モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

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星に手が届く場所

 

「うわ、ちょっ、待ていや!」

 サナに手を掴まれて連れて来られたのは、このオアシスの源である湖の岸。

 なんで自分まで、そう言いかけるが目の前の光景が綺麗過ぎてそんな言葉は喉の奥に消えていく。

 

「どう? 綺麗っしょ」

「本当だ……」

 目の前の湖には、空に浮かぶ星々が反射して第二の星空となって足元に広がっていた。

 空も水も綺麗でなきゃ、こんな綺麗な光景は見れたものじゃ無い。砂漠のオアシスの水は砂で綺麗にされるからこうなるのか。

 

「どれだけ届きそうに無いお星様でも、水に映った星なら手が届きそうな気がする」

 彼女は普段見せないような表情で、湖に手を伸ばしながらそう言う。

 

「お兄ちゃんがね、両親を亡くした時に泣いてた私にそう言ってくれたの」

「お兄ちゃん……か」

 両親がなぜ亡くなったかは知ら無いし聞きはしない。けどそのお兄ちゃんも亡くなっている事を、自分は知っていた。

 

「だから私は砂漠の湖が大好きなんだ。届くどころか触れそうな綺麗な星の中に、お兄ちゃんやお母さん達が居る気がして……励まされてる気がして」

「サナ……」

 こんな小さな女の子が、なんでこんなに頑張って居るんだろう。

 なんでこんなに頑張らなければいけないのだろう。

 

 

「どーせどっかのバカに聞いたんでしょ? 私のハンターになった本当の理由」

「ちらほらとな……。サナはマ王を倒したいんか?」

 

「その為に戦ってるんだもん」

 自分はそんな事は無い。自分は元々本当にそんな理由でハンターになったんじゃ無いし、姉の事は恨んですら居る。

 サナと自分は違うようで少しずれているだけだ。何を恨んだかが違うだけだ。

 

 

「ワイもな、マ王にねーちゃんを殺されたんや……」

「え……」

 きょとんと、申し訳なさそうな表情をするサナ。別にサナは悪くないからな。

 

「でもワイはマ王を恨んでなんか無い……」

「なんで……」

「ワイはモンスターってのをそん時知らんかったから……ただ帰って来なかったねーちゃんを恨んだ。今思えば酷い話やけどな」

「そー……なんだ」

 俯くサナの頭を撫でる。

 

「だ、だから撫でるな———」

「今ならサナの気持ちも分かる気がするわ」

「シンカイ……?」

 この時自分がどんな表情をしていたのか、分からないけどサナは一旦頭を横に振ってからこう続けた。

 

「遊ぶぞ!」

「はぁ?!」

 サナに自分の頭を捕まれ、さっきまで浸っていた湖に叩き付けられる。えぇ?! なんでぇ?!

 

「ぶはっ! お、お前! さっきまでの感傷は何処に行ったんや!」

「遊ぶつったろ!」

 急過ぎだろ!

 

「おら!」

「ちょ、辞めい!」

「辞めろと言われて辞める奴はお人好しって言うの!」

 思いっきり水を掛けてくるサナは人を馬鹿にしたようないつもの明るい表情だった。

 

「なろぉ……ワイに喧嘩売った事後悔させたるでぇ! おらぁ!」

「ぬぁっ! や、やりやがったなぁ!」

「仕掛けてきたのは自分やろがい! はっはっは! オラオラぁ!」

「きゃぁぁ!」

 男の力思い知れ! そして詫びろ!

 

「アカリもどうやー?」

『私泳げないから』

 ごめんなさい。

 

「とりゃ!」

 固まっている自分を他所に、サナが手で汲んだ水をぶちまけてアカリをスケッチブックごと濡らす。マジかい! そんな事してええんか!?

 

「…………」

 アカリ怒ってない?! 眼鏡曇ってて表情見えないの怖すぎ。

 

「……っぁぁ」

 アカリが聞き取れない声で叫びながら取り出したのはなんとヘビーボウガンだった。

 

「お、落ち着けアカリぃぃ!! お、おいサナも謝らんかい!!」

「別に本気で怒ってる訳じゃ無いわよ。アレ、ヘビーボウガンの形した水鉄砲だもん」

 何その恐ろしい形の玩具。

 

「……むにゃぁ!」

 なんか凄い可愛い声が出てるんだけど。

 

「なんて言ってるんや……」

「酷いよサナー、だって」

「え、分かるの?」

「親友だもん当然じゃな———」

 そう言いかけたサナの顔面をヘビーボウガン型の水鉄砲から放たれた水が直撃しサナを湖に沈める。

 

「親友仕留められとるやんけ……」

 ヘビーボウガン水鉄砲凄い威力だな。水冷弾かと思ったわ。

 

「グハッ……ま、まさか一発で当てて来るとは……」

「まぁ、アカリには前ワイが少しコツを教えたからな」

「嘘ー?」

「本当やで。なー、アカ———」

 直後なぜか自分の顔面を直撃する水圧。想像以上の威力に自分も湖に沈む事になる。

 

「グハッ…………な、なんでや! なんでわいも撃たれなかんねん!」

「ぷっははは! 自業自得って奴?!」

「この場合恩を仇で返されたが正しいな……」

 しかしこんな短期間でかなり上手くなった物だ。

 

「……っん!」

「今度はなんて?」

「水が無くなるまで私達を練習台にするつもりね」

「本当は怒っとるんやない?!」

「良いから奥に逃げるわよ!!」

 そう言うとサナは自分の手を掴んで、湖の奥まで泳いで行く。結構深いなこの湖の奥は。直ぐに脚が付かなくなった。泳げて良かったわ。

 

「……んー!」

 流石に結構離れるとアカリの腕ではまだ当てられないのだろう、水鉄砲の命中率はゼロに等しくなった。

 

「ふっふっふ、アカリは泳げないからここまで来れば大丈夫よ」

「それでもまだ撃っとる当たり本当に怒ってる気がしてならんのやけど……」

「んな訳無いでしょ」

 どこからその自信が。

 

「あ、あのさシンカイ……」

「なんや?」

 急に静かになる物だから、ゆっくりと話を聞いてやる体制を作る。心なしかサナは眠そうだった。

 

「ちょっと……ちょっとで良いからさ」

 人の顔を見ないで、サナは湖に映った星を見ながらこう続ける。

 

「撫でてくんない……?」

「……ええで」

 何も聞かずに了承して、自分はサナを引き寄せて頭を撫でてやった。

 

 

 泣いていた気がした。

 気のせいな気もするが、そんな気がした。

 

 

「あり……が……と……おに……」

「ちょ?! サナ?! お、おいサナ?!」

 ストンと電気を落としたかのように、サナの動きが止まる。何とかしてサナを抱き抱えて岸辺に戻り、心肺を確かめるが別に疲れて寝てしまっただけのようだ。

 

「び、ビックリさせんなや……」

『いっぱい特訓してから遊んでたから疲れちゃったのかな?』

 と、アカリも心肺そうにサナを見ていた。

 

 そういえばサナは昼間に自分のせいで暑さで倒れたばかりだと言うのにな。

 

 

「そ、そいやアカリ……怒ってない?」

『私そんなに短気じゃないもん!』

 濡れたスケッチブックにそう書くアカリ。今それ怒ってるよね?!

 

「アカリってサナと仲ええよな」

 サナを背負ってやりながらそう聞く。柔らかくて女の子の身体だと感じる前に、まず軽いと思った。

 

「んー」

『歳が近いってのもあるんだけどね?』

「けどね?」

『サナは優しくて誰よりも一生懸命で、私の憧れだから』

 そう書いたスケッチブックを見せるアカリはとても笑顔だった。

 

「そうかそうか。これからも仲良くせなかんな、ワイも」

「……んぁ」

 アカリを、撫でてやってから湖を離れて船に歩いて行く。

 

 

 そうだ。こいつは誰よりも一生懸命で、誰よりも優しい。だから倒れてしまうまで頑張ってしまう。

 

「そんなのは……辛いやろ」

「……?」

 軽くて小さな身体を感じながら、自分に何が出来るか考えていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「あぁ……眠い」

 昨日は湖からサナを送り届けて服の洗濯までしている間に、かなり夜更かしする事になってしまったからな。

 

 

「おはよーございまーす」

 起きて甲板に降りる頃には船は出港していて、昨日の湖はもう遥か彼方だった。

 

「シンカイか、おはよう」

「どこ向かっとるんや? ケイスケ」

「昨日の集落で得た情報だとマ王はこのオアシスを今拠点にしているみたいだ」

 ケイスケは机に広げられていた地図の一点を指差しながらそう言った。

 

 

「この前シンカイに釣りのクエストを任せたのを覚えているか?」

「そりゃまぁ。ガノトトスも釣れたしな」

 それがどうかしたのか?

 

「あの湖はマ王が拠点にしている湖と地下で繋がっていてな。マ王から逃げたガノトトスが普段は行かないあの湖に移動していたらしい。……まぁ、言い訳にしかならんが」

「いや、あれはケイスケは悪く無いやろ。しかしなるほどな……逃げて来たのか」

 マ王が恐ろしい相手だというのもあるが、ヒールに押されて逃げたあのガノトトスの臆病な性格も相まってという事だろう。

 

 

「さて、そこで話し合った船のルートだが」

 

 どうやら自分が起きて来るまで、ここでカナタとアニキと親父、それにクーデリアさんとナタリアで今後の船の進路について話し合っていたらしい。

 

 

「このオアシスを大きく避けて砂原の近くに行くつもりだ。今回持って来たクエストには砂原の辺りでクリア出来るクエストが多いからな」

「なるほどな……」

 悪魔でマ王と戦う事は避けるのが前提という事か。それで良い、それが良いのだろう。

 

 

「俺はマ王とやりあって見たいけどな」

 アニキがそんな事を言う。

 

「今の俺達に敵う相手じゃ無いぞ」

 地図を丸めながらそう言って、ケイスケはその地図でアニキを軽く叩いた。珍しく苛立っているような気がする。

 

「じょ、冗談だよ」

「間違ってもサナと一緒に変な気を起こしてくれるなよラルフ」

「ガキ扱いすんじゃねーよ」

「そうだな……」

 なんか……ピリピリしてるな。

 

 

「どうかしたんか? ケイスケ」

「シンカイ……悪いな。マックスの事で俺も少し神経質になり過ぎてるのかもしれない」

 何かを失うのが嫌なんだ。それは、当たり前の感情なのにいざ失ってみないと分からない物。

 

「まぁ……慎重に越した事は無いと思うで」

 でも、もうこれ以上に無い大切な人を失ってる人はきっとまた別の事を考えて居るのだろう。

 

 

「ふざけんなよ……」

 だから彼女は、そう言った。

 

「お、起きてたの……サナ」

 クーデリアさんが止める手を振りほどいて、サナはケイスケ目の前に立つ。

 

 

「さ、サナ! ちょっと落ち着い———」

「カナカナは黙ってて。これは私の問題なの」

「サナ……」

 

「私はマ王を倒すの……そしたら猟団だって儲かるんだし何も文句無いでしょ?」

「お前が居なくなったら猟団としては大損失だ」

 冷たくケイスケは言った。

 

「私が負けるっていうの?! この為だけにハンターになったんだ、別にそれで死んだら死んだで私の勝手だろ?!」

「勝手なもんか! 俺達は家族だ」

 ケイスケが怒鳴ったのは初めて見た。

 

 

 砂漠に住む者なら誰でも知っている。それがハンターなら尚更だ。

 それがマ王という存在だった。

 

「……っ。お姉ちゃんはなんでハンターになったんだよ! この時の為じゃ無いの?! ねぇ!!」

「私はあんたと一緒に居なきゃと思ってただけよ……」

 

「クソ親父……あんたも邪魔する訳?」

「俺は……そうだなぁ。殴ってでも娘の愚行を止める」

 それ死ぬから。

 

「なんなんだよ……なんなんだよお前ら!」

 そこに、昨日のサナの笑顔は無かった。

 彼女は真っ直ぐだから、今見えてる者に必死になれる奴だから。だから苦しいんだろう。

 

「……っバカ!!」

 一言怒鳴ると、サナは上に走って戻っていってしまった。

 今は我慢するしか無いのだろうか。いや、無いんだろう。

 

 

「なぁシンカイ……俺は間違ってるか?」

 椅子に座って俯きながら、ケイスケはそう言う。

 

「何も間違っちゃ無い……ハズやで。でも、それは押し付けかも知れへんけど……。ケイスケでも悩むんやな」

「人を悩みの無い奴みたいに言わないでくれ。俺はただの人だ……。今自分で思う最善策を口にしているだけのただの人で、本当は何が正しいかなんて分かっちゃいないのさ……」

 そう言うとケイスケは机に置いてあった水を一口飲む。とても疲れた表情をしていた。多分、一晩中悩んでいたんじゃ無いのだろうか。

 

「何が正しいかなんて人には決められんさ」

 親父がそう言う。

 

「そーだよケイスケ」

 珍しくカナタがケイスケに優しく声を掛けた。自分は初めて見るんだが座っているケイスケを慰めているのか、カナタはケイスケの頭を撫でながらこう言う。

 

「ケイスケは頑張ってるから、なんでも背負おうとすんな……うん」

「カナタ……」

「何?」

「このまま抱いてくれ」

「首なら閉めてやる」

「ぐぉぉぉ……っ」

 アホかお前。

 

「がはっがはっ……し、シンカイ」

 死にそうになってるんだけど大丈夫かケイスケ。

 

「なんや?」

「いや皆か……サナが変な気を起こしてるのに気が付いたら、お前ら個人の判断であいつを助けてやってくれ。ラルフの時もそうだったが……結局恨みって奴は人を動かす原動力には充分過ぎるからな」

「私からも頼むわ」

 クーデリアさんも並んでそう言う。気が付かない間に集まっていたガイルやアカリもその言葉に頷いていた。

 

『サナは大切な家族だから!』

「せやな」

 

「よし、そうと決まればとりあえず飯だ!」

 仕切り直しと言うかのようにケイスケが立ち上がってそう言う。

 

 だが、その昼飯も晩飯も。サナは部屋に引き込もって出てくる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

「なぁタクヤ」

「なんだよ……俺のオセロセンスについてなんの文句があんの?」

「いやそれはどうでも良いわ」

「え、酷くね?」

 その日の晩、いつものようにオセロでタクヤを負かしてから寝床に着いた後に話し掛ける。

 結局自分は新入りなままで、皆の事が全部分かってる訳では無いのだ。

 

 だから聞いた。

 

「サナってさ……」

「んー……?」

「一人でもやる奴だと思う?」

 我ながら何の話だよってなる質問だ。

 

「……そーだな。あいつなら意地でも一人ででもやる。んで、やり遂げる」

「よーく知っとるんやな」

「あいつがアカリと良く居るし、ちょっかいかけてくるから嫌でも分かっちまうだけだよ。あいつは多分一人でも行っちまう……でも俺なんかが行っても邪魔なだけだからさ、俺は何にも出来ねーの」

 タクヤも家族思いなんだな。

 

「ったくなんでサナなんかの話しなきゃなんねーんだか。あー眠い、こりゃ今からシンカイが幽霊に拐われても気が付かねーわ」

「いやそこは気が付いてくれへんと困るで」

 そう言いながら立ち上がる。全くどいつもこいつも素直じゃ無い。

 

「サナのとこに夜這いでもしに行くの?」

「トイレやトイレ」

「へー、おやすみ」

 昨日もしたような会話をしてから部屋を出る。甲板に降りてもう一つ下へ、そこには皆の装備を整えて置いてある倉庫があって、普段はそこの隠し扉が開いて皆クエストに向かうのだ。

 

 

 物が揺れる音がした。

 

 

「別に隠れんでもええんやで」

「あ、あんたか……」

 アカリとお揃いで色違いのフルフル装備を付け、太刀と砥石を持ったサナがそこには居る。

 その気なのだろうが、そのまま狩りに出掛けるような格好だな。

 

「止めに来たの……? 皆に大声で知らせる?」

「んな迷惑な事誰がするかいな」

 言いながら自分も双剣を取り出してサナから砥石を奪い取った。

 

「シンカイ……?」

「大声出したら皆に迷惑やけど、サナが一人で行くのを黙って見てるのも自分は無理やねん。なら付いて行くしか無いわな」

「あんた……バカじゃ無いの」

 酷い言われようだ。

 

「マ王よ……っ?! 死んじゃうかも知れないんだから!」

「じゃあサナは……」

 立っているサナの背後にある壁に手を付けて、絶対に一人で逃げられないようにしてからこう続ける。

 

「アカリや他の誰かが一人で行こうとして黙って見てるのか……?」

「そ、それ……は……」

 サナは優しいから、きっと逆の立場なら自分と同じ事をするだろうな。そう思いながら返事を待った。

 

「ば、バッカじゃないの!」

 人を突き飛ばしてそう言うサナは、なぜか顔が赤かった。まさか熱でもあるんじゃ無いだろうな……。

 

「バカとは酷いなぁ……」

「なんでいきなり……もぅ…………大体…………壁ドンとか…………普段アホ面のくせに……」

「なんかブツブツ言っとるけどアホ面だけ聞こえたで?!」

 そんな風に思ってたの?!

 

「はぁ…………もぅ! ……あ、ありがとう……ね」

「なんやて?」

「ありがとうって言ってんでしょ?! これ以上何も無いわよ!?」

 たまーに可愛いなサナって。弄りがいがある。

 

「……っ、誰か来た?!」

 そんな会話をしていると階段を降りてくる足跡が聞こえたのでサナと一緒に物陰に隠れる。ん……良い匂いがする。

 

 

「筋肉バカ……?」

 小声でサナが言った通り、階段を降りて来たのはガイルだった。

 ガイルは俺達に気が付いているのかいないのか、何故か自分のティガレックスの素材を使った防具とハンマーを用意して着替え始める。

 

 な、何してるんだ……?

 まさかこんな時間に出発するクエストなんてあるまい。

 

 

「……なぜ隠れている。行くんだろう?」

 気が付いていないなんて事は無かった。

 

「あ、あんたまで何よ……」

「……俺はただ家族を守る為に動くだけだ。それに頭が悪いからな、お前らを止める術がない」

 ここにも居たよお人好しが。

 

「……大丈夫だ、お前達は俺が守る」

 ハンマーを掲げながらそう言うガイル。なんて頼もしいんだよおい。

 

「頼もしい仲間が出来たな」

「……任せろ」

「あんたら……。ば、バッカじゃないの……」

 それしか言えないのかお前は。

 

 

「で、お前ら見張りをどう突破する気だよ」

 ガイルと話していて気が付かなかったが、既に倉庫には四人目が居て装備を整えていた。チャージアックスを掲げるアニキは不敵な笑みを浮かべ、自分達三人を見比べる。

 

「上々なパーティだな」

「アニキ……?」

「あんたまで……」

 まさか四人も集まるとは思わなかった。しかもアニキにガイルなんて頼もしい限り。

 

「今日の見張りはヒールだ。今さっき俺がヒールに差し入れを出しといた」

 それだけでアニキが何をしたのか想像が付いてしまう辺り自分はもうこの猟団の一員なのだろう。

 

「まさかカナタの……」

「そう、カナタの作った特製おにぎりだ。そろそろ悲鳴が聞こえるんじゃねーか?」

 アニキがそう言ったもう次の瞬間には「グキャァァァッ!!」なんて悲痛の叫びが上から聞こえる。

 今度は何を入れたんだカナタ……。ガイルなんて両手合わしてるし。

 

「次の見張りはナタリアだからヒールはナタリアが介護してくれるだろ。そしてもう一つ。お前らそのまま行ったらただの密猟者だぞ?」

 確かにアニキのおかげで見張りの問題は解決した。しかしアニキの言う通りもう一つ問題がある。

 

ハンターはモンスターと人の生活を調和する者でモンスターを借り尽くすのが仕事では無い。過度な狩りは生態系を壊してしまうためらギルドが禁止しているのだ。

あまりに無意味で横暴な狩りを続けるのは密猟と見なされギルドに厳しく罰せられる事となる。

 

「って、訳で親父の部屋からディアボロス退治のクエストをかっぱらって来た。丁度あって良かったぜ。お前らもう少し頭使えよ」

なんて、アニキには似合わない頭脳プレイで問題を全て解決。自分達は四人で船を後にした。

 今日船は砂漠の真ん中で大きな岩陰に泊まっていて、見張りの目の届かない所まで行くのにはそう苦労しないだろう。

 

 自分達は船を出て、岩陰に沿って船を離れる。

 しかし、船が見えなくなるギリギリの所でまさかの人物に見付かる事になったんだ。

 

 

『皆どうしたの?』

 きょとんとした表情でそう書かれたスケッチブックを掲げるのは洗濯をしていたアカリだった。なんでこんな所で洗濯してるんだお前は!

 

「あ、アカリ……あんたも止める?」

『皆がマ王の所に行くって言うなら』

 いつになく真剣な表情で、アカリはそう書かれたスケッチブックを自分達に見せて来た。

 

 これは流石に諦めるしか無いか……?

 

 

「……ん」

 少しの間沈黙して、アカリはいったんスケッチブックをひっくり返して文字を書き連ねる。

 

『でもサナが他のお仕事だって言うなら私は信じるよ! ちゃんとサナ達が怪我も無く帰ってくるって約束してくれるなら私は何も言わないよ!』

「当たり前でしょ……。アカリ、私を誰だと思ってんの?」

 サナのその言葉を聞くと、アカリは少し笑顔になってスケッチブックをしまった。

 

「助かったぜ……」

「……そうだな」

「ほらとっとと行くわよ!」

 

「……んっ」

 三人に付いて行こうと歩き出すと、後ろから手を引っ張られる。なんだ? アカリ?

 

「……ぁナ……ね、い」

 真剣な表情で、そう言った。

 今なら分かる気がするな。サナの事お願い、だろ?

 

「任せろや」

 絶対に帰ってくるから。美味い飯作って待っといてくれ。今日はアカリが当番だったしな。

 

 

「……ん、って」

 頑張って。笑顔で彼女はそう言ってくれた。

 

 





物凄く長くなってしまった……
さてさて次回からはやっと狩り描写です!


ちょっとグダッてるかな……?


厳しくで良いので評価感想の程も暇があればよろしくお願いします。
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