モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

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砂漠の王の名

 突然だが、我等が狩猟団の料理当番は基本交代制で二人ずつのローテーションだ。

 今日はサナと、もう一人はガイルが料理当番だった。ガイルに料理スキルはあるのか。

 

 

 それで暇な人が手伝いに入って仲の良いこの仲間達は気が付いたら四、五人で料理をしているんだとか。

 

「私の手助けは不要とでも言いたげな顔してるわね!?」

 そう言うのは料理大好きカナタさん。出来るだけ厨房に入らないで欲しい人ナンバーワン。

 

「今日はアカリと新人が手伝ってくれるから」

「ほ、ほら人手は多い方が良いじゃ無い?」

「食材に触らないなら手伝ってくれても良いよ」

 笑顔で実質お断り宣言。

 

「うわーんケイスケぇ! サナがイジメるぅ!」

 ケイスケに泣きつくのか!

 

 

「よーし邪魔者は消えたわね」

 カナタの扱いが酷い。

 

「んでまずは何すればええんや?」

「新人は芋の皮剥きに決まってるでしょ?」

 決まってるの?!

 

「ていうか、新人は辞めてくれや。わいもサナって呼ぶんやから」

「名前なんだっけ?」

 酷くない?

 

「シンカイや……」

「冗談だよ真面目に答えんなよ」

 キレそう。

 

「なら、シンカイって呼ぶね」

 でもたまに見せるこの笑顔は反則だと思うね。

 

「……サーナリア、俺は何をすれば良い」

「筋トレでもしてれば?」

 扱い雑!

 

「……分かった」

 分かって良いの?!

 

 

『私は?』

「アカリは私が捌いた魚の調理ね」

 そう言うとサナはまだ頭の付いた魚を取り出して頭を落とし、鱗を剥いで内臓を取り出す。ここの手際の良さと来たら漁師と間違えるレベルだ。

 

「ワイ……要らへんのや無いかなぁ」

「……サーナリアは基本なんでも出来るからな」

 真下で腕立て伏せをしながらガイルはそう言った。邪魔なんだけど。

 

「なんでもか……」

 あの歳でハンターとしても上級者でそこまで出来るんだから、まぁ将来のパートナーくらいワガママに探しても良いのかもな。

 ただ、そのためにハンターになったと言う言葉にはまだ疑問が頭に残っていた。

 

 

「ちょっと料理止めて貰って良い?!」

 そんな事を考えていると、金髪美少女のナタリアが厨房に入って来て焦った様子で口を開く。

 

「どしたー? ナタナタ」

 そうサナが聞いた瞬間、船は減速して慣性の法則で調理台の上の物がゴロゴロと床に落ちてしまった。

 

「な、なんや?」

「うわ、私がせっかく捌いたサシミウオが!」

「間に合わなかった……ごめんね」

 申し訳無さそうにナタリアはそう言う。船が減速した理由を知っているのだろうか?

 

「なんなんだよもぉ!」

「進路方向にディアブロス見付けて、慌てて進路方向変えようと思って……」

「ディアブロス……?」

 そう聞くとサナの表情が変わる。ディアブロスと言えば砂漠では最強クラスのモンスターだ。

 そんな奴に見付かって船が襲われたらたまったものでは無いからな。回避するのは当然と言えば当然か。

 

「どっち?!」

 そう言って厨房を飛び出して行ったのはサナだった。なんだ? どうした?

 

 

「え? えーっと」

 それにナタリアも付いて行くものだから、自分もとりあえず付いて厨房を後にする。

 まさかとは思うがアイツでは無いだろうな。ディアブロスに関しては因縁があるが、この広大な砂漠でアイツに会う事はそう無いだろう。

 

「あっちの方!」

 甲板に出るとナタリアがそう言って、太陽が沈む方向を指差していた。サナはナタリアから双眼鏡を受け取ると、ナタリアが指差す方向へ視線を向ける。

 

 

 裸眼では沈む太陽の明るさもあって良く見えない。微かに目に入るのは飛竜の特徴である巨大な一対の翼と角竜である所のディアブロスの最大の特徴である巨大な角。

 距離にして一キロ程だろうか。この船の高さと広大で真っ平らな砂漠だからそのくらい離れていてもその存在はよく目に映った。

 

 

「片角の———」

「あいつだ……っ!」

 自分が言いかけた瞬間、サナはそう言って双眼鏡を放り出して走り去る。どこへ向かうかとそれを目で追うと、下への階段にサナが辿り着いた所で下から登ってきたケイスケとクーデリアさんに身体を押さえ付けられた。

 

「なっ……は、離せよっ! 離せ!!」

 なんだ……?

 

 

「マ王……」

 クーデリアさんがそう言う。

 

 片角のマ王。この砂漠じゃ知らない奴は居ないどころかこの大陸なら有名な話だ。

 

 ディアブロスというモンスターは飛竜の中でも角竜と呼ばれる種類に属している。

 砂漠で生きる為に巨大化した身体の代償に空は飛べなくなったが、他に類を見ない力の持ち主で頭に生えた二本の角で砂を掻き分けて地中に潜る程だ。

 

 通常大人の個体は全長が二十メートル程なのだが、この砂漠には角の二本の内一本が折れている全長三十メートルにも成長した個体が生息している。

 その強さは全長の巨大さだけでなく、知能も優れていると言われていて実際に被害に遭ったハンターは決して少なくない。何度も討伐隊が組まれては返討ちになっているなんて話まである。

 

 

 有名なのもそうだが、自分がなぜそんか話を知っているかと言うとだ。———自分の姉もそのマ王に殺されているからだ。

 だから、自分も今一人だったとしたらサナみたいに飛び出していたかもしれない。

 

 

「何処へ行く気だ?」

 ケイスケがサナの手を掴んだまま、いつもと違う表情でそう言った。

 普段の明るくて頼り甲斐がある兄貴分の彼からは想像も付かない冷たい声で。

 

「邪魔だよ……離せよ! あいつが! あいつがすぐ側に居るんだ!」

 サナはケイスケを振り切ろうと、掴まれた手を振り回すがケイスケは一向に離す気配が無い。

 しかしサナはどうしたんだ? マ王に何か恨みがあるのか? その答えは直ぐにサナの口から出て来た。

 

 

「姉ちゃんも何のんびり見てんの?! お兄ちゃんの仇なんだよ?! あいつが直ぐ側に居るってんのにあんたはそこで私の邪魔をするの?! ねぇ!!」

 お兄ちゃんの……仇。そんな言葉を聞いて手に力が入る。

 

 サナは……兄貴をマ王に殺されたのだろうか?

 王子様を探すなんて理由に浮かんだ疑問が晴れた気がした。

 それでも、あんな小さな女の子がそんな事の為にハンターをやってるのは心が苦しい。

 

 

「いつまで握ってんだ離せよっ!」

 ケイスケにそう言うが、彼は全く離す気が無いとでも言うように反応すらしない。

 

「あんた一人で出来る訳無いでしょう!」

「うるせーよ何もして無いあんたに何がわかんの?! 私はあいつを倒す為———」

「サナ、今日はお前何当番だ?」

 ケイスケは表情を少しだけ緩めて、サナの言葉を遮りそう言う。

 

「当番って……食事当番…………だけど」

「そうだ。お前がやってくれないと俺達は困る」

「ぅ……く……」

 なんとも有無を言わせない感じでケイスケはその手を離した。落ち着いたのか、サナは暴れるのを辞めて自分の方に目を向けた。

 いや、自分を見ている訳では無いな。見ているのはその奥にいるマ王ディアブロスか。

 

 

「クッククククククク…………ブロォォォォォゥゥゥ!!」

 鳴き声だろうか? ここまで聞こえて来る悪魔の叫び声のようなその音を聞いて、自分の心臓の鼓動が早くなるのが分かった。

 落ち着け。確かに姉ちゃんの仇だ。でも、今は、違うだろ。その為に生きてる訳じゃ無いだろ。

 

 ———サナは、そうなのだろうか?

 

 

「ケイスケ君」

「ここから北に小さなオアシスがある、今日はそこに船を止めよう。サナは晩飯の準備を頼んだぞ?」

 どうやら船の操縦を任されていたナタリアが聞くと、ケイスケはそう返してついでにサナを厨房に戻らせる。

 一時はどうなるかと思ったが大事にならずに済んだのは幸いか。しかし、マ王が近くに居るのか……。

 

「……わったよ…………はいはい」

 そう言うとサナはクーデリアさんを睨み付けてから厨房に戻って行くのであった。

 

 

「なぁ……サナって」

「ん? どうしたシンカイ」

 まさか今からサナに聞く訳にも行かず、事情を知っているだろう古参のアニキが近くに居たので捕まえて、サナの事について尋ねる事にする。

 

「マ王に因縁でも……?」

「因縁なんて話じゃねーだろうな、サナは兄貴をマ王に殺されてるんだから」

 さっき言ってたからな……仇だって。

 

「サナはね、橘狩猟団に自分から入りに来たんだよ。ダイダロスにいる時にケイスケ君を捕まえて「私をハンターにしろ」って」

 そう説明してくれるのは船の舵を切り終わったナタリアだった。

 

「皆とは違う入団の仕方なんやな」

 大体ここの皆って話を聞けば親父に助けられた口だったのに。

 

「ナタリアが入った少し後だから……何年前だ?」

「三年くらいかな?」

 その時サナは十歳くらいなんですが。

 

「サナはあのディアブロスを倒す為にハンターをやってる様な物だから、目の前に居るのに……悔しいんじゃ無いかな」

「十歳から三年間あいつを追い掛けてたって訳なんか……」

 今サナはどんな気持ちなのだろうか。

 

「俺はあいつの気持ちが分からないでも無いけどな……実際マックスの仇のゲリョスを見つけた時は、あぁだった訳だし」

 腕を組んで目を閉じて、アニキはそう言った。しかし、こう続ける。

 

「まぁ、だからこそ……ケイスケやクー姉が止めるのも分かっちまう。出来るなら手を貸してやりたいが、俺にはどうにも出来ねぇな……こりゃ」

 説得力の塊の様な発言である。仇だとか復習だとか、怒りで我を忘れるとはよく言うものだが。そんな状況は自分を危険に晒すだけだ。

 

 

「でもまぁ、あのサナなら大丈夫だと思うけどなぁ」

 確かにサナはいつも冷静で強い、しかし忘れているぞアニキ。さっきサナは明らかに冷静じゃなかった。

 

「そいや、入った時の十歳からあんなにサナ強かったんか? まさかそんな事はあるまい」

「いや、どうだったかな……俺は知らん間にエースの座を取られてたわ。才能の塊みたいな奴だしな」

 そんな悲しい発言しないで下さい。

 

「ナタリアは覚えてるか?」

「え、えと私は……」

 アニキに見つめられ挙動がおかしくなるナタリア。あー分かりやすい羨ましい。

 

「一年経つ頃には立派なハンターになってた……と、思うよ?」

 天才って自分で言う奴に限って本当に天才だから困る。

 

 

「ふーん……」

 才能なのだろうか。

 

 何か、違和感があった。

 

 




少し短いな……

はい、今回はサナとディアブロスの話になりそうです
ディアブロス、モンハンクロスにはなんと居ないんですよね。自分はディアブロスがかなり好きなモンスターなので結構残念だったり


マ王は漫画モンスターハンター2で登場しますね
この世界の設定では別個体ですが、未来設定なので伝承を元にそう呼ばれる様になったそうな———そんな設定
珍しく語ってしまいましたな……



【挿絵表示】

と、いう訳でサナちゃんことサーナリアさんを描きました。可愛く描けたかな……?

それではまた
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