Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち?   作:黒猫ノ月

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どうもです。

文化祭編開始!
今回は短いです。プロローグ的なものなので。

では、投稿です。


二巻
第16話


「……音無」

 

「ああ、霧島さん。どうしたの?」

 

「……この間はありがとう」

 

「うん、どういたしまして。みいこさんとは仲良くなれたみたいだね」

 

「……うん。男の子の扱い方を学んだ」

 

「……みいこさん、いつそんなこと学んだんだろう?」

 

「……雄二もみいこさんが話したら、抵抗を諦めてくれた」

 

「まあ、雄二はみいこさんには頭が上がらないみたいだからね。素直じゃない雄二にはちょうどいいんだよ」

 

「……昔に戻れたみたいで、楽しかった」

 

「ふふっ。それは良かったね」

 

「……うん。…………」

 

「……? どうしたの霧島さん? 何か悩みでもあるのなら、俺で良かったら聞くけど」

 

「……いいの?」

 

「ああ。俺は2人の仲を応援してるからね。俺で出来ることなら力になるよ」

 

「……ありがとう。音無はいい人」

 

「気にしないで。俺がお節介をしたいだけだから。……それで、何を悩んでるんだい?」

 

「……雄二とデートに行きたいけど、いいところがない」

 

「いいところ?」

 

「……雄二はあまりデートに行ってくれる人じゃない」

 

「まあ確かにそうだね。雄二は面倒くさがりだから」

 

「……だからデートは学校帰りの寄り道とか、家で2人で過ごすのがいい。……って聞いた」

 

「……ちなみに、それもみいこさんから?」

 

「……うん。だけどその分、時々は遠出のところがいいって」

 

「なるほど。……流石みいこさん。雄二のことかなり把握してる。……ん? ということは、いいところがないっていうのは、いい遠出する場所がないってこと?」

 

「……音無。心当たり、ある?」

 

「ふむ……」

 

「…………」

 

「……霧島さん。もう直ぐ準備が始まる『清涼祭』で、この学校のPRも兼ねて召喚大会が開催されるのは知ってるかい?」

 

「……うん」

 

「それなら話は早い。実はその優勝商品が、今建設中の『如月ハイランド』っていうテーマパークのプレオープンチケットなんだって」

 

「……!」

 

「霧島さんの成績なら、まず間違いなく優勝できると思うから狙ってみたらどうだい?」

 

「……うん。頑張る」

 

「頑張って。応援してるから」

 

「……ありがとう。音無はとてもいい人」

 

「力になれたようで良かったよ。……そうだ。連絡先を交換しておこうか。それならいつでも相談に乗れるしね」

 

「……うん。音無は本当にいい人」

 

「……そんなに言われると、少し照れるね」

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

桜の花びらも舞終わり、今は新緑の葉が擦れる音が耳をくすぐるそんな季節となった。それに合わせるように、俺達の通う文月学園では、新学期1番最初の行事である『清涼祭』の準備が始まりつつあった。

 

「おーい伊御。そっち抑えてくれ」

 

「了解。……こうでいいか、榊?」

 

「オッケー。じゃあ、切ってくぞー」

 

俺は今、榊と一緒に『清涼祭』で出店……クレープ屋さんを出そうと準備をしているところだ。俺達の他につみきと姫、真宵もおり、俺と榊は屋台の骨組み、3人は屋台のデコレーションを担当してもらってる。

 

『清涼祭』では、クラスで出すものと有志で出すものに分けられる。さらに有志で出すものは、部活動で出すものと俺達のように個人で出すものに分けられ、俺達は榊に誘われて有志で出すことにしたのだ。

 

「それにしても良かったのか榊。Eクラスを放ってこっちの手伝いしてて」

 

「ああ。「“真宵”達と出店を開く」と言ったら、快く送り出してもらえたぞ」

 

「……悪意があると感じたのは気のせいか」

 

「気のせいさっ☆ というか、それを言ったら伊御達だってそうだろ? Fクラスを放ってるんだから」

 

「いや、Fクラスのみんなは……」

 

 

 

『吉井! さあ、投げてこいっ!』

 

『勝負だ! 須川君!』

 

『お前の球なんか、場外まで吹っ飛ばしてやる!』

 

『言ったな!? こうなったら意地でも打たせてやるもんかっ! 伊御! 僕に君の加護の力をっ!』

 

『ば、馬鹿なっ! それはかの御仏のっ!?』

 

『そうだ! 伊御が僕のそばにいる限り、僕に負けはない! ……見ててくれ伊御、この一球は君に捧ぐ!』

 

 

 

「「…………」」

 

遠くからでも聞こえてくる友人や知人の声に頭が痛くなる。……明久。お前にとって俺は一体なんなんだ?

 

「……伊御、お前はいつから野球の神になったんだ?」

 

「そんなものになった覚えは一切ないんだが……。まあともかく、今ので分かったと思うがFクラスは『清涼祭』に参加する気がない。だからこっちに力を入れててもいいんだよ」

 

「な〜る。ま、それなら俺達は俺達で楽しもうぜ」

 

「そうだな」

 

「ヤッホー。お二人さん、準備は如何程かにゃ?」

 

俺達が話していると、真宵が持ってきた色々な機材を下ろしながら話しかけてきた。

 

「今大きめの角材を切り終わったところだ。……それで、真宵はなんでンなもんを持ってきたんだよ」

 

「にゃ? それは今からソーラーパネルやら赤外線探知機やらを取り付けるためじゃけど」

 

「それもう屋台の規模じゃないだろっ!」

 

「真宵。ちゃんと管制システムの構築は済んでるのか?」

 

「もちもちロンロン☆ ちゃんとテストも繰り返してるし、もしものための防衛システムも別に用意してるから大丈夫じゃよ」

 

「ちょっと待て! 伊御は了承してるのか!?」

 

「ああ。ベスト屋台賞目指してるからな」

 

「マジか!?」

 

「ちなみにオール電化じゃよ」

 

「……へー」

 

あ。榊が考えるのをやめた。

 

「……伊御」(くいくい

 

「ん? つみきか。そっちはどうだい?」(ぽむっ

 

俺は裾を引かれる感覚に振り向くと、姫と屋台のデコレーションをしていたつみきがいた。

 

「ペンキがなくなっなの」(ぴこっ

 

「それならさっきキクヱ先生を見掛けたから、先生に貰ってくるといいよ」(うりうり

 

「ん。わかった」(ぴこぴっ♪

 

つみきは頷いて、俺がキクヱ先生を見掛けた方へ小走りで向かっていった。俺はその後姿を見送り……うん、和む。

 

「んしょっとぉ。……はひぃ。美波さん、ありがとうございました」

 

「いいわよこれくらい。というか姫は頼りにしなさすぎ。もうちょっと他を頼りなさいよ?」(ほっぺフニフニ

 

「ひゃ、ひゃひぃ〜」(されるがまま

 

つみきが行った後に、すれ違うように姫と島田さんが数枚の黒板を抱えてやってきた。どうやらメニューはペンキじゃなくて黒板にチョークで書いて立てかけるみたいだ。それにしても……うん、和む。

 

「姫、ありがとう。島田さんもね」

 

「はひ」

 

「どういたしまして。……こっちはちゃんと準備してるのね?」

 

「そりゃあね。俺達がしたいって言い出したんだし。……せっかくの『清涼祭』なんだから、楽しまないと」

 

「ナハハ! 有志部門で一位を掻っ攫ってやるぜぃ!」

 

「にゃほほっ! ベスト屋台賞も頂きじゃあ!」

 

「フフッ。みんな楽しそうで良かったわ。……はあ、それに比べてアイツらときたら」

 

「あ、あはは」

 

島田さんはこれ見よがしにため息をつき、姫も愛想笑いを浮かべている。俺も未だに野球をやってるであろうFクラスの面々を思い浮かべてため息をついた。

 

そうしていると、少し表情に陰りを見せる島田さんが視界に移った。……どうしたんだろう? やっぱり明久と『清涼祭』を楽しみたかったとかかな?

 

「……ねえ、音無。ちょっといいかしら?」

 

「……ふむ。何か悩み事かな?」

 

「ふえ? 美波さん、そうなんです?」

 

「ん、まあちょっと……ね?」

 

やっぱり何かあるみたいだ。友人として、聞かないわけにわいかないな。

 

「俺で良かったら話を聞くよ」(ぽむっ

 

「そうね」(ぴこぴこ

 

「わ、私もですっ。私ではお力になれるか分かりませんが……」

 

「いやいや! 俺達に任せておけばぁ〜……」

 

「どんな悩み事も万事解決じゃよっ!」

 

「……うん。ありがとう、みんな」

 

俺達の言葉にようやく笑みを見せてくれた島田さん。うん。やっぱり女の子は笑顔が1番だね。……あれ? そういえばつみきはいつ帰ってきたんだい?

 

「さっき。ペンキは確保してきた」

 

「……そっか」

 

なんかナチュラルに心を読まれた。

 

そんなこんなで、俺達は作業をやめて島田さんの話を聞くことにした。しかし……。

 

「えっとね。実は……「「「〜〜〜〜♪」」」…………」

 

「「「「「…………」」」」」

 

突然鳴り響く携帯のメールの着信音。それも3機同時に。……俺と榊、真宵のやつだ。

 

「「「なんか、ごめんなさい」」」

 

「い、いいのいいの! 気にしなくていいから!」

 

心より申し訳なく思う俺達に、両手を振って許してくれる島田さん。本当にごめん。

 

「それにしても、3つ同時に鳴るなんて。どんな確率かしら?」

 

「そ、そうでよねっ。不思議ですね!」

 

つみきと姫が俺達の罪悪感を払うように話題を変えてくれた。……そうだね。いつまでも沈んでても仕方ない。さっさとメールを開けて島田さんの話を聞こう。

 

「それにしても誰なんじゃよ。こんなタイミング悪くメールを送ってくる輩は!」

 

「全くだ! 絶対に空気が読めない友達0の輩だと俺は思うね!」

 

「それは言い過ぎだとは思うが。まあ、とりあえずメールを開こうか」

 

そして俺達はそれぞれの携帯を開き、メールを確認した。そこには……。

 

 

 

[From 明久]

 

応援求む

プランEで

tasuk

 

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

……パタンっ

 

俺達は携帯をそっと閉じた。……俺達は何も見ていない。

 

「……ねえ、音無。このやり切れなさをアキにぶつけてもバチは当たらないわよね?」

 

「ああ。神もきっとシャイニングウィザードを喰らわせなさいと告げてると思うよ」

 

というか、これで文句を言う奴が神なら……俺は神様だって殺してみせる。

 

「さて。それじゃあ島田さん、話の続きを……」

 

『待て貴様らぁ! 今日という今日は許さん! 清涼祭の出し物を決める前に、貴様らに地獄を見せてやろう!』

 

『『伊御、榊、真宵さん(片瀬)! 助けてくれぇっ!!』』

 

「……はあぁぁ」

 

俺は深く溜息をついた。西村先生が怒ってるのは、クラスの出し物を決めてないからみたいだ。……仕方ない。また後で話を聞こうかな。

 

「島田さん。すまないけど後でいいかな? どうやら一度教室に戻らないといけないみたいだし」

 

「……そうみたいね」(ゴゴゴゴゴッ!

 

「み、美波さんっ。おおお落ち着いてくださいぃ!」

 

島田さんの雰囲気が荒れている。……明久、今回は助けないよ。

 

「それじゃあ榊。俺達は教室に戻るよ」

 

「おう! また後でな」

 

「さてはて。Fクラスの出し物は何になるんじゃろうねぇ」

 

「休憩室、とかかしらね」

 

「ありえそうで怖いんじゃよ」

 

そして俺達は自分のクラスの出し物を決めるために教室へと足を進めた。

 

「ふえぇっ!? 皆さん、明久君達は放置ですかぁ!?」

 

 

 

『よぉし。捕まえたぞ貴様ら。……覚悟はいいな?』

 

『『んのおおおぉぉーーっ!!』』

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

「へー、クレープ屋さんかぁ。伊御君が作るクレープは美味しそうね」

 

「そんなにいいものではないと思うけど。優子が来てくれるなら、俺が奢るよ」

 

「本当? それは是非とも伺うわ」

 

「ああ」

 

「そういえば伊御君。貴方、最近代表と仲が良いわね?」

 

「そうだね。雄二とのことで相談に乗ったりしてるよ」

 

「代表、喜んでたわよ。良いデート場所を教えてもらったって。私も手伝って欲しいって頼まれたから、召喚大会に出ることになったの」

 

「そうなると、もう勝てる人は本当にいないかもしれないね」

 

「もちろん。誰も勝たせるものですか」

 

「ふふっ。とても優子らしいね」

 

「そ、そう。……ね、ねぇ伊御君?」

 

「うん? なんだい?」

 

「わ、私は負けるつもりは更々ないわ! け、けどっ! ……あ、貴方の応援があれば、もっと負ける気がしなくなくもなく……」(ちょんちょん

 

「……ふむ。優子」(ぽむり

 

「っ!/////」(ネコミミぴっこーんっ!

 

「俺も応援してるから。頑張ってね」(なでこなでこ

 

「……うんっ/////」(ぴこぴこ/////

 

「勝てたら、ご褒美をあげるから」

 

「っ!? 絶対、絶対よ!?」(ぴこーん!

 

「ああ」(なでりなでり

 

「……ご褒美、ご褒美。……えへへ」(ぴこぴこ♪

 

「……ふふっ」

 

 

 

「…………♯」(ギリッ

 

……バキバキバキバキバキィッ!!

 

「んにゃ? ……ってぎょえぇえぇえぇっ!?」

 

「ふわぁっ!? ま、真宵さんが崩れた壁に押しつぶされましたぁ!?」




如何でしたか?

うちの優子は少し素直かもしれません。
あと、これからの投稿について活動報告に載せています。

では!
感想やご意見、評価を心よりお待ちしてあります!
これからも応援よろしくお願いします!!

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