Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち?   作:黒猫ノ月

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どうもです。

Bクラス戦開始!

では、投稿です。



第9話

地獄の昼食を死屍累々ではあったが、乗り越えた僕達。その後、伊御と島田さんが買ってきてくれた購買の残りパン(半額)を皆で食べながら軽くこれからの方針を話し合った。伊御の優しさに僕達は咽び泣いたよ。

 

雄二が言うには、僕達はどう足掻いても正攻法ではAクラスには勝てないらしい。だからBクラスを倒して、そのBクラスに設備を取り替えないことを条件にAクラスに攻め込むよう交渉する。そしてAクラスには僕達がBクラスとの勝負の後に攻め込むぞって交渉する。そうすることで僕達に有利な一騎打ちに持ち込むのが雄二の策だ。

 

一騎打ちならば姫路さんに伊御、御庭さんがいるから、勝率はかなり高くなる。さすが雄二だ。こういうことに関しては頭の回転が早い。

 

そして問題のBクラスへの宣戦布告なんだけど……。予想通り、雄二が僕に行かせようとした。そう何度も騙されるものかっ! と拒否したのだけど、雄二の卑劣な罠に掛かり結局僕が行く羽目に。

 

そんな時、伊御が自分が行くと言いだした。どうやら、まだDクラスの宣戦布告に僕を行かせたことを悔やんでいたらしい。伊御、君はほんとにお人好しが過ぎるよ! ただでさえ今日だけでも大変迷惑をかけてるのに、伊御に行かせる? ……行かせるわけがないだろっ!

 

と、いうわけで伊御が行く前に僕が屋上から全速力でBクラスに宣戦布告をしに行った。予想通り、僕を集団リンチしようとしたけど……ナメるなッ! 今の僕には聖人(伊御)の加護が付いてるんだ! 貴様ら程度が僕の彼への信仰心を下せると思うなっ!!

 

そんな死闘を乗り越えた僕は加護のおかげで被害は軽微、相手を思わぬ反撃で苦しませることに成功した。……午後のテストは力尽きてしまったけど。

 

そして、僕達は翌日のお昼からBクラスと試召戦争を行うこととなった。

 

 

 

●○●○●○●○●○

 

 

 

翌日、Fクラスにて。

 

「さて皆、総合科目テストご苦労だった」

 

教壇に立った雄二が皆を見渡しながら、話し始めた。

 

「午後からBクラス戦を開始する訳だが……殺る気は十分か?」

 

「「「「「おおーっ!」」」」」

 

「今回の戦争は敵を教室に押し込めることが重要になる。その為、開戦直後の渡り廊下戦は絶対に負けられない。そこで……」

 

雄二は隣にいる伊御と御庭さんに視線を向け、それを受けた2人は一歩前に出た。

 

「伊御と御庭。この2人を先鋒として渡り廊下を駆け抜けてもらう! 2人とも、遠慮なく屠ってこい!」

 

「了解」

 

「ん」

 

「2人には迅速に渡り廊下戦を行ってもらう為、敵が溢れる可能性が高い。なので2人の後追いとして、姫路が指揮する部隊に残りを殲滅してもらう。野郎ども、きっちり死んで来い!」

 

「が、頑張りますっ」

 

「「「「「うおぉぉーー!!」」」」」

 

雄二の言葉に、一歩前に出てむんっと気合いを入れる姫路さん。そしてそんな姫路さんと前線で戦える皆の士気は最高潮に達していた。

 

今回は伊御と御庭さん、姫路さんによる初っ端からの全力戦だ。その為、姫路さんの部隊にFクラスの殆どをつぎ込む。取り零した敵を確実に包囲し殲滅することで、教室に押し込めた後の戦を有利にする作戦だ。

 

キーンコーンカーンコーン

 

昼休み終了のベルが鳴り響く。これでいよいよBクラス戦開始だ。

 

「よし、行って来い! 目指すはシステムデスクだ!」

 

「「「「「サー、イエッサー!!」」」」」

 

「それじゃ、行こうか。つみき」(ぽむっ

 

「ん、頑張る」(ぴこぴこ

 

「2人とも! 後ろは気にせず戦って! 僕達が背後の不意打ちなんてさせないから!」

 

「ああ。任せたよ、皆」

 

「「「「「任された!」」」」」

 

さあ、僕達の力を見せてやるぞっ! Bクラス!!

 

 

 

●○●○●○●○●○

 

 

 

俺はつみきと一緒に廊下を駆ける。俺達は孤立するし、敵の得意な科目で対決することになるけど……多分、大丈夫かな。

 

「伊御、敵発見」

 

「うん。高橋先生を連れてるね」

 

疾駆している俺達とは違い、Bクラスの面々はゆっくりとした足取りだ。けど、走ってくる俺とつみきを見て慌てだした。……ふむ、数は10人程度。やれるな。

 

「お、おい! 音無と御庭がこちらに向かってくるぞ!」

 

「焦るな! たとえAクラスレベルといえどたった2人……待て! 奴らの後方に大勢見える。奴ら、短期決戦が目的か!?」

 

「伝令! Bクラスに応援を要請して! ここで音無君と御庭さんは仕留めておきたいわ!」

 

応援はこっちも願ったり叶ったりだ。敵を押し込めるにしても、少ない方が後々やり易い。

 

「つみき、敵を無理に殺さなくてもいいよ。俺たちは皆が倒せるくらいまで削りながら突き進むのが役割だからね」

 

「うん」

 

「じゃあ……」

 

「「試獣召喚っ!」」

 

俺とつみきの声を皮切りに、Bクラス戦が開戦された。

 

 

 

●○●○●○●○●○

 

 

 

伊御と御庭さんの声に、2人の召喚獣が呼び出される。

 

伊御が呼び出した召喚獣は、黒を基調とした紅がアクセントとなっている軍服を着ていた。目元には片眼鏡、地面を踏みしめるブーツ、そして肩に羽織られた黒のロングコート。極め付けは、その手に持つ服と同じ黒と紅の長剣。……敵の血を啜りそうだ。色合いやキリッとした伊御の面差しも合わさって、いかにも『悪の帝国国軍の将軍閣下』みたいな召喚獣…………ねぇ。

 

「伊御の召喚獣カッコ良すぎない!?」

 

「いや、俺の意思とは無関係なんだが。俺はこんなイメージなのか?」

 

僕は少し遠くから伊御にツッコんだ。違うよ伊御! 普段のイメージとは真逆で召喚されたものだからインパクトが強いんだよっ! 人はそれをギャップ萌というんだ! ほら見て、隣の御庭さんが鼻を抑えてるよ。

 

そんな御庭さんの召喚獣は……あれ? ネコミミと尻尾が生えてる! 召喚獣って人の耳を尖らせたような耳なのに、御庭さんの召喚獣にはそれがない。……まさかそんなところまで如実に再現されるとは……恐るべし試験召喚システム!

 

装備は見た目通り機動重視。緑と薄紫の涼やかな色合いで、ブーツとハーフパンツに布の胸当て、裾が短めのローブを羽織ってる。武器は短剣を二本装備していて、『森を守る猫族の護り人』ってイメージかな?

 

そして表示される総合科目の点数は……。

 

総合科目

『Fクラス音無 伊御ー3118点 VS Bクラス野中 長男ー1943点』

 

総合科目

『Fクラス御庭 つみきー3562点 VS Bクラス金田一 裕子ー1895点』

 

ぶほぉっ!? ……3000越えっ!? Aクラスの平均超えてるよ!?

 

「なぁっ!? こ、こんなの勝てるわけない!」

 

「なんであんた達みたいなのがFクラスにいるのよっ!」

 

「「問答無用」」

 

そして目にも止まらぬ速さで敵を両断&三枚下ろしにする2人。強い、強すぎる!

 

それからは2人の三國無双だった。……こう、「り、りょりょ、呂布だーっ!!」って感じ。時々、召喚獣が空を舞うんだ……。でも、さすがはBクラスってことで2人の猛攻を凌ぐ奴もチラホラいる。それらを狩るのが僕らの役目だ。

 

「ゲヘヘェ。あの世に送ってやるぜお嬢さん」

「怖いでちゅね〜。ママ来まちぇんね〜」

「ヒャッハーッ! 優等生は消毒だぁ!」

「ねぇねぇ。補習室と実験台、どっちがいいかにゃ?」

 

「いやーっ!」

「た、助けてっ! 助けてマンマーっ!」

「補習室はっ、補習室は嫌だーー!?」

「お、俺は補習室だっ! 西村先生! 早く俺を補習室にっ!」

 

…………完っ璧に悪役だよね僕ら。どこの世紀末だよ。……ん? どうやらBクラスの援軍が来たみたいだ。高橋先生を下げて、古典の向井先生に入れ替えてる。得意の文系で進行を食い止めるつもりだな。

 

因みにだけど、僕達は今回先生を呼んでいない。伊御達が消耗させた人達を狩るようにするため、同じ教科でないと意味が無いからだ。

 

古典

『Fクラス音無 伊御ー225点 VS Bクラス 岩下 律子ー210点』

 

古典

『Fクラス御庭 つみきー270点 VS Bクラス菊入 真由美ー191点』

 

くっ!流石得意科目だって言うことはある。御庭さんはともかく伊御がほとんど変わらない!

 

「真由美! 2人で力を合わせましょう! そうすればあんな奴ら私達の敵じゃ無いわ!」

 

「そうね律子! 私達のコンビネーションを見せてあげるわっ!」

 

そう言って2人掛かりで伊御と御庭さんに迫る2人の召喚獣。……あの2人、もぐりだな。

 

「だって、つみき」

 

「別に、そう思わせておけばいいわ」

 

Bクラス2人の言葉を聞いた2人は自然体で迎え撃つ。まず伊御と御庭さんが左右に分かれた。

 

「律子!」

 

「ええ! 狙うはそっちの男子!」

 

点数が低い伊御を2人掛かりで狙おうと伊御に意識が行った瞬間、2人の召喚獣の背後にいる御庭さんの召喚獣。

 

「「なぁっ!?」」

 

「……飛んでけ」

 

そして1人をBクラス側に、もう1人を伊御の方に飛ばす御庭さん。伊御の方に飛んで行った召喚獣がどっち女生徒のものか知らないが……終わったな。

 

「いらっしゃい」

 

「あっ!?」

 

空中で投げ飛ばされた状態じゃ、操作に慣れてないと何も出来ない。今日初めて召喚した女生徒じゃあ待ち構える伊御に対してされるがままだ。案の定、上段切りがその女生徒を襲った。

 

古典

『Fクラス音無 伊御ー225点 VS Bクラス菊入 真由美ー0点』

 

いくら点数があろうと、致命傷は即0点だ。無抵抗に伊御の一撃を受けたんだ。当たり前の結果だった。

 

「真由美ーっ!」

 

「人の心配をしてる場合なのかしら?」

 

「えっ!? またいつの間に!?」

 

Bクラス側に飛ばされた女生徒……岩下さんが突然現れた御庭さんの召喚獣になんとか反応した。

 

「きゃあっ!」

 

「逃さない」

 

しかし、御庭さんの二刀による激しい剣戟は続く。それにギリギリ致命傷は免れるも、防御から次に移せない岩下さん。このままなら御庭さんの勝利だ。

 

古典

『Fクラス御庭 つみきー270点 VS Bクラス岩下 律子ー93点』

 

岩下さんの点数が3桁を切った。このままなら押し切れる。けど……。

 

「こぉんのおっ!!」

 

「!」

 

焦れた岩下さんが、傷を負いながらも御庭さんを弾き飛ばした。肉を切って骨を断つ……とまではいかないけど、生きてれば負けじゃ無い。

 

「くっ! ここは一度撤退してっ……」

 

「させないよ」

 

「なあっ!?」

 

かなり離れていた伊御がいつの間にかすぐそばに来ていた。まあ、伊御が近づく時間はあったからね。

 

それにしてもあの岩下さんって中々やるなぁ。今の伊御の一撃もギリギリで受け止めた。でも岩下さんももう終わりかな?

 

「うぅっ! だ、誰か援軍をっ!」

 

「もう遅いわ」

 

「あっ……」

 

そして、伊御と鍔迫り合いをしていたい岩下さんの背後に現れた御庭さん。御庭さんは短剣を振り抜き……。

 

斬っ!

 

と、首を一刀両断した。致命傷を受けた岩下さんの召喚獣は0点となり、補習室行きが決定した。

 

「そ、そんな……」

 

「お前が戦死者だな?」

 

「っ!? いやーっ!」

 

岩下さんが連れていかれるのを見送る。まあ当然だよね、だって……。

 

「うん。こんなものかな?」

 

「コンビネーション(笑)ね」

 

「……クスッ。そうだね、つみき」(ぽふっ

 

「…………」(ぴっこぴっこ

 

コンビネーションであの2人に勝てるはず無いもの。……しかし、初めて召喚獣を操ったようには見えない戦いぶりだね、あの2人。……ぼ、僕のアイデンティティが脅かされそうだ。

 

「い、岩下と菊入が戦死したぞ!」

 

「なっ! そんな馬鹿な!?」

 

「音無と御庭のコンビ。前情報が無かったから対処が追いつかないぞ!」

 

「今は大勢で2人を囲め! これ以上Bクラスに近づけさせるなぁ!」

 

うん? ……あの2人がやられたことで、Bクラスに衝撃が走ってるみたいだ。そこそこのポジションだったのかな? Dクラス戦に2人を出さなかったことがここで生きてきたな。

 

「さて、もう少しでBクラス前だ。Bクラス前に着いたら奥側につみきが行って教室に押し込めて。俺は手前をやるよ」

 

「ええ、わかったわ」

 

「もう一息だ。頑張ろうね、つみき」

 

「うんっ」

 

そして2人は進軍を再開した。確かに他の生徒の点数は先の2人よりは低く、何より士気がガタ落ちだ。たった2人を止められずに蹂躙されてるんだ。無理もない。

 

「さあみんなっ! Bクラスは目の前だ! あの2人に続けぇーっ!」

 

「「「「「うおおぉぉーーっ!!」」」」」

 

僕もあの2人の活躍を利用して皆の士気を上げる。効果は絶大で、残党狩りが一層捗っている。

 

「す、すごいですね。音無君と御庭さん」

 

後ろで指揮を執っていた姫路さんが僕のもとにやって来た。まあ、残党狩りなんて集団で囲んで終わりだから指揮することもないよね。

 

「あの2人は僕達と違って埒外だから、当然といえば当然だよ」

 

「……お主も大概じゃとは思うがのう」

 

「またまたぁ〜」

 

僕はごく普通の少しお茶目な高校生さっ!

 

「…………私も、あのお2人みたいに……」(ボソッ

 

「? どうしたの姫路さん?」

 

「ふえっ。あ、なんでもないですよっ」

 

「そう? もし体調が悪かったら言ってね? 無理は禁物だから」

 

「はい。吉井君は本当に優しいですね」

 

「そ、そんなことないよっ。これくらい当然さ!」

 

「お主もわかりやすいのう」

 

シャラップ秀吉。

 

「おーい! 明久さーん、秀吉さーん!」

 

「ん? あれは片瀬じゃな」

 

一時撤退していた片瀬さんが僕達を呼びながらこちらに走って来た。

 

「どうしたんの真宵さん? 何かあった?」

 

「……実はそうなんじゃよ。明久さんと秀吉さんは私と一緒に撤退じゃあ」

 

僕達3人を撤退させるのか。本当に何かあったらしい。

 

「姫路さん。そういうことで僕達は一度戻るから、ここをよろしくね? 頑張ってって言ってれば、皆は簡単に君のために死ぬ死兵と化すから」

 

「はい、わかりまし……えっ? それはダメなんじゃっ……」

 

そして僕達は前線を離れ、Fクラス向かう。

 

「お二方はBクラスの代表が誰か知ってる?」

 

「うむ。根本 恭二じゃな」

 

「根本って、あの根本?」

 

「ういうい〜。あのとにかく評判が悪い根本じゃよ〜」

 

真宵さんの話を聞いて、少し不安になる。雄二がそんな奴にやられるとは思えないけど用心に越したことはない。僕達は少し足を早めてFクラスに帰還した。

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

□Bクラス戦前日□

 

「へー。Fクラスが次はBクラスを攻めるってのは本当だったのか」

 

「ああ。ところでEクラスの様子はどうだ、榊?」

 

「皆、真宵が大声を上げて通るたびにビクビクしてるよ。雄二はこれも想定済みだったのかよ?」

 

「無論だ。Eクラスは部活で活躍する奴が多い傾向がある。真宵が一年の頃、色々な機械の実験に部活を回って恐怖を植え付けたことを知っていたからな。交渉の材料になると踏んだ」

 

「ヒューッ。さすが元神童、効果は絶大だったぜ」

 

「茶化すな」

 

「悪い悪い。それにしても、ふーむ。Bクラスか……」

 

「あん? なんかあんのかよ?」

 

「いや、確かBクラスの代表って根本だったよな?」

 

「ああ。一年の頃からかなり目障りだったからな。この機会に潰させてもらう」

 

「…………」

 

「おい榊。何かあるなら言え、据わりが悪い」

 

「……伊御を気にかけといてくれよ、雄二」

 

「伊御を?」

 

「ああ。……もし、根本が“一線”を越えたら」

 

「…………」

 

「……伊御が、キレるぞ?」




如何でしたか?

戦闘に本当に自信がないです!
違和感などありましたら是非ご意見下さい。

あと、祝! お気に入り300突破!
これも皆様のおかげです!
これからも応援よろしくお願いします!!

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