モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

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Hammer『第四章』
砂漠の町で


「や、辞めろ!」

 叶わない願いを叫んだ。

 

「逃げて……ガイル」

「お前を置いて逃げれるか!」

 敵わない敵を睨んだ。

 

「ガイル……」

 唇が重なる。愛しい彼女の唇は血の味がした。

 

「生きて」

 その言葉が耳から離れない。

 

 自分の無力が許せない。

 だから鍛える。もう失わない為に。

 

 

「———夢か。筋トレでもしよう」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「おーいそろそろ起きろやタクヤ」

 もうこの船にも大分慣れてきた。

 

 

 船に乗船してから何日が経っただろうか。

 未だにクエストは魚釣り一回とアニキと二人でゲネポス三匹を狩るクエストだけだが。

 それでも皆とは打ち解けて来たし、この猟団の生活には慣れてきた。

 

 

 ただ一つ、慣れない人物が居るとするならば。

 

 

「うぉっ?!」

「……すまない、邪魔をしている」

 短い銀髪に引き締まった筋肉。趣味は食べる事と筋肉トレーニング———ガイル・シルヴェスタというこの男だ。

 

「なにしてんの?! ナニしてんのぉ?!」

 昼間になっても降りてこないタクヤを呼びに自室に戻ると、なぜかタクヤのベッドに寝ているタクヤの上で腕立て伏せをしている半裸のガイルの姿があったのだ。

 タクヤは寝ているがそういうのは問題じゃなくて、絵面的にはもう完全にアウトなアレだ。特定の人達が喜びそうなアレだ。

 

「……下敷きにした人に体重を乗せないで腕立て伏せをするという筋トレだ」

「いやそういう意味じゃ無くてな?! なんでワイの部屋でやっとんねん! なんでタクヤの上でやっとんねん!」

「……ヒールはカナタの飯を食って体調を崩している。可哀想だからタクヤで代用している」

「あいつ……またかい……」

 いやヒールの不幸はさておき、タクヤは可哀想だと思わないのだろうか。

 

「…………んぇ……?」

 そんな事を考えていると、寝ていたタクヤが突然目を冷ます。目が覚めたら眼前で男が半裸で居たらどんな反応をするだろうか。

 

「ちょ……ぇ…………お、俺……そんな趣味無いよ……? や、辞めてくれよ……俺には心に決めた奴が居るんだ!」

 こんな反応だった。

 

「……タクヤ」

「は、はい」

「……気にせず寝ていろ」

「いや気にするって! 気になり過ぎるくらいに!」

「……後腕立て伏せ五十回」

「きゃぁぁぁ!!!」

 そう言うと暴れまわるタクヤを抑えながらガイルはその場で腕立て伏せを始める。

 ガイルが身体を伏せると顔がタクヤに近付いて、タクヤは女の子のような悲鳴を上げながら気絶するのであった。

 

「…………ほっとこ」

 関わり辛いというか、接し辛いというか。彼の事を自分はまだ全く理解してないんだと感じる。

 他の人達はまだどんな奴か分かってきたし、どんな接し方をすれば良いかも分かるんだが。

 

「……二十五……二十四」

 この男は何か壁があるような気がした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「着いたぁぁ!!」

 なぜかハイテンションの腹黒ピンク———サーナリアが甲板でそう叫ぶ。

 

 着いたと言うのは砂漠の町『ダイダロス』に、このキングダイミョウが入港したという意味だ。

 ダイダロスはこの広大なバトス砂漠の中央付近にある、グングニール程では無いが大きな町で、砂漠に住む九割の人がここに集まっていると言っても過言ではない。

 グングニール程では無いが進歩した科学技術の結晶もチラホラと見える。電気が通れば水も下水上水で流れていて砂漠とは思え無い過ごしやすさの町では無いだろうか。

 

 そんなダイダロスに我等が橘狩猟団が来た理由は三つだ。

 

 一つはギルドクエストのクリア報告と報酬の受け取り。ダイダロスは大きな町だからギルド管轄の集会所もあってクエストの公式な取引が可能なのだ。

 

 もう一つは物資の補給。水や食料等船の上で砂漠を渡るだけでは補充が追い付かない事もあるようで。

 

 最後に団員の休息。ずっと船の上ってのも辛い物だからな。ダイダロスは何故か温泉が多くてその手の旅館なんかが沢山あるそうだから、このために我等が橘狩猟団は度々このダイダロスに立ち寄っているらしい。

 

「ほらほら早く行こアカリ!」

「……ん!」

 船が着くなり大急ぎでアカリの手を取って走っていくサーナリア。横でタクヤが泣きそうな顔してるのはもう見慣れたものである。

 

「勝手に行かせてええんか?」

「集合する旅館は決まってるからな。きちんと夜までにそこに帰ってくれば後は自由行動だ」

 ケイスケに聞くとそう返ってくる。

 

「つまりワイは」

「今回に限り誰かと一緒に居てくれ。大きな町だから迷子になられたらたまらないからな」

 なら今回は誰か優しい人に町を案内してもらうか 。

 

「なぁアニキ」

「ん? どうした?」

 とりあえず一番頼れそうなアニキに声を掛ける。ダメだったらヒールさんだな。

 

「ちょいと町を案内してくれへんか?」

「あー、ダメだ。俺とヒールとナタリアにクー姉は買い出し当番だからな」

 ヒールさんもかよ!

 

「マジか……アカリはもう行ってまったし。ケイスケは暇なんか?」

「俺はカナタとデートだから邪魔するな」

 酷い。

 

「誰がデートだバカスケ」

「気分だけでもデートが良かったんだが……」

「父親連れたデートがどこにある」

 親父も?

 

「本当は親父とカナタと俺でギルドに行くんだ。だから悪いが他の奴に頼んでくれ」

「いや他の奴って言われてもね?」

 もうタクヤとガイルしか残って無いんだけど!

 

「因みに俺はアカリをスト———じゃなくて見守らないと行けないから暇じゃないぜ」

「あ、はいどうぞご自由に」

 ガイルしか居ないじゃん!

 

「よーしお前ら! 自由時間スタートだ!」

 ケイスケのその言葉で一斉に船を降りていく団員達。ちなみにこの船の清掃と手入れと点検等々はギルドのその手の仕事をしている人に委ねるらしい。

 

 団員達とギルドの人達が入れ替わる中、自分とガイルだけが船の出入り口で固まって入れ替わる人々を見守るのであった。

 

「……」

「……」

 いやどうしたら良いか分からねぇ!

 

「あ、あのー……ガイルさん?」

 無理だってどう接したら良いか分からないって何すれば良いかも分からないって!

 

「……シンカイ、何か予定はあるか?」

 固まっている自分に突然そう話し掛けてくるガイル。

 予定も何も糞も無い。右も左も分からぬ町に思考も行動も分からない相方と二人。

 

「いや……何も」

「……そうか。なら少し付き合ってくれ」

 だから自分はその言葉に逆らう事は出来ないのだった。

 たとえこの全く行動の読めない男が何をしようとしても自分は着いていくしか無い。

 

「お、おぅ」

 もし行く先でアカリとサーナリアに会ったら土下座してでもそっちに着いていこうと固く決心するのであった。

 

 

 

 

 

 

「し、死ぬ……」

 ただいま自分は昼飯を食いながら机に突っ伏している。

 

 ガイルに着いてきて何があったかと言うとだな。

 まず連れてこられたのは町にあるジムだった。数々のトレーニングマシーン等がそろうこの場所で三時間ほどぶっ通しで筋肉トレーニングに付き合わされ、やっとの思いで解放された訳だが、彼は飯をささっと食い終わると同時にこう告げた。

 

「……次は訓練所に向かう」

「……え」

 嘘……だろ?

 

 腹筋腕立てスクワットのフルコースに良く分からんマシーンを使い回して、もう体力の限界というか限界以上に身体を動かしたというのにここからまだ何かしようってか?

 しかも平然と表情変えずにそんな事を言えるこの男は何者なんですか。自分には全くガイル・シルヴェスタという男が分からない。

 

「……良いか?」

「あ、はい」

 しかし、今の自分に断る権利など無かったのである。

 

「な、なぁ……ガイルさん」

 近くにあるという訓練所に向かう途中ずっと無言で居るのに耐えられなくてつい名前を呼んでしまった。

 しまった話す事なんて何も考えてない。

 

「……どうした?」

「え、えーと、その……なんでそないに自分の事鍛えとるんや? これ以上無い程に自分ムッキムキやんけ」

 体格的には自分とあまり変わらないガイルだが筋肉の着き方が格で違うというか筋肉のせいで一回り大きく見えるくらいガイルの身体は鍛え上げられている。

 

 それをまだこうまでして鍛えてどうする。

 

 なんて日頃からの質問が、焦った自分の口からはみ出していた。

 

「……弱いからだ」

「ん?」

「……俺が、弱いから鍛える」

 そう言うとガイルは足を止めてすぐそこの扉を開ける。ここが訓練所という事だろう。

 ガイルの言葉の真意を聞こうとする前に自分達二人の前に一人の男が現れた。

 

「おぅ! 今日は二人かガイル。珍しいな!」

 クロオビ装備を一式着こなしたこの中年のおっさんは誰だ? ガイルの知り合い?

 

「……新入りだ」

「なるほど! わいはこのダイダロスの訓練所教官を勤めるゴールドいうもんや!」

「なんやその喋り方……」

 と、思った事がそのまま口に出たが。そう言えば自分も同じ喋り方してない?

 

「いやこの人も伝説のハンターの真似か……。我ながら単純なんやなぁ……」

 まぁ伝説のハンターって言うんだから有名なのは当たり前か。

 

「新人君変な事言うとるけど大丈夫なんか?」

「……元から変な奴だから大丈夫だ」

 お前に言われたくないんだけど!

 

「なるほど……。さて、今日もやってくんやろ? 二人ってならちょぉど良さそうなのが今日入ったで!」

 そう言うと教官は棚にある雑に纏まった資料を漁り始める。

 おい待て二人って言ったか?

 

「いや、あの、ワイはもう体力が」

「……お前に迷惑は掛けない」

 いやどういう事。

 

「……お前は端で見ていてくれればそれでいい」

 なんだそれ。

 

「おーあったあったこれや。準備するさかい、先に闘技場に入っとってええで!」

 そう言うと教官は部屋の奥に入って行き、ガイルは真っ直ぐ部屋を進んで行く。

 

「お、おい。ちょー待てや待て。勝手に話進ませ過ぎとちゃうか?」

「……訓練所では防具は借りて訓練に挑む。から、ここで好きな装備を選んでくれ。大丈夫だ、使う事は無い」

 適当な防具と骨で出来たハンマーを背負いながらそう言うガイル。いや人の話を聞いて下さいお願いします。

 

「もう……どうとでもしてくれ」

 分からない。

 

 一つ扉を開けると周りを十数メートルに及ぶ岩壁が囲った広い平地に出る。これが闘技場。

 ハンターの為の施設で見習いハンターや学生から現役のハンターまで幅広い人が狩りの訓練を行うための施設だ。

 

 訓練というのは何かというと実際に見てもらえれば分かるのだが、捕獲した本物のモンスターをこの岩壁で囲った闘技場に放ち、そのモンスターと戦う事だ。実践となんら代わりはしない。

 実践と違う事と言えば防具や武器は訓練所に置いてある整備の整った物を使える事と、いざピンチの時は教官が助けてくれるという点だったか。

 

 そんな闘技場に二人で入って、数秒程で教官が遠くから声を掛けてくる。

 

「今日はこいつや!」

 そう叫ぶと共に奥の方に設置してあった檻の扉が開かれた。その中に捕獲したモンスターが入っているのだろう。

 教官はその、魔の扉を開けるだけ開けてせかせかと抜け穴から出ていく。

 

「ブルォォォオオオ!」

 声が聞こえた。

 

「来る……?!」

 地響きと共に次の瞬間空気が揺れる。

 地面が揺れ、目の前に降って来たかのように現れたのは牙獣種のモンスターだった。

 

「……お前は下がっていろ。そこで見ていれば良い」

「あー……そうなん? なら、お言葉に甘えて」

 んじゃ、まぁ……実力を見せて貰うとするか。

 

 




次回久方振りにちゃんとした狩り描写があります!←

月一かニくらいでこの作品とは別のモンハンの小説も執筆しているのですが(そちらもお暇があれば是非)、そっちの方がUAやお気に入りの割合が高いんですよね……トホホ(嬉しくも悲しいです)。
タイトルと第一話の大切さを思い知りました。でも、こっちも頑張るぞい。見守って下されば嬉しい限りです。

おまけにガイル君。
きっと本当はもっと格好良いんだ……。私に画力が無いばかりに、ゴメンよ。

【挿絵表示】



厳しくで良いので評価感想の程も暇があればよろしくお願いします。
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