モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

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Long Sword『第五章』
ドリンク忘れました


「お兄ちゃん!!」

 兄が居た。

 

「クー姉、サナを頼む」

「あんた何言ってんの! 逃げないと!」

 兄は最強のハンターだと、私は思っていた。

 

 

「バカ言え、俺はハンターだぜ?」

「お兄ちゃんなら勝てるの?」

「バカ言わないでサナ!」

「ったり前だろ!」

 多分皆バカで、皆力が無かったから。

 

「どの道皆は逃げれないさ……。サナ」

「何? お兄ちゃん。頑張ってね! やっつけてね!」

「お前はハンターになるんじゃねーぞ」

「お兄ちゃん……?」

 その言葉の意味が私には分からなかった。

 

 

 姉と兄と私の三人で行った砂漠のキャンプ。

 家に帰ったのは二人だけ。

 

 

「クッククククククククク……ブロォォォォオオオオ!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 春と言えばこの世界でも桜だが、この砂漠にそんな綺麗な物は無い。

 立っている植物はサボテンか枯れた木だけ。

 

 

 グングニールなら桜の木がピークを過ぎて散ってそれまた花吹雪が綺麗な季節だが、この砂漠で散るのは散々お天道様に当てられて身体から絞りとられる汗という名の水分だけだった。

 

 

「あ、暑い……死ぬ」

「きゃっははは! クーラードリンクとホットドリンク間違え持ってくるとか! うっははは! ダサ!! ダッサ!! きゃっははは!」

 悶え苦しむピンクの髪のサーナリア、他アニキとカナタと自分の四人でのクエストの帰り。クーラーとホットを間違えた、なんて単純なミスで自分は死の淵に立っていたのだ。

 

 サーナリアはもう笑いまくってるが、割と本気で脱水で死ぬ。もうヤバイ。

 つい先程「あ、クーラーとホット間違えてもうた!」「何してんだお前」「バカだねー」とかギャグテイストだったのにも関わらず、その数十分後には本当に死に掛けてるのだから笑えない。

 

 

 良いか後世のハンター達よ。絶対にクーラーとホットは間違えるな。本当に死ぬから。なんか砂漠なのに大河が目の前に見え始めるから。

 

 

「悪りぃなシンカイ。必要最低限の荷物で、が家のルールだからなぁ」

 そう言うのは黒髪長身のラルフもといアニキ。その彼が言うように三人ともイジメで自分にクーラードリンクを渡していない訳では無い。

 狩りに掛かる余計な時間も計算した上で所持して来ている訳だしそもそも最大所持数が五個の時点で徒歩で狩場に向かって徒歩で帰る我々は最大所持数で持っても必要最低限で余らないのだ。

 

 勿論調合素材分等持ち合わせている訳もなく、砂漠に氷結晶なんて転がっている訳が無い。

 

 

「分けれたら分けたかったんだけど……ごめん、さっき最後の使っちゃった」

 そう言ってくれる赤髪長髪スタイル抜群の、カナタの言葉が身に染みた。良いんです、悪いのは自分なんです。

 

「まぁ……自業自得やし……」

 ついさっき皆最後のクーラードリンクを飲み終わった所だからね。皆は涼しそうですよ。

 

「つーかな、シンカイ。忘れたなら言えよ」

 アニキの言う通り、今さっきまで自分はクーラードリンクとホットドリンクを間違えて持って来たなんて事は誰にも教えて無かったのだ。

 それで、流石に痩せ我慢も出来なくなってぶっちゃけるとサーナリアさん大爆笑。人の不幸は蜜の味とはよく言った物だ。

 

「いや忘れてないし。間違えたんやし」

「同じだろ」

「恥ずかしいやん?!」

「ぎゃはははは!」

 ものっそい下品な笑い声で腹を抱えるサーナリア。殴りたい。

 

 

「あー笑い死ぬ。ほら、これあげるこれあげる」

 そう言いながらサーナリアが荷物から取り出したのは何やらヒンヤリとした飲み物の入ったビンだった。え? ドユコト?

 

「これ……クーラードリンク?!」

 差し出されたのは紛れもない神の聖水クーラードリンク。

 

「え? それどーしたのサナ?」

 自分も思った疑問をカナタが代弁してくれる。

 クーラードリンクの効果時間は基本一定だから、普通に飲んでたら今、丸ごと一本余ってるのはおかしいのだ。

 

「まぁ? 私? 天才だから?」

 これでもかという程のドヤ顔。

 

「この阿呆がクーラー持って来てないのくらいドスガレと会う少し前くらいから分かってた訳よ」

「わいの完璧な演技が見抜かれてた言うんか?!」

「私気が付かなかった……」

「俺も……」

「仲間の様子見くらいハンターの基本よ」

「「うぐっ」」

 サーナリアさんが正論を言ってらっしゃる?!

 

「い、いやほら。ワイも隠し取ったしな?」

「ドスガレくらいだったからどーにかなったけど。これがディアボとかだったらどーしてた訳?」

「う……」

 ちなみにドスガレとは魚竜種ガレオスのボスの事で正式名はドスガレオス。中々巨体だがサーナリアさんがほぼ一人で翻弄していたおかげで直ぐに対峙する事が出来た。

 少し前に温泉旅館で聞いた、サーナリアさんはエースってのは本当なのだ。眼にも止まらぬ太刀捌きでドスガレオスさんは今回数分で刺身と化していたからな。ちなみに今回が初めてのサーナリアさんとの狩りである。

 

 

「てか早く飲みなさいよ」

「え、ええんか?」

「私は節約してたから。ほら、それに……あんたがもし死んだらアカリが悲しむでしょ!」

「アカリ以外悲しんでくれへんの?!」

「そういう事じゃ無いでしょバカなの?! 良いからとっとと飲みなさいよノロマ! 死ぬ前にほら!」

 なんかもう無理矢理飲まされるクーラードリンク。このヒンヤリ感、一口で世界が変わるような効能。

 

「ほら飲んだらとっとと歩く! ったくこれだから初心者は。マヌケ初心者は」

 そう文句を言いながら先を歩いていくサーナリア。くそぉ……歳下に言いたい放題言われる。

 

「なんなんやあいつ……可愛くないのぅ」

「サナはそういう性格だから。いや、本当ごめんねシンカイ」

「いや、別にカナタは悪くないってか……まぁ悪いんは自分やしな……?」

「まぁあいつは良い奴だから、そこらへん慣れだ慣れ」

 アニキはそう言うと水を一杯コップに入れて差し出してくれる。

 

「慣れてもウザそうやけどな……」

 可愛くない。

 

 

「遅いってマヌケ共! そんなんじゃ日がくれ———」

 結構離れて歩いていたサーナリアが振り向いてそう口を開いていた。気のせいか、少し表情が辛そうで。

 

 自分が手に持った空のビンの重みをその時やっと思い知る。

 

 

「サナ?!」

 振り向いて、いつものような憎まれ口を言いかけたサナはその場で固まったと思ったらそのまま砂の地面に、横に倒れてしまった。

 

 

 当たり前といえば当たり前だ。

 天才だとか気が付いていたとか関係無しに、あんな小さな女の子がクーラードリンク無しに活動出来る程この砂漠は甘くない。

 そこそこ身体も出来上がって丈夫な自分でも死ぬんじゃないかと思って、それが分かっていたのに手に握るビンにはもう何も入って無かった。

 

 

「クソ!」

 馬鹿野郎。

 自分もお前も、馬鹿野郎。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「いや、死ぬかと思ったわマジで」

『無理したらダメだよ!』

「大丈夫大丈夫、私天才だから」

 あの後、アニキがサーナリアを背負って猛ダッシュで船に帰って来た訳だが。

 クーデリアさんによれば軽い脱水症状だそうで一日安静にすれば大丈夫だそうだ。

 

 

「すみませんでした……」

 しかし、基本的に悪いのは全部自分な訳で。

 休んでいるサーナリアの部屋に出向いてこうして謝る。誠意を持って、きちんと頭を下げた。

 

「深々と下げ過ぎじゃね?」

 ただ一人は心細いのでタクヤに付いて来て貰っている。二人って結構話してて仲良く見えるし。歳も近いからか。

 

「下げ過ぎやない……。ワイのミスで仲間に迷惑をかけたんやからな」

「サナならどれだけ迷惑掛けても俺は気にしないけどなぁ」

「なら私はタクにこれから迷惑掛けまくるわ」

「いつも掛けられてるんだけど?!」

 なんて会話をベッドに座ったアカリとサーナリア、入り口で自分とタクヤがする。

 確かに重症では無いにしろこんな小さな女の子に迷惑を掛けたのは反省しか無い。

 

 

「てかそんな所に突っ立って無いで入ったら?」

「ええんか?」

「暇だしお菓子でも食べてゴロゴロしよーかなって思ってたところだし。タクヤ、お菓子持ってこーい」

「なんで俺?!」

「うるせーな早く行けよ」

 有無を言わせないこのオーラである。

 

 

 そんな訳で自分達四人はお茶とお菓子で子供らしい時間を過ごす事になった。

 しかし四人で一部屋にいるとそこそこ狭いな、当たり前か。

 

 

「あんたってどーしてハンターになったの?」

 唐突にそんな話になった。

 

「ワイ?」

「あんた以外に誰に聞くのよ」

 ですよね。

 いや、しかし、ここで正直にモテる為にとか仕事が嫌になったからとか言ったら格好悪過ぎる。

 

「自分探しの旅?」

「くっさ」

 酷い。

 

「ちなみに俺も自分探しの旅だぜ!」

 と、タクヤが水を差す。

 

「うわタクヤと同じかい、最悪な気分やわ」

「どういう意味だごらぁ!!」

『格好良いと思うよ! 自分探しの旅』

 アカリは優しい。

 

「アカリはなんでハンターになったんや?」

「……ん」

 少し困った様な表情をしてから、アカリはスケッチブックにペンを走らせる。聞かれたくなかった事なのかもしれない。

 

『初めはお父さんやお兄ちゃんと一緒に過ごしてただけなんだけど。足手まといになるのが嫌だったからかな。まだ足手まといのままだけど、いつか皆の役に立つハンターになりたい!』

 と、決意を込めた表情でスケッチブックを見せてくるアカリ。確かによく考えればこの質問は安直過ぎたかもしれない。

 

「アカリは偉いのぅ」

「……はぅっ」

 言いながら頭を撫でてやるとアカリは凄い可愛い反応をする。ヤバイ、隣のタクヤの視線が怖い。

 その隣ではなぜかサーナリアが物欲しそうな目で自分を見ていた。

 

「なんや、撫でて欲しいんか?」

「はぁ?! ば、ばっかじゃないの?!」

 そんな気がしたのだが違うのか。

 

「そーいや、サーナリアさんはなんでハンターになったんや?」

「いやいつまでそう呼ぶつもりだよ。サナで良いけど」

 ならお言葉に甘えよう。

 

「サナは?」

「私が?」

「いや、だからハンターになった理由やて」

「え、あー……んーとねぇ」

 また困った様な表情をさせてしまう。学習能力ゼロなのか自分は。

 

「ふふーん。私はね、私を大切にしてくれる王子様に会うためにハンターになったのよ!」

 と、思ったがサナはそんな返答をして来たのだった。王子様だぁ?!

 

「くっさ」

「何よ! 文句あんの?!」

 いや文句と言うか、ハンターになったら王子様探せるのかと言われると答えはノーでは?

 

「ハンターは知名度が高いし色々な場所に赴けるでしょ?! だから王子様に拾って貰える可能性が高くなる訳」

 そんな馬鹿な。

 

「王子様ってなぁ……。つまり、彼氏が欲しいって事か?」

 そんな事の為にハンターになる奴も居るんだな。いや、自分もそういえばそうだった訳だ。同類になってしまった。

 

「そうよ!」

「家のメンバーじゃあかんのか?」

 男揃いならあるし。

 

「却下よ却下。私の目標は大きいの」

「そんなんじゃ一生王子様なんて見つからねーよ」

 タクヤが水を差す。こいつら仲良いけどそういう関係では無いのかな。

 まぁ、タクヤはアカリが好きな訳だが。

 

「まず、あんたみたいなヒョロヒョロのチビはありえない」

「チビじゃねーし!」

『タクヤ君は良い人だけどなぁ』

 しかし、アカリからの好感度は恋愛には届かないレベルなのだ。

 

「アニキは? デカイし強いで?」

「あいつホモじゃ無いの?」

 何それ聞いてないよ?

 

「え? え? えぇ?」

「まぁ確かにアニキはたまにそんな節見せるな」

 自分のアニキへの信頼がワンランクダウンした。

 

「ヒールは? 強いし一緒にいて楽しい奴や」

「モヒカンはありえねぇよ」

 ですよねー。

 

「ケイスケは? 頼りになるしイケメンやし」

「あいつカナカナ以外の女を異性として見てないでしょ」

 そ、そうだな。

 

「ガイルは?!」

「あんな筋肉バカ論外でしょ」

 もうどうしようも無い。流石に親父を進める訳にはいかん。

 

「その点まだあんたは可能性あるけどね」

「……ワイ?」

「そこそこ強いし、話せるし? まぁ、よーく考えたら無いんだけど」

 なんなんだこの人。

 

「目標高いんやなぁ……」

「当たり前でしょ! 私の王子様は完璧イケメン超優しい最高の人じゃないと許さないんだから!」

 そんな完璧な人がこのドス黒サボテンオタクを好きになるかどうかの問題にまでなりそうだが。まぁ見た目は可愛い。

 

「そーいやサナ今日飯当番だろ?」

「あ、そーじゃん!」

 唐突にタクヤが思い出した様に言うとサナは焦って立ち上がった。ここに居る全員分の飯を用意するのは中々至難の技である。

 

「手伝おうか?」

「何? 王子様ポイント稼ぎたいの?」

 王子様ポイントって何?

 

「そんなんやないそんなんやない。せめてもの償いや償い」

「へー、いい心構えじゃん? 王子様ポイント追加ね」

 いらんわ。

 

「それにほら? 他の理由もあるしのぅ」

 タクヤをチラ見しながらそう言う。そう、ここで自分とサナが居なくなればタクヤはアカリと二人きりという訳だ。これでも自分は応援しているのだ。

 

「お、おぅそうか! じゃあ俺はここでゆっくりしてようかなぁ、なんて!」

 自分の優しさに気が付いたのか、タクヤはそう言ってアカリとの時間を楽しみに鼻の下を伸ばす。感謝しろよ?

 

『なら私もサナのお手伝いするね!』

 ここでまさかのどんでん返し。

 

「んじゃそう言う事でタク、ここでゆっくりしてればー。にっひひ、ばいびー」

 タクヤの気持ちを分かっているからか。この暗黒少女は自分の部屋に固まったタクヤを一人にして三人で部屋を出て行くのだった。

 

「…………なぜだ」

 不憫なりタクヤ。

 

 





第五章です!
今章からテコ入れ出来ると良いなぁ……

その代わり結構話数が増える予定です。大丈夫かなぁ。


厳しくで良いので評価感想の程も暇があればよろしくお願いします。
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