モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

27 / 54
絶対強者

 

 ヘビィボウガンの弾丸の規定装填数は弾の大きさに反比例する。

 

 

 ヘビィボウガン毎に弾倉の大きさは決まっていて、弾が大きければ大きい程装填数は少なくなり、逆も然り。

 

 入れ方を工夫すれば規定数より多少多く装填する事も可能だ。それに伴う知識というかスキルがいる訳だが。

 

 それに加えてもう少し工夫すれば、違う種類の弾丸を一緒に装填する事も不可能では無い。

 そもそもそんな事をした所で装填の順番と弾の特徴、使い所を誤れば全く意味が無い行為だ。だから普通のガンナーは『そんな事はしない』。

 

 

「ギャァァアアア!!」

 岩場に食い込んでも砕けないその強靭な牙を次こそはと此方に向け、咆哮を上げるティガレックス。

 自分はその間に毒弾二発と『拡散弾』を弾倉に入れ込む。大丈夫、ボウガンの仕組みはそこら辺のガンナーより分かっている。装填数くらい誤魔化せるし弾の特性も理解している。

 

 

「くらえ……ッ!」

 咆哮を上げているティガレックスに毒弾をまず一発。岩にボウガンの背を当てて反動を軽減、もう一発を突進に差し掛かるティガレックスに叩き込む。

 

 次だ。次でしくじったらこんな重い武器を持っている状態ではティガレックスの突進なんて避けれない。

 逃げるなら今だが、そうはしなかった。

 

 

 比喩表現だが自分の後ろにはアカリ達が居る。

 ここで怯んでたらティガレックスを一人で倒す事なんて出来やしない。

 

 思い出して掴め、感覚を。拡散弾の弾速と着弾後に拡散する爆弾。ティガレックスの前足の動き。バランス。風向き。

 

 

「———集中」

 まるで世界が止まったかのように、全ての動きが遅く見えた。

 

 ティガレックスが右前脚を上げた瞬間、スコープも覗かずにトリガーを引く。放たれる拡散弾の着弾点は左前脚。

 上げた右前脚が地面を踏み締めた所で拡散弾が着弾。同時に弾に仕込まれた爆弾がばら撒かれる。

 

 この爆弾は物体に触れる程度の刺激で爆発する。

 

 次にティガレックスは左前脚を上げて前進しようとするが、次の瞬間振り上げた左前脚の先端で何個かの爆弾が炸裂した。

 

 

「ギェァァァ?!」

 自慢の爪が割れ、上がっていた脚のバランスを崩したティガレックスはその場で横転。

 眼前で動きが止まったティガレックスに、拡散弾を発射した瞬間にリロードした毒弾をもう二発叩き込む。

 

 

「これで毒の効果が出るハズ……」

 イーオスの強力な毒牙から作られた毒弾は大型モンスターでも四発ないし五発でその身体を蝕んでいく。

 いくら治癒能力が桁外れな生き物でも体力を少し削る事は出来るハズだ。

 

 

 未だに目と鼻の先で足掻きもがいているティガレックスの他所に次は散弾を四発と拡散弾をリロード。

 

 ボウガンを岩と岩の間に固定して、トリガーにツタで作られたロープを巻き、近くの岩場に引っ掛けてUの字を作りながら『ティガレックスの目の前』を通ってその背後に回り込む。

 

 

「グェァァァアアア!!!」

 脚の痛みが引いたのか、立ち上がって背後に居る自分を睨み付けるティガレックス。

 せっかく背後を取ったのに直ぐに見付けられたな? いや、わざわざティガレックスの目の前を通って回り込んだんだ。『こっちを向いてくれなければ困る』。

 

 

「ほらよ!」

 自分の手から離れた球体はティガレックスが振り向いた直後に強力な閃光を放った。閃光玉成功。

 

「ギィェェァァ?!」

 再び閃光に眼を焼かれるティガレックス。しかし奴も馬鹿じゃ無い。

 目標が目の前に居たのを覚えているのか、闇雲に地面の岩盤を割って前方にその岩を投げ付ける。

 

 恐ろしいコントロールで、それは今さっき閃光玉を投げた位置を通過し岩にぶつかって粉砕した。

 勿論、自分は少しズレた位置に移動したのでそれに当たる事は無かったが。もしあんな物に当たろう物なら直撃した部分は消し飛んで無くなる。

 

 

「さて、お次は」

 手応えを感じなかったのか、動きを止めて威嚇行動に移り様子見を始めるティガレックス。

 その傍らで自分はツタを引っ張る。Uの字に仕組んだツタは連動して遠くに置いたままのヘビィボウガンのトリガーを引いた。

 

「ギャィァ?!」

 発射された散弾は銃口をそれ程気にしなくてもティガレックスに命中。威力は低いがいきなりの背後からの攻撃にティガレックスは驚いただろう。

 

 

 さらにトリガーを三回引いて散弾を全て発射させる。

 

 これでティガレックスは相手がまた背後に居ると思い込んだのか、身体を回転し弾の飛んでくる方へと頭を向けた。

 モンスターの感覚は侮れないな。ティガレックスの眼はまだ見えない筈なのに置いてあるヘビィボウガンの真正面に頭を向けている。

 

 

「正直な奴で助かるわ……」

 そこで、もう一度ツタでトリガーを引いた。発射される弾は拡散弾。ティガレックスの背中に着弾し爆弾がばら撒かれる。

 

 

「ギィェェァァァ?!」

 次の瞬間、その背を数回の爆撃が襲った。そしてその攻撃の犯人は正面には居ない。

 視力も戻ったのか。なんとも理不尽な攻撃をされ続けたティガレックスは頭を上げてキョロキョロと自分を痛みつけた犯人を探していた。

 

「ここやここ!」

 そこに、背負った双剣を構えて背後から叩き付ける。

 狙うは細い後ろ脚。ここで横転させて一気に決める!

 

 

 そう思っていたのだが、流石にそこまでは上手く行かなかったようだ。

 

 

「おっと……っ!」

 ティガレックスはこちらを振り向かずに、その場で後ろに飛んだ。

 

「ギィェェァァァアアア!!!」

 怒りの籠った咆哮。同時にティガレックスの身体の至る所の血管が充血して表面に浮き上がってきた。

 それはもう見ただけで相手の怒りが伝わってくるような姿。

 

 

 それでも、バックジャンプで距離を取ったのは自分を始末するために自らの距離を作った本能的な奴の作戦なのだろう。

 少し予定が狂ったが問題無い。この距離をつくったという事は次にティガレックスがしてくる行動は間違いなく突進。

 

 

 ならばと武器をしまい、アイテムポーチに手を突っ込んで閃光玉を握ったその瞬間———自分は眼を疑った。

 

 

「———はや……っ」

 想像以上にティガレックスの動きが早かった。さっきまでとはまるで別の生物かのような速さで近付いてくる。

 

 反応出来ず、閃光玉を投げる暇も無く前転。ギリギリの所で突進を交わして振り向くとティガレックスはその爪を軸に使って勢いを殺さずに身体を反転していた。

 また突進が来る。思考が追い付いて閃光玉を投げた———その閃光玉をティガレックスは追い越して突進。

 

「嘘だろ?!」

 ティガレックスの背後で意味も無く閃光を放つそれから自分を守る為に身体は反射的に視界を下にズラしていた。

 外れると分かっていて眼を瞑る訳にも行かない。ティガレックスも来る。

 

 また転がって避けなれけば———いや、間に合わない。

 

 大きく飛んで———無理だ。サナの言う通り、自分はそれが不得意だから。

 今この時になってやっとサナの言っていた意味が分かった。ここまでの状況に追い込まれなければ人間って奴は分からないらしい。

 

 

 飛べない。これまでこんな危険な状況になる事は無かった。

 そうでなくても誰かが居て助けてくれていた。

 

 でも今は誰も居ない。一人しかいない。

 

 

 考えろ考えろ考えろ考えろ。生き残る方法は? 死なない方法は?

 

 

 ティガレックスは眼前。さっきと同じ様にまるで世界が止まったかのように、全ての動きが遅く見えた。

 でもそれはさっきとは違う。近付いてくるのは恐怖、死。

 

 

 まずい……もう…………時間が———

 

 

「死———ぇ?」

 思考を吹き飛ばしたのは足元に『生えてきた』どう考えても不可思議な物だった。

 

 それは『手』。人の手首。それが、自分の脚を掴んだ感覚でその存在に気が付いた。

 

 

 色々な思考が交差する。

 なぜこんな所から手がとか、これが死神の手なのかなとか、綺麗な手だな、とか。

 

 しかもこんな状況なのに一番頭に浮かんで直接口から出た言葉はこんな言葉だった。

 

 

「ぇ———砂中霊?」

 サナやナタリアに聞いたあの話。砂漠の砂中霊。あのベースキャンプから落とされたハンターが砂の中に埋まってそのまま幽霊になったとかなんとかいうそんな話。

 

 いやいや、こんな時になんて物を見てるんだ自分は。あぁ……本当に居たんだ。

 

 

 

 ———次の瞬間、自分の頭上をティガレックスが通り過ぎて行った。……ぇ?

 

 

 砂の中から現れた手に思考を全部持って行かれて何が起きたか分からなかった。

 数秒を経て状況を確認。自分はどうやら転んで地面に背を付けていて、ティガレックスはギリギリ自分を踏まずにその場を通り過ぎていった———なんて奇跡のような出来事が自分に起きていた。

 

 

「……死んだと思った」

 数秒前は自分の心臓の音が外に聞こえるんじゃ無いかという位緊張していたというのに、過ぎてみればかなり落ち着く物だ。

 

 よ、よし。冷静になってもう少し安全に狩りを続行しよう。運が良かった、全く。

 そう思って、また振り返り突進を繰り出すティガレックスに向けて、次は外さないように閃光玉に手を掛けたその時だった。

 

 

「あ、それ借りるよ」

 砂中霊が喋った。

 

 いや、何を言っているか分からないだろうが自分にも分からないんだ許して欲しい。

 

 

 あまりに信じられない事が起きたので『彼女』の事は頭の中で居ないものとして処理しようとしていたがどうやら本当に存在するらしい。

 

 はい、自分は転んだと思い込もうとしていたが本当は『彼女』に脚を掴まれて転ばされたという表現の方が正しかった。

 

 

 肩までかかるブロンドヘアーはあまり手入れが行っていないのかボサボサで、それでも整った顔付きをしているその女性は砂から上半身だけを出してさっき自分の脚を掴んだ腕で人のポーチに手を突っ込む。

 その後勝手に取り出された閃光玉を、彼女は上半身だけのままティガレックス向けて投げた。瞬間、今日何度目かの閃光がティガレックスを襲う。

 

 

 ゆ、幽霊に助けられた。

 

 

 いや、いやいやいや。幽霊なんている訳が無いじゃないか。ならこの人はなんだ? なんで下半身が無いんだ。

 そんな自分の不安とは裏腹に、彼女は何故か地面に埋まっていた下半身をヌッと出して地面に立つ。

 

 身長は自分と同じくらい。年齢も多分……同じくらいかな?

 

「ほら、ボサッとしてないで態勢立て直す! 一旦逃げるよ!」

「え、ちょ、えぇ?!」

 砂中霊(?)は自分の手を掴み、その場から少し離れた所にある大きな岩場まで引っ張っていく。

 さ、触れるし。え、何これ。ていうか———誰この人!?

 

 

 

 

 

「よし、ここならティガレックスもそうそう気が付くまい」

 自分を地面に座らせると彼女は岩陰からティガレックスを覗き見ながらそう言った。

 

 な、なんなんだ。

 

 

「あ、あのー……助けて貰えたのは嬉しいんやけどな……? どちらさんで?」

「人に名乗らせる時は自分から、でしょ?」

 そうなのか……?

 

「え、えーと……シンカイです」

「ふむ、呼び難い名前だね。シンに改名しようか」

「マジか……」

 そんな事言われての初めてだ。

 

「で……そちらさんは……?」

「ん、あー……私はシーラ」

 そう名乗ると彼女は手を出して握手を求めて来る。元気の良い表情は髪型や顔付きに良く似合っていた。

 

 しかしシーラか……何か何処かで聞いた事がある気がする。なんだったかな?

 

 

「よ、宜しく」

「そう固くならなくても良いって!」

 いや、そう言われましてもね?

 

 小心者なんです。

 

 

「いや……だって噂に聞く砂中霊さん…………でしょ?」

 とりあえず真偽を確かめる為にそう口にした。お、おい待て。これで本当に「はい、そうですよ」とか言われたらどうする気だ自分!

 

 世の中知らない方が良い事もあるんだぜ?!

 

 

「砂中霊……? 何それ……?」

 良かったぁぁ! 幽霊じゃ無かったぁぁ! いやいや待て待て幽霊が「自分幽霊っす!」とか言うと思うか? 言わないよな?!

 

「私はしがない通り掛けのハンターだよ」

 シーラは呆れたような表情で砂まみれの防具から砂を落としながらそう言った。

 通り掛けのハンターかなるほどなるほどね。いや、むしろ信じられんわ。

 

 

「そのしがない通り掛けのハンターさんが何故砂の中から出て来るんだ……」

「いやぁ……えーと……んー…………ドスゲネポスと戦ってたんだけど。落とし穴を使おうとしたら自分がはまっちゃってさ!」

 アホだった。ただのアホだった。良かったこの人は幽霊じゃない! ただのバカだ!!

 

 そのバカに助けられたのが自分。

 

 

「ドスゲネポスの狩猟のクエストは自分達が受け取ったんやけどな……。……まさか密猟者?」

 しかし今語った様にドスゲネポスは自分達がギルドから狩るように言われていたモンスターだ。

 まぁ、この世界は広いから手違いで同じクエストを同時に受けてしまう事くらい無くは無いのだが。

 

「い、いやいや、密猟者なんてそんな。私は別クエからベースキャンプに戻ろうとしたらあいつがいたってだけだよ。環境不安定特有の乱入って奴。うん」

「まぁ……それなら仕方無いな」

 ディアブロスの件と良い、必要も無くモンスターを狩猟する事はギルドが禁止している。

 今回の自分や彼女の様な避けては通れない状況でもない限り不必要な狩りは犯罪と同じ扱いで罰せられるのだ。

 

 

「ところで君はなんで……あのティガレックスと戦っていたんだい?」

 シーラはもう一度ティガレックスの状況を確認しながら自分にそう聞いて来た。

 ティガレックスは自分達を見失ってその場をウロウロとしている。いつまでそこに張り付いているつもりだ地縛霊かあいつは。

 

「怪我人がベースキャンプで寝とってな……ティガレックスに早く退いて貰わなかんねん」

「それは落ちてたヘビィボウガンかガンランスの持ち主……?」

「……せや。カナタって言うんやけど、ガンランス使いの」

「カナタ……」

 名前を聞いて、シーラは少し考える素振りをしてからこう口を開いた。

 

 

「よし、あのティガレックスを撃退するの、私が手伝うよ!」

「ほ、ホンマか? 通り掛けのハンターさんが?」

「んー、困った時はお互い様って言うじゃないか」

 そんなありがたい言葉を落とすシーラ。

 

 初めは幽霊擬きの自分で自分の罠にかかるバカだと思っていたけど、かなり良い奴じゃ無いか!

 

 

「それなら是非頼みたい……。一刻も争う状況かもしれへんのや……」

「……そ、そんなに具合が悪いのかい?」

「ティガレックスに踏まれて……」

「ん……そうか」

 彼女はまた考えると、背に背負った身の丈程の薙刀を構えながらこう続ける。

 

 

「……ならとっとと終わらした方が良さげだね」

「ありがとう、シーラ。この例はいつか必ずする」

 予想だにしない助っ人の参戦で状況は良い方に動いていれた。

 

 

「行くよシン君!」

「シンカイや!!」

 さて、反撃開始だ。

 

 





ちょっとチートし過ぎてしまった感が……。
防具スキル無しで、反動軽減に装填数upは流石に自分でもやり過ぎかなとは思うんですが。これくらいしないとキャラが立たないかな……なんて、思い。

後悔はしない。


そんな訳でティガレックスとの第一戦でした。
結構前になるのですが、とある方とティガレックスのロケハンをやったので、その時の事を思い出しながら書いたりしています。

ロケハン、Twitter等で募集しているのでもしお暇な人は……←


でわ、また来週お会いしましょう!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。