ドラゴンボールZ〜空白の七年間〜   作:俺は誰だ?

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第壱話:謎の少年

 

 

 

「ーーーと皆さんもご存知のように能力者はその強さ(レベル)によって無能力者(レベル0)から超能力者(レベル5)まで段階分けされておりその力は生まれながらの才覚による部分が大きいものの日々の鍛錬によって更なる高見を目指す事が可能なのです。そのなかでも超能力者(レベル5)は僅か7名しか居らずーーー」

 

 教壇の上に立つ先生の話を一言一句聞き漏らさずノートに鉛筆を走らせる女子中学生達。

 彼女達は名門と名高い『常盤台中学校』の学生達である。学園都市内でも屈指のお嬢様学校と言われ中学校ながら高校レベルの学習を取り組み、その全校生徒数はなんと200名前後であり、その生活ぶりや価値観は一般人とは異なる。

 

 さらに入学が許されるのは強能力者(レベル3)以上の能力者のみであり学園都市に7人しか存在しない超能力者(レベル5)。その序列第三位の『御坂美琴』が通っている事でも有名であり彼女の事を『常盤台の超電磁砲』、『常盤台のエース』などと呼ぶ者もいる。 美琴の他に序列第五位の『食蜂操祈』もこの常盤台に籍を置いており、彼女は模範的な美琴ととは違い、常盤台中学内部では『女王』の如く振る舞っているとの事らしい。

 

 さらに美琴の同居人(ルームメイト)であり理解者でもある空間移動(テレポート)を有する大能力者(レベル4)の白井黒子。その黒子を含め47名もの大能力者(レベル4)と100名をも超える強能力者(レベル3)に加え2名の超能力者(レベル5)がこの常盤台中学校に在学していると言う事になる。つまり此処は高位能力者の巣とも言ってもよい。

 

「ーーーつまり能力を効率よく成長させるため樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)にその方法を予測演算させるケースもーーー」

 

 先生が授業の大部分を説明している時にそれは起こった。突然、校庭の方から衝撃音のような音が聞こえ教室中に響き渡ったのである。授業を真面目に受けていた女子生徒達もこれに驚きを隠せない様子だった。

 

「今……爆発したよね?」

「先生!」

 

 驚く生徒達とは違い冷静さを保ったまま先生は校庭の方に身体を向け黙する。そしてすぐに先生はこの衝撃音()の正体を理解した。

 

「たしか……この時間はプールで御坂美琴さんが期末の能力測定を行う予定でしたね」

 

『『『………ええっ!!』』』

 

 

 ここで生徒の一人が先生のその言葉を聞き質問をぶつけてきた。この常盤台で誰もが彼女(美琴)の噂を知っているからこそ誰もが思う当然の疑問。それが彼女(美琴)と同じ能力者であるなら尚更だった。

 

「先生……努力で本当に()()()()になれるものなんですか?」

 

その生徒の質問に対し、先生は嘘偽りのない真実を述べた。その言葉は生徒達に希望を与えた。

 

「ええ……御坂さんは低能力者(レベル1)から努力で超能力者(レベル5)になった実例です」

 

 暫くして先生は生徒達との雑談を終え、授業を再開したが、その後も授業が終わるまでこの衝撃音()は教室中に鳴り響いていた。

 

 

 

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「え!……黒子の教室まで音が届いてたの?やっぱり他のクラスの授業の邪魔になってるわね」

 

 学校は午前中で終わり美琴と黒子は第七学区の街中を世間話に花を咲かせながら繁華街を歩いていた。

 

 どうやらこの後、美琴と黒子は友人達との待ち合わせの約束があるらしく今正にその待ち合わせの場所に向かっている道中であった。

 

「凄い音でしたもの皆驚いていましたわ。それに気にする事ではありませんわ。それでこそ常盤台のエースですわよお姉様。それとこの前言い忘れていましたけど治安維持活動は私達、風紀委員(ジャッジメント)に任せて欲しいですの。例え学園都市に7人しかいない超能力者(レベル5)でも一般市民である事に変わりはーーー」

 

「あ!初春さん!佐天さん!こっちこっち」

「話を逸らさないで欲しいですの!!」

 

 黒子の説教を聞きたくなかった一心かまるで願いが叶ったかの様に都合良く(タイミング)よく現れた2人の少女達を美琴は視界に捉え声を掛け黒子の説教から逃れた。そして、美琴が声を掛けたこの少女達こそ美琴と黒子の約束の相手だったのだ。

 

その相手とは、柵川中学1年生で黒子と同じ第177支部所属の風紀委員(ジャッジメント)であり低能力者(レベル1)低温保存(サーマルハンド)を有する初春飾利と同じく柵川中学1年生にして初春の級友かつ親友でもある無能力者(レベル0)の佐天涙子だった。

 

「お疲れさまです。白井さんに御坂さん」

 

「もぉ〜待ちくたびれてお腹も減っちゃいましたよ〜。御坂さん達、何か食べませんか?近くに新しく開かれた有名なクレープ屋があるみたいなんですけど御坂さんが集めてる『ゲコ太』ストラップが付いてくるみたいですよ」

 

「それ本当!?佐天さん!いこいこ!」

 

 美琴が集めている『ゲコ太』と呼ばれるカエルのキャラクター。美琴の鞄にはそのキャラクターのストラップが付いており財布や携帯電話に至っては仕様になっているだけでなく小学生に混じってガチャガチャを回している所までも目撃されており彼女がこのキャラクターを心から溺愛している事が理解できる。なので何時もより高い調子(テンション)で目を輝かせる美琴がそこに居た。

 

「またですの〜お姉様。いい加減にお子様趣味から卒業してくださいまし」

 

 そんな美琴の調子(テンション)の高さを間近で見ていた黒子は大きな溜め息と愚痴を零す。それは彼女(美琴)と同居し共に生活を送り彼女(美琴)の事を深く理解している黒子だからこそ言えるのだった。

 

「うッうっさいわよ黒子!アンタだけ置いていくわよ!」

 

「あぁ〜ん!待ってくださいましッお姉様〜」

 

 

 

 

 

 これが彼女達の日常。ごく普通のどこにでもある当たり前の日常。

 

 

 

 

 

 この物語は学園都市に住む彼女達と一人の少年によって動き始める物語である。

 

 

 

 

 

 

 

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「……美味しいな、このクレープ。でも……」

 

 第七学区にあるふれあい広場。そこにはクレープを片手に持ち広場の近くにあるベンチに座っている少年が一人いた。少年の視線の先には小さい子供から大人までの幅広い年齢層の人々がクレープ屋に行列を作っていた。特に子供の数が異様に多かった事に少しばかり驚きながらも少年は先程同じく並んで買ったクレープを食べながらその光景を眺めていた。

 

「ここのクレープ屋ってそんなに人気なのかな?凄い人集りができてる。それに何だろこれ?カエルのストラップみたいだけど」

 

 少年は指先でストラップの紐を摘み空に向け腕を高く挙げる。クレープを買った時に付いてきたマスコットのストラップであり、店の看板には『クレープを買った先着100名様限定でゲコ太プレゼント!』と書かれていた。どうやら今はキャンペーン期間中らしく運が良い事に少年がその最後の100名様だったようだ。

 

「ははっ変なカエルだな〜。……ん?」

 

 少年がストラップを見ていると突然、広場の中心から観光ガイドの姿をした女性の大きな声が聞こえ広場にいる人々の視線を集めた。

 

「休憩は1時間です〜あまり遠くに行かれないようにお子さんから目を離さないでください〜」

 

「やった〜ゲコ太げっとげっと!」

「わたしもわたしも!」

 

 どうやら来年この学園都市に入都してくる希望者達の見学会が開かれており、少年は広場の外に止めてあった観光バスを観て広場のこの状況に納得した。

 

「だからこんなに子供が多かったのか。という事はこの子達もこの街に住んでる人達みたいにアレ(超能力)を身につけちゃうのかな……あ!そうだった」

 

 するとここで少年はある事を思い出した。少年は前後左右をキョロキョロと見回し何かを探している素振りを見せ始めた。

 

「そろそろお金をおろさなきゃ近くにコンビニってあったかな〜。あれ?」

 

 周りにコンビニらしき建物は確認できなかったが、少年は広場にあったクレープ屋とは真向かいに建ってある銀行を見つけた。それは少年が座っていたベンチを跨いだ後方にあった。しかし、少年はここである異変を察知した。

 

「なんで昼間からあの銀行シャッターが閉まってるんだろ。それにしては中に人もいるみたいだし」

 

『!?』

 

 タイミングが良いのか悪いのか。少年の言葉と同時に銀行のシャッターが内側から爆発し弾け飛び、マスクで口元を隠した3人組の男達が銀行内から出て来た。片手には拳銃と恐らく銀行から盗んだであろうお金が袋詰めされ彼らの両手を塞いでいた。そう彼らは強盗だったのだ。

 

 しかも只の強盗ではない。最近この第七学区を騒がせる『連続発火強盗』と呼ばれる強盗達であったのだ。

 

 

 

 

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「おら、グズグズすんなッ!引き上げるぞ!」

「ウッス!!」

 

 男達はあらかじめ用意していた逃走用の車に向かって走る。リーダーと思われる男の指示に従い2人の手下もそれに応えるように従う。

 

 だがーーー

 

「お待ちなさい!風紀委員(ジャッジメント)ですの!!器物損壊および強盗の現行犯であなた方を拘束致します!!」

 

『『『!!?』』』

 

 そこには風紀委員(ジャッジメント)の腕章を付けた黒子が強盗達の行く手を塞いでいた。どうやら不運にも近くにいた黒子や美琴達によって強盗達の逃走は阻止されてしまったのだった。この驚きの展開の早さに流石の強盗達も大きく目を見開らき混乱(パニック)を起こし緊迫とした空気が強盗達を支配した。

 

「嘘だろッ!何でこんなに早く風紀委員(ジャッジメント)が!?ーーーん?」

 

 すると一転。さっきまで混乱していた筈の強盗達の顔から一切の感情が消えていた。数秒後、黒子を見た強盗達は高笑いをし始める。そこには先程までの緊張感は無くなり今度は近くにいた黒子が目を丸くし驚いていたがすぐに理解した。

 

 自分がこの強盗達に舐められている事を。

 

「そこをどきなお嬢ちゃん。どかないとーーー怪我しちゃうぜ!」

 

 体格の大きい強盗の一人が黒子に近づき黒子の服を掴み投げ飛ばそうとする。その動きを黒子は見逃さなかった。黒子は伸びてくる腕を上体だけで交わし相手の横に潜り込む。

 

「そういう三下の台詞は死亡フラグですわよ」

 

 相手の動きに合わせ袖を掴み、足を払い、男の身体を宙に浮かし地面に叩き付ける。その鮮やかな技のキレと速さに傍観していた佐天や美琴は驚く。

 

「す、すごい」

「流石、黒子ね」

 

 その一部始終は彼女達から離れて傍観していた少年の目にも映っていた。

 

「……凄いな、あの女の子。僕が止めようと思ったけどこれなら大丈夫かな。ーーーん?」

 

 そんな暢気な事を考える少年の後ろでは、何やら先程の女性ガイドの様子が酷く慌ただしく、美琴と佐天と初春がその女性ガイドの側まで駆け寄り話を聞こうとしている様子を少年は視界の端で見ていた。

 

「男の子が一人足りないんです!!」

 

『『『『……えっ!?』』』』

 

「さっきバスに忘れ物をしたって言ったきり戻ってこないんです!」

「じ、じゃあ私と初春さんで!」

「わ、私も行きます!」

 

 佐天は無能力者でありもし何かあったらと思う美琴の心中は側にいた初春にも伝わっていたが、本人の強い要望で美琴は同行を許した。

 

 美琴は心の中で誓った。もし何かあったら私が皆を守るという強い誓いを。

 

 

「……分かったわ。なら手分けして探しましょ」

 

 

 

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「今更後悔しても遅いぜ……」

 

 男は持っていた銃を地面に捨て黒子の前に手を向ける。すると男の掌から炎が燃え上がり始めた。

 

 そう……これが男達が『連続発火強盗』と呼ばれる所以でもあった。

 

発火能力者(パイロキネシスト)……ではあなた方が例の強盗達ですのね……たくっーーー」

 

 黒子は視線を倒した男に向けすぐに行動を起こす。巻き添えにならない様に倒れている男から距離をとり能力者の男の横へと大きく回り駆け抜ける。

 

「逃がすかよッ!!」

 

「誰がーーー」

 

 能力者の男はそんな黒子に向かって火球を飛ばす。火球はそのまま黒子の後を追う様に追尾してくる。そして、火球が黒子の背中に当たる寸前……

 

「な!消えた!!?」

 

 黒子の姿は消え、いつの間にか男の頭上を一つの影が覆い隠す。

 

「逃げますの?」

「な!お前ッ空間移動者(テレポーター)ーーーぐえッ!」

 

 黒子はそのまま両足でドロップキックを繰り出し、能力者である男を地に叩き伏せる。そして、どこから取り出したであろうか……太腿に忍ばせていた『鉄矢』を転移させ男の服と地面を縫い付け動きを封じた。

 

「これ以上暴れたら、次は鉄矢(コレ)を体内に直接転移させますわよ」

「くッーーー」

 

 

 

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「やっぱり……能力者だったんだ。あの女の子ーーーん?」

 

 何かを感じたのか小さく言葉を呟く少年。そして、横目で遠くにある観光バスを視界に捉える。そこには美琴達が迷子の男の子を捜している姿があった。

 

「バスの中にはいないみたいです!!」

 

「こっちにもいないみたい!」

 

「どこいったのよ。もぉ〜」

 

 美琴の嘆きも空しく迷子の男の子は見つからない。ひょっとしたらもう既にバスの中には居らず広場の方へ避難しているのではないかと考えてしまう。もしそうなら良いのだが念には念を入れ、もう一度、バス周辺付近を探そうかと考える。その様子を遠くから見ていた少年はついに動き出した。

 

「……僕も何か役に立てるかな」

 

『うわッ何だこのガキ!』

 

「え?ーーー」

 

 

 少年はそんな美琴達を見て自分もその男の子を探そうと決心を固め、駆け足で美琴達に近づこうとしたその時、反対側から男の声が聞こえてきたのだ。少年はその男が発したあるキーワードを聞き取り反射的に振り返える。

 

 そして目の当たりにしてしまったのだ。

 

 強盗達の一人が男の子を攫い車に乗せる光景を。

 

 

 

 

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「アイツらには悪いが、このガキを利用してでも俺は逃げ切ってみせるぜ」

 

 強盗達の内一人は戦闘中の隙を狙い逸早く逃げ出していたのだった。攫った子供を後部座席に乗せ現場から離れる一台の車。男は勝利を確信した…完全に逃げ切ったと心の中で確信していた。だが次の瞬間、男は驚愕した。なんと逃走経路上にはあの少年が立っていたのだ。

 

「な!なんだあのガキはッ!!」

 

「………」

 

 公道のど真ん中で仁王立ちをする少年の姿を確認した男はそれでも迷う事無く車を直進させる。それを見た少年は腰を落とし、両腕を前にだして構える。少年の周りにいた人々は少年のその行動を理解した。

 

『あッあの子止めるつもりよ』

『やめるんだ!君ッ!』

『しッ死んじまうぞ!』

 

 少年の行動を必死で止めようとする大人や学生達。その声を全て無視する少年。少年と車との距離が短くなるにつれ少年の顔つきや雰囲気が段々と変わり凄みを増す。

 

 

 もうそこに立っていたのは少年では無く一人の『戦士』だった。

 

 

「………」

 

「あのガキ俺を止めるつもりかよ……ふッふふふ……ならこのまま轢き殺してやるよッ!!」

 

 男はアクセルペダルを踏み込みさらに車を加速させる。車の時速は100km/hを超えエンジン音が激しく律動し少年との距離をさらに縮め3メートル付近まで車は迫る。人々は悲鳴を上げ顔や目を少年から背ける。誰もが最悪の結末を悟った。

 

「死ねぇぇぇッ!クソガキッ!」

 

『イヤァァァァッ!!!』

 

 

「………」

 

 

 

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「一般の方の負傷者はいません。後、現場から離れた所に逃走車もあり攫われた男の子は無事に救出され残りの犯人も捕まえる事ができました」

 

 犯行があった現場では警備員(アンチスキル)風紀委員(ジャッジメント)による状況確認と現場の整備が行われていた。初春は同じく風紀委員(ジャッジメント)の先輩である『固法美偉』に事件の経緯を報告していた。初春からの報告を聞いた固法にはある疑問が頭の中に芽生えていた。

 

「結局、あの犯人達を捕まえたのって貴方達だけなの?話を聞く限りじゃ最後の犯人は現場から逃走してたんでしょ?」

 

「それが、逃走車の周りに居た目撃者の話では一人の少年が逃走車を止め犯人を捕まえたそうでして、その少年も男の子を助け周りにいた目撃者の人に預けた後、すぐにいなくなっちゃったみたいで詳しい話は今、白井さんがあの男の子から聞いてます」

 

「ちなみに目撃者の人からは何か聞いた?」

 

「一応、男の子を預かっていた人に聞いたんですけど何が起こったのか分からなかったと目を開けたら車が停まっていて少年が男の子を後部座席から下ろす姿しか見ていないらしく結局、肝心な部分は聞けませんでした」

 

「なるほどね。逃走車に乗っていた男からは何か聞いたのかしら?」

 

「それが、気絶しているみたいで今は話を聞ける状態ではないですね」

 

「……そう、分かったわ。貴方達はゆっくり休んで。現場の方は私や他の風紀委員(ジャッジメント)でやるからもういいわ。ご苦労様」

 

「はい!有り難うございます!」

 

 仕事を切り上げ初春は美琴や黒子の所へと駆けつける。そこには攫われた男の子と女性ガイド。そして、その母親と思われる女性の人が男の子を抱き寄せている姿があった。

 

「本当になんとお礼を言って良いか……」

 

「いえ、私達はその子を保護していただけですの。本当にお礼を言うべき相手はその子を助けたその少年に言ってくださいまし。ところでその少年についてその子のお話を聞きたいのですがよろしいでしょうか?」

 

「ほら、お姉ちゃんが話したいみたいよ。話してあげて」

 

「うん!」

 

 元気いっぱいに返事を返す男の子。どうやら例の少年についての話を聞かせてくれるみたいだった。それから3分ぐらいが経過した頃だろうか。男の子の話を聞いた後、美琴達はいくつかの質問を男の子に聞いてみた。

 

「じゃあ、その少年と言う人物は両手を使い逃走車を止めたと……」

 

「うん!凄かったよ!まるでヒーローみたいだった!」

 

「あはは、ヒーローって」

 

 男の子は目を輝かせるように話をする。それを聞いていた佐天達はまるで困ったように笑う。

 

「能力者の可能性がありますわね。その少年という人物は」

 

「そうね。でも素手で車を止めるような能力者って相当なレベルじゃないかしら。多分、大能力者(レベル4)とみていた方がいいわね」

 

「分かりましたわ。その線で調べてみましょう。少し時間が掛かりますがそれほどの能力者なら書庫(バンク)にもデータがあるでしょうし」

 

「他には何かあるのかしら?例えば、そいつの特徴とか」

 

 美琴の質問に男の子は視線を移す。そして、これ以上に無いほどの和やかな表情で言い切った。

 

「うん!あの人の名前!」

 

『『『『………はあッ!!?』』』』

 

 その意外な回答にその場に居た美琴達は声を揃え驚く。何故なら美琴達はこの男の子がその少年について何も知らないという前提で話を進めていたからだ。

 

「て、てっきり何も知らないんじゃないかと」

 

「あはは、これは意外でしたね」

 

 その少年自身もすぐに現場から姿を消したという事から当然、誰にも素性を明かす事無く去っていったと考えればこの発想は至極当然なのではないだろうか?それがこんな簡単に少年の正体に迫れるとは誰も思いもしなかっただろう。それに後でその少年に関しては調査するつもりだったし、より確実な情報源が手に入り一気に絞り込む事ができるので特にここでは問題にはならなかった。

 

 

「じゃあ〜早速で悪いんだけど。お姉ちゃん達にそいつの名前を聞かせてくれないかしら」

 

「うん!いいよ!あのお兄ちゃん(ヒーロー)の名前はね〜」

 

 

 

 

 

 

 

『孫悟飯っていうんだよ!』

 

 

 

 

 

 

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  一連の事件は無事に解決され第七学区は一通りの落ち着きを取り戻し、また平和な日常が舞い戻る。

 

「良かった…あの人…あの子をちゃんと送り届けてくれたんだ」

 

 それは風となり一人の少年の身体を吹き抜ける。

 

 高層ビルの屋上に立つ少年は男の子の様子を遠くから窺っていたのだ。

 

少年が立っている場所からでは人の姿などもはや双眼鏡を使わなければ確認できない程離れていたが、少年の目には確かに観えていた。男の子の周りに集まる母親と女性ガイド、そして女子学生達の姿が。

 

「そうだ…そろそろ帰らないと禁書目録(インデックス)さんが心配するな〜」

 

 男の子とその母親が笑顔を浮かべながら抱き合っている姿を観て少年は優しく微笑む。

 

「じゃあね。お母さんを大事にね」

 

 少年はそう言い残し、ビルの屋上から去って行った。

 

 

 

 

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