モンスターハンターStormydragon soaring【完結】 作:皇我リキ
さっきまで綺麗に光っていた星々は太陽の光に紛れて見えなくなって行く。
砂漠は日の光を遮る物が何も無いから、こうなれば一気に気温は上昇するだけだ。
自分達が船を出てから既に八時間が経とうとしていた。
「今回は持って来たで! クーラードリンク」
「いや忘れたら洒落にならねーよ。もうあげないからね?」
冷たいツッコミだなぁ。
「さーてここか? マ王様が水飲んでる酒場は」
勘違いしたような事を言いながら、アニキは武器を置いて準備運動をし始める。気が早い。
「バッカじゃないの」
「んだとぉ?!」
「ディアブロスの主食はサボテンだから、そこから水分を貰ってる分、水を飲みに湖に来る事は殆ど無い」
詳しいな。それも、努力か。
「じゃあなんで湖に来たんだ?」
アニキのその疑問はもっともだ。
「まずそんな簡単に目標が見つかる訳無いでしょう? 無駄に歩いて体力を使うよりここはとりあえず拠点を作って体力の温存!」
そう言いながらサナは湖の岸辺に腰を下ろす。なるほど考えている訳だ。
兄の仇を前にしても、彼女は冷静に狩りの基本から外れて居なかった。
「勿論ただ待ってる訳じゃ無いんだから。二組に別れてマ王を探すの! 見付けても戦わずに、ここに戻って来る」
「……良い案だ」
なるほど出来るだけ体力を使わずに目標を探せる訳だ。
「なるほどな! よし、じゃあまずは俺とシンカイで行くか!」
「お、行くかアニキ」
アニキは武器を背負って自分を呼ぶ。多分とりあえず動きたいのだろう、落ち着いて待っているタイプでは無いし。
「ま、待ちなさいよガチホモ!!」
「はぁぁ?! 別にホモじゃねぇよぉ?!」
なんでそんなに必死なのアニキ?!
「とりあえず私とシンカイが行くわ!」
「何でだ?」
「な、なんでって。……そんなのどうでも良いでしょう?!」
なぜか顔を赤くしながらそう言うサナ。しかしここまできちんと作戦を立てたのはサナだしそれを信じるしか無いと思ったのか、アニキは渋々といった感じで岸辺に座り込んだ。
「ふぅ……み、ミーティングついでに朝ごはん食べてから向かうからね!」
サナの指揮でここまでは順調に狩りの準備を整えて、後はマ王を探すだけとなる。さぁ何処からでも掛かって来いって訳だ。
「これが打ち上げ煙爆弾かぁ」
サナと二人で砂漠の散策中。岩陰に休憩ついでに荷物の確認をしておく。クーラードリンクや回復薬の在庫管理は狩場では重要だからな。
そしてこれが打ち上げ煙爆弾。発火すると空高くまで打ち上がってから煙を上げる仕組みで、遠くに居る仲間に合図を送ったりするために使うアイテムだ。
ちなみに市販で売っていて、煙の色が何色もあって見晴らしが良く狩場の広い砂漠では必需品と化している。しかし、お値段はそこそこする。
「そんなに持って来てないんだから間違って使ったりしないでよ?」
「んなヘマせん」
水筒の水を飲みながらそう答える。休憩もこの辺にしておいてそろそろ探索に戻るか。アニキ達と交代しても良いし。
「ちょっと止まって……」
そんな風に考えながら歩き出そうとすると、サナが真剣な表情で自分……というか背後の巨大な岩を見詰めていた。
高さは人五人ほどで横幅は小さな砂上船位の大きな岩だ。日陰も大きくなるから休憩には丁度良いとその日陰で休んでいた訳だがどうかしたのだろうか?
「息する音が聞こえない……?」
「息……?」
ここに着くまで暑さと疲れであまり集中出来ていなかったからか。今言われてみると大きく空気を吸ったり吐いたりするような音が聞こえなくも無かった。
「まさか後ろ?!」
そう言うと同時にサナは岩の逆側に走って行く。
「……っま、待てやサナ!」
一人で行くなっての。
「……っ」
「っとぉ?!」
背後からサナを追い掛けるが、急に足を止めたサナにぶつかりそうになって姿勢を崩す。
なんだって言うんだ? そう思いながら足を止めたサナの目線の先に目をやると、そこにはとんでもない奴が転がっていた。
「ティガレックス……?」
それは飛竜種の中でも原始的な骨格のまま進化を遂げた、ある意味飛竜種の祖先の生きた化石とも呼べるモンスターの名。
他の飛竜種より前のめりな体型と飛ぶ事より歩行を重視しているような太い前足、黄色に青の 縞模様が特徴である。
それが今にも息を引き取りそうな程、瀕死の状態で横倒しになっていた。
「マ王にやられたのか……」
ティガレックスは飛竜の中でも凶暴で強力なモンスターだ。それがなんでこんな所で瀕死で倒れているのか。
その答えをサナはあっさりとそう口にした。
「お前も運が無いのぅ……」
目を閉じるティガレックスに向かってそう言う。
別に気の毒に思う訳では無いが、ただそんな言葉が出た。
と、いうよりはそのティガレックスのやられ具合に内心動揺していたのだろう。
ティガレックスの身体はそれはもうこれでもかと言った具合に痛め付けられていたからだ。
「居るわね……」
ただサナはそう言った。
「……せやな。この近くに必ず居る」
マ王なるディアブロスは近付く物が人であれモンスターであれ構わずにこのティガレックスのように打ちのめすらしい。
だからマ王がこの近くの何処かに居る。それだけは間違い無い。
「一旦戻るか」
「う、うん……そうする」
しかし、そこからが全く予想だにしない程長かった。
一時間探しては戻って交代し一時間休憩、また一時間探しては戻って交代し一時間休憩。
そんな事を昼までと言わず夕方まで繰り返して気が付けばクーラードリンクが要らなくなる程に日差しは弱くなって、星空も少しずつ見え、終いには船を出てから丸一日以上が経ってしまっていた。流石に眠い。
「流石に二日目分のクーラードリンクまでは容易してないで……?」
「俺達の覇気にビビって逃げちまったか? マ王も意外と大した事ねーな」
「……そんな訳は無い」
「え?! ガイルにツッコマれた?!」
多分アカリでもそれにはツッコミ入れるでアニキ。
「アカリの飯……食えへんなこりゃ」
「ん……そうね」
そんな残念なムードで、探索休憩に晩飯で携帯食料を頂く。
「そういや……あんたら、なんで手伝ってくれるの? 今更だけど」
「本当に今更だな」
「うるさいわね」
サナは素直じゃ無いなぁ。
「……言ったハズだ。俺は仲間を守る、それだけだ」
ガイル君なんでそんなに格好良いの?
「くさっ」
その反応は酷い。
「で、でも……その…………ありがと」
「……例を言われる事などまだしていない」
どっちも素直じゃ無い。
「ラルフ、あんたは?」
「俺? 俺は……マックスの時に家族がやられる辛さは身を持って知ったし。どう悔しがっても結局は報われないって分かっちまったからな」
「……どういう事?」
「ガキにはちと難しかったか?」
「切り落とすぞクソホモが」
何を?!
「わ、悪い悪い……。ちげーよ、ただ単にお前の気持ちも分かるしお前が心配なだけだ。でも勘違いすんなよ?」
「何をよ」
「別にケイスケやクー姉がお前の気持ちを全く分かってない訳じゃねぇ。結局はガイルも俺もシンカイも、ケイスケもクー姉も皆も思ってる事は同じでよ……お前が大切なんだ。大切で心配なんだ、思ってる事は変わらねぇ。だからあいつらの事悪く思うんじゃねーぞ?」
「わ、分かってるわよ……そんなの。でも……私はお兄ちゃんの仇が許せないし、それを邪魔されるのは…………嫌。お姉ちゃんはお兄ちゃんの事悔しく無いのかな……」
俯いて、サナはそう言った。
「……悔しくても、その悔しさよりお前の事が大事なんだろう。クーデリタは」
ポンと手をサナに乗せるガイル。サナは抵抗しないで口だけを開く。
「子供扱いしないで……」
「……していない」
「それならわいも」
ガイルに続いて自分もサナの頭を撫でてやる。
「二人して何?!」
「んじゃ俺も」
「な、なんなのよぉ?!」
アニキも加わってサナの頭を揉みくちゃにしてやる。
沈んでいても仕方無い。今はいつも通り時を過ごそう。
「そういやシンカイ、お前はなんで来たんだ?」
サナで遊ぶのに飽きたのか、アニキは唐突にそう聞いてくる。今更の今更なんだけど。
「んなもん皆と同じ理由……と、言いたいが。ワイはちょっとだけ、いや別に同じ理由って言ってしまえる程度のちょっとなんやけど他にも理由があってな」
「もったいぶらずに言えよ」
「ちょっとラルフ!」
「え? 何?」
「いやサナ、別に何もワイは思っとらんから」
「「?」」
自分のそんな言葉にアニキとガイルは首を傾げる。
確かに自分の中ではどうでも良い話だ。でも何故か口はその事を語ろうとしていた。
理由は自分でも分からなかった。
「ワイも昔ねーちゃんをそのマ王って奴に殺されてるねん」
「何……?」
「……そうか」
驚いた表情のアニキと、何か遠くを見詰めるガイル。サナは俯いて、自分の足元を見詰めていた。
「まぁ、別にどうでもええんやけど? うん。なんならその顔拝んでやろうと思った……みたいな?」
自分も大概素直じゃ無いらしい。
「なんていうの……その。皆ありがと、頑張ろ!」
結局のところ本心はこの笑顔が守りたい。それだけなのにな。
だから今はねーちゃんは関係無い。さて、もうひと踏ん張り捜索するか?
「しかしこの暗さじゃもう打ち上げ煙爆弾は意味あらへんな……」
「確かにな。じゃあ、どうする? 一旦帰るか?」
「バカじゃ無いの? 勝手に出て行ったのバレてるんだから帰ったら当分出禁よ?」
え、そうなの。
「こりゃ手土産の一つも無いと帰れへんな……」
「それどころか親父に殴られるだろうしな」
いやそれ死ぬんだけど。
「なら四人でここ離れて探すしか無いか……?」
「……その必要は無い」
さっきから黙って遠くを見ていたガイルが何故か武器を構えながらそう言った。
それに釣られて自分達も、ガイルの視線の奥に眼を向ける。
「何も……居ないで?」
しかし、その視線の先にはディアブロスはおろかモンスターの影すら無かった。ただ広がる砂と星空をどれだけ観察しても景色は変わらない。
「……来る」
だが、ガイルは確信の表情でそう言う。
「下だ!! 飛べ!!」
次の瞬間、アニキは大声でそう叫んだ。それから瞬き一回分も無い時間で地面が大きく揺れる。
「……なっ?!」
ガイルとサナが横に跳ぶのが見えたと思えば、アニキは自分を抱えてその場から飛び去り地面を何度も転がった。
その過程で何も出来なかった自分が見たものは、さっきまで自分達が居た地面を割って地上に現れる巨大な何かだった。
「ブォォォォオオオオオッ!!」
その何かが咆哮を上げる。
全長三十メートルはあろうかという巨大な身体。砂に紛れるような体色に一対の翼と頭部の襟飾りから伸びる二本の捻れた角が特徴的な飛竜、ディアブロス。
自分達が朝から探していたそのモンスターは仕留め損なった自分とラルフを睨みつけるように頭をこちらに向けた。
通常の個体よりも一回り大きな身体に、そのディアブロスの頭部の角は一本だけへし折れていた。
これが———片角のマ王ディアブロス。
戦闘シーンに入るの言ったなアレは嘘(ry
前回の反動か今回は短めです
いや戦闘に入るまで長いのなんの……これは人気が出ない訳だ
伸び悩んでるのに、結構悩んでます。まぁ、書き続けるのだろうけども
でわ、また来週もお会いしたいです……
厳しくで良いので評価感想の程も暇があればよろしくお願いします。