活き活きとして見える。

互いにギリギリのところでせめぎ合う。

崖っぷちでなんとか踏みとどまり、そこから一撃食らわせる。

 

スリリングな展開、それゆえに面白い。

 

 

万丈目の罠カードから放たれた一撃に、【エビルナイト・ドラゴン】の体は消滅する。

同時に巻き起こる爆風が二人の髪を揺らした。

 

 

「私はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

 

ここでダメージを与えられなかったことは残念だが、伏せた罠カードで間違いなく自分は次のターンの攻撃を凌げる。

強力モンスターを召喚する事は今の彼のフィールドでは難しい。

まだ自分に有利な状況ではあると飛鳥はターンを終えた。

 

 

「俺のターン」

 

 

万丈目は引いたカードを横目でちらりと見る。その口元が、にやりと弧を描いた。

 

 

「残念だがこのデュエル、ここで終わりのようだ」

「……へぇ、そんな良いカードを引いたの?」

「今の俺様だから使えるカードさ、特別に貴様にも見せてやろう。俺はこのドラゴンを特殊召喚する!!」

 

 

 

「舞い降りよ、【ダーク・アームド・ドラゴン】!!」

 

 

 

【ダーク・アームド・ドラゴン】☆×7

闇属性 ドラゴン族 効果

ATK/DEF 2800/1000

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地の闇属性モンスターが3体の場合のみ特殊召喚できる。

自分の墓地の闇属性モンスター1体を除外し、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

 

 

「【ダーク・アームド・ドラゴン】…?!」

 

 

召喚方法が難しい効果モンスターを、今出してくるなんて。

脳内で素早く彼のモンスターを思い返した飛鳥は、やがて悔しそうに舌打ちを一つ。

 

二体の【キラー・トマト】。

そして【地獄将軍メフィスト】。

 

万丈目の墓地にいる闇属性モンスターはこの三体。

【炎獄魔人ヘル・バーナー】は炎属性のためここではカウントされない。

こんなことがありうるとは。

 

 

「俺は【ダーク・アームド・ドラゴン】の効果発動!墓地にいる三体の闇属性モンスターをゲームから除外してフィールド上のカード三枚を破壊する!」

 

 

飛鳥のフィールドに存在した伏せカード、そして二体のドラゴンが【ダーク・アームド・ドラゴン】の巻き起こした旋風によって破壊される。

その衝撃をなんとか踏み堪えた飛鳥だったが、その目の前に【ダーク・アームド・ドラゴン】が舞い降りた時、彼女は自覚した。

 

 

 

「これで終わりだ、【ダーク・アームド・ドラゴン】でダイレクトアタック!!」

 

 

 

自分の、敗北を。

 

 

 

 

SAOTOME

LP 1700→0

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