Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち? 作:黒猫ノ月
今回は小山さん一色!
では、投稿です。
「……ん。これでいいかな」
「…………」
「? どうしたんだい?」
「……別に。なんでもないわ」
「みゃぁ〜〜ぁぅ……」(くしくし
さっきまでの警戒は何処へやら。白猫は今、私の腕の中で眠そうに手で目元を擦り、大きな欠伸とともに鳴き声をあげた。
私はその様子に小さくため息をつき、隣をそっと見やる。そこには白猫の様子に微笑む音無君の姿があった。
Fクラスの音無 伊御。
成績はAクラス上位者並み。温厚な性格で、滅多なことでは怒ることもない。顔もかなり整ってる方で、稀に見る人格者だ。そんな優良物件が放置されるはずもなく、私のクラスにも彼のことを狙ってる娘が確かいたと思う。
そして、どういうわけかFクラスに落とされた人だ。……そう。さっきまでのイライラの原因の一つであったバカコンビと同じクラスに所属し、かつそんな馬鹿どもといつも一緒にいる友人としても有名だ。
なんでそんな人が私の隣に座っているかというと、白猫の治療をしてくれたのが音無君だったからだ。
音無君とは、私が保健室に救急箱を取りに行こうとした際に、この物置と化した校舎で出くわした。出店の在庫がこの奥にあるらしく、それを取りに来たら様子がおかしい私を見かけたということだった。
私は音無君の性格や人柄を少しだけ知っていたから、彼に白猫の様子を見てもらうことを頼んで、私がその間に救急箱を取りに行こうとしたんだけど……その必要がなくなったのよね。
なぜなら、私の話を聞いた音無君が簡単な医療器具を一式すでに持っていたから。そこからは話が早かった。
音無君は私が白猫がいる方を指差した場所にゆっくり向かい、隙間を覗き込んで白猫がいることを確認したと思ったら……。
「おいで?」
そう一言、白猫に向けて言ってあげたらすぐ。
「み、み〜……」(よたよた
あれだけ警戒し、怯えていた白猫が足を引きずるように隙間から出て来て、音無君の腕の中にすっぽりと収まったのだ。その様子に私は唖然としながらも、何処か納得出来なかったのは仕方がないと思う。私だって心配してあげたのに……。
私のそんな心境が伝わったのか。音無君は白猫を抱きかかえて、私のところまで歩いて来た。そして……。
「小山さんも、君のことをすごく心配してくれたんだよ?」
「なっ!?」
音無君の言葉に私は動揺してしまい、顔が熱くなるのを感じた。今になって、自分が柄にもなく猫ごときに必死になってたのが恥ずかしくなったからだ。そんな私を彼は笑うこともなく、自身を見上げる白猫と見つめ合っていた。
白猫は音無君の言葉がわかるのか、雰囲気を察したのか。頬が熱くなってる私の方へ顔を向け、ジッとこちらを見上げてきた。
「…………」(じー
「な、何よ?」
「……みゃ〜」
「???」
「ふふっ。ありがとう、だって」
「はぁ? あなた、猫の言葉が分かるとでも言うつもり?」
音無君のことを鼻で笑う私を、しかし彼は微笑みをたたえて言葉を紡ぐ。
「分かるというか、多分そうだなって感じるくらいかな? ……ほら、手を差し伸べてごらん?」
「……こいつ、さっきまで私を威嚇してたんだけど」
「大丈夫だよ。この子も、いきなり小山さんが現れてびっくりしたんだと思う。おかげで、俺の時はある程度慣れてたから警戒を解いて出てきてくれたんだと思うよ」
音無君の言葉に、私は絶対違うと思った。だって私でも分かるもの。……彼は、動物に好かれるぐらい優しい人なんだなって。
「この子がお礼をしたいって。ほら……」
「……はぁ」
音無君の様子に引く気がないことを悟った私は、白猫へとゆっくり手を伸ばした。すると……。
「みゃう……」(ぺろぺろ
「あっ……」
「ね?」
「……ふ、ふんっ」
私は微笑む音無君を直視することが出来なかった。
それから、白猫を私が代わりに腕で抱きかかえて、音無君が白猫の足を治療をしてくれた。その間、白猫は時々痛みで身体を震わすことがあっても、逃げることも暴れることもせずに私の腕の中で大人しく治療されていた。
私も私で、猫をこんなに間近で接した機会なんて今までなくて……白猫の可愛さについつい頬が緩んでしまった。それを音無君が見ていたことに気が付いた時は慌てて誤魔化したけど、誤魔化せた自信は全くなかった。
そして今。治療も終えてホッと一息ついたところだった。
「あなた、出店はいいの?」
「ああ。榊……俺の友達に連絡したら、こっちはいいからゆっくり治療してやれって」
「そ。…………と」
「? 何か言ったかな?」
「……はぁ。ありがとって言ったのよ」
「……うん。どういたしまして」
「ふんっ」
「みゃうぅ〜」
それからは猫の鳴き声だけが辺りに響く。……気まずくはないんだけど、何かしらねこの空気。居心地が少しだけ悪いわ。
彼は彼で、私の腕の中の猫を撫でて「よかったね」って声をかけて微笑むばかりで……。居心地が悪いのは私だけみたいで、少し腹が立つ。
そんな時、私はふと前から思っていたことを音無君に聞いてみようと思った。それは、あの馬鹿どものことだった。
「……ねえ、音無君」
「うん? なんだい?」
「突然だけど、聞きたいことがあるの」
「?」
「……なんであなた、あんな馬鹿どもと一緒にいるの?」
「馬鹿ども……って、明久達のこと?」
「そう。あのFクラスの奴らよ」
「……、また君に何かしたのかな?」
「いいえ。私の元カレには随分とやってくれたけどね」
「そっか。それはごめ」
「そのおかげで、私は元カレと別れることになったわ」
「…………本当に、ごめん」
「別に、今となってはどうでもいいわ。で、どうなの?」
「……あー、うん。えーっと……」
申し訳なさそうにする音無君に私は冷めたようにそう言った。実際、それは私の本心だった。
根本君と別れたことに関しては、ホントにどうでもよかった。今は彼がどうしてあんな奴らと友達でいるのかの方が気になる。
どうして私はそんなことが気になっていたのか。それは、この前の試召戦争が終わった後の彼とのやり取りが原因だった。それは、あの試召戦争が終わったあとに彼が私のところまで謝罪しに来たときのことよ。
「小山さんはいるかな?」
音無君はCクラスに来てすぐにそう言って私を呼んだ。私に謝罪しに来た彼の手には、綺麗に包装されたクッキーがあった。
私はFクラスに嵌められたこともあって、かなりぞんざいに対応した。あの時は、対応するだけありがたいと思いなさいとまで思っていたわ。
音無君はそんな私の皮肉や罵倒に反論することもなく、ただごめんと謝るだけだった。そんな彼がごめん以外を口にしたのは、私の八つ当たり(今となっては八つ当たりだとわかる)がひと段落した頃合いだった。
「今回は俺の友人が本当にごめん。許してなんて、君を傷付けてしまったことを思えば絶対に口にできない。だけど、雄二達も仲間のために全力で頑張れる気のいい友人なんだ」
それからも彼は馬鹿どものことを庇いながら、誠心誠意私に謝罪した。
しばらくそんなことが続いたんだけど、謝る彼を嫌みたらしく対応するという図に、だんだんと周りも、そして私自身も私の方が悪者みたいに感じて……。それが嫌になった私は適当に彼の謝罪に了承し、水に流すことにした。
音無君は私の言葉にやっと安心したのか、ホッと息を吐いて今度は微笑みながら手に待っていたクッキーを私に渡してきた。
「お詫びと言ってはなんだけど。……これ、よかったらどうぞ。小山さんの口に合うといいな」
音無君の手に乗せられたクッキーを、私は適当に受け取って彼をさっさと帰した。彼は最後まで私に丁寧で、頭を下げて帰って行った。
私は音無君がいなくなったことでやっと一息つけたと思い、ゆっくりしてから帰ろうと思ったのだけど、彼の手作りクッキーを羨ましそうに見る他の娘達が鬱陶しくて、私は足早に自分の家に帰ることにした。
帰った私は自室で着替えて、やっと一息つけたと勉強机の前で身体の力を抜いた。それからぼーっとしてたんだけど、ふと机の上に置かれたクッキーが私の目に入った。私はなんとなしに、音無君から貰ったクッキーを一口食べてみたんだけど……。
「美味しい……」
それは私の口から自然と溢れた感想だった。そして、心の底から美味しいと感じられるものだった。こんなに美味しいものが手作りで、しかも男子が作ったことに驚愕したのは記憶に新しい。……女として釈然としなかったことも。
私はこんなに美味しいのは、音無君の気持ちが込められてるからなのかな、なんてらしくないことをこの時考えていた……恥ずかしいわね、もう。
けど、そんなことを考えていたせいか。私は音無君とのやり取りを思い出して、Fクラスだからと彼に八つ当たり(この時に八つ当たりだと気付いた)したことに少しだけ罪悪感を覚えた。でも、それも後の祭りで……。
だからこそ私はその時疑問を抱いたんだと思う。評判通り、近年稀に見るこんなに出来た人が、なんで馬鹿どもの尻拭いをしなくちゃいけないのか、と。
あいつらは学校一の問題児だ。音無君はそんな馬鹿どもが毎度問題を起こすたびに何かと後始末をしてきたんだろう。
音無君は嫌にならないのだろうか? 迷惑だと、鬱陶しいと思うわないのだろうか?
そんなことを考えながらも、どうせ彼とは話す機会なんてないからと罪悪感と疑問を飲み込んだんだけど……まさかこんな風に話す機会が訪れるなんて思わなかった。だからこの機会に聞いてみようと私は思ったの。
過去の回想を終えて、私はほとんど目を閉じている白猫を優しく撫でる。み〜……と閉じられた口の隙間から抜けるような鳴き声が聞こえた。
そんな風に白猫で和んでいると、私の質問に考え込んでいた音無君が口を開いた。
「……うん、そうだね。明久達と一緒にいる理由、それは……」
「……それは?」
音無君は私の目を見て、微笑みながらこう答えた。
「明久達がバカ、だからかな?」
…………彼に対して残っていた罪悪感が彼方に飛んで行ったのを感じた。
「はあ? ……あなた、私を馬鹿にしてる?」
「いや、そんなつもりはないよ」
「なら何よ?」
音無君はイラついている私から視線を逸らし、少し上を見上げて何かを思い出すように静かに語り始めた。
「前にも言ったかもしれないけど。俺の友人……特に明久なんかは、誰かのために全力で頑張れるんだ」
「…………」
「小さな女の子が泣いて困ってたら、その涙を笑顔に変えるために犯罪まがいのことをしたり。異国の転入生が周りの雰囲気に馴染めていなかったら、その国の言語を必死に勉強して友達になろうとしたり……」
音無君は、とても嬉しそうに……。
「同じクラスの女の子の私物にイタズラしようとする奴を見かけたら、そいつを全力で殴り飛ばしてやめさせようとしたり。先輩が後輩をいじめてる現場を見かけたら、そこが2階でも、3階だったとしても、そこから飛び降りて先輩を蹴り飛ばしたり……」
心の底から嬉しそうに……。
「どこまでもひた向きに、真っ直ぐに、馬鹿正直に。誰かのために頑張れる……俺の自慢の友人だ」
嬉しそうに……笑う。
「雄二達もそうだ。明久ほど破天荒ではないにしろ、誰かのために頑張れる俺の自慢の友人で、誰よりも真っ直ぐに突き進む明久を助けるために立ち上がれる……そんな奴らだ」
「…………」
そんな彼を見ていると、先程まであったイライラが収まって、今度は何か暖かいものが胸からじんわりと広がっていった。それには不快感なんてものはないけど……居心地は悪かった。それは、さっき感じていた居心地の悪さと似ていた。
「けど……真っ直ぐに進みすぎて、他を省みなさすぎるんだ」
「…………」
けれど、この今まで感じたことのない感覚が不思議と嫌じゃなくて。
「誰かのために頑張れることは間違いなく素晴らしいことだ。でも、だからと言って犯罪まがいのことをしたり、他の人に迷惑をかけていいわけじゃない。……試召戦争の時に、小山さんに迷惑をかけたように、ね」
「…………あれはビックリしたわね」
そしてまた不思議と、私はあの時のことを思い起こしても……何故だか今は笑えていた。
「うん。俺も聞かされた時は驚いたよ」
「ふふっ」
疲れたように苦笑する音無君を見て……また、笑う。
「まあ、そんなわけで……」
音無君は私を見て、今度は仕方のなさそうに笑いながら続ける。
「明久達はそこのところを理解してない節がある。そうやって犯罪まがいのことをして、心配する人がいるってことも含めてね。だから……」
「…………」
「だから俺が明久達の尻拭いをしたり、明久達を連れて謝りに行ったりすることで、少しでもそのことに気付いてくれたらいいなって俺は思うんだ。明久達は俺の自慢だから。友人として、誇りに思うから」
彼はまた優しく微笑んで、私に質問の最後に答えをくれた。
「まあ、長々と語ったわけだけど。結論としては、明久達はバカだけど……俺の自慢の友人だから。だから、一緒にいるんだ」
だから嫌にはならないんだと。迷惑とも、鬱陶しいとも感じないんだと。彼は笑って答えてくれた。
「……そう」
私はすっかり眠ってしまった白猫を起こさないよう抱え直し、彼の答えを自分の中に受け止めた。……そして、私は音無君の答えを聞き終えて、やっとこの居心地の悪さの正体に気付いた。
その正体は……音無君が振りまく“優しさ”だった。
私は思い出すことができるできる限りで、他人から優しさを向けられたことなんてなかった。家族からなら勿論ある。けれど、それ以外からは無かったと思う。
友達はいるけど、特に親しい人は居なくて。何度か男と付き合ったりしたけど、どこか薄っぺらい「好き」に途中で冷めて。……いつしか、人から向けられる気持ちを簡単には信じられなくなった。
そんな私が。今までどこか達観したフリをして生きてきた私が、初めて向けられた真っ白な優しさに戸惑っているんだ。でも、気付いてみたらその居心地の悪さは何よりも居心地がいいものになって……。私をその優しさで包んでくれているように感じた。
「……えーっと。俺の答えはこんな感じなんだけど、何かおかしなところがあったかな?」
「えっ? どうして?」
初めて感じる居心地の良さに浸っていたら、音無君からそんな言葉が飛んできた。
「だって、小山さんが笑ってるから」
「……笑って、る?」
「うん、笑っていたよ」
私は彼の言葉を聞いて思わず両手で頬を触ってしまった。しかし、その拍子に夢現だった白猫を起こしてしまい、白猫からは非難の目が向けられているように見えた。
「あっ、ごめんね?」
「みー……」(ジトーッ
「ふふっ。起こしちゃったね」
起こされて不機嫌だった白猫も、音無君に撫でられたらあっという間にゴロゴロと気持ちよさそうに鳴き出した。……チョロい猫。
「……んんっ。音無君、別にあなたの答えにおかしなところなんて無かったわ」
「ん? ……そっか」
「でもあんな奴らを自慢に、ね。……あなた、人生損しちゃうわよ?」
「そうでもないよ。俺はみんなといることが出来て、とても楽しいから」
「……あなたのお人好しもお手上げね。ま、馬鹿みたいにお人好しなあなたなら、あいつらともお似合いなのかもね。同じ馬鹿だし」
「酷い言われようだ……」
音無君は言葉とは裏腹に笑みを浮かべる。
「……フーッ」(威嚇
「あんたはお黙り」(ビシッ
「ふぎゃっ」(くしくしっ
音無君を庇うように威嚇する生意気な白猫に制裁を下して、私は立ち上がる。
あの居心地の良さは名残惜しいけど、そろそろ音無君を返さなくちゃね。彼も私に合わせて立ち上がって、着ている書生服を軽く叩いて整えた。そういえば……。
「音無君は何で書生服なんて着てるのかしら?」
「ああ。半強制的にこれを着て出店をすることを強いられてね。意外と着心地はいいんだよ」
「ふーん……」
私は抱いている白猫を落とさないように片手で抱き、音無君の服を触ってみる。……無駄に生地がいいわね。
「……小山さん?」
「あ、ごめんなさい。つい珍しくて……」
「ううん。気にしてないよ。……あ、そうだ」
彼はおもむろに袖口に手を入れ、中から携帯を取り出した。どこに入れてるのよ、あなたは。
「小山さん、よかったら俺と写真を撮ってくれないかな?」
「……どうしてかしら?」
「俺が君と仲良くなれた記念に、かな」
「…………」
いつもの私なら、「はあ? なんで私がそんなことをしなくちゃいけないのよ」って答えるんだけど……全く、仕方ないわね。
「……はあ、いいわよ」
「よかった。それじゃ……」
私と音無君は2人並んで、彼の携帯のカメラへと顔を上げる。その際に私らしくないとは思ったけど、彼の優しさにもっと触れたくて……自分から密着していく。……うん。優しくて……あったかい。
そんな私を不審に思うこともなく、音無君はカメラの角度を調整して……。
「それじゃあ、撮るよ」
「ええ」
「みゃ〜う」
そして、パシャリ……と。彼はシャッターを押した。
「……うん、よく撮れてる」
「見してみなさい」
「ほら」
音無君の携帯画面に映ってる私に、私自身が驚いた。だって、そこに映る私は……自分でも見たことがない顔で笑っていたんだから。
「私、こんな顔で笑えるんだ……」
「……? 小山さんはずっと笑っていたよ?」
「えっ?」
衝撃の事実に驚く。えっ!? いつから!?
「……俺が明久達といる理由を話している時ぐらいからかな?」
「嘘……」
「ふふっ。小山さんの笑顔は、優しくて魅力的な笑顔だね」
「なっ/////!?」
私は音無君の突然の言葉に声が詰まった。いやっ! 私の顔、絶対赤いっ!
「小山さん? どうしたんだい?」
「なんでもないわよ! この女たらし/////!」
「女たらし!?」
「ふんっ/////!」
私は赤くなってると思う顔を隠すように音無君から顔を背ける。何度か深呼吸をして、顔の熱が引いてきたかなって時に、チラッと彼を見た。
私の視界に映る音無君の顔は戸惑いに満ちていて、私の様子にオロオロとしていた。そんな普段では見れない音無君の姿が可笑しくって……ふふっ。
「あははっ」
「……小山、さん?」
私を伺うように見る音無君。……そうだ、いいこと思いついた。
「ねえ? 許してほしい?」
「え? あ、ああ。できることなら……」
「なら、私のことを次から名前で呼んで?」
「……そんなことでいいのか?」
「あら、ご不満? ……もしかして、私の下の名前を知らない、なんてことはないわよね?」
私が不敵に浮かべた笑みを見て、音無君も私が本気で怒ってるわけじゃないって気付いたみたい。
「……ふふっ、いいや。不満も、ましてや知らないなんてこともないよ。……友香」
「よろしいっ」
「それなら、俺のことも伊御でいいよ」
「それじゃ、お言葉に甘えて。……これからよろしくね、伊御♪」
「ああ。よろしく」
そして私達はお互いに顔を見合わせて笑いあった。除け者にされ白猫が私の腕の中で不貞腐れて暴れたけど、それを私はまたデコピンで黙らせたのだった。
これが私と伊御との出会い。
私が初めて優しさを知った日で。
私が初めて伊御の優しさと温もりに触れた日で。
私が恋に落ちるきっかけとなった……。
私の甘やかなプロローグ。
如何でしたか?
あれ? ギャグが迷子です……。
では!
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