Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち?   作:黒猫ノ月

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どうもです。

処女作と比べてサクサクと筆が進むっ! ヤバい、早くスランプから抜け出さなければ!

というわけで、投稿です。


第2話

一時は大変ひもじい思いをし、改めて友人の優しさを噛み締めた春休み。そんな春休みも明けて新学期を迎えた。前日(今日)のゲームが祟って、登校初日から桜がひらひらと舞う中をダッシュで登校。けれどその甲斐もなく遅刻してしまった。

 

そんな時に限って文月学園の玄関前でまさかの鉄人とエンカウント。さらには鉄人からの言葉に騙され、「やっぱ僕って言うほど馬鹿じゃないっ!?」と言う期待からのまさかの馬鹿確定宣告。……泣いていいかな?『F』と書かれた紙がそれを証明してるかのようで、余計に涙を誘った。朝から泣きっ面蹴ったりである。

 

目から流れる汗をそっと拭い、校内に入ると、まずはAクラスが見えたので中を覗いてみたが……なんだアレ、高級ホテルか何かかな? そこでAクラスの最高成績者の霧島さんを見たが、かなり美人な人だった。あんなに美人なのに、同性愛者という噂があるというのは残念だと思う。

 

そんなこんなでやっとFクラスにたどり着いたのだけど……なにこのボロ小屋、Aクラスとの格差がヒドイ。けれど、これからしばらくはここで過ごすのだ、そう文句を言ってられない。

 

僕は新学期初日から遅刻してしまったので、せめて最初の印象は良くしようと愛嬌たっぷりに教室に入ったら、突然の罵倒。「なんだこの先生はっ!?」と思ったら、教壇に立っていたのは悪友の雄二だった。先生が遅れているので、Fクラスの最高成績者としてクラスメイトを教壇から見ていたらしい。

 

Fクラスの最高成績者を器用に狙って手に入れた雄二とそこで話していると、先生がやって来たので適当な席に……なんで机が卓袱台なんだ? なんで畳なんだっ? なんで座布団なんだっ!? いくらなんでもこれはないだろっ!

 

思うことは多くあるけど、とりあえずは座って先生の話を聞いた。先生が不備がないかと尋ねたら、数人申し出た……けど、「我慢してください」や「自分で直してください」など……ヤバい、ここ相当ヤバいよっ!?

 

そして今は自己紹介の時間だ。早速僕の知っている生徒が立ち上がった。

 

「木下 秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」

 

秀吉は僕の友人の1人で、真宵さんと似た話し方をしている。だけどこっちの方はなんか武士っぽい話し方をしている。それも特徴的なところではあるが、何よりも特徴的なところは……見た目がもう、ね? 女の子にしか見えないんだ。だが、騙されるな! 秀吉はレッキとした男だ。

 

「…………土屋 康太」

 

次に立ち上がったの生徒も僕の友人だった。口数が少なく、大人しそうな外見だが、運動神経は僕と雄二並み。さらには男子生徒から“あること”に関して一目も二目も置かれている男だ。

 

次の人は知らない人で、また男子。やはりFクラスともなると女子はいないのかなぁ?

 

「……です。海外のドイツ育ちで、日本語は会話出来るけど読み書きは苦手です。あっ、英語もね? 趣味は……」

 

おっ、これは女子の声だ。考え事をしているといつの間にか数人自己紹介を終えていたらし……。

 

「趣味は吉井 明久を殴ることです☆」

 

誰だっ!? 恐ろしくピンポイントかつ危険な趣味を持つ奴はっ!

 

「ハロハロー、吉井。今年もよろしくねー」

 

活発そうな笑顔を向けて僕に手を振ってくる女子生徒は、島田 美波さん。ポニーテールがよく似合う子だ。一年の時におなじクラスだったんだけど、最初は避けられてたなぁ。あれ? いつからよく話すようになったんだっけ?

 

「どもども皆さん、私は片瀬 真宵! よろしくじゃよー」

 

あっ、また人が変わってる。今度は真宵さんだな、いつも通り元気いっぱいだ……ってちょっと待て、ここまで僕の知り合いだらけなんておかしくない? まさか類は友を呼ぶというやつでは……馬鹿なっ!? 僕がこのメンツと同類だなんてっ!

 

「は、はははじめましてっ! 春野 姫といいますっ。あぅ、えっと……うぅ〜、よろしくお願いします、ですぅ」

 

次の人も知っている……人ぉっ!? な、なんで春野さんがこんな底辺の掃き溜めにっ!? 春野さんならCクラスでもおかしくないはずなのに、何かあったのかな?

 

「御庭 つみき。よろしく」

 

僕の衝撃が収まる前に次の人が。今度も女子生徒で、またしても僕の知ってる人。うん、よかった〜。ちゃんとFクラスになれたんだね、御庭さん。ってことは……。

 

「音無 伊御です。趣味は……ゲームと料理、かな。これから一年、よろしくお願いします」

 

うん、やっぱり伊御は御庭さん近くにいたね。あの2人はセットだよねー、微笑ましい。ってうおっ! なんか魚をロックオンしてる狩人のようなネコの視線がっ!? ……御庭さんか、なんとなしに人の心を読まないでほしい。本当に素直じゃないんだからなぁ。

 

それからは僕の知ってる人もおらず、次々と色んな人が自己紹介をしていく。そしてやっと僕の番が回って来た。こういうものは最初が肝心。よし、軽いジョークも混ぜて自己紹介といこう。僕は立ち上がり、明るい感じで自己紹介をする。

 

「……コホン。えっと、吉井明久です。気軽に『ダーリン』って『『『『『ダァァーーリィーーンッ!!!』』』』』いえやっぱ結構です忘れてくださいこれからよろしくお願いします」

 

このクラスの奴らは馬鹿なのかっ!? まさかジョークを間に受けるなんてっ! ヤバい、吐き気が止まらない。……おい、そこのじゃよ女子とニブチンっ! 笑いを押し殺すなっ!!

 

僕の不快感をよそに、自己紹介は続いていく。そんな僕の不快感も無くなり、いい加減眠くなって来た頃、いきなり教室のドアがガラリと開いた。そこには胸に手を当てて息を整えている女子生徒の姿が見えた。

 

「あのっ、遅れてっ、すいま、せん……」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

しんっ、と静まり返る教室。そして少しずつ騒がしくなっていったあたりで、担任の福原先生がその女子生徒に話しかけた。

 

「丁度よかったです。今自己紹介をしているところなので、姫路さんもお願いします」

 

「は、はい! あの、姫路 瑞希といいます。よろしくお願いします」

 

小柄な体をさらに縮めて恐縮する姫路さん。彼女の容姿は一般的に見ても絶対に美少女と言われるもので、その今のもじもじとしている姿からも保護欲が次から次へと湧いてくる。しかし、このクラスのみんなはそんなことに驚いたんじゃない。

 

「はいっ! 質問です!」

 

「あ、はいっ。なんですか?」

 

「なんでここにいるんですか?」

 

そう。彼女は容姿もさることながら、学力も他の比じゃないんだ。入学してからテストでは学年一桁をキープしている。学年中の誰もが姫路さんはAクラスだと思っているだろう。

 

「そ、その……。振り分け試験の最中、高熱を出してしまいまして……」

 

その言葉に、クラスのみんなは「ああ、なるほど」と納得した。伊御が休んだり、御庭さんが無記名で出したりと強制的にFクラスに行かされるパターンには、試験の途中退出もあるんだ。

 

「そう言えば、俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに」

 

「ああ、化学だろ? アレは難しかった」

 

「俺は弟が事故に遭っ「黙れ一人っ子」おいっ、最後まで言わせろやっ!」

 

「俺も妹が熱で「「「紹介してください、お義兄様!」」」失せろ野郎どもっ! てめーらなんかに逢わすかっ!」

 

「ワタシは友人の風邪か気になって……」

 

「俺を言い訳にするんじゃない、面白さFクラス」

 

「もうやめるんじゃよそのネタっ!?」

 

姫路さんの言葉を皮切りに言い訳をしだす野郎ども。……ここは想像以上に馬鹿だらけだ。

 

「そ、それではよろしくお願いしますっ!」

 

そんな空気にいたたまれなくなった姫路さんは僕と雄二の隣の開いている卓袱台に座ろうとする。その顔は少し不安そうだ。……そうだ! 何事もコツコツと。ここで声をかけ、僕が少しでもその不安を取り除くことで姫路さんの僕への好感度は上昇。これで2人の物語が始まる!

 

「あのさ、姫「姫路」(この元神童(笑)っ! よくも遮ってくれたなっ!)」

 

「は、はいっ。なんですか? えーっと……」

 

「坂本だ、坂本 雄二。よろしく頼む」

 

「あ、姫路です。よろしくお願いします」

 

どうしてくれるんだ! 『私とあなたの出会い 〜私を気にかけてくれたあなた〜』が開始5秒で打ち切りになっちゃったじゃないかっ!

 

「ところで、姫路の体調は未だ悪いのか?」

 

「あ、それは僕も気になる」

 

と、先ほどの憎悪を仕舞い込み、2人の話に加わる。僕は振り分け試験の時、姫路さんの隣だったんだ。その時はとても具合が悪そうだったから、今も引きずってないか心配だ。

 

それから僕がいたことに驚く姫路さんに雄二が僕に対して大変失礼なフォローをしたり、僕のことを好きな……ぐすっ、だ、男子がいるっていう半分冗談の暴露を聞かされたり……。ねぇ、雄二っ! 残りの半分はっ!?

 

そんな話をしていると、少し大きな声で話しすぎたのだろう。福原先生が教卓を軽く叩いて僕達を注意した……瞬間、大きな音を立ててゴミ屑と化した教卓。……せめて先生が使う道具はまともなものにしとこうよ。

 

そのあと、先生が気まずそうに替えを用意してくると言って、足早に教室を出て行った。その様子に苦笑いをする姫路さんを見て、僕は思った。僕や雄二みたいに実力でここに来たならまだわかる。けど、姫路さんや伊御みたいな風邪や熱でいきなりFクラス行きはあんまりだ。

こうなったら意地でもまともな設備にしたい。

 

「……雄二、ちょっといい?」

 

「ん? なんだ?」

 

「ここじゃ話しにくいから、廊下で」

 

「別に構わんが」

 

「あと……伊御、ちょっと来てくれないかな?」

 

「……明久? いいけど」

 

2人を連れて廊下に出る。その時、一瞬だけ姫路さんと目が合って、御庭さんの獲物を見る目を見た……すぐに(伊御を)返しますんで。

 

「んで、話ってなんだ? 伊御まで連れて来て」

 

「……何かあったのか、明久?」

 

雄二は少し気怠げに、伊御は僕を見て少し真剣な表情を見せた。……ここなら人影もないし安心して話が出来そうだ。

 

「この教室についてなんだけど……」

 

「Fクラスか。想像以上に酷いもんだな」

 

「まあ、ね。さすがに腐りかけの畳に壊れかけの卓袱台、隙間風が吹く教室は予想できなかったよ」

 

「Aクラスの設備は見た?」

 

「ああ、凄かったな。あんな教室は他に見たことがない」

 

「そこいらのホテルより贅沢な感じだったな。……つみきもあんなミスをしなければあそこに行けたんだろうに、な」

 

……言えない。御庭さんが伊御と一緒にいたいがために無記名で提出したなんて、こんな悲しそうな顔をしている伊御には絶対に言えないっ!

 

僕は雄二と素早くアイコンタクトをとり、2人で絶対にバレないように隠し通そうと誓った。

 

「んんっ。そこで僕からの提案。折角2年生になったんだし、『試召戦争』をやってみない?」

 

「『試召戦争』を、だと?」

 

「また急だな」

 

「うん。しかもAクラス相手に」

 

「……何が目的だ」

 

僕の言葉に、雄二の目が細くなる。どうやら警戒されているようだ。なんて最低なやつだ! 友人を疑うなんて!

 

「いや、だってあまりに酷い設備だから」

 

「嘘をつくな。全く勉強に興味がないお前が、今更勉強用の設備のためなどに戦争を起こすなんてあるはずないだろう」

 

うぐっ、相変わらず勘だけは元神童ながら妙にいいな。

 

「そ、そんなことないよ。興味がなければこんな学校に来るわけが……」

 

「明久がこの学校を選んだのは『試験校だからこその学費の安さ』が理由じゃなかったか?」

 

「そうだな」

 

しまった! 2人には僕がこの学校に来ている理由を話したことがあるんだった。な、何かないか! 何かっ! ……そうだ!

 

「い、伊御が可哀想だと思ったんだっ! 確かに体調管理は大事かもしれないけど、風邪で休んだだけでFクラス行きはヒドイよ! だから御庭さんはうぼあぁっ!!?」

 

「ゆ、雄二っ!? なんで明久の鳩尾に膝蹴りを叩き込んだんだ!?」

 

「いやなに。素直に吐かないこいつにウンザリしてな!」

 

(お前の頭は本当に脳みそが詰まってんのかっ!? さっき隠し通すと決めたじゃねぇかっ!)

 

(ゴホッ、ゲホッ……ご、ごめん! ゴホッ)

 

確かに僕が悪かったけど、イキナリ膝蹴りは酷くないっ!?

 

「……ん? 今つみきって……」

 

「伊御の聞き間違いだろう。なんでここで御庭が出て来るんだ?」

 

「(コクコクコクッ)」(あまりの痛さに声が出ない

 

「そうか? ……そうだな」

 

ふうぅ〜〜、なんとか誤魔化せたみたいだ。けど、それじゃあどう言い訳しよう。

 

「……はぁー。姫路の為だろ」

 

ビクゥッ!

 

お腹を抑えて猫背になっていた背筋が真っ直ぐに伸びる。

 

「(ど、どうしてそれをっ!?)」(痛みで声がまともに出ない

 

「ん? そうなのか?」

 

「そのようだぞ伊御。……本当にお前は単純だな。カマをかければすぐに引っかかる」

 

雄二は僕を楽しげに見ながら笑みを浮かべる。嵌められたっ!

 

「いや、さっきの言葉もあながち嘘ではなさそうだな。3対7で伊御の為もあるか? もちろん伊御が3な」

 

「ふむ」

 

「(別にそんな理由じゃ……)」(痛みが引いて来てる

 

「はいはい。今更言い訳は必要ないからな」

 

「……明久、俺はついででも嬉しいよ。……健気だね」

 

「だから本当に違うってば!」(治った

 

やめろ、そんな微笑ましい目で僕を見るなっ! そんなで目で見ていいのは伊御と御庭さんだけだっ! ……ダメだ、全然取り合ってくれない!

 

「気にするな。お前に言われるまでもなく、俺自身Aクラス相手に試召戦争をやろうと思っていたところだ」

 

「え? どうして? 雄二だって全然勉強なんかしてないよね? 」

 

「また初耳だな」

 

「……世の中学力が全てじゃないって、そんな証明をしてみたくてな」

 

「???」

 

「…………」

 

どこか遠くを見ながらそんなことを話す雄二に疑問を浮かべる僕と静かに見つめる伊御。……なんだ? らしくない。

 

「それに、Aクラスに勝つ作戦も思いついたしな」

 

「え、あ、そう……」

 

先ほどの憂いを帯びた感じが失せて、好戦的な表情を見せる雄二。おっ、らしくなった。

 

「……うん、いいね。やろうか、試召戦争」

 

「おっ、伊御も乗り気だな」

 

「ああ。明久の気持ちも嬉しいし、何よりつみきをAクラスの設備にいれてあげたいんだ」

 

「伊御……うんっ、やろうっ!」

 

伊御の優しげな笑顔に頷く僕。やれる、僕たちなら!

 

「おっと、先生が戻って来た。教室に入るぞ」

 

「うん」「ああ」

 

雄二に促されて僕達は教室に戻った。それからは先生が気を取り直して自己紹介を続けさせた。特に問題も起こらず、また淡々とした自己紹介が続いた。

 

そして、最後に雄二の番が回って来た。先生に呼ばれ、返事をした後、ゆっくりと堂々とした足取りで教卓に向かっていく。その姿はFクラスの代表に相応しい貫禄のようなものが身を包んでいるようだった。

 

「Fクラス代表の坂本 雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれ」

 

教卓に上がり、教室を見渡すように話す雄二。Fクラス代表といえどどんぐりの背比べ。他の人とは大して変わらない存在。

 

「さて、皆に一つ聞きたい」

 

クラスメイト一人一人目を合わせながら告げる。今このクラスの中で、雄二を見ていない人はいない。そして全員を見た後、雄二の視線は今度はこのクラスの設備ひとつひとつに目を向ける。

 

カビ臭い教室

 

腐りかけの畳

 

古く汚れた座布団

 

薄汚れた卓袱台

 

隙間風が吹く窓際

 

雄二の視線を追って見るこの教室の設備は本当に最悪だ。

 

「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが……」

 

雄二は一拍おいて、静かに告げる。

 

「……不満はないか?」

 

「「「「「大ありじゃぁ(にゃぁ)っ!!」」」」」

 

ボロ小屋に響くFクラス生徒の魂の叫び。

 

「だろう? 俺だってこの状況は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」

 

「そうだそうだ!」「いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ!」「改善を要求する!」「これじゃあ補強は出来ても流石に改造はできないにゃあ!」「勝手に改造しない」

 

堰を切ったかのように溢れる不満の数々。

 

「皆の意見はもっともだ。そこで……」

 

クラスメイトの反応に満足したのか、自信に満ちた不敵な笑顔を浮かべて、本題を言い放った。

 

「FクラスはAクラスに……『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う!」

 

Fクラス代表、坂本 雄二はこれから始まる戦争の引き金を引いた。




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