IS学園 アリーナ
学年別タッグマッチトーナメント当日。
アリーナでは、タクヤ&セシリアペアVSラウラ&箒ペアの試合が行われていた。
一組のメンバーの大半はブルービートであるタクヤの方が優勢と思っていたが試合は予想以上に長引き、タクヤとセシリアが徐々に押され始めていた。
管制室ではその様子を千冬が不振に思いながら見ていた。
「・・・・・・・・妙だ。」
「えっ?何がですか?」
千冬の隣で真耶は不思議そうに聞く。
「ボーデヴィッヒの搭乗しているレーゲンの動きが数日前見た時よりもかなり早くなっている。」
「そうですか?私にはそうにも見えませんが・・・・・」
「それに気になるのは篠ノ之の方だ。あいつにしては今日に限って奴の指示に忠実過ぎる。」
「た、確かに・・・・・・」
二人は箒の様子を見て不審に感じた。
普段の箒はこのような試合でもチームワークを崩しかねないほど性格が荒い。それに相性から考えて軍人であるラウラと衝突する危険性は高いはずだ。なのにあの二人はまるで上官と部下のように見事なチームワークを見せている。
「この数日の間に二人の仲が良好になったとでもいうのか?それにしてはやけに不自然だ・・・・・」
千冬は首をかしげながら試合を見続ける。
アリーナ 通路
「試合はタクヤたちが劣勢になっているな。」
「まさかこの間の新兵器を展開した直後に破壊するなんてね、軍人ってみんな判断力があんなに早いのかしら?」
一方、弾と鈴は次の試合が自分たちのペアであるため更衣室へと向かっていた。
「タクヤがもしあのペアに負けたら次は俺たちが戦うことになる。あいつらに手の内を見られねえように最初の試合は早く勝たないとな。」
「そうね、たとえタクヤが負けても私たちが勝てば問題ないし!」
「それでもデザートパスはお前の組のものになるけどな・・・・・・」
弾は不審な目で鈴を見る。
「わ、わかってるわよ!アンタに奢るからそんな目で見なくてもいいんじゃない!!」
「まっ、それならそれでいいさ。俺は先にスタンバっているから。」
「うん、私もスーツに着替えてピットに行くわ。」
そう言うと弾は、ピットの方へと向かい、鈴は更衣室へと入る。
「さあて、今日は気合を入れていくわよ!」
鈴は早速ISスーツに着替え始めようとする。
ドン!ドンドンドン!
ロッカーの一つからものすごい音が聞こえた。
「えっ!?な、何・・・・・・・何!?」
いきなりの物音に鈴は驚く。ロッカーはまるで何かがいるかのように音を立て続ける。
「ま、まさか・・・・・・・ジャマール?もしそうだとしたら・・・・・・」
鈴の顔から冷や汗が出始める。ロッカーの音はさらに大きくなり、何かがぶつかっているのかボコボコと凹み始める。
(どうしよう!!!こんなところで出てきたら私ひとたまりもないじゃない!!でも、タクヤは試合中、弾はピット、マドカちゃんは客席。呼びに行こうとも絶対に逃げきれないじゃない・・・・・)
ロッカーは、今にも何かが飛び出してきそうだ。
「あ、あ・・・・あ・・・・・・」
ドン!!!
「きゃあああああああああああああああああ!!!!!!」
鈴の悲鳴が更衣室に大きく響く。
「鈴、どうした!?」
あまりにも遅いと思っていたのか重甲したジースタッグが入ってきた。鈴はそれに気づくなり、ジースタッグに飛びついた。
「ジャマールよジャマール!!ロッカーの中から・・・・・・・」
「・・・・・・・・おい、一体どういう事なんだよこれ?」
「えっ?」
鈴は後ろを振り向く。
そこには全身ロープで拘束され、顔をテープで口封じさせられた少女が蠢いていた。
「ふごご、ふご!!」
「な、なんで?どういうこと?」
鈴はジースタッグから離れて近寄り、少女の口に巻かれているテープを剥がす。
「ぷはっ!!ボーデヴィッヒの奴はどこだ!!私に急に不意打ちをくらわせて!!」
ロッカーの中から出てきたのは現在タクヤたちと試合をしているはずの箒だった。
「何言ってんのよ!アンタ、今試合に出ているのよ!?」
「私が!?私は今朝、ボーデヴィッヒと一緒にここで準備をして、そのとき奴が後ろから・・・・・・」
「・・・・・・とにかくやばそうだ。鈴、お前は織斑先生にこのことを!俺はアリーナに行く!!」
「分かったわ!」
「お、おい!私はどうなるんだ!?」
箒の話を聞いていないのか二人はさっさと更衣室から出て行ってしまった。
「ま、待ってくれ!責めてこのロープだけでも!!誰か・・・・・・・・誰か私を助けてくれ!!!」
アリーナ
「はあ・・・・はあ・・・・」
「大丈夫か?セシリア。」
「は、はい・・・・・なんとか。」
ブルービートは、セシリアを庇いながら身構えていた。セシリアの方は既にシールドエネルギーが50パーセント削られてしまいティアーズは全機破損、追い込まれているのは事実だった。一方の目の前にいるラウラと箒はそれほどシールドエネルギーが削られていない。
「無様だな、そいつをパートナーにしたばかりに貴様が思うように戦えんとは。」
ラウラはAICを展開しようと手を構える。
(それにしても何かがおかしい・・・・・彼女のISの性能の変化もそうだが後ろにいる箒の様子が明らかに本人とは思えない・・・・・・いったい何が・・・・・)
「これで私の実力が証明される!貴様の無力さを知れば教官はきっと私のことを見てくれるようになる!!」
ラウラはAICを展開する。
「うっ!体が・・・・・・」
「わ、私まで!?」
ブルービートたち二人は身動きが取れなくなる。
「止めだ!!」
ラウラはブルービートに向けてレールカノンを放とうとする。
「待て!」
「ぬっ!?」
レールカノンを放とうとした瞬間、ジースタッグがアリーナにスティンガークローを構えながら乱入してきた。
「この試合は無効だ!」
「何!?」
『あれ五反田君よね?』
『どうしてアリーナに?まだ試合が終わっていないのに。』
ジースタッグの乱入に客席も騒ぎ始める。ジースタッグは客席の方を見ながら叫ぶ。
「みんな、聞いてくれ!!ここにいる篠ノ之は偽物なんだ!!ジャマールが送り込んだ怪人が化けたものだ!!」
『えっ!?』
『どういう事!?』
客席の生徒たちは動揺し始める。そこへレッドルが慌てて生徒たちに呼びかける。
「皆さん!大会は中止です!!急いで教室に戻ってください!!ここにいると危険です!」
レッドルの呼びかけに生徒たちは戸惑いながらも客席から避難を始める。ジースタッグはインプットマグナムでラウラの右手を攻撃する。
「くっ!」
ラウラは右手を引っ込める。ジースタッグはそれを確認すると急いでブルービートとセシリアの方に駆け寄る。
「大丈夫か?」
「ああ、でも一体どうして・・・・」
「ジャマールに魂を売るなんて・・・・・軍人のプライドはどこに行ったんですの!」
セシリアはラウラに向かって言う。
「違う!奴らとは一時的に組んだに過ぎん!レーゲンの強化を代償にビーファイターを倒せとな!」
「そこまでして俺を倒したいというのか!?」
ブルービートは立ち上がりながら言う。
「お前に何が分かる!教官に軍に戻っていただきたくこの地まで来て、貴様らにプライドを傷つけられ、教官に目も当てられなくなってしまった私の気持ちなど・・・・お前たちにわかるか!」
ラウラは、箒に後ろに下がる。すると箒の姿が徐々に怪人の姿へと変わっていく。
「お前は死神デスマルト!!」
「そんな!奴はこの間死んだはずだぞ!?」
二人は動揺しながら見る。
「帰ってきたのよぉ!地獄から!今度こそ貴様らを首を取るためになぁ!」
デスマルトは叫ぶと同時に本来の銀色の鎧をまとった姿から赤い体色の翼を生やした姿へと変化する。
「蘇生手術のみならず、強化改造まで受けているとは・・・・・」
「くそ!なら、また地獄に叩き落としてやるまでだ!」
ジースタッグはスティンガークローを構え直し、デスマルトに向かって行く。
「ブルービートは私が倒す。手出しはするな。」
「フン、俺がもう一匹の方を倒すまでだ。それ以上は待ってやらん。」
ラウラはブルービートに、デスマルトはゆっくり歩きながらジースタッグに迫っていく。
「先手必勝だ!喰らえ!」
ジースタッグはスティンガークローでデスマルトの胴体を斬りつける。しかし、デスマルトの体には傷一つつかなかった。
「フン。」
デスマルトは翼を拡げ、上昇する。ジースタッグは離さんばかりに抵抗するがデスマルトはそれを利用して客席の方へと勢いよく突き飛ばした。その威力はシールドをいとも簡単に突き破り、避難がまだ完了していない客席へとジースタッグを激突させた。
「グッ!」
幸いその客席周辺は人がいなかったがデスマルトは飛行しながら客席の方へと向かって行く。
「まだ避難が完了してない所に来ちゃ不味い!」
ジースタッグはすぐにインプットマグナムを構える。
「ビームモード!」
銃口からビームが連射されるがデスマルトは怯むことなく迫ってくる。
「ぜりゃあぁ!!」
デスマルトは剣でジースタッグを斬りつける。
「ぐわあぁ!!」
更にその隙を逃さず、右翼のレーザー砲からレーザーを発射する。
「弾さん危ない!きゃあぁ!!」
ジースタッグに命中する寸前にレッドルが庇う。
「りゃあぁ!!」
怯んだレッドルをデスマルトは、逃すことなく右手から磁力光線を放ちレッドルを拘束し、上空に浮かせ叩き落とす。
「うぅ・・・・」
「レッドル!」
倒れたレッドルの元にジースタッグ駆け寄る。
「貴様らに俺は倒せん!」
「それは、どうかしら?」
「ん?」
デスマルトは後ろを振り向くと後ろには甲龍を纏った鈴がいた。
「なんだ貴様?」
「凰鈴音!ビーファイターの仲間よ!」
鈴は、龍咆を発射する。見えない空気の弾にデスマルトは吹き飛ばされる。
「小癪な真似を!」
デスマルトはお返しとばかりに左翼のレーザー砲を発射する。
「きゃあぁ!」
「鈴!」
ジースタッグはスティンガークローのエネルギーを集中させながらデスマルトへ向かう。
「レイジングスラッシュ!!」
思いっきりデスマルトの胸部へと斬りつける。しかし、刃が通らない。逆にデスマルトに抑えられ、剣で斬りつけられてしまった。
「ぐわあぁ!!」
「弾!」
鈴は体勢を立て直してジースタッグの方へ行く。
「くそ・・・・・・・レイジングスラッシュも通じねえ!」
「ニヤャヘヘヘヘ!!」
「「ハッハハハハハ!!」」
「こ、この声はもしかして!?」
レッドルがデスマルトの後ろを見る。後ろのほうではシュヴァルツ、ギガロ、ジェラが高笑いしながらビーファイターたちを見ていた。
「デスマルトは生まれ変わったのだ!」
「我らの手によって。」
「三軍団の総力の結晶としてな!」
「三軍団の総力の結晶!?」
「傭兵としての戦力はもちろん!」
「合成獣の攻撃力を併せ持ち。」
「そのうえ戦闘メカも完備しているのだ!ニヒヒヒッ!」
「ってことは・・・・・・・・三種類の怪人の能力を兼ね備えた最強合体怪人ってわけ!?」
鈴は驚きながら言う。
「虫けら共め、地獄へ落ちろ!」
デスマルトはビーム砲を放つ。
「うわあぁぁぁ!!」
「「きゃあぁぁぁ!!」」
「はああぁぁぁぁ!!」
「くっ!」
一方のブルービートはラウラと戦いを繰り広げていた。
「いくら逃げようと無駄だ!!」
ラウラは再び右手を翳してブルービートの動きを封じる。
「うぅ!!」
「このままプラズマ手刀で!!!うっ!?」
その直後、ラウラは突然の頭痛で頭を押さえる。
「はあはあ!!くそ!」
顔色は明らかに悪くなっている。それでも、彼女は顔を上げ、レールカノンを放とうとする。
「タクヤさん!」
ラウラの後ろからセシリアが取り押さえる。
「くう!雑魚が!!離せ!!」
ラウラはプラズマ手刀を展開しセシリアを斬りつけようとする。ブルービートはこの機を逃さずスティンガーブレードでラウラのレールカノンを斬り落とす。
「おのれ!うぅ!!」
ラウラは、再び頭を押さえる。
「痛い!!頭が割れてしまいそうだあぁ!!ぐわあぁぁぁぁ!!!」
ラウラは苦しむ。同時に彼女の機体から黒い泥のようなものが彼女の全身を覆い始め、一人の人物の姿へと変わった。
「お、織斑先生!?」
「千冬姉!?一体どういう・・・・・・」
「ミューゼル!オルコット!」
二人が驚いている直後、後ろから声が聞こえた。
振り向くとそこにはISを纏った千冬がいた。
ただし、学園に置いてある「打鉄」「ラファール」ではなく、全身金色のISだった。
「それって・・・・・・義母さんの『ゴールデン・ドーン』じゃないか!?どうして千冬姉が持っているんだ!?」
「以前、アカデミアに見学しに行ったとき、ミューゼル会長からもしもの時にと言われて受け取ったものだ。ここは私に任せてお前たちは五反田たちの援護に行ってくれ。」
「無茶だ!あれは、見る限り千冬姉のコピー体、つまり全盛期の『暮桜』を使用していた時の千冬姉そのものだ!そんなのを相手に使い慣れていないISで立ち向かうなんて・・・・・」
「会長から指導は受けている。足を引っ張らせるつもりはない。」
「でも・・・・」
「お前たちビーファイターの任務はジャマールと戦い、世界を守ることだ!急げ!」
千冬はそう言い残すと姿が変貌した「暮桜モドキ」ともいえるシュヴァルツェア・レーゲンに向かって行った。
「・・・・・・・くう!俺たちは弾たちと合流しよう!」
「はい!」
ブルービートとセシリアは急いでジースタッグの方へと向かった。
千冬の「ゴールデン・ドーン」搭乗に関しては、スコールがほぼ戦場に出ないという理由で出すことにしました。
ちなみにラウラのレーゲンの強化は「AICの効力の向上」などがありますが同時に負担もそれ以上になり、パイロットが持たなかった場合は最終的に「VTシステムが強制作動」と言う風にしました。
次回「見つけた!合体怪人の弱点!」の予定。