それでは本編をどうぞ!
『メェエエエエエ!!』
「今のはもしかして!?」
「アルパカの鳴き声だよな……多分」
玄関口から校舎の外に出て、アルパカ小屋の方へ歩き始めたら突然、大音量のアルパカの鳴き声が聞こえてきた。その音量は、ここで飼育されている2匹のアルパカには到底出せないような大きさのものだった。
『メェエエエエエ!!!』
「声が近づいてきているな、間違いなく次の幽霊はアルパカ小屋にいるはずだ。急ごう」
確信が持てた。これは幽霊の仕業だ……しかもアルパカの!!
~音ノ木坂学院七不思議 CASE5:アルパカ幽霊……?~
「着いたね、アルパカ小屋だよ」
「さっきまで鳴いていたのに突然止まりましたね」
海未の言った通り、ここに来る直前までずっと鳴き続けていたアルパカの鳴き声が急にピタッと止まったのだ。一体なぜなのか?
考えても仕方ないか。とりあえず、ここら辺を少し調べてみて幽霊に関する手がかりを何か探したほうが良いかもしれない。
4人で同じところを探したら時間がもったいないから、2手に分かれて調べることにした。チームと担当場所は俺とことりがアルパカ小屋の右側を、海未と穂乃果は左側を捜索することになった。
「徹くんってさ、好きな人とかいないの?」
手がかりを探しているときに、South Little Birdが状況に全くあっていない謎の発言をしてきた。
「急にどうしたんだ?恋愛相談を俺にするのは間違ってるぞ。なんせ恋愛ビギナーだからな!!」
自慢ではないが、俺は生まれてこの方恋愛という名のものに深く関わったことがない。せいぜい中学の頃に友達の恋を応援したぐらいだ。不思議なものだろ?どっかのライトノベルの主人公みたいな話だが、実際にも僅かながらいるんだぜ。
「恋愛相談じゃなくて純粋に気になっただけだよ。いるの?それともいないの?」
「いや、今はいないけど俺の好きな人なんて聞いてもつまんないだろ」
「そんなことないよ~女の子は恋愛に興味津々なんですからっ!」
「ふ~ん、そっか。じゃあ好きな人が出来たらことりに教えてやるよ」
「ほんとっ?約束だよ?」
その後も手がかりを探したが、何一つ成果を得ることが出来ずに穂乃果たちが調べている左側に行くことになった。
『メェエエエエエ!!!!』
「海未ちゃんそっち行ったよ!」
「任せてください!」
さっきまで聞こえていたアルパカの鳴き声が再び俺の耳に届いた。それに加えて穂乃果と海未の声もした。2人とも無事なようでひとまず安心した。
「ああっ逃げられてしまいました……」
「おい!何があったんだ?」
「アルパカ!アルパカを見つけたの!」
「アルパカならそこに2匹ともいるよ?」
ことりがアルパカ小屋に指をさすと、この学校で飼っている白色のアルパカと茶色のアルパカの二頭がぐっすりと眠っている姿が見える。それじゃあ、穂乃果と海未が見つけたアルパカは一体……?
「うんうん違うの、暗くてよく見えなかったんだけどあれは白でも茶色でもなかった!」
「じゃあ、その色違いアルパカが幽霊か、確かグラウンドの方に走ってたように見えたんだけど」
「ええ、私が目で追った限りではそっちの方で間違いないかと」
「よ~~しグラウンドに行くぞ~!」
~*~
グラウンドに着いた俺たちは早速作戦を開始した。作戦は至って単純で、4方向からアルパカにじりじりと近づいて行く作戦だ。バランスを考え俺と海未、穂乃果とことりが対角線上になるような配置になった。
それぞれの情報を共有しあうために今はトークアプリのグループ通話を使い、話しながらアルパカに近づいている。
「こちら、T。ターゲットに動きはなし」
「Hも同じです」
「Kもです」
「もう、遊ばないでください。徹、穂乃果、ことり」
「U!そっちの状況はどうなんだ!」
「ええ……しょうがないですね。こちらU、異常ありません」
スパイの無線みたいな感じで遊びながら、アルパカに近づいていく。アルパカが気付いている様子はなく、残り10mの距離まで接近することが出来た。そこで、初めてアルパカの姿がくっきりと映し出された。
学校で飼っているのより二回りぐらい大きいサイズ、鋭く迫力あふれる目つき、黒い毛並み、上下に揺れる尻尾。
……あ゛っ!?尻尾だと!?
周りが暗いから自分の見間違いだ。と心の中で願いながら、10m先にいる動物をもう一度確認してみる。学校で飼っているのより二回りぐらい大きいサイズ、鋭く迫力あふれる目つき、黒い毛並み、そして上下に揺れる尻尾……
「こちら、T。大変だみんな、あれはアルパカじゃない……馬だ!」
「「「馬!?」」」
「どうやらアルパカの幽霊じゃなくて近くの動物園から逃げ出してきた馬だな」
そう、つい最近の事だ。今そこにいる馬と同じ特徴の馬が動物園から脱走したというニュースがあった。まさかここに逃げているとはな……。
「それなら、あの馬はどうするのですか?七不思議じゃない以上今回の件とは無関係になりますが」
「動物園まで届けるとか!」
「いや、この時間じゃ無理だろ」
「しかも外に出れないもんね……」
「とりあえず七不思議を解決するのが先決だ。アルパカ幽霊はいないみたいだし、残りは2体になったな」
「1体はどこにいるかわからないので弓道場の方を調べに行きましょう」
~音ノ木坂学院七不思議 CASE5:アルパカ幽霊……?:END~
グラウンドを後にした俺たちは、海未がアイドル研究部と兼任して所属している弓道部が、いつも練習に使っている弓道場に足を踏み入れた。
弓道場だけは他の建物とは違って木造製になっている。どうやら、この学校が開校した当初からある歴史のある建物らしい。耐久性大丈夫なのか?
扉を開けると弓が10個掛けてあった。どれも綺麗に手入れされており弓道部の優しさが伝わってくる。
「……おかしいですね」
「どうしたの海未ちゃん?」
「ここの弓道場にはいつも弓を9個掛けておいているのですが、1個多いんです」
「海未、いつも掛けてる弓はどれだ?」
「そこの……」
海未は弓をじっくりと見た後、指をさして一番右側に掛けてある弓から、左から2番目に掛けてある弓まで指を動かした。
指をさされなかったのは一番左に掛けてある弓だけだ。
「そこにある弓だけ他のに比べて古く感じます」
「確かにそう言われるとそんな感じはするな。触ってみよう」
だが、弓は自分の意思を持ったかのように華麗に動き、俺の手に触れられまいと逃げ回った。そして俺からある程度遠ざかり、空中をくるくると旋回した。
『やい!人間ども!』
「え、どこからだ今の声」
『こ!こ!だ!弓からだよ!』
~音ノ木坂学院七不思議 CASE6:幽霊歴30年の弓~
「うわ!?弓がしゃべってるよ!!」
『そんなにひかないでくれ……』
まさか、弓が喋りだすとは……。人形とかならまだしも弓が喋るってどういうことだよ。しかも感情豊かだなコイツ。
『あれは……5年前の事だった』
「聞いてねぇよ!!」
『聞いてくれよ~おれっちの悲しい過去をよぉ~』
「嫌だよ、興味ないし」
『そこをなんとかしてくれよぉ~30年ぶりに人と話せて嬉しいんだ』
「30年!?それって穂乃果のお母さんがここに通ってたぐらいの時のこと!?」
……驚いた。30年前にもいたのか、幽霊の中ではベテランの方じゃないですか。知らないけど。
「わかったよ、話を聞いてやる。馬鹿もいるからわかりやすく頼むぞ」
「あれ?穂乃果さらっと悪口言われたよ?」
『ありがてぇ、それじゃあ話すな』
幽霊は語りだした。自分に起きたことを、30年前から幽霊になった理由も、自分の成仏の仕方も。
『これでおれっちの話は終わりだ』
「お前はあと一度だけ矢を放てたら成仏するんだろ?」
『そうだよ、さっきも言っただろ?』
「海未、出番だぞ。こいつの願いを叶えて成仏させてやろう」
「そう来ると思いました。すでに心の準備は整っています」
『……本当か?本当に成仏させてくれるのか?』
海未が矢を1本持ちながら的に体を向ける、それを信じるかのように弓は海未に近づいていく。そして矢を弓の弦につがえ構え始めた。今の海未の集中力がピリピリと肌に伝わってくる、凄まじい集中力だ、隣にいる穂乃果とことりも海未の集中力に驚愕している。
そしてついに矢が的の中心を狙うように放たれた。真っ直ぐためらわずに飛んで行ったそれは見事に的の中心に突き刺さった。その直後、弓が光りはじめた。どうやら成仏する時が来たらしい。
『まさか30年経って成仏できるとはな……ありがとう、お前たちのおかげだよ。お礼と言っては何だが、おれっちからこの弓に幽霊を強制的に成仏させる力を入れといた。これは人間に矢を放っても効果がないけど幽霊に矢を放ったら効果が出るぞ。まだ1体倒してないんだろう?これを使ってくれよな。それじゃ!』
~音ノ木坂学院七不思議 CASE6:幽霊歴30年の弓:END~
「…………海未、その弓貸してくれ」
「ええ、どうぞ?」
幽霊がいないのに、「弓を貸してほしい」と言った俺に疑問があるのか困惑した目で海未と穂乃果に見られた。その目をするのは間違ってるぞ海未、穂乃果。俺の予想が正しければここに幽霊がもう1体いるんだからな!
「ことりを返してもらおうか」
そう言い、俺は矢をつがえことりに向けていつでも放てるようにした。
~音ノ木坂学院七不思議 CASE7:人を乗っ取るもの~
「何を言ってるの徹くん?私がことりだよ?」
「いや、違うね。お前は俺が図書室の幽霊と、海未と穂乃果が家庭科室の幽霊と対峙していた時にことりの身体を乗っ取った。違うか?」
「はぁ~~~~ばれちゃったら仕方ない。そうだよ、私はあなたたちが探している最後の幽霊。あなたたちのそばで監視してた」
「保健室の幽霊をやったのもお前だろ?」
「その通り!保健室の幽霊はあなたたちじゃ倒せないから私が倒しといてあげました!」
「な、なんで?味方じゃないの?」
今まで驚いてて言葉を発していなかった穂乃果が、ことりの姿をした幽霊に尋ねた。
「だって暇だし、私があなたたちと遊びたいしね。邪魔者には消えてもらおうかと」
「酷いですね、自分の仲間でしょうに」
「でも、そのおかげであなたたちは助かった。違う?」
「……確かにそのとおりです」
「だけど今の状況じゃあねぇ~、私が動いたら即射貫くでしょ?」
「当たり前だ。ことりの外見をしてようが容赦しないぞ」
圧倒的にこっちが有利なこの状況でもことりに取り憑いたやつは、不敵な笑みを浮かべクスッと笑った。すると、さっきまで俺の目の前にいたやつは全速力で弓道場を飛び出し駆け出して行った。そこのチャンスを逃がすわけがなく矢を放った。だが、放った矢はギリギリで躱されてしまい虚しく空を切った。
「どっち行った!?」
「こっちの方だよ!ってうわぁ!!さっきのお馬さん!?」
『メェエエエエエ!!』
まさか俺に乗れってことか?そういう事なら遠慮なく乗らせてもらうぞ。
すでに備わっている鞍に飛び乗り、2本の手綱をしっかりと握り、馬に全速力で走るように足の横で鞍の側面を叩き合図を出す。黒馬のスピードは相当速く、幽霊の姿がすぐに確認できた。そのまま並走に持ち込み、矢をつがえる。流鏑馬なんてやったことがないから当たる気はしないけどな!!
「これで成仏……しろ!」
放った矢はさっきとは違い、躱されずに幽霊に刺さった。刺された幽霊は輝き始め成仏していった。
~音ノ木坂学院七不思議 CASE7:人を乗っ取るもの:END~
「う~ん?ここは~?」
「あ!ことりちゃん目が覚めた!よかった~」
「穂乃果ちゃ~ん苦しいよ~」
ことりが目を覚ますと、穂乃果が安心のあまりことりに抱きついた。ちゃんとあの幽霊は成仏したようだ。
「ではことりも起きたことですし帰りましょうか」
「そうだな、もう全部終わったしな。人生で一番濃い3時間だった気がするよ」
「ええ、もう一生体験したくありませんね」
「でもいい夏休みの思い出になったよね!!」
「そういえば穂乃果、宿題は終わったのですか?」
「はっ!忘れてた!」
「穂乃果ちゃんにとっては幽霊さんより宿題の方が怖いんだね♪」
「うわ~~~ん!誰か助けてよ~~~!!」
穂乃果のむなしい叫びだけが夜の学校に響き渡った。
終わりました。七不思議編!9月の穂む弟子はずっとこれでしたね(笑)
次の更新は99%の確率で10月になります。
そろそろ恋愛に決着をつけるときかなと勝手に考えています。
twitter始めました!執筆状況などつぶやきます。
https://twitter.com/toranakaku
それではまた!