Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち?   作:黒猫ノ月

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どうもです。

今回は少し短いです。キリがいいところで止めたので(汗

では、投稿です。


第4話

面倒な話し合いになりそうだったから逃げようとしたのに、島田さんに捕まってしまった。仕方ないので雄二達の後を追おうとしたら、僕を捕まえた本人の島田さんが立ち止まってブツブツ言ってたんだけど……あれはなんだったんだろう?

 

しばらく歩くと、先頭の雄二が屋上への扉を開けて外へ出た。すこし早いがもうお昼だ。風の冷たさもなくなり、みんなが暖かな春風に撫でられる心地よさに目を細める。……ムッツリーニは風ではためく姫路さんのスカートを注視しようとして伊御に成敗(内側から弾ける拳)されてた。

 

「明久。宣戦布告はしてきたな?」

 

雄二が腰を下ろしながら僕に確認してきた。

 

「一応今日の午後に開戦予定と告げてきたけど」

 

雄二の後にみんながその周り腰を下ろした。

 

「それじゃ、先にお昼ご飯ってことね?」

 

「そうなるな。明久、今日の昼ぐらいまともな物食べろよ? 春休みの時みたいにくたばられても困るからな」

 

「くたばってないよ!? もう少しで骨と皮になりかけてただけさっ!」

 

「それはそれでヤバいと思うんじゃけど……」

 

「あの時は本当に死にそうだったからな……」

 

伊御、あの時は本当にお世話になりました!

 

「えっ? 吉井君ってお昼食べない人なんですか?」

 

姫路さんが驚いたように僕を見る。彼女は僕と違って規則正しく生活してるんだろうな。……色々発育があっ!?

 

「御庭さんと島田さんっ!? 如何しましたのでしょうかっ!?」

 

2人の拳が僕の両頬を掠めたんだけどっ!?

 

「「何か不穏な気配を感じたから(の)」」

 

「僕は2人に対して何も感じて無いよっ!?」

 

そうさ、僕は姫路さんの発育に目を向けていただけさっ! ……あ、ごめんなさいなんでも無いですのでその拳を下ろしてください。

 

「食べる食べないの話じゃ無いと思うがな」

 

「……何が言いたいのさ」

 

僕は御庭さんと島田さんを宥めながら、雄二の哀れむような声に反応した。

 

「いや、お前の主食って……水と塩だろう?」

 

「失敬な! ちゃんと砂糖も食べているさ!」

 

「あの、吉井君。水と塩と砂糖って、食べるとは言いませんよ……」

 

「舐める、が表現としては正解じゃねい」

 

なんか、みんなの目が妙に優しいのが逆に辛い。

 

「はあ。……ほら、明久。サンドイッチだ」

 

伊御がサンドイッチの一切れを僕に渡してくれた。……あれっ、伊御の顔が歪んで見える。

 

「うぅっ、ぐずっ、ありがとぅ。伊御が天使に見えるよ」

 

「大袈裟……ってわけでも無いのが悲しいところじゃの」

 

「明久君、ちゃんと食べなきゃダメですよ?」

 

「ダメよ姫。吉井には命をかけてもやらなきゃいけないことがあるから」

 

「えっ、なんか想像以上に壮大なんだけど!? 何があるのよ吉井!」

 

「ただ自分の趣味に全力で金を使い込んでるだけだ」

 

「し、仕送りが少ないんだよっ!」

 

両親が海外出張に出ているから、仕送りも貰ってるんだけど……趣味ってお金がかかるよね♪

 

「……あの、良かったら私がお弁当を作ってきましょうか?」

 

「ゑ?」

 

伊御の優しさが嬉しくて僕の耳も遂におかしくなったかな? ……えっ、お弁当? 女の子のっ? 手作りのっ!?

 

「本当にいいの? 僕、お昼に塩と砂糖以外のものを食べるなんて久しぶりだよ!」

 

「はい。明日のお昼でよければ」

 

「ありがとう!」

 

やった! 姫路さんの手作りだっ!

 

「……俺がさっきあげたサンドイッチは無かったことになったのか」

 

「「「「「最低」」」」」

 

「あっ!? 違うんだ伊御!? これは……っ」

 

ああっ、そんな顔しないで伊御っ! 僕のメンタルがヤスリで削られていく!

 

「……クスッ。冗談だよ明久。……良かったね」(ボソッ

 

「っ!? 〜〜〜っ」

 

そんな微笑ましい顔しないで! 恥ずかしくなるからっ!

 

「……ふーん。瑞希って随分優しいんだね。吉井に“だけ”に作ってくるなんて」

 

島田さんがなんだか面白くなさそうにそんなことを言った。なんでそんな棘のあることを言うんだ! 「やっぱりやめます」なんて言われたらどうしてくれるんだ!

 

「あ、いえ! その、皆さんにも……」

 

「俺達にも? いいのか?」

 

「ワタシ達に遠慮しなくていいんじゃよぉ?」(ニヤニヤ

 

「ふぇっ!? い、いえ! お嫌じゃ無かったらぜひ」

 

姫路さんは少しワタワタしながらもにこやかに頷いてくれた。……僕だけじゃなくなったのは残念だけど。

 

「私達の分まで……大変ではないですか?」

 

「いえ、大丈夫ですよ。たくさん作って来ますから」

 

「それは楽しみじゃのう」

 

「…………」(コクコク

 

「そうだね」(ぽふっ

 

「…………」(ネコミミぴっこぴっこ)

 

「……お手並み拝見ね」

 

「……ふふふ。素直じゃ無いんじゃよ美波さ〜〜ん」(ニヨニヨ

 

「なっ、なんの話よっ!」

 

これだけの人数分のお弁当を作ることになったのに、嫌な顔一つしないで微笑む姫路さん。

 

「姫路さんって優しいね」

 

「そ、そんなこと……」

 

心からそう思う。なんて献身的で、魅力的な人なんだ。

 

「今だから言うけど、僕、初めて会った時から君のこと好き「おい明久。今振られると弁当の話がなくなるぞ」にしたいと思ってました」

 

さすが僕、失恋回避に成功だ。言い切る前だからこそできる回避行動と判断力だ。

 

「……それだと自分の欲望をカミングアウトした、ただの変態よ」

 

恨むぞ僕の判断力。

 

「……貧乏根性に負けてヘタレてしまったんじゃよ」

 

「負け犬根性丸出しじゃのう」

 

「明久……」

 

「だって……お弁当が……」

 

それもこれも僕が今を生き残るため。全ては貧乏が悪いんだ!

 

「さて、話がかなり逸れたな。試召戦争に戻ろう」

 

そうだった。すっかり忘れていた。……ほらみんな。僕をそんな目で見ないで雄二に注目しよう。

 

「雄二。一つ気になっていたんじゃが、どうしてDクラスなんじゃ? 段階を踏んでいくならEクラスじゃろうし、勝負に出るならAクラスじゃろう?」

 

「そういえば、確かにそうですね」

 

「まあ、雄二さんのことじゃから何か考えがあるんじゃろうけど」

 

「まぁな。当然考えがあってのことだ」

 

みんなの声に、雄二が鷹揚に頷く。

 

「ほぇ? どんな考えです?」

 

「色々と理由はあるんだが、とりあえずEクラスを責めない理由は簡単だ。戦うまでもないからだ」

 

「え? でも僕らよりクラスは上だよ?」

 

「それに……榊さんもいるんじゃよ」

 

真宵さんの言葉に、不敵に笑う榊が思い浮かぶ。……確かに、榊なら雄二の策を引っ掻き回しそうだ。

 

「奴のことなら問題ない。すでに買収は済ませてある」

 

「……いつの間にそんなことをしてたんだ?」

 

「伊御達がFクラスに来た後には行動していた。奴にはEクラス代表を言いくるめるようにも言ってある。……今回の試召戦争を傍観しないと、真宵の恐怖がクラスを襲うぞと」

 

「それはもはや脅迫ではっ!?」

 

「……知らない間に脅迫の材料にされてたんじゃよ」

 

真宵さんも榊に負けず劣らずの問題児だからなぁ。全く、僕の周りは問題児だらけだ。

 

「さて、確かに振り分け試験の時点では向こうが強かったかもしれないが、実際のところは違う。明久、周りの面子をよく見てみろ」

 

「えーっと……」

 

雄二に言われた通りその場にいる面子を見回してみる。ふむふむ、僕の周りには……。

 

「美少女が4人と馬鹿が3人、ムッツリが1人に優しさの塊が1人いるね」

 

「誰が美少女だと!?」

 

「ええっ、雄二が美少女に反応するの!?」

 

「…………」(ぽっ

 

「あ、明久……その、照れるのじゃが」

 

「嬉しいよ、明久」

 

「男が全員反応しただと!? 確かに美少女4人とは言ったけど、お前達自分の性別を思い出せっ!」

 

「「「「明久が言ったんだろう?」」」」

 

「っだーーー!! ツッコミが追いつかないっ!」

 

僕は素直に答えただけなのに、なんでこんなにしんどい思いを……はっ!?

 

「貴様ら! 僕を使って遊んでいるなっ! 」

 

「「「「やっと気付いたのか」」」」

 

なんて奴らだ! 友人で遊ぶなんて友人の風上にも置けない!

 

「ってあんた達。話が脱線してるわよ!」

 

「明久さんも落ち着くんじゃよ」

 

「ん、そうだな。少しいじり過ぎた。……まあ、要するにだ」

 

何事もなかったように雄二が説明を再開し、雄二に注目する面々。……なんだろう、このやり切れなさは。

 

「姫路に御庭、伊御がいる今、正面からやり合ってもEクラスには勝てる。Aクラスが目標である以上はEクラスなんかと戦っても意味がないって事だ」

 

「? それならDクラスとは正面からぶつかると厳しいの?」

 

「ああ。“今の時点”では確実に勝てるとはいえないな」

 

「今の時点?」

 

「忘れたのか。伊御達は今点数は無いんだぞ」

 

「あっ!」

 

そうだった。伊御や御庭さん、姫路さんは欠席や無記名、途中退席で点数がそもそも無いんだった。

 

「春野もうっかりで今は点数がそれこそFクラス並だ。まずはこいつらのテストを受けさせなければならない」

 

「そういえば、春野さんはなんでFクラスに?」

 

「そ、それはぁ……うぅ〜」

 

なんでも、ほとんどの科目で解答欄が一つずつズレていたとか。……春野さんのうっかりぶりが涙を誘う。

 

「というわけでだ。主力の点数を補充している間、Dクラスを相手に戦えるのはお前達しかいない。そうなるとDクラスは中々にいい相手だ」

 

「雄二君。それならそれこそEクラスの方が良かったのではないのですか?」

 

春野さんのいう通りだ。わざわざ脅してまでEクラスと戦わないようにしたのはどうしただろう?

 

「……まあ、色々あるんだよ。これもAクラス打倒に必要なプロセスだ。ついでに言えば、2つ上のクラスを倒せば嫌でも士気は上がるだろう?」

 

「ほえぇ。雄二君は色々考えてるんですね」

 

春野さんのキラキラした目に顔を背ける雄二。……心が汚れている奴は純粋なものに目を合わせることができないからねっ。

 

「でも坂本。そもそもこの話ってDクラスに勝てなかったら意味ないわよ?」

 

「負けるわけないさ」

 

島田さんの疑問に、雄二は笑い飛ばしながら自信を持って言い放った。

 

「お前らが俺に協力してくれるなら勝てる」

 

そして、雄二はここにいるみんなそれぞれに目を合わせながら断言する。

 

「いいかお前ら。うちのクラスは……最強だ」

 

それは不思議な感覚だった。根拠のない言葉なのに、本当にそうだと思わせてくれる力が雄二にはあった。

 

「いいわね。面白そうじゃない!」

 

「そうじゃな。Aクラスの連中を引きずり落としてやるかの」

 

「…………」(グッ

 

「が、頑張りますっ」

 

「フェッフェッフェッ。腕がなるんじゃよ☆」

 

「むんっ。こ、今度は間違えませんっ」

 

「さて。下克上と行こうか」

 

「……おー」

 

雄二の言葉を聞いたみんながそれぞれ自分を奮い立たせる。

 

打倒Aクラス。

 

他の人たちが聞けば、何を馬鹿なと鼻で笑うだろう。机上の空論だと蔑むだろう。……でも、やってみないと何も始まらないんだ。

 

「そうか。それじゃ、作戦を説明しよう」

 

春の陽光が降り注ぐ中、僕らは勝利への階段の第一歩を踏み出した。

 

 

 

【おまけ】

 

 

 

Eクラス教室

 

「おーい中林!」

 

「? 何かしら戌井くん」

 

「ああ。どうやらFクラスがDクラスに試召戦争を仕掛けるらしいんだ」

 

「はあ? 進学初日から? 馬鹿じゃないの? ……ああ、馬鹿の集まりか」

 

「ん、まあそういうわけで、俺はFクラス代表から言伝を持ってきたんだが……試召戦争中は一切動かないでほしいということだ」

 

「……ムカつくわね。なんで私たちがFクラスなんかのいうことを「もし動いたならば、片瀬 真宵の恐怖がEクラスを襲う。だと」…………」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「ふ、ふんっ! だからどうしたのよ。……ま、まあ今回は様子見ってところね」(スタスタスタ

 

「「「「「…………ほっ」」」」」

 

「……真宵のやつ。何しでかしたんだ?」




如何でしたか?

なんのヒントとは言いませんが、Eクラスって部活系の人たちが多いよね? ……丈夫な人たちが多そうだ。

では!
感想や意見、評価を心よりお待ちしております!
これからも応援よろしくお願いします!!

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