モンスターハンターStormydragon soaring【完結】 作:皇我リキ
「カナタは!」
走ってベースキャンプに辿り着く。狩りの疲れからか全然早く走れなかったけど自分なりには急いだつもりだ。
「ティガレックス倒したのか?!」
自分を見つけるなりそう聞いて来たのは片手剣を構えてベースキャンプ入り口に立っていたタクヤだった。
ふむ、ちゃんと見張りをやってたんだな。
「おぅ、後ろに居るシーラって女の子に手伝って貰ったんやけどな」
情け無いけど。
「……ん?」
「んな事よりカナタは?」
「んーぇ、えっと、アカリに聞いて!」
それもそうか。
「アカリ、カナタは!」
ベッドの所まで走ってアカリにそう聞く。それ以前にカナタの姿が目に映っていたのだが、ベッドで座っていて表情はそんなに悪く無いように見えた。
『見た目は元気なんだけど無理してるような気がして。シンカイ君を迎えに行くって言って辞めないから頑張って止めてた!』
偉いぞアカリ。しかしなるほどそんなに悪い状況じゃ無いのかな? 心配かけさせやがって、まったく。
「シンカイ……さっきシーラって」
ベッドに座っているカナタは驚いた表情でそう口を開く。うん、見た感じ急を要するような状況では無さそうで本当に何よりだ。
勿論、油断して良い状況では無い訳だけど、カナタが起きてて話せているのだから少しは安心しても良いと思う。
「あぁ、そうそう。そのシーラって女の子にティガレックス倒すの手伝って貰ってな。いやぁ、凄い強い操虫棍使いなんやでこの子。と、いう訳で是非この子を橘狩猟団にスカウトしたいんやけ———」
「そのシーラは……何処にいるの?」
自分の言葉を遮ってカナタはそんな事を口にする。まるで、お化けを見るような目で自分を見ながら。
「———ぇ?」
いや、どこにって。ここに上がってくるまで、ついさっきまで、自分の背後にいたハズなんだけど?
そう思って振り返る。視界に入る人物は不思議そうな表情をしているアカリとタクヤだけ。
「あ、あれ……? シーラは……?」
確かにここに登ってくるつい数秒前まで後ろに居たと思ってたのに。
「ね、ねぇ……その子どんな子だったの? 何処にいるの?」
そう言うカナタの表情は何かに驚いた、なんとも言え難い表情だった。
「どんな子って……短いブロンドヘアの……女の子で…………操虫棍持ってて……えーと…………いや、あの子何処に行ったんや……?」
辺りをどれだけ見渡しても彼女の姿は見えない。
あれ? あれれ?
な、なんだ? なんだこの変な感覚。
…………シーラは???
「ったく……お手柄だと思ったんやけどなぁ……」
「そんなに強かったのか? そのシーラって人」
「まぁ、少なくともワイと二人でティガレックスを倒せるくらいにわ」
ナタリアとクーデリアさんが作ってくれた晩飯を受け取って、カナタの寝ている部屋へ行く為に階段を登りながら。自分は聞いてくるタクヤにそう答えた。
結局あの後、引き止めたのに意地でも探すと言って脚を動かしたカナタと付近を捜索してもシーラは見付からず。
それどころかティガレックスの死体すら消えていたと言うのだからもう訳が分からない。剥ぎ取った素材はきちんとポーチに入っていたのに、だ。
ティガレックスは戦いの最中で結構ベースキャンプから離れてしまったから、岩場だらけのあの付近で見失ってしまったのかもしれない。
だけどシーラは本当に何処に行ったのだろうか? 途中までは確かに居たハズなんだけどなぁ。急な腹痛でどこかに行ってしまった……とか?
そんな訳でシーラは結局見付からずに自分達はキングダイミョウに戻ってたのだった。
まぁ……この砂漠に居ればまた出会う事もある気がする。
そう思っていた。
「カナター、入るで」
一応断りを入れてノックまでしてから扉を開ける。
カナタの容態はというと想像していた程悪い状況ではなかったみたいだ。本当に神のご加護でもあったのかのように奇跡的に軽く済んでいたとか。
本当に良かった。
「あ、シンカイにタクヤ。ごめんね大した事ないのに態々」
寝間着姿のカナタはベッドの上でそう言う。いや、大した事無い訳は無いと思うけど……。
『ご飯はそこに置いてくれる?』
「ほいほい」
カナタの世話をしていたアカリに言われて、言う通りにする。船に着いてからもカナタの看病をしてくれて偉いな、アカリは。
「ご、ごめん……俺がティガレックスに気が付かなかったから……」
タクヤは深く頭を下げてそう謝った。その必要はないとカナタと何回も言ってやったのだが、それではタクヤの気がすまなかったらしい。
まぁ、気持ちが分からないでも無いけどな。
「そんなに気にするなら一緒に強くなろ? 大丈夫、タクヤは中々才能あったよ。だから当分は私や皆が守るけど、いつかはタクヤが私や皆を守ってね?」
「カナタ……。お、おう! 俺、頑張るぜ!」
先輩ハンターのありがたいお言葉にタクヤはそう決意を言葉にした。
うん、タクヤは確かに頑張っていたからな。将来有望だ、勿論アカリも。
「うん、頑張れ」
「うーん、しっかし。結局シーラは見付からなかったなぁ」
「あ……そのシーラって子なんだけど……」
自分が雑談の会話の初めに呟いたそんな言葉に、カナタは何やら困ったような表情でそう返してきた。
何か違和感を感じては居たんだ。
彼女はカナタを知っているような口振りだったし、それはカナタも同じで。
だからもしかしたら二人は知り合いなんじゃないか? そんな事を思っていた。
「シーラは……多分もう生きてないハズなの」
でも、そんな考えはカナタのその言葉で打ち消される。え? 生きてない? はい?!
「ちょ、ちょ、ちょ、待ってくれ。どういう事や?!」
だ、だって自分はシーラと一狩した訳で。決してそんな、幻覚を見ていたとかじゃ無いハズなんだ。
「昔あの場所でね、私とケイスケにラルフ……それにシーラでクエストを受けたんだ」
カナタはそう語りだす。昔を思い出すように。
「もう五年くらい前だからアカリは覚えてないかもしれないけど。父さん……団長が橘狩猟団を立ち上げた時、初めて仲間になったのがシーラっていう操虫棍使いだった」
『ちょっと覚えてるよ! カナタと同い年のお姉さんだった気がする!』
「うん。それで、チビだった私達初めての四人でのクエスト。今回の私達と同じ場所で、同じドスゲネポス」
それは、まるで今回と同じ状況だった。
「途中までは上手くいってたんだ。でも、ティガレックスの乱入に気が付かなかった私は……ケイスケに守られて怪我もしなかったんだけど。ケイスケが大怪我を負っちゃって」
それはそれは今回とは比べ物にならないくらいの大怪我だったらしい。だから、カナタは本当に今回運が良かっただけなんだと思う。
「ケイスケをベースキャンプになんとか運んで。でもティガレックスが居るから私達は動けなかった」
「ま、全く同じ状況だな……」
「うん。それでね、シーラは私達の為にティガレックスを相手するってベースキャンプから出て行っちゃったの。止めたんだけど……それでも、ケイスケが危ない状況だって内心分かってたから誰も…………シーラもそうするしか無かったのかな」
多分どんな奴がその場に居ても、同じ事をするんじゃ無いかな。それが、仲間って奴だから。
「そしてベースキャンプから出てティガレックスと戦いに行ったシーラが帰ってくる事は無かった……。私、すっごく後悔してるよ…………あの時なんで止めなかったのか。なんで自分も戦いに行かなかったのか。でもさ、多分それは間違いで…………本当は正解なんて無かったんだと思う」
彼女にとってはそれは辛い過去の話なのだろう。
いや、だがな。少し待て。
「ちょ、ちょっと待て。まさか、いや、そんな……ハハハ」
「あ、ありえるのか……そんな事」
自分の気持ちが伝わったのか、タクヤも顔を青くしながら自分を見てくる。
そしてそんな自分は真っ青に……いや真っ白になっていたに違いない。
「だから、私は今回シーラが助けてくれたんじゃないかって……そんな事を思っちゃってるよ」
『そうだと嬉しいね!』
いや全然嬉しく無いから。
「待て待て待て待て!」
そうだな、そうだよな。シーラ……その名前はどこかで聞いた事があったんだよ。
クエストに出る前に親父の部屋で、昔居た操虫棍使いの話が持ち上がった時だとか、カナタがダメージで倒れてある時に譫言で言った事だとか。
大体落とし穴にハマったからってそのままあのタイミングまで出てこずに居るか?!
なんで彼女の操虫棍は虫がいなかった?!
なんで突然いなくなってしまった?
もし、『そう』だというなら全てに納得がいってしまうのだ。
「お、お化けだったとでも言うんか?!」
砂漠の砂中霊———と、までは言わないが。自分が一緒に戦ったあのシーラは既に亡き人で幽霊だったと?!
いやいや、いやいやいや!!
「いや、まぁ……どうなんだろうね。たまたま名前と見た感じがが似てるだけの人だったのかもしれないし……そもそもシーラは生きてて…………また助けに来てくれたのかもしれないし」
そのどちらにしても疑問が多少残ってしまうが。
「お、おいどうしたシンカイ」
「タクヤ、今日一緒のベッドで寝ないか?」
「怖がり過ぎだろ!!」
「うるせぇよ!! お前に幽霊と一緒に狩りをした奴の気持ちが分かるか!!」
「いや本当、不思議だねぇ」
そう口を開くカナタの表情は寂しいとか苦しいような表情では無く。暖かい温もりを感じているような、幸せそうな表情だった。
「…………ありがとう、シーラ」
「いや全然ありがたく無いから」
『シンカイ君ってお化け嫌いなんだね』
恥ずかしい限りだぞ畜生!!
そんなこんなで、我等が狩猟団は進んでいく。
あ、ちなみにきちんとドスゲネポスは倒せた訳だからクエストはクリアした。
アカリとタクヤの今後に期待しながら、自分は結局その日幽霊に怯えて寝れなかったとか爆睡したとか。
いや、本当さ、なんだったんだろうな?
と、言うお話でした。
モンハンの世界にもこんな不思議なお話があっても良いんじゃ無いかなって思って書いたお話だったりします。
真相は、読者様のご想像にお任せするのです。
長ったらしく書いてしまいましたが、これでこの章も終わりという事で次の章に移ります。
次は少し短くなりそう? ちょっとネタ寄りで行こうかななんて。
余談になりますが、本日モンスターハンターストーリーズの発売日ですね。
私は買いません← 情報は漁るしアニメは見ますけど。とりあえず買いません←
そんな、モンスターハンターストーリーズの世界観を少しだけ組み込んだお話を本日から書き始めました。このお話と同時に更新されているハズなので、もしお暇な方はお付き合い頂けると嬉しいです。
でわ、また来週お会いしたいです。