モンスターハンターStormydragon soaring【完結】 作:皇我リキ
「やってるか?」
「はーいやってますよ」
また町に出て十数分。アニキが突然立ち止まったと思えば目の前にあるお店に立つ女の子に声を掛ける。
金髪の整ったショートカットと顔は美少女のそれに等しい。しかし残念、胸はペタンコだった。アカリと同じ位に。
これ、本人に言うと凄く怒る。
「きのじぃ居るか?」
きのじぃ?
「あー、今ちょっと寝てまして」
「どしたー」
困り顔で答える少女の背後からは、またもや金髪の次は男性が出てくる。
少女とは正反対の雑な金髪、身長はそこまで高くない———とか観察していると少し違和感を感じた。
「なんだ……? ジロジロ見て。てか誰だこいつ」
まず、胸がある。少女とは真逆で大きな胸が。
二人の違いを簡単に表すなら森と丘だ。少女は平面な森で彼は丘。
そして頭の上にはどんなファッションしてるのか分からないがキノコみたいな帽子を被っていた。何この人。
「男におっぱいが……」
「何この失礼な奴。しばいて良い?」
しかも物騒。
「な、なんなんやこの人は」
「サイカねーちゃんとユウ君だよ」
あん?
ごめん、タクヤがどっちを差して名前を言ったのか分からない。
「そっちの女の子みたいな奴はユウ君。俺と同い年」
「え、男?!」
「あ、はい。男です」
嘘だと言ってくれ。
「んでそっちのキノコ被った変な人がサイカねーちゃん。アニキ達と同い年。二人は姉弟だぜ!」
「おいタク、今変なとか言った?」
「い、言ってない!」
言ってたよ。
「俺達が良くお世話になっている木野工房の息子娘さん達だ。これこらも世話になるだろうから仲良く宜しくな」
ケイスケは淡々とそう語るとこう続ける。
「きのじぃは寝てるのか?」
「あぁ、今さっき寝た。急用なら叩き起こすけど?」
「それは勘弁してくやってくれ。……急用じゃないから伝言を頼む」
そう言うとケイスケは色々な素材が入ったポーチをお店に置いてメモを書き始める。
この工房、加工屋になってるのか。
ハンターがモンスターの素材を集めるのは単にモンスターへの感謝だけでも自慢のためだけでもない。
モンスターの素材は時に鉄より硬く鋭く、物によっては素材が生きている時の属性を引き出せる物まで様々だ。
そんな素材を防具や武器に加工するのが文字通りこのような加工屋という訳で。
つまり、ハンター御用達のお店。
「なんでワイ、連れて来られたん?」
「これが何か分かるか?」
自分の質問にケイスケはそんな失礼で返してくる。何かと思ってケイスケが取り出した物に視線を移した。
「ワイのポーンシックルやんけ」
ケイスケのその手にあったのは自分がグングニールから出て行く時に買った双剣———ポーンシックル。500ゼニー。
なぜケイスケがそれを持っているのか。少しばかり理解に苦しんでいるとケイスケは質問の答えを聞いて満足したのか口を開く。
「もうこいつもボロボロだろう?」
「せやなぁ……」
橘狩猟団に入ってからもう四ヶ月程の月日が経っている。その間使い続け、すでに身体の一部とも言える双剣だ。
「だから新しい武器を作ってシンカイに渡してやろうと思ってな」
「なに……」
「どうした? ん、この双剣に思い入れがあるなら無理にとは言わんが」
そう言われると反応に困る。
この双剣とはディアブロスやティガレックスなんかみたいな強力なモンスターとも戦ってきた。思い入れが無い訳が無いのだ。
ただ、やはり最近切れ味や攻撃力が気になったりする。自分が武器の新調を渋ってパーティに迷惑を掛けたんじゃ元も子もない。
そもそもこの双剣、五百ゼニーで買っただけの物だ。
「いや、ならお言葉に甘えて新しい武器を頂くとするわ。でもその代わりその双剣は御守りとして取っておきたい、加工用に渡してくれるんは辞めて貰えんか?」
「なるほどな、分かった。まぁ、元々加工用にはこっちを使う予定だったから問題は無い」
そう言いながらケイスケはポーンシックルを自分に返してくれる。
所々欠け、砥石を掛け続けたからか買った時より小さく見える。
これまでありがとうな、相棒。お疲れ様、少し休んでてくれ。また、世話になるかもしれないから。
「……こっち?」
そう聞くと、今度はアニキが双剣を取り出す。
鉄製の双剣。新品という訳では無く、どこか使用感のあるその双剣の名はツインダガー。
「こいつを連れてってくれねーか?」
それは、自分が猟団に入る前に亡くなったマックスという人物が使っていた双剣だった。
アニキは彼の形見だと大切に保管していたのを知っている。
「え、ええんか……? それはマックスのやろ……?」
「マックスの、だからだ。俺がこんなもん大切にしまっててもあいつは報われねぇ。だから、こいつはお前が使ってくれ」
そう言われ、自分は無言で双剣を受け取る。
手にしっくり来る。会えなかった、大切な家族の一員。
大切な家族を守ろうと、命を落としたマックスの形見……か。
「ワイはな……昔、勝手に死んでまう奴が大っ嫌いやった」
姉の死は、今でも心から消えない。なぜ帰ってこなかったのか、会えるのなら問い詰めるだろう。
「でも、そこまでする価値があるのが……仲間なんだなって、最近そう思う。それでもやっぱり生きて帰るのが一番なんやけど」
皆のおかげで、姉の事を少しは許せるようになってきた。それでも自分の信念は変わらないから、こう言おう。
「だから、もう誰も死なせへん為に……マックスの力。確かに受け取ったで」
アニキを守ったその剣を天に掲げ、そう言う。
もう、誰も死なせない為に。
「へぇ……。ツインダガーか、ならそこの轟竜の素材でレックスライサーに強化しておくぜ」
そう言うとキノコ頭のサイカは机にばら撒かれていた素材の内、自分がシーラという操虫棍使いの女性と狩ったティガレックスの素材を何個か袋に詰める。
ティガレックスの素材は属性こそ持たないが素材の質から攻撃力や切れ味が高い。言ってしまうとボーンシックルなど眼では無い武器が出来上がるハズだ。
そしてティガレックスの武器といえばガイルとお揃いになる訳だな。……そういえば、武器は良いんだが防具は作ってくれないのだろうか。
「そら、楽しみやわ。あんたが作るんか?」
「ユウも俺も鍛冶屋じゃねぇよ。じーちゃんがここの大将だからな」
ツインダガーを手渡しながら聞くと、そんな返事が返ってくる。
二人のお爺さんがこの加工屋の店主という事か。
しかし、サイカという女性の一人称がもうやっぱり男である。
「このくらいなら明日には取りに来て貰って構わないぜ。ほらユウ、素材とこいつを鍛冶場に持ってきな」
「はーい」
仕草といい口使いと言い、ユウ君の方が女の子染みているのだが。
「んで、今回はこれだけか?」
「いや。もう一つ……加工でなくて買いたいものがあるんだ」
サイカの問いにケイスケはそう答えると、タクヤの頭に手を乗せながらこう続ける。
「こいつにチャージアックスを使わせてみようと思ってな。初めだから生産品で試してみようと思う」
「ほぅほぅ、確か倉庫の奥の方に在庫があったから手入れするだけで使えるな。これも明日で良いぜ」
「それは助かる」
そう言うとケイスケは代金であろう金銭の入った袋をサイカに手渡す。
彼女はそれを受け取ると金銭をばら撒いて、数えてから釣り銭をまた袋に入れてケイスケに返そうと手を挙げた。
「ほれ、釣り銭」
「取っておいてくれ。いつも世話になってるからな」
猟団費なら返してもらった方が良く無いか?
いや、そもそも武器防具は自分の金で何とかするのでは無かっただろうか? と、なると目の前の金銭は誰のなのだろう。
「いや、こっちは商売でやってるんだぜ?」
「橘狩猟団からの本の気持ちと受け取ってくれ。きのじぃには、もっとお世話になる事があるだろうからな」
「まぁ……そう言うなら。今晩の飯を焼肉にするわ」
おい。
「おぅ、頼んだぞ。きのじぃにも宜しく言っといてくれ」
「オッケー」
そんな会話をし終わると、自分達は加工屋を後にする。
明日また戻って来て、出来上がった武器を取りに来る予定だそうだ。
レックスライサーか……中々に楽しみである。
しかし、だな。
「釣り銭、良かったんか? あれ猟団費やろ? ナタリアに怒られるで」
我が狩猟団は特別裕福という訳ではない。生活に困っている訳では無いが、しっかり者のナタリアが財布を握っているのだ。無駄使いには彼女は厳しい。
「アレは俺の金だから大丈夫だ」
しかし、ケイスケはそんな台詞を淡々と口から溢した。
「え、ちょ、いくらだったん?! 払うで?!」
「気にするな。共に戦う二人の家族の火力不足を補いたいと、俺のわがままで加工屋に行っただけだ」
何このイケメン。
「そうは言うてもなぁ……」
「確かに本来、自分の武器防具の費用は自己持ちだが。シンカイにはこれまで何度も助けて貰ったし、タクヤの成長には目を見張るものがある。二人には期待してるんだ、受け取ってくれ」
ここまで言われると引き下がる事も出来ない。
どうもいつも通り、ケイスケの思惑通りに事が運ぶ訳だ。
最近は、それも良いんじゃ無いかと思えて来た。
「なら、ありがたく受け取る事にするわ。この恩は狩場で返すで!」
「おぅ、期待してるぞ」
しかし、腑に落ちない点がもう一つだけある。
「それはそうと……タクヤ、片手剣辞めるんか?」
ケイスケがタクヤに買ってやったのは新しい片手剣でも無ければ今の片手剣の強化でも無い。
チャージアックス。兄貴の使うスラッシュアックスと似た様な武器で、変形ではなく合体機構を備えている。
右手に盾左手に剣を持ち片手剣の様に戦う剣モードと、長いリーチと高威力の一撃が特長の斧モードの二つの形態がある武器だ。
剣モードは片手剣と使用感が似ているし、筋肉の付いてきたタクヤの火力を上げるならこれ程マッチする武器も無いだろう。
それに、
「兄貴のアックスと似てて、変形合体するとか格好良くね?」
変形合体は男の子のロマンなのだ。
タクヤ自身がこう言うのも分かるし、実際練習すれば上手く使いこなすと思う。
それでも、腑に落ちない。
なぜか。その理由は意識せずとも自分の口から勝手に漏れる。
「でも、チャージアックスじゃブーメランは出来へんで?」
確かに片手剣と同じような立ち回りをするのが、チャージアックスの剣モードだと聞く。
しかし片手剣の盾と違ってチャージアックスの盾は斧その物だから、重量としては比べ物になら無い。
片手剣の長所はその軽さから身軽な動きと軽い盾を構えたその手でポーチのアイテムをそのま使える事だ。
だから同じような立ち回りと言うが実際は全く違うと言っても過言では無い。
タクヤの長所はブーメランだと思ってしまっているから。それが出来なくなるのは個人的に良くは思わなかった。
「俺はブーメランだけが取り柄なのか?!」
「い、いや……そうとは言っとらんけどな?」
「物は試しだ。合わなかったらまた片手剣を使えば良い」
ケイスケの言う通り、だな。
タクヤにチャージアックスの才能があるかもしれないのだし。
「俺がアニキに相談したんだよ。なんか俺さ、モンスターにダメージ与えてる気にならなくて……」
「ダメージを与えるだけが狩やないと思うけどなぁ。ま、タクヤがそう思ったならいっぺんやってみーや!」
「おぅ!」
物は試し、確かにな。
「よっし、そうと決まれば武器が届き次第すぐに狩りに出ようぜ!」
張り切ってアニキはそう言う。うんうん、自分も楽しみになって来た。
「その前に、湖だかな!」
そうだったそうだった。この後湖で我らが猟団の女の子達も交えた水遊びだった。
この炎天下の中、可愛い女の子達の水着姿を見ながらバカンスをエンジョイ。
全く楽しみしか無い。夏最高、橘狩猟団最高!
そんな訳で、自分達は船に戻ると直ぐにキングダイミョウは出航した。
昼飯は湖で食べるから我慢しながら、船はダイダロスから一番近いオアシスへと向かっていく。
さぁ、バカンスの始まりだ!!
この後に及んでキャラクターが増えるなんて……ね
いや、多分この作品では再登場は無いと思います(´−ω−`)
忘れても全然大丈夫です←
さてさて、ついに水着回ですよ!(モンスターハンターとは)
また来週お会い出来ると嬉しいです(`・ω・´)