Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち?   作:黒猫ノ月

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大っっっっっ変長らくお待たせいたしました!!!!

やっと時間ができたので投稿です!!

これからのことは活動報告にあげますので、よかったらそちらをご覧ください!!

ではどうぞ!


プロローグ2

「えっ!? 今日伊御休みなのっ!?」

 

「ああ。どうやら風邪を拗らせたらしい。熱も高いから今日は家で養生するそうだ」

 

「そうなんだ……。今日は振り分け試験なのに、可哀想だね」

 

「確かにな。試験欠席は問答無用でFクラス行きだ。アイツならAクラスも夢じゃ無いだろうに……」

 

雄二は残念そうにそう言って、手元の参考書に目線を落とした。

 

昨日もギリギリまで勉強……していたつもりが、気付けばゲーム機のコントローラーを手に握り朝を迎えた僕。朝をカップ麺4分の1で済ませて、遅刻ギリギリのため学校まで全力疾走して来た僕に悪友が教えてくれた情報は、本当に残念なものだった。

 

伊御……音無 伊御は、クラスは違うけど、僕がこの学校で初めてできた友人だ。人一倍親切で、人一倍優しくて、人一倍お人好しな伊御は、バカな僕をいつも助けてくれた恩人でもある。最近では、鉄人から逃げるのを助けてくれたり、今回の大事なテスト勉強も一緒にやってくれたりと、恩は増すばかりだ。

 

そんな恩人、兼友人がこの大事なテスト……振り分け試験を休んでしまったことは、僕に少なくない衝撃を与えた。

 

2年に進学する時にAからFにクラス分けを行うのだが、振り分け試験の点数がそのクラス分けに反映される。雄二も言ったけど、このテストを受けれなければ理由は何であろうとFクラス……底辺クラス行きになってしまうのだ。

 

僕はテストを受ける前から憂鬱になってしまったが、テスト勉強を見てくれた伊御の為にも頑張ろう(本当にそう思っていたらテスト前日にゲームしねーよ:読者の声)と気合を入れ、自分の席に向かおうとして……気付く。

 

「……ねぇ雄二」

 

「あ? なんだよ?」

 

僕の呼ぶ声に返事はすれど、あいも変わらず参考書を見続けている雄二。そんな雄二に僕は今思ったことを告げた。

 

「……御庭さん、大丈夫なの?」

 

「…………大丈夫だと思うのか?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「「伊御、やらかしたな」」

 

僕達は、風邪で休んだあんちくしょうに想いを寄せる女の子が沈んでいる姿を想像した。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 

「あ、あのぅ〜〜……、つみきさん?」

 

「つみきさん、タイタニックなんてメじゃないくらい沈んでるんじゃよ……」

 

「…………ぅーっ」

 

「あぁっ、泣かないでくださいつみきさんっ!」

 

ワタシの目の前では現在、机に突っ伏し、目尻に涙を溜めているつみきさんを姫っちが慰めてるんじゃが、これはダメじゃね〜。つみきさんのネコミミがへにゃってる幻覚が見えるんじゃよ。

 

原因は伊御さんが風邪で休んでしまったこと。今回の試験は2年に上がる時のクラス決めに重要なもので、点数によってクラスが決まるんじゃが、伊御さんとつみきさんならAクラス……最上クラスは間違いないはずだったんじゃ〜。

 

だけど伊御さんは風邪で学校を休んでしまった。この試験は理由がなんであれ、受けなければ問答無用でFクラス行き決定じゃ。伊御さんは別にFクラスでもいいって爽やかに笑いながら言うんじゃろうが……そういう問題じゃないんじゃよ。

 

伊御さんが大好きで大好きで仕方ないつみきさんは、次も伊御さんと同じクラスになる為に伊御さんと一緒に勉強してAクラスになるよう頑張ってたんじゃ。だけどその頑張りも水の泡、儚い夢と散ってしまたんじゃよ。

 

……んー、実は伊御さんと同じクラスになる方法はいくつかある……んじゃけど。例えば無回答で出す、仮病を使って同じく休むなんかあるねん。だけど無回答で出すと、今まで一緒に勉強してきた伊御さんが疑問に思って、そこからつみきさんが伊御さんラブラブチュッチュッなのがバレる(ニブチン伊御さんなら気付かない可能性大)かもしれないし、次の仮病は朝一番にワタシの後頭部を狙った一撃を見舞ったところをクラスのみんなが見てる為ほぼ無理。

 

まあ、ツンツンデレデレなつみきさんはワタシが何か案を出しても素直に頷かないだろうし、親しいワタシ達ならともかく、他の人に伊御さんが好きなことを知られたくないだろうから、余計なことはしたくないだろうしねー。

 

……まっ、伊御さんとつみきさんの関係は公然のヒミツとなってるんじゃけどっ☆ 知らぬは本人達ばかりってねん。

 

しかーしっ! そんなつみきさんとの付き合いももう一年、ワタシにかかればつみきさんの密かな(バレバレ)願いを叶えてあげられんじゃよっ! 要は伊御さんと周囲にバレないようにすること。さりげなく、偶然、何かのミスで同じクラスになること。なーらこれじゃねん。

 

「つみきさん、つみきさん」

 

「……ぐすっ、あによぅ」

 

「……伊御さんと同じクラスになりたい?」(コソッ

 

「………………別に」(プイッ

 

つみきさんは案の定、素直になれずにワタシから顔を背けた。しかしつみきさん? ネコミミはワタシに意識を集中させてますよ?

 

「つみきさん、実は誰にも……それこそセンセーにさえバレずに伊御さんと同じクラスになれる方法があるんじゃけど……興味ない?」

 

「…………」

 

「そ、そのような方法が?」

 

ワタシの言葉に、つみきさんはワタシの顔をチラチラ見ながら、姫っちは興味津々にワタシの言葉を待ってる。うむうむっ、そんなに聞きたいなら話してしんぜよう!

 

「つみきさん、まず聞きたいんじゃが……つみきさんはFクラスでもいいのん?」

 

「…………別に、どこでも勉強はできるもの」

 

つみきさ〜〜ん、設備の有無は重要だと思うんじゃけど……素直じゃないねっ☆

 

「も、もしかしわざと点数を落とすんですか? それじゃあ、バレちゃいますよ?」

 

「チッチッチ、姫っちはまだまだじゃねー。んならつみきさんはFクラスでも問題ない、と」

 

「……それがなんなのよ」

 

「えっとねー…………」

 

ワタシは自分の考えを話し、つみきさんはそれを実行した。

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

昨日の夜から続く熱がどれほど下がったか確認するために、体温計で体温を測っているが、どうだろうか? ……ん、測り終わったかな。

 

「……ゴホッ、39度2分。熱が下がらないな」

 

ベッドに横になりながら測った体温は、朝測った時とほとんど変わらなかった。

 

体温計を横の机に置き、目覚ましを確認すると16時40分。今日の試験はもう終わってる時間だ。そのことにため息をつき、仕方ないかなと苦笑して布団を被り直した。

 

今日の試験は次の学年のクラスを決める大事なもので、俺も本当は行きたかったが、昨日夜から何かと面倒を見てくれたみいこさんから絶対安静を言い渡された。今日の朝を振り返ると……。

 

………………

…………

……

 

『……あの、みいこさん。俺は大丈夫なので』

 

『ダメよ伊御くん。寝ていなさい』(ニコニコ

 

『……いや、でも』

 

『ダメよ伊御くん。寝ていなさい』(ニコニコ

 

『……今日は大事なしけ『ダメよ伊御くん。寝ていなさい』(ニコニコ…………ハイ』

 

……

…………

………………

 

「……最後の方は怒ってたな。笑顔だったけど」

 

あの人にはどうにも頭が上がらない。そのことに少し苦い思いはするけど、自分をあそこまで心配してくれることに感謝の思いが圧倒的に優っている。ただでさえ普段から両親がいないので、その代わりに色々気にかけてくれているのだ。これで文句を言うほど俺は馬鹿じゃない。けれど……。

 

「つみきに、悪いことした……な」

 

他の女の子達より一回り小さくいじっぱりな女の子を思い浮かべ、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 

ここ最近、ずっと試験勉強を一緒にしてきて、俺の勉強をつみきに見てもらったりしていたのだ。そのおかげで、ギリギリAクラスにいけるかどうかだったのが、Aクラスはほとんど大丈夫だろうというところまで学力を上げることが出来た。

 

つみきが自分の勉強をおいてまで教えてくれたものは発揮されることなく、俺はFクラス行き。Fクラスに行くこと自体は全然大丈夫なのだが、ただつみきに対する罪悪感。この感情が俺の胸にチクチク刺さった。

 

「ゴホッゴホッ…………今度、何かお詫びしないとな」

 

俺はせめて自分ができる感謝の気持ちと謝罪の気持ちを伝えるため、言葉とともに送るものを考えながら眠りにつこうとした時、家のインターホンがなった。

 

「……ん、みいこさん……ははちぽちがあるから、榊かな?」

 

俺は来客を予想しながら汗ばんだ重い身体を起こし、玄関に向かった。

 

「……はーぃ、今開けます。……あれ、つみき?」

 

「……こんにちは、伊御」

 

しかし、来客は俺の予想と違って、今さっきまで頭に思い浮かべていた女の子……つみきだった。

とりあえず玄関で立ち話もなんなので、というかつみきが俺を心配してくれて、早く寝るように言ったのでつみきを家に上がらせて俺の部屋に入れた。

俺はベッドに横になり、つみきは俺の頭の横にぺたんと腰を下ろした。

 

「大丈夫、伊御?」

 

「ああ、大丈夫……じゃないけど、寝ていれば治るから心配ないよ」

 

「そう。……えっと、ごめんね? 連絡もせずに来て。携帯で起こしたらいけないと思ったの。ここに来たのも寝ていたらそれはそれで良かったからで、えっと……あのっ」

 

「……ん、別にいいよ。来てくれてありがとう、つみき」

 

俺は少しワタワタしてるつみきにありがとうの気持ちを込めて、ベッドから手を伸ばしゆっくり頭を撫でる。

 

「〜〜〜〜っ///// そっ、それならよかったわっ」(プイッ

 

下手をすれば熱がある俺よりも顔を赤くして頭を撫でられるつみきに、微笑ましい気持ちになりながらもつみきの頭から手を退ける。

 

「あっ」

 

「……? どうかした、つみき?」

 

「っ!? にゃっ、にゃにゃにゃんでもにゃいわっ!」

 

「……そっか。ゴホッゴホッ」

 

「っ! ごめんにゃなさい、大きな声出して」

 

ああ、つみきは悪くないのに気を使わせてしまった。つみきは申し訳なさからネコミミをへにゃらせた。その状態でつみきはそばにあった水差しからコップに水を入れて、俺を優しく起こしてコップを渡してくれた。

 

「……んっ、んっ……はぁ、ありがとうつみき。でもつみきのせいじゃないから、気にしないで」

 

「でもっ」

 

「……それに、謝らなければいけないのは俺の方だよ」

 

「?」

 

俺は残りの水もゆっくりと、けど一気に飲み干し、横の机に置いた。そしてまたゆっくりとベッドに横になり、不思議そうにしているつみきと話を続ける。

 

「……せっかくつみきが勉強を教えてくれたのに、ゴホッ……風邪を拗らせて台無しにしちゃったんだから」

 

「伊御……」

 

つみきを目の前にしているからだろうか、胸をチクチクと刺していた罪悪感はだんだんと膨れ上がる。けれど、つみきはそんな俺に向かって恥ずかしげな笑顔を浮かべながら首を横に振った。

 

「……伊御、私は気にしてないわ」

 

「つみき……。でも……」

 

「…………わ、私は……その…………から」

 

「……? つみき?」

 

最後の方が声が小さく聞こえなかったが、つみきは深呼吸を数回、その後に俺を見ながら小さな口を開いて言葉を綴った。

 

「……私は、伊御と勉強ができて……楽しかった、からっ」

 

「つみき……」

 

「だっ、だからいいのっ」(プイッ

 

つみきがもじもじしながら、ハニカミながら綴った言葉に……俺の胸を刺していた罪悪感は溶けて消え、暖かいものが胸をゆっくりと満たしていった。

 

俺は自分を許してくれて、罪悪感を溶かしてくれた恥ずかしがりなネコに感謝の気持ちを伝える。

 

「……ありがとう、つみき」(ナデナデ

 

「…………/////」(てれてれ

 

俺は照れてこっちを見てくれないつみきの頭を撫でてあげた。

 

それから俺が睡魔に襲われるまで、少しだけつみきと話をしながら過ごした。

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

「……つみきさん、大丈夫でしょうか?」

 

「だいじょぶだいじょぶっ! 今頃風邪を引いてる伊御さんと同じぐらい顔を真っ赤にさせてるじゃろうしねぇ」

 

「だなっ! もしものために伊御の家の鍵も渡してあるし、寝ている伊御にチューも可能だっ!!」

 

「チュっ、チューぅっ/////!!? ……ぷはぁっ!」

 

「おおっ! 姫の愛が鼻からっ!!」

 

「けどナイスアシストだよ真宵さんっ。 これでまた一歩2人の仲は進展だねっ!」

 

「ああ、その通りだな。……これでこっちもやり易くなる」(ボソッ

 

「じゃろじゃろ〜っ! もっと褒めてぇーん!……ん? なんかいったかにゃ、雄二さん?」

 

「いーや、何も? さて、さっさとはちぽちに行こうぜ。みいこさんが試験が終わった祝いを用意してくれてるんだろ?」

 

「「「おーっ!」」」

 

「チュ、チュー……///// ぷはっ!」

 

「……誰か春野の血を止めてやれ」




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