Fate/魚強エクストラ 作:( ∴)〈名前を入れてください
悪魔とは闇の中に住み、人々を畏れによって戒める存在である。By.閣下
「馬鹿な…こんな事があってたまるものか……」
足がすくみ身体中から冷や汗が吹き出す。目の前の現実から必死に目を逸らそうとしても現実は残酷な現状をただ視界の中に映し出す。
いっそ目を閉じれば良いのだろうか?いや、それだけでは鼻から感じるこの刺激臭から逃れる事は出来ない。
「美味しいよ?」
「あっ…あぁ……俺はイワシがあれば良い。だからコレは遠慮させて」
小娘が進めてくるのは、職場で良く見る地獄の釜の中を更に煮詰めたような…赤くグツグツと煮え滾るマグマのような色をしている食べ物、これを食べれば口の中は煉獄の炎に包まれて焼き尽くされるさっき体験したのだから間違いない。
これは俺が食した物のどれよりも凶悪で最悪な食べ物だ。
「食べないの?」
おどろおどろしい赤色の中に白骨化した骨の様な色のした物が浮き出ているこの物体を一体誰が好き好んで食べたいと思うのだろうか。これを食べたいと思うものは魔界でもそうはいない筈だ。寧ろ下級悪魔共に食べされば鍛錬の一つにでもなるのではないか?
イワシ…あぁイワシ。幾らお前の力だろうとも、このこの世の全ての地獄を詰め込んだコレには対処のしようが無い
「美味しいのに…」
そう言いながらその物体を食べる岸波。見るだけで目を悪くしそうな赤い物体を口に入れ食べる姿は本人の普通過ぎる雰囲気と比べて余りにも異常であった。
「…まぁ俺にはイワシがあるから別に良いが」
「だったらイワシに付けて食べたら良いんじゃないかな!」
そう言うとヴァルバトーゼの手に握られているイワシにその物体を掛けようとするがヴァルバトーゼがそれを全力で拒否するかの如く身体を捩らせる
「やめろ!それはイワシ…いや食べ物への冒涜だぞ!」
「麻婆豆腐だってれっきとした食べ物だよ!」
そう、麻婆豆腐。麻婆豆腐なのだ。だがこの麻婆豆腐はただの麻婆豆腐では無い。風の噂ではかの英雄王ですらこれを食べるのを拒んだと何処かで噂される曰く付きの食べ物なのだ。
その辛さは聖杯の泥すらも凌駕する苦痛を食べてるものに与えるのだが(作者の適当な考察)
岸波白野、これを全く辛くなさそうに食す。寧ろ美味しそうに食べており食堂にいる他の人達をドン引きさせている。
エッアレタベテルノ…?ヤバクネナンカアカイヲリョウガシテルンダケドアレ…アノマスターガタベテルンダカラクエルモンナンダロオレモタベルゾ!!
グワーッ!メガッシタガハナガァァァッ!ダレダタベタバカハ!ホケンシツ!ホケンシツ!ニツレテイケ!
「それは食べ物では無い!拷問用の道具だ!」と言いたくなるが周りにいるマスターと呼ばれる者達がコッチを見てくるのでグッと堪える。と言うか周りの者達もお前のその物体を食べてる姿に驚愕してるではないか。
と言うか誰だこれを食べた命知らずは
「美味しー!」
「お前が良いのならば良いのではないか?だから俺にそれを食わせようとするな!近付けられるだけで目に染みる!」
グイグイとよそった麻婆豆腐をヴァルバトーゼに近付けられる岸波、そしてそれから逃れようと横に傾くヴァルバトーゼ今2人は正面に向き合って食事を取っている。正面から感じる麻婆豆腐の刺激臭にヴァルバトーゼはダメージを負う
「皆さん、ごきげんよう」
そんな彼等の姿を他の人達は見つめていたが急にその人の群れはざわめきと共にまるでモーゼの奇跡のように二つに分かれていく。
「レオナルドビスタリオハーウェイ…ッ!」
「嘘だろ…アイツもこの戦争に参加していたのか」
「まさかあのハーウェイ自らこの戦争に参加してくるとは……」
「優勝候補その一って所か……」
「まぁ最後に勝つんわこの俺や。誰がいようとなんら問題は無い」
「支配者自らこの戦争に参加してくるとは…西欧財団は本気みたいだな」
そんな彼等のざわめきと共に二人の元にサーヴァントと思われる白き騎士と共に1人の少年が現れる。白き騎士は少年の後ろに従者の如く付き従っており、純白の鎧とその付き従う姿だけで生前高名な騎士なのだったのだろうと分かる。
「あの時ぶりですね、予選を無事突破出来たようで何よりです…って何を食べてるんですか?」
「あー…食べる?」
「いりませんよ……そんな刺激臭だけで目が痛くなるシロモノ」
「美味しいんだけどなー」
そう言いながら麻婆豆腐を口に入れる姿に少し苦笑いを見せ、ハーウェイと呼ばれた少年は岸波に話し掛ける。
「ちゃんとした自己紹介がまだでしたね。僕の名前はレオナルドビスタリオハーウェイ。気軽にレオとでも呼んでください」
「えーっと…私の名前は岸波白野デス。友好の証に1口」
「それを友好の証に渡されたら全面戦争不可避ですね」
ニコリと良い笑顔でそう言い切るレオに岸波は差し出していた物を残念そうな顔をして手元に戻す。レオが岸波の前に座っているヴァルバトーゼに目を向けると驚いたように話し掛ける
「…貴方は彼女のサーヴァントですか?」
「…小僧。その言葉は俺に対して言っているのか?」
サーヴァントの言葉にピクリと反応したヴァルバトーゼがレオをじっと見詰める。まるで何かを見定めるように
「我が主を小僧呼ばわりするのは止めて貰おうか」
「ふん、小僧に小僧と言って何が悪い」
白き騎士がヴァルバトーゼに言葉を投げかけるもその言葉は一蹴され、お互いの空気が悪くなっていく
「止めなさいガウェイン。いきなり聞いた僕が悪いのです、下がりなさい」
レオの言葉にスッと下がるガウェインと呼ばれた白き騎士、その姿に興味を失ったようにヴァルバトーゼは先程食堂で入手したイワシを食べる事に専念し始める
「ごめん、ヴァルバトーゼが」
「…いえ、気にしていませんよ。ガウェイン紹介を」
「従者のガウェインと申します。以後お見知りおきを。どうか貴女が我が主の良き好敵手であらんことを」
「あっ…はい。頑張ります」
白き騎士がガウェインと名乗った瞬間周りの者達がざわめく。円卓の騎士。太陽の騎士の言葉が岸波の耳に届いてくる
「…………」
「どうしました?ガウェインの顔に何か」
「小僧。一つだけ言っておいてやる」
いつの間にか食べるのを止めてガウェインをじっと見つめるヴァルバトーゼにレオが不思議そうに尋ねる
「お前は間違いなく生き残る事は出来ん。『お前達』がそのままでいるならばお前は最後の最後で敗北するだろう」
「…御忠告、有り難く受取らせて頂きます。ではまたお会いしましょう」
ヴァルバトーゼの言葉にそう返事をするとレオはガウェインを引連れてまた戻っていく。そうして彼等の姿が見えなくなった後食堂に先程までの和やかな雰囲気が戻る
「柄にも無く言ってしまったか」
「ねぇ何でレオ達が最後に負けるだなんて言ったの?」
「お前はアイツを見てどう思った?」
ヴァルバトーゼの言葉に先程までの二人の姿を思い出す。まるで何処かの王子様のように優れた容姿に余裕のある立ち振る舞い、そしてそれに付き従う従者と言うのが頭の中でよぎる
「えーっと…王子様とその従者かな?」
「クックックッ…確かにそんな感じだったな」
「むー。教えてよー!」
「(フェンリッヒ。やはりお前は素晴らしい従者だ、主に苦言を呈する事の出来るお前は従者の鏡と呼べるだろう)」
地獄でアタフタしているであろう従者を思い出す。すまんがそっちに戻るのはまだまだ先になりそうだ。俺がいない間のプリニー達の教育は任せるぞ
「そろそろ食べ終わっただろう?動き始めるとするか」
「待って!ちょっとオカワリしたいんだけど…良い?」
「アレをもう一杯食べるだと……ッ!?」
俺はこの小娘と共にこの戦いを生き残こらなければならんからな。
今日の地獄
「あぁぁぁぁぁぁ!閣下!閣下ァァァッ!」
「まーた始まったッス」
「これで今日何回目ッスかね。まぁヴァルバトーゼ閣下がいないのは俺達も寂しいッスけど」
「ずっとご寝室でお眠りになられてるらしいッスからね…心配ッス」
「喧しい!無駄口を叩く前にとっとと今日の分のノルマを終わらせろ!俺は閣下の容態を見に行かねばならんのだ!」
「「了解しましたッス!」」