Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち? 作:黒猫ノ月
今回は原作よりです。
でも、オリジナリティは忘れない!
では、投稿です。
真宵さんに呼ばれて僕達がFクラスに帰ってみれば、酷く荒らされた教室が目に入ってきた。これじゃあ卓袱台や筆記用具が使えない。僕達も汚い手や姑息な手、卑怯な手上等だが、なんだろう……根本君って器が小さいなぁ。
どうして雄二が居ながらこんなことになってしまったのか。僕達がそう尋ねたら、どうやらBクラスから協定の申し出があり、調印を結ぶ為に教室を空にしていたらしい。……なんで協定なんか結んだんだろう。
協定内容は今日の午後4時までに決着がつかなかったら、戦況をそのままにして続きを明日の午前9時に持ち越す。そして、休戦期間中は試召戦争に関する行為を一切禁ずる。というものだった。
なんでこんなものを結んだのかと言えば、それは姫路さんの為だ。詳しくは知らないが、今回の作戦には伊御と御庭さん、姫路さんの力は不可欠らしい。だけど、姫路さんは2人と違って身体があまり強くない。だから明日に持ち越すことで万全の状態でBクラスを打倒するそうだ。
……でも、疑問が残るんだ。なんでこんな都合のいい協定をBクラスは結んだんだ? 教室を荒らしたいからってだけでこんなことをするほど、根本君は甘い男なのだろうか。一応、気に留めておこう。
Fクラスは雄二達に任せ、僕と秀吉、真宵さんは前線へと戻る。すると前線では事件が起きていた。
「動くな! それ以上近づけば、島田の召喚獣を殺して補習室送りにするぞ!」
Bクラスの生徒2人が島田さんとその召喚獣を人質にとっていたんだ! 側には鉄人まで用意している周到さだ。なんて卑怯な! でも、これならまだ理解できる。捕まった過程によっては捕まった方が悪いとさえ僕は思うね!
「島田が捕まってしまったか。伊御達は最前線で戦っておるし……。さて、どうするか」
「んー。アレあったかにゃ〜? どこかにゃ〜?」(ゴソゴソ
「真宵さん、何か打開策があるの?」
真宵さんは白衣の袖やポケットを弄って何かを探している。……どうしてだろう。真宵さんがそうしてると落ち着かない。これは、そう……なにを仕出かすか分からないからだなぁ。
「う〜〜〜〜にゃっ? ……あったにゃー!」
「あ、それは『太陽君マークII』!」
「おーっ。それならいけそうじゃのう」
Dクラス戦で僕が使ったやつで、所謂フラッシュグレネードだ。
「んでんでぇ、このサングラスも合わせて誰かに使ってもらって、美波さん救出大作戦じゃ!」
「流石真宵さん! 何か都合が良すぎる気がするけど、それならそれでいいよね!」
御都合主義万歳。
「では、誰に使ってもらうかじゃが……うむ、須川っ。少し良いかの?」(ボソッ
「ん? ああ木下、なんだ?」(ボソッ
秀吉が現場へと近づき、召喚獣を既に召喚している須川君に真宵さんから渡してもらったサングラスを渡して、こちらに戻ってきた。
「明久、片瀬。例の掛け声で須川が動く。明久が奴らの気を逸らしたら片瀬が投げるのじゃ」
「「了解(にゃぁ)!」」
秀吉と真宵さんの策を実行に移す為、僕は現場に、真宵さんは僕から少し離れて現場付近へと移動した。……さて、やるぞ!
「島田さん!」
「よ、吉井!」
「そこで止まれぇ! こいつがどうなってもいいのか!」
よしよし、こっちに意識が向いてるな。もう少し引き付けるか。
「君達の要求はなんだ!」
「俺達をBクラスまで無事に逃すことだ!」
「そうすればこいつを解放する!」
「……よ、吉井〜」(うるうるっ
「っ!?」
し、島田さんが目を潤ませてる、だとっ!? ……まさかっ!
「君は偽物の島田さんだなっ!」
「なんでそうなるのよ!」
なんでって、そりゃあ……。
「島田さんがそんな女の子らしいことするはずが「吉井、また廊下との逢瀬がしたいみたいね」やっぱり島田さんだね! 僕は信じてたよ!」
あの殺気、彼女は本物の島田さんだ。あれ程の殺気を放つ人は島田さんか雄二しか知らない。僕が島田さんの殺気に怯えていると……。
「SETッ!」
真宵さんの声が聞こえてきて、瞬間の閃光。
「なっ!?」
「眩しっ!?」
「獲ったーーっ!!」
古典
『Fクラス須川 亮ー63点 VS Bクラス鈴木 二郎ー21点 & 吉田 卓夫ー18点』
閃光の中、サングラスをかけた須川君が一気に2人を刈り取った。
「ようやく戦死したか。人質を取るなどという根性も合わせて教育してやろう」
「「た、助けてぇー……」」(キィ〜、バタンッ
これで悪は滅びた。……ふっ、正義は勝つん「ブォンっ!」だぁっ!?
「し、島田さん!? 何をするんだ!?」
「チッ! 仕損じたか」
せっかく助けてあげたのに、なんでそんなことをするんだい!?
「これは明久が悪いのう」
「じゃねー」
ここに味方はいなかった。解せぬ。
「でも、なんで島田さんは捕まったの? 島田さんがそんな簡単に捕まるとは思えないんだけど」
「えっ/////!? べ、別に! 油断しただけよっ!」
「フッフッフッ。明久さ〜ん、聞いたところによると明久さんのためじゃよ?」
「なっ/////。ちょっと真宵っ!?」
「え、僕?」
僕がどうしたんだろう?
「明久さんが怪我をしたっていう偽情報が流れて、それを聞いた美波さんが戦線を離れて1人で保健室に向かったんじゃって」
「えっ」
「な、何よ……/////」(プイッ
島田さんは顔を少し赤くさせて、僕から顔を背けた。……島田さん。
「怪我をした僕に止めを刺しにいくなんて、アンタは鬼かっ!?」
「違うわよ! 吉井のバカッ!」
「アバすっ!?」
頬を打たれて吹っ飛ぶ僕。やっぱり鬼じゃないか!
「……ウチがアンタの心配をしちゃ悪いっての。バカ吉井」(ボソッ
「いやー。そんな風にすぐ手を出しちゃうから、明久さんが勘違いするんじゃないかにゃぁ?」(ニマニマ
「少しは素直になったらどうかのう」(ニヤニヤ
「な、なんのことよっ!/////」
「「なんのことかにゃぁ(かのう)?」」(ニヨニヨ
「〜〜〜〜っ/////」
ビンタが効いて、会話が途切れ途切れにしか聞こえないけど楽しそうだ。……別に仲間外れにされて悲しんでなんかないんだからねっ! 僕には廊下さんがいるんだから!
「ほら明久。うつ伏せで拗ねてないで儂等も行くぞ」
「うぁ〜い」
僕達は伊御達がいる最前線へと向かった。
■□■□■□■□■□
午後四時になり、Bクラスとの協定通り一時休戦となった。俺とつみきで敵をBクラスに完全に押し込むことに成功したから、明日からは出入り口で1対1の戦いとなる。これで雄二からの課題はひとつクリアだ。
「ん? Cクラスの様子が怪しいだと?」
「…………」(コクコク
今は康太が雄二に斥候として、入手した情報が報告していた。前回と今回の試召戦争では、康太は斥候として活動している。しかし、Cクラスがここで動き出すってことは……。
「雄二。Cクラスの目的は漁夫の利、かな?」
「流石伊御だな。おそらくその通りだろう。いやらしい連中だな」
この戦争で勝利した方を相手に戦いを挑むつもりなんだろう。勝てばBクラスの設備だからね。
「雄二君、どうするんですか?」
「んー、そうだなー」
姫の問いに、雄二が時計を確認して少し考えてから口を開いた。
「Cクラスと協定でも結ぶか。Dクラス使って攻め込ませるぞ、とでも脅してやれば俺達に攻め込む気もなくなるだろ」
「それじゃあ、行くかな」
「いや、伊御と御庭は休んでろ。今日はお前達が1番働いたんだからな」
「そうか? なら、そうさせてもらうかな」(ぽふっ
「お言葉に甘えさせて貰うわ」(ぴこぴこ♪
「それと秀吉。お前も念のためにここに残ってくれ」
「ん? なんじゃ? 儂は行かなくて良いのか?」
「お前の顔を見せると、万が一の場合にやろうとしている作戦に支障があるんでな」
「よくわからんが、雄二がそう言うのであれば従おう」
雄二に言われて素直に引き下がる秀吉。……念のためとは言ってるが、秀吉を使う作戦ってロクなものな気がしないんだが。
「ではでは〜、出発進行じゃーっ!」
真宵の言葉に続く皆を見送り、Fクラスで待機する俺達。……しかし。
「雄二の言葉が気になるな」(なでこなでこ
「木下をここに残したこと?」(ぴこっぴこ♪
「ああ。……何も起こらなければいいけど」(ぽむぽむ
「伊御よ。それは所謂フラグというやつではないかのう?」
「坂本達ならへし折るでしょ」(ぴこぴっこ♪
「……まあ、それもそうかの」
■□■□■□■□■□
「フラグ回収乙!」
「変なこと言う暇があったら走れボケ!」
僕達は現在、Bクラスに追われながら廊下を走り抜けていた。Cクラスに協定を結びに行ったら、そこに根本君が取り巻きとともに現れ、協定にある「休戦中は試召戦争に関する一切の行為を禁ずる」を盾に襲いかかってきたんだ。
「真宵! なんかないのか!」
「美波さんを助けた時のやつが最後じゃよ!」
「くっ! こんなことなら伊御達も連れてくるんだったね!」
「いや、Bクラスが連れてる先公は現国の竹内だ。今日の戦いで疲弊したアイツらじゃ厳しい!」
そんなところも考慮してたって言うのか。やっぱり根本君は甘いやつじゃなかったみたいだね!
「はぁ、ふぅ……」
「はぁ、ひぃ……」
僕と雄二が話していると、姫路さんと春野さんが少しづつ遅れだした。運動が得意でない春野さんと、それに加えて体が弱い姫路さんじゃ全力疾走は厳しそうだ。
「み、皆さん、さ、先に行ってくださいっ。わ、私が、囮になります、からっ」
まだ少し余裕がある春野さんが言う。彼女はFクラスの防衛隊長で、『戦場の天使』という戦場のアイドル的存在になっている。明日の戦争では前線の士気を上げるという役割がある。
「わ、私も、春野、さんと……残り、ますので」
姫路さんは息も絶え絶えに言う。彼女は春野さんと同じでFクラスの野郎どもの士気を上げる役割と、さらに明日には伊御達と一緒に重要な役割があったはずだ。2人とも、ここで失うわけにはいかない。……仕方ない、か。
「雄二!」
「なんだ明久!」
「ここは僕が引き受ける! 雄二達は姫路さん達を連れて逃げてくれ!」
僕は皆の為に、殿になることを決意した。
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□Fクラス前廊下□
「見事にフラグが回収されたわね?」
「余計なことを言わなかったらよかったな」
「後悔先に立たず、ね」
「その通りだね。つみきは点数大丈夫?」
「無理に倒す必要はないから問題ないわ。それに、操作に慣れた吉井もいる」
「そうだね。『観察処分者』は伊達じゃないよね、明久」
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「ぃぃいよいしょーっ!」
僕は召喚獣を操り、敵の召喚獣の後頭部を掴んで廊下に叩きつけた! その場で鈍い音が響き、周りの皆は呆然としてるだけだった。どうよっ!
現代国語
『Fクラス吉井 明久ー66点 VS Bクラス真田 由香ー171点』
さっきの戦闘の参考用点数が表示される。やめて! 点数が高い人と並べないで!
「な、なんでだよ! 真田の方が点数が高いはずだろ!? なんであんな弱そうな召喚獣が強いんだよ!」
「あれ? でも私の召喚獣、まだ生きてる」
そりゃこの点数差じゃダメージは微々たるものだ。でも、1対1なら負ける気はしない!
「吉井、どういうこと?」
「美波さん、『観察処分者』の数少ない利点ってやつじゃよんっ☆」
「利点って?」
「要するに、召喚獣を操るのに慣れてるってことかな」
僕と一緒に残ってくれた島田さんと真宵さんと話しながら、敵の動向を伺う。
伊御と御庭さんはそうでもなさそうだったけど、普通なら召喚獣の操作はかなり難しいんだ。武器を振り下ろす、突撃するなんかの単純な操作ならできても、足払い、ジャンプで避けるみたいなアクロバットなものはかなり慣れないと難しい。その点、僕は雑用なんかで召喚獣をいつも動かしてたんだ。昨日今日操作し始めた人なんかに負けてたまるもんか!
「ぐ、偶然よ!」
敵が再度武器を構えて突撃してくる。さっきので怯んでくれたらよかったけど、そう上手くはいかないか。
「うりゃっ」
僕はそれを木刀で受け止め、受け流して隙だらけの胴を薙いだ。
現代国語
『Fクラス吉井 明久ー66点 VS Bクラス真田 由香ー135点』
よし! この調子で倒すぞ! そうやって意気込んだ矢先に隣から悲鳴が聞こえた。
「うにゃぁっ!?」
「真宵っ! 大丈夫!?」
「あ、危なかっんたんじゃよ……」
真宵さんの召喚獣が廊下に膝をついていた。武器である三角フラスコは廊下に転がり、白衣は汚れている。かなり点数を消費したみたいだ。
島田さんは春野さんに教わった守り方で真宵さんをサポートしながら一緒に戦っていたけど、流石に点数差が響いてきたか。
現代国語
『Fクラス島田 美波ー32点 & 片瀬 真宵ー14点 VS Bクラス工藤 信二ー126点』
大分削ってたみたいだけど、これは流石に厳しいか。
「工藤! そのままその2人を倒せ! 俺達はこいつを確実に殺す」
「Fクラス相手に4人掛かりってのも嫌だけど、そうも言ってられないな」
くそっ! 後ろで高みの見物決め込んでた3人がこっちの戦線に加わってきた。流石にあの点数差で4人掛かりは無理だ!
僕が迫り来る4つの武器に必死で対応しようとした時、僕の後ろから友の声が聞こえた!
「Fクラス音無 伊御」
「同じく御庭 つみき」
「「試獣召喚っ!」」
「伊御、御庭さんっ! 来てくれたんだね!!」
召喚された2人の召喚獣は、伊御は僕の、御庭さんは島田さん達の援護に来てくれた。助かった! 点数を消費してる2人だけど、これならそう簡単には負けない!
「な、バカな! 援軍だとっ!?」
「し、しかも音無と御庭だ。勝てる気がしねぇ!」
「馬鹿っ! 2人はこの科目を消費してるはずでしょ! 落ち着いて倒すのよ!」
Bクラスの動揺はすぐに収まった。やっぱりその辺りも計画に含まれてたんだな。伊御の点数は101点、御庭さんは134点。これならギリいけるか?
「伊御、ここで倒しきる?」
「うーん。……いや、ここは無理せず撤退しよう。島田さんと真宵が危ないからね」
「了解! なら……。真宵さん!」
「あいあいさーっ!」
御庭さんが来てくれたおかげで離脱することに成功した真宵さんに、合図を送った。細かいことは何も話してないけど、一年間遊んで(悪巧み)来た僕達なら意思疎通は楽勝だ!
「これで終わり」
「なっ、そんなっ……!」
真宵さんが準備してる間に御庭さんが敵を屠ったらしい。流石御庭さんだ!
「工藤がやられたっ!」
「クッソっ! 真田、泡瀬! お前達が御庭を抑えろ!」
「ざ〜んねんっ! 時間切れじゃよっ☆」
そして準備が終わった真宵さんの消化器が火を吹いた。
……ブッシャァァッ!
僕達はそれに乗じて戦線を離脱することに成功した。
■□■□■□■□■□
その後、教室に帰って来た僕達に姫路さんと春野さんが駆け寄ってきて心配してくれた。うむうむ。この笑顔だけで殿を務めた甲斐があるってもんだ。
「伊御と御庭さんもありがとう。今日は大変だったのに、僕達の救援まで……」
「いや、気にしなくていいよ」(ぽむっ
「ええ」(ぴこんっ
「さて、こうなってくるとあの策を実行に移す必要が出て来たな」
「……ロクなことじゃないとは思うが、どうするんだ?」
伊御が雄二をジト目で見ている。ふんっ、あの伊御にそんな目で見られるなんて、雄二が腹黒の証拠だね!
「……不愉快な視線があるが、今は置いとく。で、策だが明日に行う。俺はムッツリーニと準備を行うから、今日はここで解散だ。皆、明日が本番になるから英気を養うように」
「「「「「了解!」」」」」
【おまけ】
□下駄箱□
「それにしても、真宵さんと島田さん。一緒に残ってくれてありがとう」
「ういうい。気にしなくてもいいんじゃよ」
「……ええ」
(そういえば真宵だけ下の名前なのよね。ウチも下の名前で呼ばれたいけど……っ無理無理! 美波って呼んでほしいなんて言えるはずないじゃない!)
「…………ピコーンッ。ふぇっふぇっふぇ、明久さん明久さん」
「? 何、真宵さん?」
「せっかくこのメンツで死線をくぐり抜けたんじゃし、この機会に美波さんのこと下の名前で呼んでみたらどうかにゃ?」
「ほえ?」
「なっ!?」
「1人だけ上の名前じゃ寂しいじゃろ? ほれほれっ!」
「僕は別にいいけど。……島田さんは嫌じゃないの?」
「ふぇっ!? ……べ、別に! 呼びたいんなら好きにすればっ!」
「明久さん! ここで……」(ごにょごにょ
「ふむふむ。うーん、少し恥ずかしいけど…………み、美波?」
「っ!? 〜〜〜〜っ/////」
「うわっ! 顔真っ赤だよ! 大丈夫?」
「み、見るなぁっ!!」(グーパン
「ボぐはぁっ!?」
ダダダダダダッ!
「やれやれ。ほんとに素直じゃないねん」
「ま、真宵さんの嘘つき! 下の名前を呼び捨てにすれば少しは優しくなるって言ったのに!」
「ノンノンッ。継続は力なり、じゃよ? 明久さん」
「???」
「これからも呼び続ければ少しづつ効果が現れるから、明日も美波って呼ぶんじゃよっ☆」
「ほ、本当かなぁ?」
如何でしたか?
おまけの方に下の名前を呼ぶ下りを入れてみました!
では!
感想やご意見、評価を心よりお待ちしております。
これからも応援よろしくお願いいたします!!