Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち? 作:黒猫ノ月
地獄再び!
では、投稿です。
「Fクラスの設備の改善? ……なるほど、お前達の言いたい事はよく分かった」
「よく分かった……って事は、直してもらえるんですね!」
「却下だよ。バカ学年代表」
「雄二、ドラム缶とコンクリを。伊御は誰も来ないように見張ってて。僕はこのババァをオトすから、みんなでコンクリ詰めにして捨ててこよう」
「……明久。雄二もだけど、もう少し態度には気を遣おうな? 例え相手の態度が最悪でも、それに同じ態度で返すのはダメだよ」(あんな人と同じレベルに見られるのは嫌だろう?)
「……あんたの言ってる事は最もだが、隠された本音が透けて見えるようさね」
さて、なんのことでしょうか?
俺達は昨日ハチポチで決めた通り、時間を見計らって学園長室に訪れた。その時、雄二から怨嗟のこもった眼差しを向けられたけど……全く、本当に素直じゃないな。
学園長室前に着くと、中では学園長と教頭がなにやら言い争っていた。……教頭か。根本の時のがあるから、あまりイイ感じはしないな。
俺がそんなふうに思っていると、明久がなんの遠慮もなく学園長室に入って行った。雄二も我が物顔でその後に続いたことに軽くため息を吐いて、俺も学園長室に入った。
その後は何故か教頭に学園長とグルであると思われたり、学園長がかなり横柄な女性だったり、雄二が敬語で話していることに俺と明久が驚いたりと、色々あって冒頭に至る。因みに、雄二の敬語はすぐにボロが出てた。
「伊御の言う通りだな。失礼しました。どうか理由をお聞かせ願えますか、ババァ」
「そうだね。すみませんでした。教えてください、ババァ」
「……お前達、本当に聞かせてもらいたいと思ってるのかい?」
明久、雄二。学園長への名称に本音が出てるよ。……あ、2人とも何がおかしいのか気付いてない。
学園長は不満げにしながらも理由を話してくれた。理由としては、俺の予想通り「この学園の教育方針だから」というものだった。……しかし、学園長は自身の頼みも聞くなら相談に乗ると言ってきた。ふむ、交換条件か。
「その条件ってなんですか?」
俺と雄二が学園長の思惑が何かを考えていると、明久が学園長へ話を促した。
促された学園長が俺達に向けて出した条件は、「清涼祭で行われる召喚大会に優勝し、優勝商品を正賞・副賞共に回収してほしい」というものだった。どうやらこれは教頭が進めた正式な案件らしく、今更取り下げられないらしい。……学園長は研究一筋だと聞いていたけど、さすがにトップとしてそれはどうなんだろう?
そして、副賞が『如月ハイランド プレオープンプレミアムペアチケット』と聞いた時から、雄二の視線が俺に釘付けだった。その目には……。
《伊御お前、翔子にこれを教えたな? お前は何故そこまで翔子に肩入れする! そもそも……っ!》
と俺への不満が長々と映っていた。……バレたか。それに何故かって? それは、俺は恋する女の子の味方だからだよ、雄二。というか、雄二は心から霧島さんのこと拒んでないだろ? 俺には分かってるんだからな?
俺と雄二が視線で会話する中、明久が学園長に何故優勝商品を回収したいのかを尋ねた。学園長が言うには、如月グループは副賞の『如月ハイランド ペアチケット』を使って、オープンと共にジンクスを作ろうとしているらしい。
そのジンクスが、「如月ハイランドを訪れたカップルは幸せになれる」というものらしい。如月グループはこのジンクスを作るために、チケットを持って訪れたカップルを結婚までコーディネートするつもりのようだ。……多少強引な手段を用いてもってうおっ!
「伊御! お前はなんてことをしてくれたんだ!?」
雄二はかなり慌てた様子で、俺の両肩を力の限り掴んで問い詰めてきた。痛い痛い。
「いや、俺もジンクスについては初めて知ったんだ。でも、素直じゃない雄二相手なら、多少強引な方がちょうどいい……」
「伊御、歯を食いしばれっ!」
あ、言い過ぎたか。
「せあぁっ!」(ドスッ!
「ばはあっ!?」
俺が雄二の拳を素直に受けようとしたら、明久が俺を庇うように前に出て、雄二の喉元を手刀で貫いた。あ、明久っ!?
「貴様雄二! Fクラスの、いやこの学校の良心たる伊御に向かって手を上げようとするとは何事だ!」
「ゴホッ、ガハッ!」
「……明久」
「伊御、心配しなくていいよ。この外道は僕が責任持って異端審問会に突き出すから」
心配というより、悪いのは俺なんだが。というか異端審問会って何だ?
「お前達、争い事なら他所でやりな!」
「わかりましたババァ! さぁ来い異端者! 御庭裁判長が貴様を公平に裁いてくださる!」
「こらこら明久。今は設備の話だろう? ……雄二もごめん。確かにこういうのはお互いの気持ちが大事だよね。雄二は素直じゃないけど」
「……ゲホッ」(一言余計だ、の目
「チィッ! 仏の慈悲に感謝するんだな!」
「……けっほ」(お前は後でコロス、の目
うん。何とか場が収まったな。さて、話を続けようか。
「つまり、俺達は……」
「『召喚大会の賞品』を交換条件として、持ってくることができたら教室の改修くらいしてやろうじゃないか」
「……ふむ」
副賞じゃなく“賞品”、ね。……まだ何かありそうだ。
「無論、優勝者から強奪なんてマネするんじゃないよ。譲ってもらうのも不可だ。そして……参加するのは吉井と坂本の2人だ」
「ええっ!? 何で僕達だけなんですか! 回収したいならより確実に伊御や御庭さんを参加させた方がいいでしょう!」
「嫌ならこの話は無しだ。ここから出て行きなジャリども」
「くっ!」
学園長の出したさらなる条件とその態度に顔を歪める明久。……これは本格的に何かあるな。
「明久、ダメだ。学園長には譲る気が無い。この取引に応じるしかないよ」
「伊御……」
学園長自身、無茶を言ってるのは百も承知だろう。けど、それでもこの条件でないとダメだと言ってるんだ。しかもこちらは頼んでる側。元々俺達には取引に応じる以外の選択肢はない。
……実は少しだけ、根本を脅す時に使った音声記録を交渉に持ち込もうと考えていた。学園長はどうやら教頭に対して含みがあるみたいだからね。だけどあれは根元が言ったもので、教頭ではない。証拠としての強みは無いに等しい。
「コホッ……おいババァ、こちらからも提案がある」
「なんだい? 言ってみな」
やっとまともに声が出せるようになった雄二が学園長に話しかけた。
「召喚大会の対戦表が決まったら、その各戦い毎の科目の指定を俺にやらせてもらいたい」
学園長を鋭い目つきで見ながらそう持ち掛ける雄二。……おそらく雄二も俺と一緒で学園長の隠し事に気付いたかな。今はそれを確認してるってところか。
「……いいだろう。点数の水増しとかだったら一蹴していたが、それくらいなら協力しようじゃないか」
「……ありがとうございます」
目付きが更に鋭くなる雄二を見て、俺も確信する。……学園長は俺達に話してないことがある。しかし今尋ねてもしらばっくれるだろうから、大人しくこの条件で受けるしかない……か。
「さて。ここまで協力するんだ。当然召喚大会で優勝出来るんだろうね?」
「無論だ。俺達を誰だと思っている?」
雄二は不敵で好戦的な笑みを浮かべる。うん。やる気は十分みたいだね。
「絶対に優勝してみせます! そっちこそ約束を忘れないように!」
明久もやる気全開で返事をする。
「俺もやれることをやるよ」
「勿論だ。期待している」
雄二の言葉に笑みが溢れる。さてと……。
「それじゃ、ボウズども。任せたよ」
「「おうよっ!」」
「了解」
ミッションスタートだ。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
学園長室での密会から数日後、俺は今……。
「んまっ」(ぴこぴこ♪
「うまっ」(じゃよじゃよ♪
Fクラスでつみき達に試作クレープを実食してもらっていた。美味しそうで良かったよ。
「な、なによこれっ!? そこらのお店のやつより美味しいじゃない!」
「はひぃ。伊御君の作るクレープは頬が落ちそうになるんですよぉ」
「す、すごいですっ。どうやったらこんなに美味しくなるんですか!」
「生地とか焼き時間とか、色々と工夫がいるんだよ。作る工程も簡単そうに見えて、結構難しいしね」
「「「へぇ〜」」」
俺の説明を聞きながらも美味しそうに食べる女の子達にほんわかする。みいこさんにもう一回教えてもらった甲斐があったよ。
『いおは おんなのこたちの えづけに せいこうした』
「妙なナレーションすな、榊」
俺は何故かいる榊へとツッコム。
「これなら集客はかなり期待できるね!」
「流石は伊御じゃのう」
「ありがとう」
みんなの賞賛に少し照れる。なんか気恥ずかしいね?
「おおっ! 伊御さんが照れてるんじゃよ!」(パシャっ
「あ、おい真宵。何を撮ってるんだ」
「いや〜あまりの珍百景に思わず☆」(テヘッ
「俺は景色じゃないんだが……」
全く、これは言っても消さないな。……まあ、別にいいかな。
「……つみきさん、どう?」(ボソッ
「/////」(テレテレぴこぴこ
「……欲しい?」(ボソッ
「…………い、要らにゃ「それじゃAクラスの木下さんにでもあげようかにゃ〜?」いただくわ」(にゃいアンクロー!
「イタタタタッ!? さ、差し上げますので離しぃっ!? か、顔が! 顔が取れるぅーー!」(ミシミシミシィッ!
……ん? また何か真宵がやらかしたのか? つみきに顔を剥がされそうだぞ。
「伊御達のクレープは問題ないね。さて、僕達が出す飲茶は……」
「……飲茶も完璧」(スッ
「おわっ」
「……康太。気配を消す必要はあるのか?」
「……基本技能」
お盆に胡麻団子とお茶を乗せた康太がいつの間にか俺達の後ろに立っていた。日常で気配を消す技能が基本のはずないだろう。
「……味見用」
「ふわぁ、美味しそうですぅ」
「土屋、これウチらが食べちゃっていいの?」
「…………」(コクリ
「では、遠慮なく頂こうかの」
女性陣プラス秀吉が胡麻団子に手を伸ばし、作りたての胡麻団子を頬張ろうとした時、榊が……。
「クレープと胡麻団子が胃の中でフュージョン……」
「「「「「はっ!!?」」」」」
「それで出来た脂肪なら、30分で解けるけど……」
「「「「「ほっ」」」」」
「現実はそう上手くはいかんじゃろうなぁ」
「…………」(コクコク
「「「「「うぅっ」」」」」
女性陣は胡麻団子を片手に一喜一憂している。……楽しそうだね。
「え、えぇい! これくらいじゃ別にどうってことないはずじゃよっ!」
「そ、そうですよねっ」
「コクコク」
「そ、そうよねっ。その通りよね!」
「は、はいっ。大丈夫ですっ」
女性陣は自分に言い聞かせるように言った後、胡麻団子を口に入れた。……強く生きるんだ、皆。
「うんまっ♪」
「うみゃっ♪」
「美味しいですぅ♪」
「本当! 表面はカリカリで中はモチモチ!」
「食感もいいのう」
「甘すぎないのもいいですねっ」
女性陣プラス秀吉による大絶賛。それに加えて、お茶も美味しいみたいだ。幸せ満点で雰囲気がほのぼのしだしてる。さっきの勢いが嘘のようだ。
「それじゃ、僕も貰おうかな」
「俺も貰うよ。ほら、榊」
「俺もいいのか! サンキュー!」
俺達は残った3つを手に取り口に運んだ。……うん、美味しね。
「ふむふむ。表面はゴリゴリでありながら中はネバネバ……」
「甘すぎず、辛すぎるというか口の中を溶かすような刺激がとっても……」
「「んゴパッ!?」」(バタン!
「明久、榊!?」
2人が思い切り顔から倒れ、痙攣しながら床を這う。……この症状はまさか。
(どうやら、姫路が作ったものが紛れておったようじゃな)
(……よかった。当たらなくて)
(これは日頃の行いじゃのう)
(…………!!)(グイグイ!
(む、ムッツリーニ!? 残りを僕の口に押し付けようとしないで! 無理だよ! 食べられないよ!)
(…………)(ビクンッビクンッ
明久はなんとか復帰したようだけど、榊が帰ってこない。……どうやら明久は耐性をつけたらしい。明久も大概人間離れしてるとこういう時に思うよ。
幸い女性陣はほのぼのに充てられて、こっちの様子に気付いていない。この内になんとかしないと。さて、明久達が残した半分ある2つの胡麻団子をどうしようか。俺がそう考えてると、雄二が帰って来た。
「うーっす。戻ったぞー。……ん? なんだ、美味そうじゃないか。どれどれ?」
「あ、待て雄二! それは……」
俺が止めようとするも時すでに遅く、雄二は残った2つを躊躇なく口に放り込んだ。……漢だね、雄二。
「……たいした男じゃ」
「雄二。君は今、最高に輝いているよ!」
「…………!」(コクコク!
「? お前らが何を言ってるのか分からんが……。ふむふむ。表面はゴリゴリで中はネバネバ。甘すぎず、辛すぎるというか口の中を溶かすような刺激がとっても……んゴパッ!?」
雄二も明久と榊に続いて、床に思い切り口付けをしに行った。痙攣もしているけど、明久は耐性が付いていた。おそらく誰よりも姫路さんの料理を食べている雄二なら、同じようにある程度大丈夫なはずだ。
「……雄二、雄二。大丈夫か?」
「ふっ。なんの問題もない」
床に突っ伏したままで雄二が返事した。よかった。無事なようだ。
「あの川を渡ればいいんだろう?」
無事じゃなかった。どうやら姫路さんの料理を摂取し過ぎて、雄二のキャパは限界を迎えていたらしい。三途の川を渡ろうとしている。早く止めないとっ!
「ゆ、雄二! その川はダメだ! 渡ったら戻れなくなっちゃう!」
「雄二! 戻ってこい!」
俺は女性陣から雄二をできるだけ隠し、明久はなんでもないようにしながらも必死で雄二に心臓マッサージを施す。帰ってこい、雄二!
「6万だと? 馬鹿を言え。普通は渡し賃は6文と決まって……はっ!?」
よし! よく帰って来た雄二! ……はぁぁ。なんとか助けることが出来てよかったよ。
「うーん……はっ!? あれ? 俺はなんで倒れて……」
榊も帰って来たようだ。もしかしたらと思ってたけど、無事なようで何よりだ。
「あれ? 雄二君と榊君、どうかしたんですぅ?」
まだほのぼのが抜けきっていない姫が、俺達の様子がおかしいことに気付いたみたいだ。
「イヤイヤ! 雄二がまた足を攣っちゃってね! 榊と一緒に筋肉を伸ばしてやってたんだよ!」
「足が攣った? 馬鹿を言うな! あれは明らかにあの団子の「もう1つ食わすぞ(ボソッ」足が攣ったんだ。運動不足だからな」
「はひぃ。そうですかぁ」
ほのぼのが抜けきってないのが功を奏し、姫を含めた女性陣はこちらから意識を外してお茶を啜った。……バレなくてよかったね、明久。
(……明久、いつか貴様を殺す)
(……上等だ。殺られる前に殺ってやる)
小声で物騒なことを言いながら、にこやかにしてい明久と雄二。ハタから見れば仲良し2人組だけど……全く。
(それで伊御。これはどう言う状況なんだ? 胡麻団子を食べたところまでは覚えてるんだが……)
(後で話すよ)
戸惑う榊を取り敢えず落ち着かせ、俺達はほのぼのが抜けかけてる女性陣と一緒に清涼祭に向けての話し合いをすることにしたのだった。
【おまけ】
「……なるほど、姫路の料理かー。いつかの真宵のカエル入りチョコとは一線を画すな」
「あれは食べれるだろう? 真宵が言うには姫路さんの料理から薬品めいた味や匂いがしたらしいし、下手をしたらバイオ兵器だと俺は思ってる」
「バイオ兵器って……。それ女子高生が作れるレベルを超えてるだろ!」
「実際雄二は下手したら死んでたし、お前も危なかったと思うぞ」
「……生きてるって、素晴らしいことなんだな」
「ああ。その通りだな」
「……ん? なあ、伊御。一つ疑問なんだが」
「なんだ?」
「姫路もアレを食べてるんだよな? 流石に味見はするだろうし。ってことは、姫路の味覚は……」
「でも、俺のクレープや胡麻団子は美味しそうに食べてたぞ? 味覚がおかしいってことはないじゃないか?」
「そうだよなー。なら、考えられることは……」
「……姫路さんはすでにかなりの毒物耐性を得ている。ということか」
「「…………」」
「早く、なんとかしないとな」
「マジで頼むぞ、伊御」
如何でしたか?
あんな学園長は嫌だ!
そして、味見をしない。という発想が浮かばない伊御と榊であった。
では!
感想やご意見、評価を心よりお待ちしております。
これからも応援よろしくお願いします!!