Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち?   作:黒猫ノ月

15 / 27
どうもです。

仏の怒り再び!

では、投稿です。


第13話

昨日の夕方、根本 恭二と話し合い(脅迫)を終えて俺はつみきと一緒に帰った。榊やつみきに心配されたけど……俺は大丈夫だよ、2人とも。

 

そして翌日の朝。俺は珍しく1人で学校に登校していた。いつもなら通学路のどこかでつみきと会うのに……。昨日は激戦だったし、疲れが出てるのかな?

 

今日は補給テストに全て当て、明日にAクラスに一騎打ちを申し込みに行く予定だ。その一騎打ちには俺も参戦する予定だから、今日のテストは気合を入れてやらないとな。

 

そうして今日の補給テストに向けて密かに意気込んでいると、下駄箱で知人と出会った。

 

「優子。おはよう」

 

「……あら? 伊御君じゃない。こうやって面と向かって会うのは久しぶりね?」

 

彼女は木下 優子。Aクラスに所属している秀才で、頭脳も学年トップ10の常連だ。少し厳しいと感じるところはあるけど、優しくて明るい人だと思う。そして優子は……秀吉の双子の姉でもある。彼女とは去年の秋に知り合ったんだけど……これは今話すことじゃないかな?

 

「そうだね。メールや電話でなら話してるけど、最近は俺も忙しくて中々時間が取れなかったからね」

 

「聞いてるわよ。Bクラスを倒したんだって? Fクラスじゃ普通は無理だろうけど、まあ伊御君がいるなら分かるかな」

 

「いや。雄二の策や明久の機転とか、あれはFクラス皆で頑張ったおかげだよ」

 

「ふふっ。そういうところは本当に相変わらずね。……けど、流石に昨日あなた達がしでかしたことは……ちょっと軽蔑するかな?」

 

「? 昨日? ……えっと、明久が壁を壊したこと、かな?」

 

優子が俺に向ける視線が少し冷たくなった。俺は向けられた視線に心当たりが……あ。もしかして、“アレ”を見られた? いや。あの時は真宵と榊が見張っていたから見られるはずはない。なら、なんだ……?

 

俺が昨日のことを必死に思い出し、キチンと優子を傷つけてしまったことを謝ろうと考えていたところで、溜息が聞こえた。

 

「……やっぱり、伊御君は関わってないか」

 

「やっぱり? ……優子。Fクラスの誰かが優子に何かしたのか? なら、もしよかったら話してくれないか?」

 

「……はぁ。あのね……」

 

そして優子から話を聞いた俺は、とりあえず下手人達を成敗しようと決めた。

 

 

 

■□■□■□■□■□

 

 

 

Bクラス戦の後、姫路さんの鞄に手紙を入れてミッションコンプリートした時、背後から声をかけられた。振り返れば姫路さんが涙を零していて、どうしたのかと尋ねたら僕に抱きついてきたんだ! すっごく柔らかくていい匂いがしました!

 

僕は動揺を誤魔化した後、何事もなかったように教室を出ようとしたら姫路さんに呼び止められて手紙のことでお礼を言われた。僕は偶然見つけたからとはぐらかそうとしたんだけど、嘘だと見抜かれた。

 

さらにはこの試召戦争を姫路さんの為にやっていることまでバレた。いや、バレてた。雄二や伊御と相談してるところを見られたらしい。なんだろう、すごく恥ずかしい!

 

僕と姫路さんの間に流れるむず痒い感じの雰囲気に耐えきれなくなって、僕は伊御に相談して尋ねようと思っていたことを尋ねた。「その手紙の相手ってもしかして……」って。そしたら姫路さんは手を大きく振って否定したんだ! ……いよっしゃーーーっ! 僕の勘違いだったよ! ありがとう伊御! 君が正しかった!

 

僕は雄二ではないってことが分かったから、それだけで満足だった。姫路さんの本当に好きな人? そんな野暮なことは聞かないさ。僕は上機嫌に「その手紙がうまくいくといいね!」って! 姫路さんも満面の笑みで頷いてた。うん! 今日はなんて最高な日なんだ!

 

僕はルンルン気分で家に帰って、健やか眠りについた。本当に昨日は最高の1日の終わり方をしたなぁ。…………。

 

よし、現実を見よう。……翌日の今日。僕が珍しく普通に登校してきたFクラス教室では……。

 

「…………」(ニコッ……ゴゴゴゴゴッ

 

「「「…………」」」

 

阿修羅様が罪人を正座させて、降臨していらっしゃった。

 

「やあ、明久。正座」(ニコッ……ゴゴゴゴゴッ

 

「……はい」

 

伊御の問答無用の正座発言に僕は抵抗することなく受け入れた。……ダメだ。もう心当たりが“アレ”しかない。

 

顔をうつむかせて小刻みに震える僕、雄二、秀吉、ムッツリーニに軽く頷いてから伊御は口を開いた。

 

「さて、これで全員揃ったね。……4人とも。なんで正座させられているか、分かるね?」

 

「「「明久が悪いです」」」

 

「貴様らっ! 僕を巻き込んでおいて、さらには身代わりにするとかふざけるなよっ!」

 

こいつら揃って僕を見捨てやがった! なんて奴らだ!

 

「……俺は、イエスかノーしか答えることを許してないはずだけど?」(ニコッ……ゴゴゴゴゴッ

 

「「「「ごめんなさい! イエスです!」」」」

 

怖い。伊御の笑顔がものすごく怖いよぅ。

 

「……ふむ。明久、今君が口に出したことに興味がある。明久だけ発言を許すよ。話してごらん?」

 

「は、はい! え、えっと実はですね……」

 

僕は包み隠さず全てを話した。何をするかCクラスに着くまで知らなかったこと。策を実行してる際に事のヤバさに気付いて伊御に報告に行こうとしたこと。それを雄二とムッツリーニに止められたこと。そのせいで共犯にさせられたこと。

 

僕が話してる最中に雄二が何かを言おうとしたけど、伊御が笑みを浮かべた一睨みで黙らせた。何も発言できなくなった雄二達は、僕が懺悔していると段々と震えが大きくなっていった。……ザマァみろ。僕を共犯にしたり、見捨てようとした罰だ!

 

僕の話を聞き終わった後、伊御は顎に手を当ててふむと一つ頷いた。

 

「明久。それは嘘ではないと誓えるか?」

 

「うん! 嘘だったら僕はこの屋上から飛び降りるよ! 」

 

「……雄二。発言を許す。今の明久の話、何一つ間違いはなかったか? もし嘘だとわかったら、俺は君を許さないよ」

 

「…………全て、事実です」

 

伊御の言葉に素直に自供する雄二。……そうだよね。優しさの権化である伊御に許さないなんて言われたら、立ち直れないよね。

 

「明久」

 

「は、はい!」

 

「今回のことはこれで終わり。不問とする。本当は遅くても後で言って欲しかったけど、昨日はそれどころじゃなかったからね」

 

「ありがとうございます!」

 

(((チッ!)))

 

伊御に隠れて舌打ちする3人を無視して、僕は正座をやめて断罪場から立ち去る。ま、当然の結果だよね!

 

「さて、残るは君達なんだけど……やることは、分かるね?」

 

「「「今からAクラスに赴き木下 優子様に謝罪をしてきます!」」」

 

「うん、わかってるならいいよ」

 

伊御は今度はいつもの微笑みを浮かべて雄二達を許した。チッ! もう少し罰を与えてもバチは当たらないと思うんだ!

 

「……雄二。俺は卑怯な手や最低な手も勝つためには必要だって分かるし、ある程度は容認するよ。それが俺の知り合いでもね。雄二は、一線は超えないって信じてるから」

 

「…………」

 

「けど、そういう時は一言俺に言って欲しいんだ。ことが全部終わった後に、俺がちゃんとその人に謝れないから」

 

「……はい」

 

「それに……俺達は共犯だろう? そういうことに呼ばれないのはさ……少し悲しい、かな」

 

「……い、伊御。……くっ」

 

伊御の言葉に顔を上げて目頭を抑える雄二。……くっ! 奴の気持ちが分かってしまう! 伊御、君はなんて素晴らしい人格者なんだ! 僕は君と友達になれて心から誇りに思うよ!

 

「「「では、いってまいります!!」」」

 

「うん。ちゃんと謝ってくるんだよ?」

 

「「「はい!」」」

 

伊御が見送る中、雄二達はAクラスに向けて駆け出した。……仕方ない。木下さんに許されるようには祈っておくよ。

 

 

 

『秀吉〜? あなた、豚呼びを満面の笑みでやってたみたいじゃない。アタシは普段からあんなか・し・ら〜』(メキメキメキィッ

 

『す、すまんかった姉上! 心から謝罪するから……違っ! 姉上! 腕はそっちに曲がるようには出来てな……っ! のおおぉーーっ!?』

 

『『…………』』(ガタガタガタッ

 

『…………雄二』(チラッ

 

 

 

■□■□■□■□■□

 

 

 

昨日はあの後、秀吉はボロボロで帰ってきたけど、雄二とムッツリーニは無事帰還してきた。なんでも木下さん的には実行した秀吉が1番許せなかったらしく、2人は厳重注意で済んだらしい。チィッ!

 

その日はそれ以外は何事もなく、Fクラスのみんなが補充テストを終えることができた。……そして、運命の日の朝。僕達は……。

 

「総員、狙えぇっ!」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

「なっ!? なぜ明久の号令で皆が急に上履きを構える!?」

 

「黙れ男の敵! Aクラスの前に貴様を殺す!」

 

憎っくき敵である雄二を包囲していた。だって、雄二があの美人で綺麗な霧島さんとお、おお幼馴染だって言うんだ! これほどの裏切りはないっ! Aクラス代表への必勝法? 大化の改新? 知るかっ!

 

「俺が一体何をしたと!?」

 

「遺言はそれだけか? ……待つんだ須川君。靴下はまだ早い。それは押さえつけた後で口に押し込むんだ。真宵さんはロープを。怪力の雄二が解けない丈夫なやつを準備するんだ」

 

「「了解です(じゃぁ)隊長!」」

 

「待て! 片瀬は女子だろ!? なんで明久に協力する!?」

 

「えっ? おもしろいから?」

 

「くそッ! こいつはこういうやつだった!」

 

我らが仇敵め! 男子高校生46人分の上履きと言う名の怨念をとくと味わえ!

 

「あの、吉井君」

 

「ん? なに、姫路さん」

 

「吉井君は霧島さんが好みなんですか?」

 

「そりゃ、まあ。美人だし」

 

「…………「瑞希さん瑞希さん。ゴニョゴニョ……」!」

 

「姫路さん?」

 

「……え、えいっ!」(抱きっ

 

「ほわぁぁぁあっ!?」

 

突然腕に抱きついてきた姫路さん。ちょまっ! う、腕に柔らかな膨らみが! ……あ、幸せ「総員! ってぇーー!!」うをぉぉーーっ!?

 

雄二の号令より、僕に向かって放たれる上履き。僕は姫路さんを抱えて全力で避け切った。何をするんだ! 僕はともかく姫路さんになにかあったら「こんのぉ、ドスケベ!」どらんちぇっ!?

 

僕は後頭部を襲った蹴り(おそらく美波)によって壁に頭が埋まった。

 

「まぁまぁ。落ち着くんじゃ皆の衆」

 

「ほら、明久も埋まったことだし、これでひと段落ひと段落」

 

パンパンと手を叩いて場を取り持つ秀吉とそれに合わせてみんなを抑える伊御。……ねぇ伊御。僕が壁に埋まってひと段落っておかしくない?

 

それから気を取り直した雄二が再び霧島さんの弱点を言って、さらには伊御や御庭さん、姫路さんがいることから一騎打ちなら必ず勝てると言い放った。それに盛り上がるFクラス一同。そして壁に埋まったままの僕。

 

雄二は皆を連れてAクラスに向かって行った。そして壁に埋まったまま放置された僕。僕は残ってくれていた伊御と春野さん、姫路さんに助けられた。……優しさが目に沁みます。ぐすっ。

 

 

 

■□■□■□■□■□

 

 

 

僕達が遅れてやってきたAクラスでは、雄二と木下さんの交渉が進んでいた。片瀬さんにどうなったかを尋ねると、雄二の思惑通りの5人選出の一騎打ち。今は勝負する科目はどうするかで揉めてるみたいだ。雄二は自分たちが科目を選べるようにしたいみたいだけど、まあ僕達には伊御や御庭さん、姫路さんがいるからね。向こうが頷かないのも無理はない。しかし……。

 

「……受けてもいい」

 

「え? 代表?」

 

Aクラス代表の霧島さんが雄二の提案で受けてもいいと言ってきた。けど、それには条件があった。それは「負けた方はなんでも一つ言うことを聞く」というものだった。そしてそれは……姫路さんや春野さんをじっくりと見ながらその条件を提示してきた。……まさかっ!

 

「…………」(カチャカチャ

 

「ムッツリーニ、まだ撮影の準備は早いよ! というか、負ける気満々じゃないか!」

 

やっぱりそうか! まずい! 霧島さんは同性愛者という噂と今の2人を値踏みするような目線! このままだと姫路さんか春野さんの貞操が危ない! どどどどどうしよう!? すっごくドキドキする! 僕はあんなことやこんなことをしている場面を目撃してしまうのか!?

 

「じゃあこうしましょう? 勝負科目をアタシ達が3科目、貴方達が2科目決めれるようにさせてあげる。ほとんどそっちの条件を飲んでるんだからこれぐらいはいいでしょ?」

 

木下さんの妥協案で雄二も頷いた。ってちょっと待て!

 

(ゆ、雄二! 何を勝手に! まだ姫路さんや春野さんが了承してないじゃないか!)

 

(心配するな。絶対にあの2人に迷惑はかけない)

 

断言するように言う雄二。そこまで勝利を確信してるのかな? それからAクラスとの一騎打ちは午前10時からということで僕達はAクラスを後にした。負けられない! 姫路さんや春野さんの無事のためにも! ……す、少しは見てみたいけど。

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

□Aクラス□

 

「それじゃ、一騎打ちに参加するのはアタシと美穂、愛子に久保君、そして代表ね?」

 

「わかりました」

 

「オッケ〜♪」

 

「分かった」

 

「……それでいい」

 

「なら次は誰を相手にするかなんだけど……代表は坂本君でいいのよね?」

 

「……うん」

 

「久保くんは姫路さんをお願いね?」

 

「それが妥当だろうね」

 

「愛子は土屋君、でいいのよね?」

 

「うんっ。僕が手取り足取り色々教えてあげるんだ♪」

 

「美穂は伊御君をお願い。アタシは御庭さんを相手にするわ」

 

「それは構いませんけど、この配役には理由が?」

 

「まあ、ね。代表は坂本君と戦いたいだろうし、久保君と姫路さんはほぼ同じぐらいの実力だから。愛子は土屋君が必ず保健体育でくるからね。それで伊御君を美穂にぶつけた理由は……」

 

「理由は?」

 

「アタシが御庭さんと戦いたいから、かな?」




如何でしたか?

次回Aクラス戦開幕!

ては!
感想やご意見、評価を心よりお待ちしております!
これからも応援よろしくお願いします!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。