艦隊これくしょん~五人の最強提督~   作:ODINMk‐3

31 / 54
第26海 兵器だった者の悲しみ

……あれ?私は……?

そうだった。私は、あの子達を見殺しにして……そしたら、あの子達じゃない同じ艦娘とその提督が助けてくれて……

なのに、温かい。あんなに痛いほど冷たく、血の臭いが恐ろしい所で寝てたのに、まるで天国のようだ。

 

「ん……ぅ?」

 

重い瞼を開けると、視界が白一色に染まった。しかし、外からの太陽の光が差してくるのも、それで天井の一部に影がかかっているのも分かる。

ということは、私はまだ生きてる……。上体をゆっくりと起こして、周りを見渡すと個室だと分かる。

 

コンコン、ギイィィ…

 

「失礼し…ま……す………!?」

 

すると、現れた見たこともない娘が部屋に入り私を見た次第、目を丸くしていた。提げていたバケットも落として、林檎や蜜柑がぼろぼろと落ちる。

 

「……えっと、こんにちは……?」

 

「……ハッ!ち、ちょっと待って下さいね!」

 

そう言い、落ちた林檎と蜜柑をバケットに入れてテーブルに置くとすぐに部屋を出た。

 

「……?」

 

私は入道雲がとても綺麗な青い空を眺めて待っていると、何処からか忙しい足音が聞こえてきた。

 

バンッ!!

 

「鳳翔さん!大丈夫ですか!?」

 

「アカギさん、声のボリュームを下げてください!ホーショーさん、さっき起きられたので」

 

「鳳翔さん!大丈夫なのだな。良かった……」

 

すると、扉から帰ってくることの無かった赤城や加賀、長門さん、大和さんが飛び入る。中には、さっきと同様に見たことのない艦娘もいる。

 

鳳翔「……ああ、はい」

 

長門「良かった……1週間前に翔達がお前を連れて帰ったことに大パニックだったんだ」

 

加賀「良かった……これで、安心ね」

 

誰もが、私の無事に安堵している。それに、私はとても嬉しかった。彼処ではそんなのは微塵もなく、大破すれば解体しかなかったからだ。

 

翔鶴「でも意識は戻ったとはいえ、まだ体や精神的な傷は深いです。下手な衝撃や唐突な出来事はパニックを起こしかねません」

 

赤城「……そうですね。鳳翔さん、飛び入って来てすみませんでした」

 

長門「私も、申し訳ない。生死をさまよっていたから、気を置かなければならなかったのだ」

 

鳳翔「そうだったんですね。此方もすみませんでした」

 

そう、頭を下げると皆さんが止めてくれた。その優しさに、微かに視界が歪む。

 

大和「いや、いいんです。貴女は私達に何も迷惑をかけられてないので、謝る理由なんてありません」

 

鳳翔「そんな、私は……」

 

「貴女は何も悪くない。とりあえず、体を倒して下さい」

 

そう、私は色白で帽子を被った人に体をゆっくりと倒してくれた。こんな私に対して、この人達は何て優しいのだろう……

 

鳳翔「……そうでした。皆さん、提督はいますか?」

 

蒼龍「翔さん?ああ、すみません。アイツ潮ちゃん達と特訓してますんで、終わったら私達が話しておきます」

 

鳳翔「お礼がしたくて……」

 

飛龍「そんなのいいですよ。私達の提督はバカで自由で気さくで優しい奴ですから、お礼なんていりませんよ」

 

瑞鶴「兎に角、私達は出ますので。何かあったらそのボタン押して下さい。でも、あのバカは気を遣って入りませんけど」

 

そう言うと、皆さんはこの部屋から出ていった。

にしても、あの子達が提督を『アイツ』や『奴』、『バカ』と呼ぶなんて……彼処ではそれこそ解体や特攻ものなのに、平然に呼べることに死んでいったあの子達の死が無意味に感じる。

 

 

(1時間後…)

 

 

コンコン

 

潮「潮です。鳳翔さん、いらっしゃいますか?」

 

お昼を食べ終わり、午後の特訓は無しと言われた私達はすぐに鳳翔さんがいる個室へと向かった。

 

ギイィィ……

 

鳳翔「いらっしゃい。私はもう大丈夫ですよ」

 

村雨「お邪魔します」

 

とりあえず重ねてある四人分の丸椅子を分けて、それぞれ鳳翔さんと向かい合うように座る。

 

鳳翔「……やっぱり、提督は来られないんですね」

 

潮「まあ、恐怖や怒りの対象である提督という立場にある人ですから、気遣って来ないと言ったので」

 

如月「そこは勘弁して下さい」

 

それに、鳳翔さんは了承するように答える。その直後、私達と誰かを比較するような目をした。

 

鳳翔「……貴女達は、とても明るいのですね」

 

羽黒「はい。まあ、最初は提督が怖かったりしてたんですけど、3ヶ月もいればいつの間にか昔の自分なんかが思い出のように感じられるんです」

 

潮「私もそうだったんですけど、何故か肝が据わってきたというか……」

 

村雨「具体的に言えば『提督と似てきた』というわけです」

 

上手い纏め方に、ぐぅの言葉も出ない。でも、確かに私達は提督に似てきた気がする。通常の装備を使わずに提督の使うものを使い、提督と特訓をしたり……何もかも提督絡みだ。

 

鳳翔「そうなんですか。貴女達の提督って、凄い人なんですね」

 

潮「ええ、MI作戦でも直接指揮(?)をしたり強大な敵を一人で足止めしてくれたり、提督には感謝しかありません」

 

鳳翔「そう……なんですね……」

 

そう言うと、鳳翔さんの鼻と目が赤くなって涙が流れていた。それに、私達は何かに引っ掛かったと思い謝罪するが、鳳翔さんは首を振った。

 

鳳翔「ねえ……聞きたいことがあるんです」

 

潮「……はい。何でも仰られて下さい」

 

鳳翔「……此処の鎮守府の生活環境は?」

 

潮「清潔です。皆が夜や雨の時によく掃除をするんです。というか、もう日常的にやることの一つです」

 

鳳翔「ご飯は?」

 

如月「間宮さんや伊良湖さん、他に提督のご家族が料理に加担してバリエーションのある料理を食べてます。食材に関しては提督の友人さんが生産してますね」

 

鳳翔「深海棲艦との戦いは?」

 

羽黒「この鎮守府周辺は現れないし、襲撃することはありません。私達の仕事は、深海棲艦がいる海域の殲滅や敵がいないことの確認が主な任務です」

 

鳳翔「皆さんは?」

 

村雨「毎日、いつも演習や特訓をしたり、遊んだりしてます。本も沢山あったり勉強できたりと、この鎮守府にずっといても飽きません」

 

そうして最後の質問だろう、鳳翔さんは荒い息を整えて、こう質問した。

 

鳳翔「貴女達は、幸せですか?」

 

「「「「…………」」」」

 

それに私達は思わず互いに顔を合わせたが、こう答えた。

 

『はい!勿論です!!』

 

鳳翔「そう……なのね……」

 

それに鳳翔さんはついに涙腺が崩壊したのか、大粒の涙をぼろぼろと流した。

 

鳳翔「あの子達にも……あの子達にも、こんな幸せを味わせたかったわ……」

 

村雨「……鳳翔さん、申し訳ありませんが私達に彼方の鎮守府の様子を話してもらえませんか」

 

鳳翔「!?……ええ、いいですよ」

 

そうして鳳翔さんの口から、酷く、悲しく、怒りに満ち溢れ、胸糞悪い話を聞くこととなった……

 

~~~~

 

<執務室>

 

望「父さん、これが鳳翔さんの艤装の状態だよ」

 

翔「……酷え。飛行甲板は勿論、弓の弦すらも切れてて、矢筒にも穴が空いて、更に艦載機が零戦62型……爆装による特攻仕様じゃねえか。数は10機……蟷螂の斧レベルじゃねえぞコレ」

 

久しぶりに提督服を着ての執務。俺は望からの報告書を眺めて怒りを覚えた。

 

望「しかも、乗っていた妖精さんも精神的に異常。此処の妖精さん達がアフターケアをしてるよ。それに友永さんや江草さん、村田さん、岩井さんも彼らの状況を重く見ている。今後立ち直ったら改めてパイロットとしての訓練を行うらしいよ」

 

翔「凄腕パイロットもか……お礼せねばな」

 

何にしようか、と考えていると望はまるで景色に溶けこむかのように扉の向こうへ消えていた。

 

翔「……色々と忙しいんだな」

 

艤装の修復に時間がかかりそうだな。新調するのも手だが、流石に負担をかけるわけにもいかんな。

 

翔「(……さてと、あのクソ共をどう潰すか)」

 

菊一文字の封印外して菊妖怪の力で喰い殺すか、メイスを使って潰しまくるか、それとも対人連装ガトリング砲で凪ぎ払うか、それともトー○ャーアタックで一人一人殺すか……

成人から所属鎮守府やその内装の図を貰っているので、どう行けばいいかは既に分かってる。艦娘達にも負傷艦の救助などの任務を話してるし、咲姫と成人にも人間共の殲滅や足止めを頼んでる。

 

翔「あとは……夜に奇襲するくらいだな」

 

目は此方の方が良いし、憲兵も酷使で疲れてる。まあ、アレさえやってなければ大将は殺しやすいのだがな。

 

ギイィィ…

 

翔「……?どうした、お前ら」

 

『……』

 

執務席から立ち上がり、うつむいて顔が見えない四人に歩み寄る。

 

潮「……ぇとく」

 

翔「……そうか。鳳翔の話、聞いたのか」

 

そう言うと、俺は四人を抱き寄せた。清志には悪いが、この服を汚してしまうが脱ぐ暇なんて無い。

 

羽黒「!?て、提と__」

 

翔「泣け。鳳翔の話聞いて、悲しかったんだろ?許せなかったんだろ?助けてやりたかったんだろ?

今夜に助けに行くが……そんなんじゃ、絶望に叩きのめされた姉妹達に笑って助けに行けねえだろ。だから、泣け」

 

すると四人が背に手を回し、もしくは握り拳を作って俺の腹にぶつける。そして、泣いた。

 

翔「よしよし……助けてやろうな、アイツらを」

 

ぷるぷると震え、泣き声や嗚咽を堪える声の振動が感じられる。それに、俺は慰めながらコイツらの頭を優しく撫でるのだった。

 

ギイィィ…

 

咲姫「!!……」

 

翔「(……スマン)」

 

咲姫「(ううん、いいの。今も昔も、慰めるポジションは変わらないね)」

 

片手で咲姫と話す。何やら羨望や独占欲が微かに感じられるが、今はそんなことどうでもいい。

 

翔「(そうだな。だが……海軍のクズ共め、艦娘を何だと思ってんだよ!!)」

 

咲姫「(ええ、偉そうな立場して艦娘を苦しめて!!この借りはきっちりと払ってもらわないとね)」

 

「「((その命で))」」

 

その言葉と同時に俺達は一瞬だけだが目が血のように赤く、髪が骨のように白くなる。

これは別に怒ってなるものではないが、激昂や感情が普通より荒ぶるとなる。実際、オンオフできるがする意味なんてほとんどないから感情のままになる。

 

翔「(んじゃ……作戦通りに頼む)」

 

咲姫「(分かった。終わったら[アッー!]ね)」ブスッ

 

翔「(空気読めよお前)」

 

咲姫「(まあ、いいじゃん。とりあえず、銃のメンテしてくるね)」

 

そうして、咲姫は何処かへと行った。

何でこうなるんだろう……シリアスが誰かのせいでブッ壊れるんだよなぁ……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。