Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち? 作:黒猫ノ月
後半完全オリジナルです。
では、投稿です。
「おっらぁっ!」
……ドォーンッ
「んのぉっ!」
……ドォーンッ
「ぐうぅっ!? 」
……くぅ、やっぱり痛い。脳天から爪先にかけて走る激痛に吐き気がする。でも、今は気にかけてる場合じゃないっ!
「はぁぁっ!」
……ドォーンッ
僕は痛みを堪えて、がむしゃらにDクラスの……Bクラスと接している壁を殴り続ける。
僕はFクラスにいた雄二に、姫路さんをこの作戦から外してくれるように頼んだ。絶対に無理だと言われると思ったが、予想外にも条件付きでなら構わないと言ってくれた。その条件が、僕が姫路さんの代わり……根本 恭二に攻撃を仕掛けろ。というものだった。
しかも出入り口は今のまま。つまりそこから侵入することはできない。……難しいことを言ってくれる。だが、Fクラス最高戦力を作戦から外してもらうんだ。これくらいやらなきゃだめなんだ!
僕がどうするか悩んでいると、雄二がらしくなく僕を励ますように「僕には僕の秀でている部分がある」と、「信頼している」と言ってくれた。……なら、やるしかないでしょっ!
そして僕は閃いた策を実行するため、Dクラスに向かったんだ。
●○●○●○●○●○
少し遠くから何かをぶつけている音が聞こえてきた。……よし、今だな。
「秀吉に伝令。今からつみきと一緒に特攻を仕掛ける。その後に続いてできるだけ出入り口から雪崩込むんだ」
「了解です!」
「つみきに。今から突っ込む、遅れないでって。あと……ありがとうって」
「イエッサー!」(ニヤニヤ
伝令を走らせ、俺は出入り口で行われている戦いを注視する。生物の科目で行われている戦いは、Fクラス生徒の劣勢で進んでいる。そして……今!
「Fクラス音無 伊御。試獣召喚!」
「なっ!? 音無は後ろに控えていたんじゃっ!?」
生物
『Fクラス音無 伊御ー275点 VS Bクラス金町 翔也ー91点』
俺は敵がとどめを刺そうと武器を振り上げた瞬間を突いて、ガラ空きの胴を一閃した。
遠くを見れば、ほぼ同時に敵を倒すつみきの姿。……よかった。合わせてくれた。
「このまま推して参る!」
俺はその勢いのまま生物教諭を連れて、Bクラスに躍り出た。つみきの方も、後からきたキクヱ先生を連れて俺と同時に侵入した。
「皆の者! 2人に続けぇーーっ!!」
「「「「「うおおおーーーっ!!」」」」」
秀吉の声に、雪崩れ込むようにBクラスに押し寄せるFクラスの面々。一瞬にして廊下側がFクラスで溢れかえる。
「しまった! 隙を突かれた!?」
「焦るな! 所詮Fクラス、落ち着いて対処……」
「させないよ」
「っ!? 音無!」
俺は部隊長と思われる男子生徒に戦いを仕掛ける。
生物
『Fクラス音無 伊御ー275点 VS Bクラス左鍋 原一ー163点』
「ふっ、ふざけるなっ! なんだこの点数は!」
「御託はいい。いくぞ」
「くっ……!」
俺が特攻し、敵に囲まれてる中、つみきも根本に向けて特攻したので囲まれた状態で戦闘を開始していた。
英語
『Fクラス御庭 つみきー321点 VS Bクラス 花巻 香苗ー175点』
「か、勝てるわけない! 誰か、援護お願いっ!」
「その前に倒す」
そして俺とつみきは、Bクラス代表根本 恭二に向けて単騎決戦を挑む。
●○●○●○●○●○
「……アキ。音無とつみきが特攻をかけたみたい」
「っ。……そっか。なら、僕もそろそろっ!」
昨日の下駄箱の出来事より、今日から僕を下の名前を略したもので呼び始めた美波の言葉に、僕も再び気合を入れる。両手にはもう痛みしかなく、足元には血だまりができている。……伊御が特攻を仕掛けてまで僕にチャンスをくれだんだ。ここで失敗するわけには……いかないんだっ!!
僕は今できる最大限の力を込めて……壁をぶん殴るっ!!
「だぁぁーーっしゃぁーっ!!」
……ドゴォーーンっ!
「ぐぅぅうっ!?」
僕は全身に走る激痛に堪える。……まだ、ここで倒れるわけにはいかない。僕にはまだやることがあるんだっ!
「根本 恭二ぃぃぃーーっ!!」
●○●○●○●○●○
「根本 恭二ぃぃぃーーっ!!」
「んなぁっ!?」
突如破壊された壁から現れ出た明久とそれに驚いて顔を引きらせる根本。そしてその壁からBクラスへと侵入するFクラス数名が明久と共に根本 恭二の元へと駆ける。今Bクラスの戦力のほとんどは俺とつみき、先に侵入したFクラスの対応に精一杯だ。ここで昨日と今日とで減らした数の差が功を成した。
「あいつらなんてところから! 誰か、奴らを止めっ……!」
「させない」
「しまっ!?」
生物
『Fクラス音無 伊御ー221点 VS Bクラス中瀬 忠男ー0点』
目の前の敵を屠り、俺が敵の注意を引きつける。ここで俺からマークを外せば、俺が根本を獲ると言わんばかりに。さらにつみきや侵入したFクラスの面々もBクラス生徒を誰1人として根本のところへ向かわせなかった。そのおかげで、根本を守る親衛隊数名以外は誰も明久達を止められない。
●○●○●○●○●○
僕達は伊御や御庭さん、Fクラスのみんなが足止めしてくれてる間に根本を討つ為に根本の元へと駆け抜ける!
「遠藤先生! Fクラス島田が……」
「Bクラス山本が受けます! 試獣召喚っ!」
「Fクラス葉山が根本へ……!」
「Bクラス中田! 受けます!」
次々と親衛隊に根本への戦闘を食い止められる。
「は、ははっ! 驚かせやがって!残念だったな! お前らの奇襲は失敗だ!!」
そんな僕達を見て取り繕うように嗤う根本。しかし僕達の手はまだ残ってるんだ!
「……ムッツリィーニィィーー!!」
僕が彼の名前を呼ぶとともに、開け放たれた窓から勢いよく侵入するムッツリーニこと土屋 康太と保健体育の先生。保健体育の先生の特徴はその抜群の運動神経にある。それを生かし、ムッツリーニと一緒に屋上からロープを伝ってBクラスへと侵入に成功したというわけだ。この為に僕達はDクラスを倒し、室外機を破壊させたんだ。
「……Fクラス土屋 康太」
「き、キサマ……!」
文字通りFクラスほぼ全員で根本 恭二を丸裸にした。これが……。
「……Bクラス根本 恭二に保健体育勝負を申し込む」
「く、そがぁぁーーーっ!!」
これがFクラスの力だ! 根本 恭二ぃぃーーっ!!
「……試獣召喚」
保健体育
『Fクラス土屋 康太ー441点 VS Bクラス根本 恭二ー203点』
根本の召喚獣はムッツリーニの召喚獣の小太刀一閃の一撃で敵を切り捨てた。
今ここに、Bクラス戦は終結した。
●○●○●○●○●○
「終わったか……」
「か、閣下! 奴に関する音声を洗ったら、すごいものが出てきたのでありますっ!」
「そっか。なら有り難く使わせてもらうよ。真宵」
「はっ! 光栄であります!」
「……真宵、どうしたのその喋り方?」
「いえっ! お気にならず!」
「……まあ、いっか。さて、あとは雄二と榊にっと」
●○●○●○●○●○
試召戦争も終わり、今は雄二がここに来るまで待機してる状態だ。……うぅっ。手が痛いよう、痛いよう。
「明久君、大丈夫ですかぁ?」
「なんとも……お主らしい作戦じゃったな」
「普通は壁を壊すなんて発想は思いつかないわね」
「つみきさんなら素手でやってのけそうなんじゃよ」
「やれるのとやるのは違うわよ」
「で、でしょ? もっと褒めていいと思うよ?」
自分を犠牲にしてまで勝利を導いた僕を誰か褒めて?
「後のことを考えず、自分の立場を追い詰める。男気溢れる素晴らしい作戦ね、アキ?」
「自分が傷つくと心配する人のことを考えない。とても明久らしい作戦じゃのう」
「……遠回しにバカって言ってない?」
学校の壁を壊したんだ。問題にならないはずがない。僕の放課後は鉄人とのラブコメで埋まってしまった。……暑苦しいよう。
「ま、それが明久の強みだからな」
「あ、雄二」
Bクラスにやって来た雄二が肩をバンバンと叩きながら床に座り込む根本の元へと歩いて行った。……バカが強みだとっ!? なんて不名誉な!
「さて、それじゃあ抱腹絶倒の戦後対談といこうか。なぁ、負け組代表?」
「…………っ」
雄二の言葉に、歯をくいしばるだけで何も返さない根本。さっきの威勢が嘘のようだ。
それから雄二の交渉が始まった。内容はBクラスの設備の交換を免除する代わりに、根本にAクラスに行って試召戦争戦争の準備が出来ていると宣言して来いというものだ。……女子の制服を着て。案の定、根本は慌てふためきながら拒否した。……往生際が悪いな。
「ば、馬鹿なことを言うな! この俺がそんなふざけたことを……!」
「Bクラス生徒全員で必ず実行させよう!」
「任せて! 必ずやらせるから!」
「それだけで教室が守れるなら、やらない手はない!」
Bクラスの仲間たちが満面の笑みを浮かべて協力を申し出た。すごい。これだけで根本が今まで何をしてきたかがわかるようだ。
「いや、協力は必要ない。こちらで完璧にデコレーションしてやろう。……片瀬、榊」
「「やいやいさーっ!」」
「なっ! 貴様ら何処からっ!? は、離せぇーー!!」
雄二の声に呼ばれた真宵さんと榊。……ちょっと待って。榊何処から湧いたの!? 榊はEクラスでしょ!?
真宵さんと榊に服を剥かれ、パンツのまま何処かへと連れ去られる。僕は散らかった根本の服を漁り、目的のものを入手し、服をゴミ箱へシュートする。根本にはスカートで自宅まで帰ってもらおう。
それから僕は目的のもの……姫路さんの手紙を元の場所へ戻すため、Fクラスに向かった。……あれ?
「……そういえば、伊御は何処に行ったんだろう?」
●○●○●○●○●○
「……ってぇ! 貴様ら、こんなところに連れてきて何をっ……!」
「やあ、根本」(ニコッ
「っ!? 貴様は、音無か?」
俺は真宵と榊によって連れてこられた根本を夕陽が照らす屋上で待っていた。2人は屋上へ続く階段で見張ってもらっている。……さて、始めようか。
「俺がお前に話があるから、2人に連れてきてもらったんだよ」
「話だと? それは服を剥かれてからするものなのか?」
「いや? 服を剥かれることについては、心当たりがあるんじゃないか」
「なんだと? ……まさかっ!」
俺の言葉に心当たりが見つかったようだ。そうだよ、姫路さんの手紙だよこのクズ野郎。それにしても、パンツ一枚で夕暮れの風の寒さに肌をさする姿は……。
「……クスッ。滑稽だね、根本」
「っ! ……貴様っ! 調子に乗るのも大概にっ!」
「単刀直入に要件を言おうか。根本お前……姫路さんの好きな人を手紙を見て知ったな?」
「……だから? お前には関係のないことだ」
関係のない? 確かにそうだ。これは2人の問題であって……俺も、お前も、関係がないんだよ。
「雄二が下した罰じゃ、周りのみんなは報われても……姫路さんと明久が報われない。ズル賢いお前のことだ。今回のことを逆恨みして、姫路さんを脅してまた最低なことをするつもりだろう?」
「っ!?」
俺の言葉に驚き、バツの悪そうな顔をする。……やっぱりか、こいつ。
「……ふ、ふん! だからなんだ! そこまでわかってるなら話が早い。お前も姫路のためを思うんなら俺のいうことをっ……」
「……ふざけるんじゃないぞ、根本 恭二」
「ひっ!?」
俺は姫路さんじゃ飽き足らず、俺さえも脅そうとしてきたこのクズ野郎を睨みつける。もはや笑うための表情筋すらピクリとも動かない。……少しでも反省してるなら“ここまで”するつもりはなかった。だがもう知らない。お前にはこれからの学園生活、怯えて過ごしてもらうぞ。
「……貴様はとことんクズだな根本。頭は多少回り、上位者への媚びも忘れない」
「……?」
「だが、傲慢ゆえの詰めの甘さ。これがお前の敗因だよ。根本 恭二」
「……き、貴様は……一体何を言って」
俺は根本の言葉を無視して、ポケットからテープレコーダーを取り出し……スイッチを押した。
『……分かったか? 俺のバックにはこの学園の教頭が付いてるんだ。多少の無茶、もみ消してくれるさ』
「なあっ!!?」
それから。俺と根本しかいない夕暮れの屋上では、しばらく根本の悪事が朗々と奏でられた。それは、この文月学園の教頭との繋がり。カンニングや情報提供など……。それらは汚職とも呼べるものだった。
これは真宵が学校内に仕掛けたマイクが拾ったものだ。面白さを求めて仕掛けたものだけど、ときたまこういうものが入ってることがあると聞いたことがあった。だから調べてもらったんだけど、ビンゴだったね。
「……で、デタラメだ! こんなのはお前達が作った嘘の証拠にすぎない!」
これを聞かされてもまだ足掻く根本に嘆息し、レコーダーを止めた。
「……やっぱり、お前は雄二の足元にも及ばないな」
「な、なんだと!?」
「これをしかるべきところに提出すれば、俺達が偽造した物かなんてすぐにわかる」
「っ!? そ、それだけじゃないっ! それが……!」
「この中のお前の言葉が本当であろうと嘘であろうと、どっちでもいいんだよ。根本」
「ど、どういうことだっ!」
本当にわからないのか。悪事で有名な奴が聞いて呆れる。
「仮に嘘だとして。教頭が自分の経歴に傷をつけるような物や人物を野放しにするとでも思っているのか?」
「そ、それはっ!」
「こんなものが存在したというだけで、教頭は何らかの影響を受けるだろうね」
「……や、やりたければやればいいっ! 俺には……」
「教頭は助けてくれないと思うぞ?」
「っ!?」
さっきまで嘘だデタラメだと抜かしていたのに、今では繋がりを肯定しだしたぞ。……俺は、こんな小物相手に怒っていたのか。……早々に終わらせよ。
「当たり前だろう? お前のような奴を助けるのと、切り捨てるの。どちらが簡単だと思うんだ?」
「…………」
「俺がこれを学園に提出したら、どうであろうとお前は終わりだ。良ければ退学。悪ければ……どうなるだろうな?」
「…………っ」
とうとう根本は何も話さなくなった。俯いてただ震えているだけだった。
「根本 恭二」
俺は奴の名を呼びながら、顔を恐怖に染める根本へと歩き出す。
「ひ、ひっ!」
「俺はお前がカンニングをしようが、教頭と繋がっていようがどうでもいいんだ。好きにすればいい、けど……」
迫る俺から逃れようと、じりじりと後ろに後ずさる根本。そしてとうとう壁という行き止まりにぶつかり、俺と奴の距離はわずか10cmというところまで近づいた。
「もう2度と、俺の大切な友達に危害を加えるな。……次は、ないぞ?」
「……っ。わかり、ました……。」
根本が俺の言葉を聞いたのを最後に、膝をついて肩を震わせていた。
「これは一応保管しておく。……さっきも言ったけど、俺はお前が何をしようと、それこそこれからも悪事を働こうが介入するつもりは一切ない。お前が、俺の大切なものに触れなければ、ね」
俺は崩れ落ちた根本を置いて、屋上を後にした。
●○●○●○●○●○
「……それじゃあ、あとはよろしく」
俺は屋上前で見張ってくれていた真宵と榊に声をかけた。これから奴は雄二の方の罰を受けることになる。
「了解にゃぁ!」(ダダダダダッ
俺の言葉に嬉々として屋上の扉をくぐった真宵。けど、榊は行かなかった。
「……伊御」
「ん? なんだ、榊」
「……いんや、なんでもない。ま、あんまり背負い込むなよ?」
「…………ああ。ありがとう、榊」
「いいってことよ。んじゃまぁ、いじり倒してやるぜぃ!」(ダダダダダッ
俺に心配の声をかけることはなく、ただ軽く肩を叩いて屋上へと向かった榊。俺は長年の幼馴染との心の通じ合いに少しだけ苦笑した。そして、俺は本当にその場を後にした。
『……あ、な? お、お前達何をっ!? や、やめろ! もう十分だろっ!? や、やめっ!? ……うああぁぁーーーっ!!』
「「ふははははぁ!」」
【おまけ】
□Fクラス□
「……? つみきか」
「あっ、伊御」
「どうしたんだ? 教室で1人でいるなんて」
「……べ、別に。ただなんとなくよ」
「そっか。……それなら、一緒に帰る?」
「……ん」
「分かった。……よっと。それじゃあ、帰ろうか。つみき」
「……ね、ねえ? 伊御?」(くいくい
「ん?」
「…………わ、私じゃっ。その……えっと」
「…………」
「……うぅん。なんでもないの。けどね?」
「うん」
「……あまり、1人で抱え込まないで、ね?」
「!」
「……伊御?」
「……ふふっ。うん、分かったよ。つみき」(ぽふっ
「わ、分かったのなら、いいのっ/////」(てれてれぴこぴこ
如何でしたか?
Bクラス戦終了!
そしてスーパー伊御タイム!
では!
感想やご意見、評価を心よりお待ちしております。
これからも応援よろしくお願いします!!