第二話をどうぞ。
???
照明を消している暗い部屋のベッドの上でブルービートは体育座りをしていた。そこへ食事を持って来たオータムが入って来る。
「また、食っていなかったのか。」
オータムはベッドの脇にある机に置いてある全く手を付けていない食事を見て呆れる。
「もう二日だぞ?いい加減何か腹に入れておかないと体が持たないぞ。」
「・・・・・・」
ブルービートは無言のまま固まっていた。
「ったく、今度はちゃんと食べろよ。」
オータムは手が付けられていない食事の盆を取り換えて部屋を後にしていく。ブルービートは一旦食事の方を見るがすぐに元の状態に戻る。
(どうせ、食事に薬でも入れて殺そうと考えているんだろ。その手には引っかからないぞ・・・・)
IS企業 コスモアカデミア ロビー
「どうだったオータム?彼の様子は?」
「連れて来てから二日経つが全然ダメだ。私達のことをまるっきり信じていない。」
オータムは呆れた顔でスコールに報告する。
「困ったわね、いくらインセクトアーマーを付けて身体能力が上がっているからと言ってこのままだと後三日も持たないわ。」
「恐らく実の姉に裏切られたショックで心を閉ざしてしまったんじゃろう。」
グルは湯呑に入ったお茶を啜りながら言う。
「一度閉ざしてしまった心を開くことは簡単なことではない。それはこの世の中とて一緒、一度変わってしまった物はなかなか戻れない。」
「グルの言う通りかもしれないわね。現に篠ノ之束が日本政府から姿を消しても世界各国は残されたISのコアで開発競争を行い、欠点を自分達で改めようとは中々しないもの。」
「でもよ、このままだと・・・・・」
「みんな何話しているの?」
そこへ一人の少女が来た。
「お帰りマドカ。」
「ただいまお義母さん。」
スコールの声にマドカと名乗る少女は答える。
「お兄ちゃんまだ部屋に籠っているの?」
「え?どうしてそのことを・・・・」
「こっそり聞いてた。」
どうやら会話を聞いていたらしい。
「・・・・・そうなのよ。」
「お兄ちゃんは私よりも幸せなはずなのにどうしてあんなに寂しそうなの?」
「それはね・・・・・・・」
「う、うう・・・・・」
ブルービートは腹を押さえながらベッドに横になり唸っていた。
「流石に二日間も何も食べていないのは不味かったか・・・・でも、ここでコイツを解除したら・・・・」
空腹を堪えながらも彼は昔のことを思い出す。どこにいても自分は姉のオマケみたいなもので誰からも相手にされなかった。それは姉とて同じ、どこにいようが自分は一人っきりなのだ。だから誰も信用できない。
「う・・・・・くそ!」
ブルービートは机にあった食事の盆をひっくり返す。
「なんとかしてここを出て・・・・・?」
彼はドアを開けた。てっきり鍵が掛けられていたと思っていたがよく見ると鍵は掛けておらずドアは開いた。彼は廊下に出る。
「ここは・・・・どこなんだ?」
ブルービートはゆっくりと通路を歩き始める。そのとき、頭部のビートセンサーに反応が出る。
「誰かが来る!」
彼は慌てて隠れようとするがどこにも隠れるところはなく仕方なく急いで部屋に戻っていった。
ブルービート収容室
「どう一夏君?少しは食べれ・・・・・あら?」
スコールが部屋に入った時最初に目が付いたのはひっくり返された盆と床に散らばった食事だった。部屋のベッドではブルービートが毛布をかぶって隠れていた。
「まだ・・・・私達のことが信じられない?」
スコールは隠れているブルービートに声を掛ける。
「・・・・・・・」
「貴方に話したいことがあるの。少し付き合ってくれない?」
「・・・・・このISを解いて殺すためにか?」
「いいえ、それよりももっと大事なこと。」
「?」
「来て。」
スコールの優しくかける声に反応したのかブルービートは自然に動いた。
ロビー
「・・・・・・・」
「そんなにここがどこなのか気になる?」
スコールは周りをチラチラ見ているブルービートに気づいて言う。
「・・・・ここって日本だよな?」
「ええ、そうよ。」
「どうして俺を助けたんだ?」
「貴方を必要としている人がいるからよ。」
「?」
「さあ、着いたわ。」
ブルービートは近くに会ったソファに座らせられる。
「マドカ、いらっしゃい。」
スコールが声を掛けると一夏と大体同じぐらいの歳の少女が歩いてくる。その少女の姿を見てブルービートは驚く。
「ち、千冬姉!?」
「・・・・・」
ブルービートの言葉にマドカは少し悲しそうな顔になる。しかし、確かにブルービートにとっては姉の千冬によく似ていた。
「この子は私の娘のマドカ。マドカ・ミューゼル。でもね、本当はあなたの一つ年下の妹なのよ。」
「い、妹!?」
ブルービートの頭は混乱する。
「う、嘘をつくな!俺に妹はいない!両親もだ!俺の家族は千冬姉だけだ!今までそう言われてきた!そして・・・・・今は一人だ。」
「そう思われてもしょうがないわね。でも、これを見てちょうだい。」
スコールは封筒をブルービートに渡す。彼は封筒を開けると中には自分とマドカの血液及びDNAのデータの書類が入っており、明らかに二人は兄妹だということを現していた。
「一体全体どうなっているんだ?」
ブルービートは跪きながら言う。
「この子はね、両親があなたたち姉弟を置いて行ったとき唯一連れて行った妹なの。」
スコールの言葉をブルービートは今でも信じられなかった。姉は自分に嘘をついていたのか?そう思うと今まで知らなかったことが恐ろしくなる。そんなブルービートに追い打ちをかけるようにスコールは言葉を続ける。
「でもね、あなたたちの両親はそのすぐ亡くなったの。残されたマドカはそれからずっと寂しく生きてきたのよ。私が養子として引き取ったのもその2年後。今は家族のようになっているけどあの頃はあなたと同じく誰にも心を開いていなかったのよ。」
「し、死んだ?いなくなった父さんと母さんが?」
マドカは一冊のボロボロの日記をブルービートに渡す。名前は汚れで読めなかったが「織斑」と言うのは何とか読み取れた。彼は日記を開いてみて見る。内容は血と汚れで読めない部分があったが何とかわかるレベルだった。
「〇月✖日、どうしても一夏と千冬を残して行かなければなさそうだ。〇子とも話し合ったがやはり置いて行かなければ大変なことに巻き込まれる。苦渋の決断でマドカだけは連れていくことにした。すまない、一夏、千冬。」
「□月△日、どうにかグルと合流することができた。彼にIAの設計図とマドカを託すことにする。もう時間があまりない。」
「✖月〇日、昨日の奇襲で〇子が死んだ。私の傷も日々悪化してどうやら限界のようだ。最近、千冬が私達を憎んでいる顔が毎回夢の中で出てくる。私の研究がジャマールに感ずかなければ今頃、家族みんなで暮らすことができたのかもしれない。だが私は後悔していない。私が死んでも子供たちは生きているのだから。千冬はしっかり者だからきっと一夏を守ってくれているはずだ。この日記を読んでくれた者に頼みたい。一刻も早くこの日記に残しているジャマールの情報を世界に公表してくれ。奴らが本格的に攻めてくる時はおそらく・・・・・・」
日記はそこで途切れており、残りのページには血が付いていた。
「どういうことだよ・・・・・父さんと母さんは俺たち姉弟を捨てて行ったんじゃないのかよ・・・・それになんだよ?IAって?」
「お前が着ているそのISのことじゃ。」
「!?」
一夏はいつの間にか目の前に現れたグルに驚く。
「儂がお前たち姉弟の父、織斑にIAの開発を頼んだ。」
「なぜ・・・・なんでだよ・・・」
「当時、地質学者でありながら科学者でもあった彼だけが儂の言葉を信じてくれた。だから彼に頼むしかなかった・・・・」
「ふざけるな!」
ブルービートはグルを両手で掴む。
「返せよ!父さんと母さんを。大事な家族の時間を・・・・返せよ!」
「・・・・すまぬ。」
グルは目を閉じたままただ謝るしかなかった。ブルービートは思わず彼を殴ろうとする。
「やめて!」
そこへマドカが間に割って入ってグルを庇う。
「そこを退け!」
「いや!お兄ちゃんはお父さんが何のためにそれを残したのか分かっているの?」
「でも・・・」
「私もお父さんとお母さん・・・・そして、お兄ちゃん達と離れ離れにされたことは悲しかった。でも、ここでグルを殺したんじゃお父さんも浮かばれないよ。」
「マドカ・・・・・」
このときブルービートは初めて妹の名を呼んだ。
「もう、一人になりたくない。だから・・・・」
マドカはブルービートに抱きしめる。
「復讐とかそんなことはしないで。」
ブルービートは重甲を解き、一夏の姿に戻る。
「う、うわああああああ!!!」
思いっきり泣いた。
捨てられたと思っていた両親の本当のことを知らされてその日は思いっきり泣いた。
ただひたすら・・・・・
そして、その光景を物陰から見ていたオータムは思わず泣きまくっていた。
三日後 コスモアカデミア 会長室
「それじゃあ、本当にいいのね?」
スコールは一夏の顔を見ながら言う。
「はい、今日から俺は織斑一夏と言う名前を捨てます。」
「おうおう、随分大きく出たな?」
スコールの隣ではオータムが感心そうに言う。
「俺は今まで千冬姉に守られてばかりいた。でも、自分はもうたくさんだ!だから俺は今日から新しい自分として一人の妹を守りたい。」
「その覚悟は本物ね?」
一夏は黙って頷く。
「いいわ、では今日からのあなたの名前はタクヤ・ミューゼル。私の息子であり、マドカのお兄さん。そして・・・・」
スコールの前にいるグルが一夏にカブトムシの形状をした機器を渡す。
「このビーコマンダーを使い、重甲ビーファイター『ブルービート』として、これから先に現れる敵ジャマールに立ち向かうのだ。」
「重甲ビーファイター・・・・」
一夏はビーコマンダーを見つめる。ビーコマンダーは青い光を発していた。
「父さんが残してくれたこれを使って俺は・・・・・変わる。織斑一夏ではなくタクヤ・ミューゼルとして。」
一夏、タクヤはビーコマンダーを掲げる。ビーコマンダーは翼部分を展開し、青い光と発する。
「重甲!」
タクヤの体に青い装甲が装着されていき、一人の戦士へと変えていく。
「おお、カッコよく決めるね~。」
オータムは感心そうに言う。
「お兄ちゃん・・・」
兄の重甲を見つめるマドカ。
「後の二機も完成を急がせないといけないわね。」
ブルービートを見ながら考えるスコール。
「今、ここに新たな戦士が生まれた・・・」
グルは満足そうにその姿を見た。
今ここに一人の少年が青い戦士として生まれ変わった。
この話のキャラ
マドカ
ここではスコールの養子で原作や他の作品よりも口調が子供っぽい。
織斑両親
実はグルと知り合い?既に故人として設定しました。スコールが開発したインセクトアーマーの基礎設計を築き上げる。
こんな感じで次回があれば・・・・いいけど(;´・ω・)。