モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

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ドドブランゴ亜種退治訓練

 

「ブルォォォオオオ!!」

 焦げ茶色の体色で大きく発達した腕と飛び出た牙、コブのように突き出た頭部が特徴。

 学校でこんなモンスターの事は習った覚えが無い。訓練所の教官が放したモンスターはそんなモンスターだった。

 

 

 近い姿にドドブランゴってのが居た気がするけど、そのモンスターは主に雪山に生息する白色の体色をしたモンスターのハズだ。

 

「……ドドブランゴ亜種か」

「亜種?!」

 亜種なんか居たのかドドブランゴ。え? じゃあブランゴの亜種も居るの?

 

「……良い相手だ。下がっていろシンカイ!」

 そう言うとガイルはハンマーを構えてドドブランゴに直進していく。

 

 下がっていろってお前あの化け物と一人で戦う気なのか? 人間五人分くらいあるんだけど。

 

「うぉぉ!!」

 気合いを入れながらドドブランゴに突進するガイル。ドドブランゴの亜種もずっと檻の中に居て苛立っていたのか、かなり攻撃的な眼でガイルを睨み付けた。

 

「ブォッ!」

 自身は動かず、懐に入ってきたガイルにその発達した腕を振りかざすドドブランゴ。

 ドドブランゴはただ腕を降り下ろしているだけだろうが、それだけで人間の自分達には致命打になる訳で。

 

「……っぉおお!」

 その攻撃を屈んで避けてから、ハンマーを振り上げるガイル。鈍い音がして骨のハンマーがドドブランゴの頭部に直撃するが、ドドブランゴは怯みもせずにもう一度足の止まったガイルに腕を降り下ろす。

 

「……踏み込みが甘いかっ!」

 だがガイルはその攻撃を後ろに転がって避けてみせた。

 ついでに作った距離を使い勢いを着け、ガイルはもう一度ハンマーをドドブランゴに叩き付ける。

 

「ブォォ……ッ!」

 今度は効いたのか、大きく仰け反るドドブランゴ。

 

「うぉぉおおお!」

 そこにチャンスだと言わんばかりに踏み込んでハンマーを叩き付けるガイル。叩き付け叩き付け大きく回ってフルスイング。

 八メートルはあろうその巨体が地面を横に転がる姿は圧巻の一言である。毎日のように鍛え上げられたガイルの筋力は伊達じゃないようだ。

 

「ブォォ……ッ」

 一旦距離を取り、ドドブランゴはガイルを睨み付ける。どうやらガイルが強敵だと悟ったらしい。

 ドドブランゴは頭の良いモンスターとして知られているからな。亜種とてそれは変わらないのだろう。

 

「……逃がすか!」

 息継ぎ無しでガイルはドドブランゴに突進する。どんなスタミナしてるんだこいつ。

 普通なら味方に任せて一旦下がるところなのに。そういえば自分は何をしたら良いのだろうか? 本当に見てるだけで良いのか?

 

「おぉぉおおお!!」

 雄叫びを上げながらドドブランゴにハンマーを叩き付けるガイル。しかしドドブランゴは綺麗に後ろにジャンプしてそれを交わした。

 そこで流石のガイルもスタミナ切れなのか地面に膝を着く。言わんこっちゃない、このままだとドドブランゴに反撃を貰うのは眼に見える。

 

「しゃーないなぁ」

 そう思って双剣を構えた瞬間、思いもよらない言葉が耳に届いたのだ。

 

「手を出すな!!」

「……はい?」

 手を出すな。今そう言ったのか?!

 言葉の意味が理解出来ないでいる間に、ドドブランゴはガイルとの距離を縮める。

 

「ブォォォゥッ!」

 勢いを着けたドドブランゴの右腕がガイルに叩き付けられ、大きな鈍い音が闘技場に響いた。

 あばらの二三本は折れたんじゃ無いか? 何してるんだあいつも自分も!

 

「ガイル!」

「来るな!」

 加勢に入ろうとするも、そんな言葉で足を止められる。

 どういう……事だ?

 

「ブォォッ!」

「うぅぉぉぉおおおお!!」

 倒れたガイルにトドメを刺そうとドドブランゴは立ち上がり腕を振り上げる。

 そのままその腕を降り下ろすだけで人の身体など紙みたいに潰れてしまうだろう。

 

 だが、ガイルはその腕をハンマーで受け止めて見せた。降り下ろされた腕が振り上げたハンマーに直撃した瞬間風圧が数メートル離れた自分の所にまで飛んできて、地鳴りがする。

 

「化け物かあいつ……」

 思わずそんな言葉が口から出ていた。

 でも、なんであんな無茶な戦いをするのだろうか?

 

 ただの死に急ぎ野郎なのか、自分に絶対の自信があるのか。それとも人を、仲間を信じられて居ないのか。

 

「確かめるか」

 どのみち暇だし。ガイルとずっとこのままという訳にもいかんからな。

 

「うぉぉおおお!」

 気合いを溜めた降り上げからの降り下ろしがドドブランゴの頭を地面に叩き付ける。

 

「ブルォォォッ!」

 しかしドドブランゴは冷静にすぐに体勢を立て直して距離を取った。

 一見押しているように見えるがガイルは一人で人間だ。どれだけ鍛えようがモンスターのスタミナとは天と地ほどの差がある。

 

「ぐぅ……はぁ…………はぁ」

「ちょい失礼」

 膝を着くガイルの前に立って双剣を構えてみた。

 さて、どんな反応をするのだろうか。

 

「よせ!」

 後者か。

 

「ブルォォォッ!」

 雄叫びを上げ狙いを定めるように体勢を取り直すドドブランゴ。

 

「何が怖いんや」

「……シンカイ?」

 ドドブランゴの挙動に気を付けながらそんな事を聞く。

 

 ハンターは自分だけが強くても意味が無い。人は一人ではランポスだって倒すのは危うい。

 それに自分達はパーティーだ。仲間なんだ。

 

「もっと『背中を預ける』仲間を信じてもええんとちゃうか?」

 振り向いて、ドドブランゴに背を向けてそう言った。

 

「シンカイ!」

 見えていたが、あえて無視する。

 自分を押し退けて振るったハンマーは突っ込んできたドドブランゴには影からいきなり出てきて反応しきれなかったのだろう。

 

 力の入った重い一撃がドドブランゴに直撃する。

 

「ドドメや!」

 脳震盪でも起こしているのか? 地面で仰向けになってドドブランゴに一気に詰め寄り双剣の手数を生かしてその身体を切り刻む。

 

 戸惑いながらだがガイルも加勢に入り、ドドブランゴはそのまま立ち上がる事無く長い眠りについたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「なぜあんな事をした!」

 訓練が終わって防具を返している控え室で聞いたのは、そんなガイルの感情の籠った声だった。

 

 普段無口なのに、怒ると喋るんだな。怖い。

 

「なぜ……ってなぁ。気になっただけや」

「……気になった? シンカイ、お前あの時もし俺が間に合わなかったらどうなってたと思ってるんだ!」

「死んどったかもなぁ」

 かもというか、当たれば死ぬ。自分はそんな丈夫に出来ていない。

 勿論当たる気は無かった訳だが。

 

「そんな呑気な話じゃ———」

「自分が信じられないから、人の事も信じれへんのか?」

「……っ。俺は…………いや、俺は仲間は信じている。……だが俺は弱くて惨めだ。だからこうやって自分を鍛えているんだ」

 仲間を信じていたら、あんな事は言わない。

 

 ただ自分が信じられないから、自分が信じる仲間も信じられないのだろう。

 思えばガイルは自分以外の皆とも壁一枚距離があった気がする。

 

「もっと自分を信じてもええんや無いか?」

 いや、そう言っても多分無駄なんだろうな。

 

 きっとガイルも皆のように、何かを無くしている。だから頑なに自分を鍛えている。そう思えた。

 

「俺には……誰かを守れる力が無い」

 だから聞いてみよう。ヒールは言ってくれたしな。言って楽になったってさ。

 

「わいの事は守ってくれたやんか」

「あれは…………たまたまだ」

「ガイルは強いと思うで。実際一人でドドブランゴとやりあってた訳やしな? それでもまだ求める物があるんか?」

「俺は……」

 そこから言葉を閉ざして、ガイルは装備の返却を済ませ訓練所を後にする。

 

 訓練所から無言で十数分歩いた所で何か決心したかのようにガイルは口を開いた。

 

「少し……付き合ってくれるか?」

「勿論」

 話してくれるようだな。

 

 それからまた十数分歩いて連れてこられたのはなんと墓地だった。

 想像以上の嫌な予感を感じつつも、花とお水を持ってガイルに着いていく。

 

「……久しぶり。今日は遅くなってすまなかった」

 優しくガイルがそう言った眼前には特に代わり映えの無い墓石が立っている。

 セシア・ハリング。この墓石に刻まれた名前は誰なのだろうか。女性か?

 

「……マックスを死なせてしまった。俺はその場に居なかったが……悔しくてならない。お前に誓ったのにな」

 近状報告をしながらガイルは墓石を磨いていく。毎回ダイダロスに来る度に来ているのだろう。周りの墓石と比べてこの墓石はとても綺麗だった。

 

「……あと新人が入った。今日はお前みたいに無茶をして危なかったんだ」

 お前みたいに……?

 

「ただそのおかげで……少し思い出した」

 そこまで言ってから、ガイルは花を墓石に飾って墓に背を向けた。

 

「……セシアは俺の恋人だった」

「……そうか」

 想像した中で一番最悪な言葉が飛んできた。

 

「……俺は今よりも多分猪突猛進で、セシアはいつもひやひやしていたらしい」

 今よりも猪突猛進とかもう猪なんてレベルじゃ無い。マグロだ。前に進まないと死ぬのかお前は。

 

「……それでもうまく行っていたのはセシアの無茶なサポートのおかげだったんだろう」

 そりゃガイルが無茶ばかりするからサポートも無茶しないといけなくなる訳か。

 

「……俺は調子に乗ったガキだった。少し腕が立つからと轟竜に十五才が二人で挑みに行ったんだからな」

「彼女は反対しなかったのか?」

「……してくれた。だが、俺は聞かなかった」

 若気のいたりとか、若さゆえの過ちとかそういう物だろう。

 

 

 誰にだってある。だけど、取り返しのつかない過ち。

 

 

「いつもみたいに、なんなく終わるものだと思っていた」

 きっと、後悔したのだろう。

 

「……俺を庇って、彼女は死んだ」

 だからこうやって、辛い思いをし続ける。

 

 自分があの時こうしていれば。

 そんな後悔はどうしようもなくて、心にずっと突き刺さるんだ。

 

「自分が弱い事を知っているなら、人は強くなれるもんや……」

 きっと、ねーちゃんもそうだったんだろうな。

 

「シンカイ……」

「だからガイルは自分を助けてくれた。助けられた。ガイルは充分強いから、その娘に胸を張って……生きていてもええんとちゃうかな?」

「……俺は」

 振り向いて、ガイルは墓に手を着ける。

 

「……まだまだかも知れないけど。今回は守れた。お前の事を守れなかった分…………もう絶対に俺の前では誰も死なせないから」

 吹っ切れたように、そう言った。

 

「……俺の事を見守っていてくれ」

 

 

 

 

 

 

 ガイルの話では、絶体絶命の彼のピンチを救ったのが我等が橘狩猟団だった訳らしい。

 

 恋人は間に合わなかったが……生き残ったガイルは親父の言葉と誘いで橘狩猟団に入団したのだと。

 ちなみに、ガイルと自分は同い年である。マジかよ。

 

「おぉ、遅かったな」

 また何かを企んだような表情で温泉旅館から出迎えてくれたのはケイスケだった。

 

「ガイルと何して来たんだ?」

「ひたすら筋トレや、もう死ぬ。一歩もあるけん」

 どうせこいつの事だ。自分にガイルの事を分からせようと企んで二人きりにさせたに違いない。

 

「何をしていようが二人で話していてくれたなら充分だ」

 だから嘘を着いてみたのだが、ケイスケはそう答えてきた。どういう事や?

 

「ガイルは猟団に入ってからもあまり人と会話もしなかったからな。普通に話せる相手が出来たなら幸いだ」

 そうだったんですか?! あいつリアルに友達居なかったって事?!

 

「んなアホな……」

「まぁ……そこまで深刻では無いんだがな」

 

「おかえりっすーガイル!」

「……腹はもう良いのか?」

「万全っすよ!」

「……また筋トレの手伝いを頼む」

「了解っす! もうカナタの飯はこりごりっすよ」

「おいこら聞こえてるぞこらぁ!」

「……俺もこりごりだ」

「なぁ……ぐ、ぅぅ」

 

「あの通り打ち解けては居るとは思うんだが。消極的でな……あまりパーティーでの狩りにも参加してくれない」

「そうなんか」

 まぁ、そうだったんだろう。

 

「何か話せたか?」

 その期待を込めた顔はもはや期待ではなく確信なのだろう。

 

「あいつはもう……自分の事を信じる事が出来ると思うで」

「ほぅ、そりゃ……。ありがとうシンカイ」

 何もかもこの人の思い通りに進んでいる気がするのは気に食わないが。まぁ、良いか。

 

「よーし。ならばお前ら! 今日もいっちょ飯の前にあれをやるか!」

 そして突然ケイスケが広場でそう声を上げる。え? 何? あれ?!

 

 僕知らない。いったい……何が始まるって言うのだ……?

 

 




サブタイの適当さ加減がヤバい
お気に入りが一人減っていてナイーブな皇我リキです

久し振りの狩りシーンなのに短いし質も悪い……
うーん、お気に入り減るのもしょうがないのかな

自信が無くなってきたけどポツポツとやっていきます
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