その男、八幡につき。   作:Ciels

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目の保養地帯

 

 

 

 

 

 

 飯を食い、林間学校参加者は近くの小川へと移動する。

朝から怠いなぁなんて思っていたが、材木座曰くどうやらみんな水着に着替えるそうなので、男子としてはそうは言ってられない。

美人の雪ノ下や由比ヶ浜の水着は勿論だが、小町と彩加の水着まで見れるんなら頼まれなくても行ってやる。

 

ちなみに俺は水着を持ってきていないので、いつもの格好で川に石を投げて時間を潰していた。

 

 

「まだっすかね~」

 

 

ちゃっかり水着を着て女子たちを待つ材木座が若干イライラしながら呟く。

この野郎この十分でもう30回くらいは同じことを言っている気がする。

まぁ気持ちは分からんでもない。暑いし待たされるわで、俺もちょっとストレスが溜まっていた。

 

ちらりと横を見ると、奥で葉山と戸部が小学生男児たちと遊んでいる。

よくもまぁこんな何もない川で遊べるなぁあの野郎ども。

いい笑顔しやがってこの野郎。

募ったイライラを真横の材木座へとぶつけた。

 

 

「痛いっすよ!何なんすかもう!」

 

 

「ガタガタ言ってんじゃねぇよ馬鹿野郎」

 

 

こいつの頭引っ叩いたら余計暑くなってしょうがないよもう。

 

ふと、小学生の女子グループたちを覗き見る。

彼女らは皆、持ってきたビーチボールを使って楽しそうに遊んでいた。

 

留美を除いて。

彼女だけ、日陰に座って同級生が遊ぶ姿を眺めていた。

希望もなく、絶望もないその瞳は死んだ魚のような目をしている……まるで昔の俺を見ているみたいでどこか居心地が悪い。

 

 

「ちょっと兄貴、なに小学生の事変な目で見てんすか」

 

 

「なんだてめぇこの野郎、てめぇ喧嘩売ってんのか!」

 

 

再度材木座を引っ叩く。

今度は腹を叩くと、パチーンと心地よい音が響いた。

これでプラスマイナスゼロ……にはならないか。

 

はぁ~、と大きくため息をついてしまう。

やっぱり俺たちで介入して解決するしかないのだろうか。

 

 

 

「はちま~ん!」

 

 

と、悩める俺を天使が遠くで呼んでいる。

材木座と同じような動作でそちらを向く。

 

なんとそこには、手を振ってこちらへ駆け寄る水着の彩加の姿が。

てっきりこういうシチュエーションだと男の娘は期待しているような事にはならないのが世の常だ。トランクス型の水着の上からパーカーを着ていたり、水着を忘れたり……

 

だが、彩加は違う。

そんな的外れな男の娘ではない。

 

 

「えへへ、どう、かな?」

 

 

顔を赤らめて俯き、上目遣いをする彩加。

俺は満面の笑みでそれを迎えた。

上は白いビキニに下は薄い青のパレオで象さんを隠す有能スタイル。

頭には花飾りで、可憐な少女を演出している。男だけど。

 

俺の象さんまで目立ってしょうがないよ馬鹿野郎。

 

 

「似合ってるよ~!肌綺麗だなぁ!なぁ材木座!」

 

 

「え、ええ……そうっすね」

 

 

なぜか彩加から目を逸らす材木座。

照れているとかではなく、なぜか苦手といったような顔をしている。

 

 

「そっか、照れるな」

 

 

もじもじして赤面する彩加。

そんな彩加の剥き出しの肩を撫でる。

 

 

「ほんとすべすべだなぁ、ん?何、剃ってんの?」

 

 

「え、ん、僕、元から薄いから……」

 

 

「あぁそう。これいいな、病みつきになるよ」

 

 

背中も撫でる。

これがキャバクラなら出禁になっているに違いないが、俺の彩加はそんな事しない。

断言できる。

これじゃあ上原の事言えねぇなぁ俺。

 

しばらく夢中になって撫でていると、

 

 

「うっわお兄ちゃんセクハラは無いわ」

 

 

愛しの妹の蔑んだ声が聞こえた。

 

 

「おう小町、可愛いよ」

 

 

そう言いつつも手は止めない。

なんだか彩加の息が荒くなっている気がするが気のせいだろう。

だがまぁ、小町の水着は言葉通りだ。

ちょっと子供らしい水着は可愛いの一言に尽きる。

去年も見た気がするけども。

 

 

「ヒッキーマジキモイ」

 

 

ドストレートな罵倒を浴びせるのは由比ヶ浜。

こいつもこいつで結構なもんを持っていて、ビキニの水着がそれをより強調している。

デカいなぁ、小町の三倍以上あんじゃねぇのか?

 

 

「でっかいなぁ」

 

 

「ちょ、どこ見てるし!」

 

 

胸をまじまじと見ながら感想を述べると、由比ヶ浜は胸元を隠す。

 

 

「下品にもほどがあるわよ性犯罪者君」

 

 

名前の原型すら残っていない呼び名で呼ぶのは雪ノ下。

いつも制服をきっちりと着こなしているガードの固い雪ノ下は、水着までガードが固かった。

水着の上から大きいパレオのようなものを着ているため、確かに透き通るような肌はいつもよりはっきり見えるがあまりエロくない。

むしろパレオがポケモンのパルシェンに見えて仕方ない。

 

 

「お前は……あぁ、うん」

 

 

胸を見て、目を逸らす。

完璧美少女にも欠点はあるようで安心したが、同時に悲しくなる。

姉ちゃんはでけぇのに残念なこったなぁ。

 

 

「なにかしら、その言い方は」

 

 

俺が思わんとしている事に気が付かない雪ノ下は首を傾げる。

可愛いよ、可愛いからよ、そんな気に病むなよ。

 

 

 


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