Q.バカはあっち、テストはこっち。では、召喚獣はどっち? 作:黒猫ノ月
今回はとても楽しく書かせていただきました。
では、投稿です。
□Fクラス□
「吉井! 木下たちがDクラスの連中と渡り廊下で交戦状態に入ったわよ!」
ポニーテールを揺らしながら僕の元に駆けてくるのは同じ部隊に配属された島田さん。……うーん。改めて島田さんを見ると、顔立ちは整っていて脚も細くて綺麗なのに何か女性的な魅力に欠ける。何が足りないんだ……ああそうか。
「胸か」
ヒュオッ(島田さんの足が僕の首を狙う音)
サッ(頭を後ろに下げて避ける僕)
グサッ(その僕の眉間を狙ったシャーペン)
「んのぉぉーーっ!?」(ピューッ
僕の額から血がっ、血がっ!
「ふんっ! デリカシーのないことを言ってるからそんな目に合うのよ」
額を押さえて転がる僕を見下す島田さん。確かにその通りかもしれないけど、いったいどこからっ!?
痛みをこらえて辺りを見回す。……と、こちらをテストを受けながら雰囲気で威圧する御庭さん。そして何事もなかったよう問題を解く面々と監督する先生。……どうやら御庭さんの技が速すぎて誰も気がつかなかったようだ。もはや人間離れした所業だよね。
「ふ、ふーっ。とにかく、試召戦争に集中しないと」
僕は額を押さえて立ち上がり、前線部隊がいる渡り廊下付近に部隊を連れて向かった。
□渡り廊下前□
額の傷も治り、僕は部隊長としてみんなを導くために戦場の雰囲気を感じて気を引き締めようとする。戦線へと意識を集中させ、そして聞こえてきたのは……。
『さあ来い! この負け犬がっ!』
『て、鉄人!? 嫌だ! 補習室は嫌なんだっ!』
『黙れっ! 捕虜は全員この戦争が終わるまで補習室で特別講義だ! 終戦まで何時間かかるかわからんが、たっぷりと指導してやるからな』
『た、頼む! 見逃してくれ! そんな拷問耐えられない!』
『拷問? そんなことはしない。これは立派な教育だ。補習が終わる頃には趣味が東○テスト、尊敬する人は○先生、といった難関大学を目指せる学生に仕立ててやろう』
『い、○でしょっ!? お、鬼だ! 誰か助けっ(バタン、ガチャ』
…………よし、試召戦争の雰囲気は大体わかった。
「島田さん、この援護部隊全員に通達」
「ん、なに? 作戦? 何て伝えんの?」
ここで僕が出すべき指示はただ1つ。
「総員退避、と」
「この意気地なし!」(ぶすっ
「目が、目がぁっ!」
そして殴られる僕。……チョキで。普通グーかパーじゃないっ!?
それから島田さんに自分達の部隊が担う役割の重要さを諭され、僕は目が覚めた(痛みで開かないけど)。島田さんの上に立つものとしての素晴らしさに涙が止まらないよ(多分原因は違う)!
「ごめん、僕が間違ってたよ。補習室を恐れていてはAクラスになんか届かない!」
「ええ。確かにウチらは弱いけど、これは戦争。多対一で戦えば良いのよ」
そうだ、点数が低いことは百も承知。それに雄二は言っていたじゃないか。学力が全てではないんだっ!
「そうだね。よし、やるぞ!」
「うん。その意気よ、吉井!」
拳を上げて意気込む僕達。そして、そんな僕達のところにやってくる前線からの報告係。
「吉井、島田! 前線部隊が後退を始めた!」
「「総員退避だ(よ)」」
うん。僕らには荷が重すぎた。僕らは精一杯頑張ったよ。
くるりとFクラスへの方向転換。すると、振り返った先にはFクラスに配置されているはずの横田君がいた。
「吉井隊長! 代表より伝令です!」
「なんだい横田君。僕達はこれから退「逃げたら御庭のアイアンクロー」全員突撃しろぉーーっ!」
気が付いたら戦場に向かって全力ダッシュをかましていた。僕達はFクラスのため、神風となる覚悟がある! …………僕はまだ顔を剥ぎ取られたくない。と、前方からこっちに向かってくる美少……年を発見。
「明久、援護に来てくれたんじゃな!」
「秀吉、大丈夫?」
「うむ。戦死は免れたが、点数はかなり厳しいところまで削られてしまったわい」
「真宵さんは?」
「計画通り、殿を務めておるよ」
真宵さんの今回の役割は、戦うのではなく……“戦わせない”といものだ。……ほら、聞こえて来たよ。
「五十嵐先生! Dクラス金岡、召か『ぼえぇーーっ!!』」
「先生! Dクラス岩無、召『ぼえぇーーっ!!』」
「布施先生! D『ぼえぇーーっ!!』」
「「「うるせーーーっ!!!」」」
「にょほほほほほっ!」
何か大きなものを肩に担ぎ、奇妙な笑い声をあげる真宵さん。真宵さんは音の衝撃を受けぬように、耳にヘッドホンのようなものをつけている。……そして、肩に担いだものから吠えるように爆音を振りまくのは、『蒼たぬき産 某世紀末の歌声君』だ。
試召戦争は召喚者の直接戦闘は禁止されているため、いつかのような『ネバネバくん六号』のようなものを使った足止めはアウトだ。……ならば間接的に妨害しようと開発されたのがアレだ。
召喚の際は、先生の許可を得るため『召喚』の言葉を言い切る必要がある。そこであの道具だ。大音量による爆撃は生徒の声をかき消し、先生の耳には『召喚』の言葉は届かない。……さすが真宵さんだ。
「相手はどうやら化学教師を連れて来たようでの。それによって戦線が拡大して撤退を余儀なくされたんじゃが……片瀬は埒外じゃのう」
その様子にため息と苦笑を浮かべる秀吉は、そう言って前線部隊を連れて点数を補充するために下がっていった。
「島田さん、早く真宵さんと合流しよう! 流石に1人では音の妨害も限度があるよ」
「そうね。行くわよ、みんな!」
「「「「「おおーっ!」」」」」
そして僕はみんなを連れて駆け出し、すぐに真宵さんと合流した。
「真宵さんお疲れ様! 僕達が援護するから下がって!」
「りょ〜! ではでは、後は任せたんじゃよー!」
そして後方へと下がって行く真宵さん。……次はなにをしてくれるんだろうか?
その後は、総合科目と化学による戦闘が渡り廊下で繰り広げられる。僕と島田さんは化学に自信がなかったので、少し遠くの学年主任である高橋先生のところまで行こうとしたら、島田さんがクルクルツインテールの子(清水 美春と言うらしい)に見つかった。
「よし、島田さん。ここは君に任せて僕は先を急ぐよ!」
「ちょっ! 普通逆じゃない!? 「ここは僕に任せて先に行け!」じゃないの!?」
「そんな死亡フラグ建設予定はありません!」
「この根性無し!」
なんとでも言うがいい。
「お姉さま、お覚悟ですっ!」
「くっ、美春。……やるしかないってことね……!」
彼女達の近くにいる五十嵐先生から十分離れて、向こうの様子を伺う。2人は向かい合って召喚獣を呼び出した。
「「試獣召喚っ!」」
2人の間に召喚された召喚獣。それは各々をデフォルメしたような姿だった。そして始まる戦いは、舌戦と共に行われた。その内容は痴情のもつれのようで……なんか、島田さんが遠い。
得物による打ち合いの後、最後には力比べが始まり……島田さんが押し負けた。武器を取り落とした島田さんの召喚獣を押し倒し、刃を喉元に突きつける清水さんの召喚獣。その頭上には……。
化学
『Fクラス島田 美波ー23点 VS Dクラス清水 美春ー41点』
点数はまだあるが、急所をヤられたら一発で終わる。喉元に刃が突きつけられている今、島田さんは迂闊に動けない。
「さ、お姉さま♪ 勝負はつきましたね?」
「い、嫌っ! 補習室はっ「フフッ。補習室なんかには行きませんよ? お・ね・え・さ・まっ♡」……え?」
「お姉さま。……この時間なら、ベッドは空いていますよね?」
清水さん! こんな大事な時に欲望に忠実すぎるっ!
「よ、吉井! 早くフォローをお願いっ! このままじゃウチは補習室行きより危ぶないことになりそうなのっ!」
だろうね。清水さんの目が血走ってるもん。でも……。
「殺します。美春とお姉さまの邪魔をする人は、八つ裂きです」
ごめん。僕の死地はここじゃないんだ。
「島田さん、君は永遠に僕の心の中にいるよ!」(ダッ!
「えっ/////!? ちょっそんないきなり……っ/////。 ……え、吉井? なんで背中を見せるの吉井ーーーっ!?」
「さあお姉さま♡ 美春と……結ばれましょう?」
「……っイヤァーーーーーっ!!「……島田さんっ! い、今から加勢しますっ!」……えっ」
島田さんの貞操の危機に颯爽と現われたのは……春野さんっ!?
「い、五十嵐先生! Fクラスの春野 姫、試獣召喚ですっ!」
春野さんの声に呼ばれた彼女の召喚獣は、彼女そっくりのとても愛らしいフォルムで召喚された。可愛らしい白のワンピースを身に纏い、黒のカチューシャを付けている。装備は花の装飾が施された銀の胸当てぐらいしか見当たらない。そんな春野さんの召喚獣だが、1番目を引くのは……召喚獣がギュってしているとても大きなクマのぬいぐるみだ。
見た目は春野さんを表したような無害そうな召喚獣だけど……上に表示されてる点数がエグい。
化学
『Fクラス春野 姫ー132点 VS Dクラス清水 美春ー41点』
春野さんの登場とその点数に唖然とする清水さん。そんな無防備な清水さんの召喚獣に春野さんの召喚獣がぬいぐるみを振りかぶり……ってまさか。
「えぇい!」
可愛い掛け声とともに、春野さんはどぐしゃーーっ! とぬいぐるみが出した音には聞こえない音を叩き出して清水さんの召喚獣を壁に思い切り叩きつけた。……無抵抗で受けたため、一気に清水さんの点数が0になる。
「戦死者は補習ーっ!」
「は、離してくださいっ! お姉さまっ! 美春は、美春は諦めませんからねーーーっ!」
どこからともなく現れた鉄人に連れて行かれる清水さん。……うん。悪は滅びる定めだよねっ!
貞操の危機が去って安心したのか、それとも自分が助かった状況が信じられないのか。島田さんは立ち尽くしたままだ。
「……え、えとえと。大丈夫ですか、島田さん?」
そんな島田さんを心配し、少しおどおどしながらもそう尋ねる春野さん。……さっきの救い方といい、春野さんが戦場の天使に見える。
「……ぇ……ぅ」
「あ、あのー?」
「……っ姫ーーーーーっ!!!」(ぎゅうぅぅっ
「はうあぁっ!?」
正気に戻った島田さんが、自分を助けてくれた戦場の天使に嗚咽をこぼしながら抱きつく。
「あり、とう……うっく、ありがとおっ。……ひぐっ」(ぐすっぐすっ
「??? ……だ、大丈夫ですよぉ〜。もう怖くないですよぉ」(よしよし
なんでこんなに泣いているのかわからない春野さん。それでも島田さん何かを怖がっていたことは分かったのか、島田さんの頭を撫でながら優しい声で宥めている。このすんっっごい微笑ましい光景にここが戦場だと忘れそうになる。
「春野さん。よかったらこのまま島田さんをFクラスまで連れて行ってくれないかな? 点数の補充も兼ねて休ませる必要があると思うから」
「は、はひ。わかりました」
「……ぐすっ。姫、ちょっと待って」(ボソッ
「ふえ? ……いいですよ」
くっ、しかしさすがはDクラス! Fクラス幹部である島田さんをここまで追い詰めるなんて……許さないっ! 君の仇は僕がっ(ガシッ)…………えっ?
「……あの、島田さん? なんで僕の後頭部を掴んでいるのかな?」
「…………」
「……し、島田様?」
「…………吉井」
「は、はいっ!?」
ヤバイッ! 島田さんの僕を呼ぶ声に、未だ嘗てない僕の第七感あたりが危険信号を発しているっ!
「ウチを、見捨てたわね?」
「…………」
「見捨てたわね?」
「……記憶にござ「潰れて果てろおおおぉぉぉっっ!!」ぷぎゃあああぁぁぁーーーーーっっ!!」(グッシャァッ!
「あ、明久くーーーーーんっ!!?」
女性である島田さんの何処からこのような力が出てきたのか。島田さんは力に任せて僕を廊下さんと轟音と共にキッスさせた。……それに飽き足らず、ねじ込むように廊下さんとくっつけようとする島田さん。…………ふっ。
「々€=^%→〒…+×:$+*」
「ふんっ! 姫、行こっ」(ぎゅうっ
「えぇっ!? 明久君、放置ですかっ!?」(されるがまま
「いいのよあんなクズ野郎。……ほんとにありがとね姫。私あのままだったら……うぅっ」
「し、島田さん。ほほ補習室ってそんなに恐ろしい場所なのですかっ?」
「……あははっ。違うわよ。それより姫、今度からウチのことは美波って呼んでね?」
「ほえ? ……えっとぉ。は、はひ……美波、さん?」
「んん〜〜っ可愛いわねぇ姫はっ!」(スリスリ
「ふえぇぇ?」(されるがまま
そして遠ざかる(気配がする)島田さんと春野さん。……うん、仲が良くなったようで何よりだよ。
「吉井隊長」
未だ廊下さんとランデブーをしている僕にかけられる声。この声は……須川、君か?
「@€%=^+〆〒\♪☆」
「いや、何を言ってるかはわからないけど……一言いいか?」
「〆|<%#¥」
「吉井隊長……」
「「「「「流石に今回はあんたが悪い」」」」」
骨身にしみて理解しております。
【おまけ】
□Eクラス(授業中)□
……わーーっ!
「……はあ、うるさいわね。本当に何で進学早々に試召戦争なんて「にょほほほほほっ!」…………」
「「「「「…………」」」」」
「……うぅっ」
「お、おい! しっかりするんだ!」
「サブロー君……目前に小隕石……うわあーーっ!」
「ああーっ!? キンカズの……キンカズのオーバーヘッドシュートがああーっ!!」
「気を、気をしっかり持つんだあ!」
「ど、どうしたのですが皆さん! 授業中になぜいきなり頭やお腹を抱えて……っ! 落ち着いて、落ち着くんです! 代表、代表は何処に!」
「…………」(ガタガタガタガタッ
「代表っ!? なぜそこまで震えているのです!? 誰か、誰か保健室の先生をーーっ!」
「……あー、実験台にされたのか。なむー」
【おまけ2】
「それにしても。姫は普段あんなにほんわかして危なっかしいのに……。さっきの姫はかっこよかったわよ♪」
「は、はう〜/////。は、恥ずかしいですぅ/////」
「おー、帰ったか。……どうしたんだ春野。そんなに顔を赤くして」
「あ、ねえ聞いてよ坂本。さっき姫がねぇ……」
「み、美波さん! やめてくださいっ/////」(わたわた
「美波さん、ねぇ? ずいぶん仲良くなったもんだ」
「ふふっ。そうでしょ?」
「〜〜〜〜/////」
「ってことは、春野は活躍して注目を浴びたってわけか」
「? うん。渡り廊下のほぼ真ん中だったし」
「……よしよし。予想以上の成果だぞ、春野」
「ほえ? ありがとうございます???」
「これで、Dクラス代表をより狩やすくなった」
如何でしたか?
今回は真宵と姫の大活躍!
そしてEクラスの悲劇。
では!
感想とご意見、評価を心よりお待ちしております!
これからも応援よろしくお願いします!!