モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

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彼女の才能

 

 船はケイスケの言ったオアシスに辿り着き、一旦停泊する事になった。マ王出現のための進路変更兼情報収集のためだ。

 

 

 オアシスには十数人の住人が居るらしく、ケイスケと親父が挨拶に行っている間に自分達は飯の支度を終わらせる。

 二人が帰って来てからいつものように皆で飯を食べて、いつものようにまた自由時間になった。

 

「ガッハッハ! やっぱりサナは良い飯を作るな、これは嫁に行かせるのが勿体ねぇ!」

 本当の父親みたいな事を言う親父。そういや、サナの両親は健在なのだろうか? いや、考えるだけ無駄か?

 

「そ、そんな褒めても何も出ないから」

 

「ねぇシンカイ君」

 内心嬉しそうなサナを見ながらニヤけていると、その姉のクーデリアさんに話し掛けられる。

 

「いや決してそういう目で見ていた訳では無く!」

「何の話?」

 墓穴を掘った。

 

「い、いやこっちの話や。何用かいな?」

「サナの事なんだけど」

「誤解です」

「いや何の話?」

 自分ロリコンじゃありません。

 

「その……何ていうの。さっきサナが騒いでたのは忘れてあげて? 後シンカイ君も結構サナと仲良くなって来たから頼みたいのだけど……あの子を宜しくね」

「仲良くも何も。自分ら仲間やろ? 勿論クーデリアさんもな」

 ここでキメ顔で答えてみせる。そう、自分はクーデリアさんのような大人の女性の方が好みです、はい!

 

「あら、頼もしいのね。でも私歳下には興味無いのよ」

「そんな殺生な……」

 ここに年上といえばカナタかクーデリアさんしか居ないんですよ?

 

「私の弟でね……」

 唐突に話しだす。

 

「ハンターだった……サナの事本当に優しくしてて。サナにとっての兄が殺されて、あの子変わっちゃったの」

「昔はどんなんだったんや?」

「あんな腹黒く無いし純粋に可愛かったわ……」

「そりゃ……かなり捻くれたもんやな」

 自分も人の事言えないけどな。

 

「だから、あの子の事お願いね」

 それは「もし一人ででも、マ王の所に行く様な事があれば止めてあげてね」そう口では言わずに念を押す様な、そんな言葉だった。

 

 

「任せろや」

「頼もしいわね」

 一応、サナよりは年上やからな。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「もう寝ようで? な?」

 タクヤといつも通りオセロで就寝時間まで過ごしていた。

 もう恒例になっているが未だに一度も負けた事が無い。それでも挑戦してくるタクヤの向上心だけは褒める所でもある。

 単に負けず嫌いなら、もう辞めてるからな。

 

「今日も勝てなかったぁ! 何が悪いんだよ全く!」

「角気にしなさ過ぎやろ」

「って言われてもなぁ……」

 ベッドに入りながら、いつもの様に反省するタクヤに指摘をしてやる。本当に少しずつだけど覚えていっては居るから一応教えてやる。

 そんな毎日の日課で、もうタクヤとはだいぶ仲が良くなった物だ。多分一番なんだと思う。

 

「むしろ弱過ぎやろ。お前他の誰かに勝った事あるんか?」

「一度だけあるぜ!」

 自信満々な声が聞こえる。マジか。逆に一度だけなのか。

 

「誰に?」

「サナに」

 嘘ぉ?!

 

「あの天才サナもオセロは苦手やったんか? てかタクヤが勝てるとかもう相当ヤバいくらい下手なんや無い?」

「お前酷くね? 俺の事どんだけ見下してんの?!」

 だってマジで弱いもん。

 

「あいつは天才なんかじゃねーよ」

 タクヤはそんな事を言った。

 

「なんでや?」

「言っただろ? 勝ったのはあいつが初めてオセロをしたその一回だけ。その後は一回も勝ててない」

 どういう事だろうか。

 

「あいつは天才なんかじゃ無くて努力する奴なんだよ。一回負けたのがどうしても悔しかったのか、次やった時にはマジでボロ負けした。後で聞いたらさ、影でヒールの奴に特訓させて貰ってたらしいんだ」

「へ、へぇ……」

 そうなんか。何か勘違いしていたんだな、自分は。

 そんな何でもかんでも出来る奴が居る訳が無い。

 

 あいつは。サナは、努力が出来るってだけだったんだ。

 

「だから今も多分努力してるぜ? いや今だからかな」

「どういう事や?」

「こうやって船が外に泊まってる時なんかあいつは大体、夜中外で特訓してる。なんなら見に行って見たら?」

「タクヤも一緒に行こうや」

「俺は寝る!」

 つれない奴。

 

 

 

「見にいくのかー?」

 ベッドから降りて、扉まで行くとタクヤがそう聞いてくる。はよ寝ろや。

 

「トイレやトイレ」

「へー、おやすみ」

 なんで気になるかは分からないけど。

 その努力する姿が想像付かないんだよ、サナって。いつも平然と物事をこなしてみせる奴だからかな。

 

 ただ、脳裏に過るのは、マ王を見付けて必死になっていたあのサナの表情だった。

 

 

 

「夜の見張りかー?」

「まーねぇ。シンカイは迷子?」

 船の上に居るカナタに話し掛ける。ちなみに見張りは一晩二人の交代制だ。今日はカナタとアニキやったな。

 

「どーやって迷子になんねん!」

「なっはは、シンカイならやるかなーって?」

 やらへんわ。

 

「サナの奴知らへん?」

「えーと、サナ? サナならオアシスの湖の方にアカリと行ったよー」

 アカリも? どういう事だろう。

 

「情報サンキューや。この借りはいつか必ず」

「じゃあ! 新しい味付け考えたんだけ———」

「却下」

「なんで?!」

 言わせるのか。お前はバカなのか。

 

「女の子が夜更かしせんと無理せず寝ろやー?」

「アレが近くに居るかも知れないんだからそんな事言ってられないのー」

 マ王の事か。そりゃ親父やケイスケも神経質になるんだろうな。

 カナタに手を振ってから、自分はオアシスの湖の方に向かった。

 

 

 

「居たな……なんて格好してんのあいつ」

 オアシスに着いて、目に付いたのはほぼ下着姿で構えてるサナの姿だった。もう少し成長していれば悪い大人に襲われそうな格好。

 

「もう一回お願い! アカリ」

 サナがそう言うと、オアシスに生えた木々の中から何故かブーメランが飛んで来る。

 ブーメランは下手くそな挙動でサナと結構離れた所に飛んで行くが、サナは走ってそれを追い掛けて、見事に空中でキャッチして見せた。

 

 

「ふぅ……まだ反応が遅いかな。アカリー!」

 そう言うとサナはブーメランを木に向かって投げる。ブーメランは真っ直ぐに木に突き刺さり、木の奥から出て来たアカリがそれを一生懸命な表情で引き抜くと、また木の奥に戻って行った。

 

「もう一回!」

 それが続く。全く出処も挙動も掴めないブーメランを、サナは何回もキャッチしては同じ木に突き刺さる様に投げ返した。

 

 

「はぁ……はぁ……。こんなもん……か? はぁ……いや、もうちょい」

「何してるんや?」

「ひゃぁぁぁ?!」

「ごふぇっ!」

 少し休憩していた様なので話し掛けると、手持ちのブーメランで頭を殴られる。あ、星が見えた。

 

「ふぁ?! あ、あぁ?! ご、ごめんシンカイ! ……てか何してんのよ!!」

「自分こそこんな時間に何してん……良い子は寝る時間やで」

 見えた星はどうやら幻では無い様で。一撃でノックダウンした自分は仰向けに倒れていた。綺麗な夜空と、駆けつけて来たアカリと、言葉とは裏腹に申し訳無さそうな表情のサナが心配そうに自分を見つめている。

 

「いや、急に話し掛けて悪かった。自業自得や」

 起き上がりながらそう言う。

 

「そ、そうよ。ちゃんと話しかける時はマナーってもんがあんの。てか……あんた何しに来———何じろじろ見てんのよ?!」

「いや、良く見たら結構スタイル良いんやなって」

 引き締まってるけど、十三歳なりには出る所は出ている。ロリコンじゃないけどもう少ししたら凄い美人になるだろうし、今でも充分可愛いと思った。

 

「変態!?」

「その気は無いで?」

「……」

「え?! なんでアカリは泣いてるん?! え?!」

 サナだけ褒めたから?! 女の子の気持ちは複雑なのだろう。パジャマ姿のアカリは何故かそのパジャマを脱ぎ捨てようかどうかという考えを起こしたらしくパジャマに手を掛けながら泣いていた。

 

「早まらないのアカリ」

「……ぅぅ」

「アカリも充分可愛いで」

「……」

 え、なんでムスッとするの?!

 

「あんたは女心が分かってない……」

「す、すみません……」

『私だって脱いだら凄いんだからね!』

 嘘が書いてある。

 

「恥ずかしく無いんか?」

「はぁぅぁっ」

 真っ赤になるアカリを撫でてやると更に顔が赤くなる。アカリはアカリでまたこう可愛いんやから何を気にしてるんだか。

 

「あんたねぇ………………てか、何しに来た訳?」

「暇やから散歩しとっただけや。それこそサナ達は何してるんや?」

 正直に天才気取りのサナが努力してるのを見て見たかったとは流石に言えない。

 

「と、特訓よ……悪い?」

 もう少しはぐらかすと思っていたのだが、サナは意外にも正直に答えた。

 絶対そういうの人に知られたく無いタイプだと思ってたから「遊んでたの!」とか言うかなと思ったんだけどな。

 

 いや多分頭の良いサナだから、そんな事言っても無駄だと分かったのだろう。

 

「ガイルでもそこまでやっとらんで? 後幼い時に筋肉付け過ぎると成長に支障が出るって知ってる?」

「あの筋肉バカと一緒にすんな!!」

 何が違うのだ。

 

「わ、私は今でも充分可愛いし?」

 よく自分で言えるなぁ。本当に可愛いから何も言わんけど。

 

「それに別に筋トレしてる訳じゃ無いわよ……。あのバカと違って私はちゃんと効率よくやってるの、分かる?」

「分かりません」

 何が違うのか全く。

 

「あーもぅ。これだからド素人は」

 そこまで言われるのか。

 

 

「これは反射神経の特訓なんだから」

「反射神経?」

「そう。あの木の奥、夜だからよく見えないでしょ? あそこの何処でも良いからアカリにブーメランを投げて貰うの」

 そう言うとサナはアカリにブーメランを渡して、何も聞かずに頷いたアカリは木の陰に走って行く。

 

「それで」

 ほんの少しして、全く予想だにしない位置から予想だに出来ない程下手くそな軌道を描くブーメランが木の陰から投げられた。

 こうして見るとタクヤのブーメラン捌きは目を見張るほど上手いんだな。なんて考えていたらサナはパッと走って飛んで、さっきまでのようにそのブーメランをきちんとキャッチしてみせた。

 

「おー……良く反応出来たな」

「反射神経の特訓って言ったでしょ? 見えたら直ぐに動いて、取るの。取れたなら避ける事だって容易いでしょ?」

「なるほどなぁ……。モンスターがブレスなんていつどう放つかなんて分からんしな」

「そういう事。あー、バカに説明すんの疲れるわ」

「なんやとごら……」

 いちいち皮肉を言う。

 

「はふぅ……」

「付き合ってくれてありがと、アカリ。疲れたでしょごめんね」

「……っん!」

「ありがと」

 首をブンブン横に振るアカリ。そのアカリの頭をサナはよしよしと撫でる。

 サナはアカリの一歳年下なくらいだから、二人にそんなに体格差は無いというかサナの方が少し大きかったりするくらいだ。

 しかし年下によしよしされて喜んでたらいけない……事は無いか。この二人本当に仲が良いな。

 

「まぁ特訓もええけどなぁ……毎日こんな事やってるんか?」

「な訳無いじゃん」

 一秒もせずに関心を裏切られた。

 

「今日はアカリが手伝ってくれるって言ってくれたからこうして身体動かしてるだけだし。あの筋肉バカみたいにムキムキになったら嫌じゃん?」

「ガイルをバカにするとわいは許さんで」

 あいつの思いは知ってるからな。

 

「バカにしてるけど別に本気でバカだとは思ってないわよ」

 どっちなんだ。

 

「私は私のやり方があんの。どれだけ鍛えたって女の私には限界があるんだから……だから身体動かさない時はクソ親父にモンスターの知識の勉強見てもらったり、武器の手入れしたりしてる訳。確かにあのバカみたく筋肉だけ鍛えても強くなるかもしれないけど……私チビだし才能無いからそれだけ頑張らないといけないの!」

「天才じゃ無かったんか?」

「茶化すなよ……」

「ごめんなさい」

 いや、そういう気じゃ無かったんだけどな。

 

「ただ、関心したんやで?」

「何よ! 普段威張ってるくせに影でこそこそやって格好悪いとか思ってるんでしょ?! 何が天才だ、とか思ってるんでしょ?!」

 

「いんや……サナはやっぱ天才やわ」

「ふぇ……?」

「サナには努力出来る才能がある。それは誰にでも出来る事や無いからな。ワイは絶対にそんな事までしたく無いし?」

「な、なによ……。べ、別にこれくらい当然なんだからね!」

「へいへい、偉い偉い」

 サナがアカリにやったようにサナの頭も撫でてやる。サラサラしとるな。

 

「なぅぁ?! あ、アカリの前で何すんのよぉ!!」

 が、一瞬でサナは顔を真っ赤にして自分の手を突き飛ばした。え、ダメなの?

 

「いや、サナは偉いのぅ思って」

「だ、だ、だ、だからって撫でるか普通!」

 さっきアカリの事撫でとったやん。

 

「……む」

 何故かアカリが不機嫌に?!

 

「あ、アカリもサナに付き合って偉いで。将来立派なハンターになるなぁ」

「……へへぇ」

 アカリの事も撫でてやると少し顔を赤くするが嬉しそうだった。褒められるのは普通嬉しいもんだ。

 

「わ、私は別に全然偉く無いんだから。こんな事やって当たり前なの! それに別にただ特訓のために夜更かししてる訳じゃ無いし」

「どういう事や?」

 

「せっかくオアシスに来たのよ? 砂漠で水は貴重なの、プールなんて船じゃ入れないんだから! 遊ぶの!」

「まさかその為に下着姿なんか……っ?!」

「運動するとどーせ洗濯に出すんだから一石二鳥でしょ? ほらアンタも来んの! アカリも!」

 そう言うとサナは自分の手を掴んでオアシスの方に走る。その手は男の腕を掴むには少し足り無いくらい小さな手で、綺麗な肌だった。

 

 





今回は長引きます……。
具体的にはこのお話はあと四話ありますね。一ヶ月掛かるのかぁ……。

しかし、そんなに読んでる人が居るわけでも無いので。ゆっくりと気ままに進めていこうと思います。


厳しくで良いので評価感想の程も暇があればよろしくお願いします。
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