艦隊これくしょん~五人の最強提督~   作:ODINMk‐3

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第30海 葬式と交錯

<不死鳥戦艦 甲板上>

 

暁「ん~……あっ、陸奥さん私から見て手前から3番目の棺が少しずれてるよ」

 

陸奥「あら、ありがとね暁ちゃん。よいしょっと」

 

午前4時50分。動かした戦艦の甲板上で、私達は水葬の最終調整を行っていた。艦娘達は甲板の端に並べられた棺の調整や身だしなみのチェックをしており、私や翔君は全体の指示等を張った声を響かせていた。

希ちゃんと望君は弔砲の用意を妖精さん達と共に行っているが、成人君は隅でパイプ椅子に座って眠っている。実際、遺体の納棺等は彼一人がやったので誰も成人君に口は出してない。

 

咲姫「あと五分で舞鶴の子達が来るから、身だしなみを再確認してー!」

 

島風「おう!あれ、翔は~?」

 

雪風「翔さんは着替えてると思うよ?ほら、ついさっきに服の事指摘されて艦内に入ったよ」

 

「わりぃっ!ようやく着替えたよ」

 

艦内への扉から翔君が飛び出てきた。黒い喪服の上に鋼翼団の灰色のジャンパーを着ている。その容姿に皆は意外そうな目で見てきた。

 

電「か、翔さんの正装初めて見たのです……」

 

金剛「Oh!喪服のカケルもカケルデース」

 

翔「そういうお前らは頭に付けてるカチューシャとかないから、誰お前!?ってなったけど」

 

その言葉に、思わず皆が吹き出してしまった。確かに、特徴的なカチューシャを付けた金剛四姉妹や長門姉妹もそれを外してどこか新鮮な感じになっている。

私もちょっと吹き掛けたが、翔君の傍に来て襟や裾をきっちり整わせた。

 

翔「ん、ありがとうな咲姫」

 

咲姫「それが私の仕事よ?もうちょっと早く気づけば良かったけどね~」

 

ローマ「まあ、男だからすぐに来れたことだけどね」

 

リットリオ「確かに。すっぴんでも私達は翔さんよりちょっとかかったくらいなのでアウトでしたよ」

 

すると、CCMが4時55分の知らせで鳴った。それと同時に艦内の扉からぞろぞろと艦娘が現れた。

やはり、時間厳守という前の提督からの鉄則がこの行動に現れていることが分かる。

 

翔「へっ、本当だったな」

 

リットリオ「……ですね」

 

潮「は~い。皆さん申し訳ありませんが此方にお願いしま~す!」

 

如月「それで私達の後ろでまばらでもいいですから、適当にお待ち下さい」

 

翔君の直属艦の四人が指示を促している。舞鶴の子達も相手は助けてくれた艦娘なのか、四人の指示にちゃんと従ってくれるようだ。まあ、私達への殺気は変わらず……

 

村雨「すみませんが、暫くの間お待ち下さい」

 

『……』

 

静寂。やはり、今回は大切な行事だろうと艦娘達も大人しかった。このまま、何もなければ……

 

翔「あー、皆。全員来たことだ。もう始めようか」

 

武蔵「……だな」

 

天龍「テメエという奴は、いつもマイペースだな」

 

ウチの男勝りな子は鼻を鳴らし、他は少し笑ったり微笑んだりした。それに翔君はふと振り向き微笑み、そして顔を少し強ばらせてまた前へ向き直した。

 

翔「さてと……皆。

海軍の連中で雑説の千里を走る馬の如く、辱しめられ叩かれて餠死していった日本を守るべく戦ってきた艦娘達に祈ってくれ。そいつらがどこかの平和な世界で生まれ変わり、人間として幸せに暮らしてくれることを……」

 

それに長門や陸奥といった子は手を合わせ、電ちゃん達は手を組んで目を瞑った。武蔵や天龍達は、ただ目を瞑ってうつむいていた。でもどこか彼女達らしくていいなと思った。

私は後者の方法で祈った。どうか、生まれ変わった世界で私や翔君のように不幸にまみれて死なないように……私達のような運命で死んでしまわないように……

 

翔「……不服だろうな、俺という顔も知らない『提督』がまるでお人好しのように幸せを願って祈ってくれることを。その時は、天罰でも心霊でも呪いでもいいから構わずかけてくれ。

けどよ……俺はお前らの受けたその痛み、悲しみ、怒りを何倍にも大きくして海軍の奴らに返してやる。

俺だってお前らと同じような前世を暮らしてきた。生まれた時に両親を殺され双子の妹と生き別れ、そして人間達に意味もなく虐待され続けた生涯をな。

知った口を、と思いたければ好きにしていい。だが、もし俺が死ねば俺といるコイツらも確実に同じ運命を辿るだろう。

……誓おう。俺がコイツら全員を引っ張り、そして全員が生き残ってこの戦争を終わらせて海軍を潰してやると……!!」

 

そう宣誓を誰もいない目の前に翔君は言い、深々と礼をした。私も起きた成人君、そして此処にはいない希ちゃんと望君も提督という存在に値するため深々と頭を下げた。

それと同時に鋼翼団の艦娘達がその棺桶をゆっくりと海面に下ろして、また手を合わせたり組んだりして私達同様に頭を下げた。

 

翔「……弔砲、用意。撃て」

 

ドドドォン!ドドドォン!

 

ドオォドオォォンッ!!

 

不死鳥戦艦の高角砲と副砲が順にその発砲音を轟かせた。その弾は山なりに飛んで私達の目の前の暗い空に爆発した。

それは……高角砲は小さな花を咲かせて。副砲は赤い花を咲かせた。その花は、まるで彼岸花のようだ。

 

翔「……!!」

 

大和「……綺麗わ。まるで、空に花が咲いたみたい」

 

響「Довольно(綺麗)、これは素晴らしい花火だ」

 

ザラ「……Bello(美しい)、これが日本のハナビなんですね!」

 

サラトガ「It`s bautiful!!」

 

プリンツ「Sehr schön(とても綺麗)!ビスマルク姉様やマックス達にも見せたかったなぁ」

 

その空に開いた花に、感嘆の声を上げたり感動する。駆逐艦の子ははしゃいだりもしていた。

 

咲姫「あれ、どうしたの?」

 

明石「ふふふ。実はですね、成人さんから弔砲用の弾を作ってほしいと設計図を渡された共に頼まれたので、夕張や妖精さん達と一緒に花火玉を作って、大砲の中に仕込んだのですよ!」

 

伊良湖「すごいですよ、明石さん!」

 

龍田「あらあら、大きいのは彼岸花のようわね。確か、花言葉は『悲しき思い出』や『独立』、『再開』かしら?」

 

咲姫「ええ、他に『思うのはあなた一人』や『また会う日を楽しみに』というのもあるわよ。

……もしかしたら、成人君はそれを見据えて彼岸花に似せた花火玉を作らせたのね」

 

翔「……ああ、消えていく」

 

翔君の言葉と共に空に咲いた花はゆっくりと小さくなり、また夜空へと戻った。でも、その水平線には僅かに明るくなっていた。

 

天龍「おい、もうちょっと長く咲くことはできなかったのか?」

 

夕張「無理ですよ。花火はそういうものなのですから」

 

雷「でも……とても綺麗だったわ!」

 

ポーラ「次はワインでも飲みながら~、ハナ~ビを見てみたいで~す♪」

 

グラーフ「ほう、月見酒ならぬ花火酒か」

 

赤城「それはそれで粋でしょうね」

 

何処か残念気だったり、また見てみたいと言ったりと、私達の艦娘はとても感情溢れていた。

 

翔「……それじゃ、葬式は終わりだ。

今日からお前らはウチの鎮守府で暮らすこととなる。とりあえず8時くらいには飯できてるから、その時まで待っててくれ。

それじゃ、解さ~ん」

 

それに、待ってましたと一部の艦娘が翔君の元に突撃や砲撃を仕掛けてきた。だが、それを妨げるように潮ちゃん達四人と手持ち武器がある艦娘がその刃先と砲を向けた。

 

摩耶「……おい、邪魔だ。ただ駆逐艦が、どけ」

 

潮「嫌です。もし提督を殺すというのなら、此方も実力行使しますよ」

 

日向「駆逐艦風情が何を言っている。それで私達に勝とうなど、夜戦でしかあり得ないだろう」

 

村雨「ふぅん……その言葉、きっちり覚えておくわよ」

 

その時、羽黒ちゃんも含めた四人が青筋を立てていた。周りを見てみると、舞鶴の駆逐艦は諦めが付くかのように目を虚ろにしていたが、こっちの駆逐艦はプライドを傷つけられたのか歯を食い縛ったり拳を強く握っていた。それを、他の艦娘が周りが宥めているだけあっちとこっちの差が伺える。

 

翔「お前ら、此処でやるなよ……」

 

摩耶「あ?提督風情がアタシ達に命令するんじゃねぇ!!」

 

ドドオォォンッ!!!

 

重巡と思われる子の連装砲が翔君向けて火を吹く。だが、避ける素振りもなく弾丸の雨に晒される。それに、勝ち誇ったかのように鼻を鳴らすも束の間……

 

翔「あー、全然痛くねえぞ。ウチはバカ日空母の爆撃を毎回受けてるから、こっちの方がまだマシだ」

 

摩耶「チッ……!!(コイツ、化け物か!?)」

 

かすり傷もなく、直撃する弾だけを指で挟み止めていた。その異常さに、彼方にも反応が現れる。

 

日向「だが、戦艦の斉射よりはマシだろう。死ね!!」

 

羽黒「止めてください。後ろの無害な艦娘達まで殺す気ですか、アンタは」

 

日向「ッ……!!(ほ、砲筒を潰したのか!)」

 

撃たれる寸前に、羽黒のAMライフルが砲筒にピンポイント射撃する。見事に直撃して主砲が使えなくなった。

 

長門「貴様達、こんな所で撃ち合うなど多くの被害者を生むつもりなのか!?もうやめろ、この後でも好きにできるではないか!!」

 

潮「……チッ」

 

摩耶「……クソ、後でぶっ潰してやる」

             ・・・

日向「……運が良かったな。こんな素晴らしい艦娘に助けられて」

 

戦艦の子の言葉が気に障ったのか、追撃しようとするが止められてしまう。ハァ……これじゃ完璧にヤクザ同士の喧嘩だよ……

 

翔「……ハァ、お前らも帰るぞ」

 

武蔵「……悔しくないのか?」

 

翔「……もう、慣れてる」

 

そうか、と武蔵は無に近い表情で艦内へと戻ったのだった。それに追うかのように大和や翔鶴達も帰ってくる。

そうして私も帰ったと見せかけて残った翔君の様子を伺うと、悔し涙を流しながら甲板を殴りつけていた。

 

翔「……クソ、アイツらが侮辱されてんのに、何も言えねえ俺って……!!」ドンッ!!

 

咲姫「……」

 

誰もいない時こそ、翔君は此処ぞと悔しがる人だ。その姿は、どんな時よりも惨めだった。

その姿に見てもいられず、思わず潜めた身を出して彼に近づいていった。

 

咲姫「……翔君」

 

翔「!!……見てたのか?」

 

咲姫「うん……」

 

涙を必死に拭って帰ろうか、と笑いかける翔君。でも、赤くなった目の鼻はどうにもならない。余計に見てて苦しくなる……

 

咲姫「……翔君、泣いてもいいんだよ」

 

翔「……バカ、泣ける訳ねえだろ」

 

咲姫「……でも、泣いてるじゃない」

 

えっ……、とふと翔君が涙を必死に止めようとした。でも、止まらないが故に必死に拭っている。

それに、私は黙って翔君を抱き締めた。

 

咲姫「翔君、私は君のお嫁さんで唯一本当の家族なんだよ。双子だから、翔君がお兄ちゃんかもしれないけれど、私がお姉ちゃんということもあり得る。

だから……今は私がお姉ちゃんだから」

 

翔「……うっ、クソッ……クソッ……!!

クッソオオオぉォォォぉぉぉォぉぉォォォォォォォぉぉォォォォォぉぉぉぉォォォォォォ!!!!!!!!」

 

本音を絶叫して涙をぼろぼろと流す翔君に、私はただただ抱き締めて泣くのだった。

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