モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

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辿り着いた村で

 

「お、起きたんじゃね?」

 随分と可愛い声が近くで聞こえた。

 

 

 覗き込むように顔を見ていたのはピンク髪の少女。誰だこの可愛い娘は、てかここは何処だ?!

 揺れる地面に驚きながらも身を起こす。周りには他に黒髪眼鏡の少女と金髪セミロングの少女、それにカナタが居た。

 

「あぁ……」

 カナタの顔を見て思い出す。なにやらとんでもない物を食べさせられて気絶した記憶があるがあれは夢か? いや現実だ。

 

「カナタの作った物食べるなんて自殺行為よ?」

 カナタをジト目で見ながらそう言う金髪の少女ナタリア。それを聞いてカナタは心臓に槍が刺さったかのように項垂れる。

 

「まぁ死ななかっただけ良いんじゃね? カナタもいい加減学習しろよ」

「ぐぅっ」

 酷い事を言うのはサーナリア。それを聞いてカナタは床に頭を着けた。

 

 

『大丈夫?』

 スケッチブックにそう書いて見せてくるアカリの表情はとても心配そうだった。

 安心させるために笑顔で手を振ってみるとアカリは顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。あるぇ?

 

 

「い、いや失敗は成功の元でしょ?! 次こそは成功させるって!」

「「辞めて」」

「そんな……」

 立ち上がりそう宣言するも、女子二人に完全否定され崩れ落ちるカナタは見ていて悲しかった。

 

 しかしこの竜車には自分以外女子しか乗っていないのか。多分看病のためだがまさかこんな所でハーレムを手に入れられるとわな!

 

 

「着いたぞー」

 そんな事を考えていると竜車は止まり、ケイスケが外からそう呼び掛けてくる。

 

 ハーレム終わった。早すぎるだろ!

 

 

「お、シンカイ起きてたか。どうだ? 俺の嫁の飯は」

「誰が俺の嫁だ!」

「最高に……命に関わるかと思ったで」

「シンカイ酷い!」

 泣き顔になるカナタの頭をケイスケはよしよしと撫でながらこう口を開く。

 

「着いたから休憩だ。一時間、自由時間」

「昼飯昼飯ー!」

「走ったら危ないよサナ!」

 急いで出ていくサーナリアをナタリアが追い掛ける。

 ハーレムが……。

 

「……ところで、着いたってなんや?」

 昨日カナタが言っていた拠点か?

 

「アプトノスの休憩だ。拠点が置いてある町の半分くらいの所にある村に着いたからな」

 モンスターと言えど生き物である。

 この竜車はアプトノスという草食種のモンスターが引いてくれているおかげで動いているので、そのアプトノスの休憩という事だろう。

 

 

「ほぅ」

 竜車の外に出ると視界は開け、密林に開けた小さな村の風景が目に入ってくる。

 

「わいは何時間寝とったんや……」

「もう昼だよ」

 心配そうな表情でカナタがそう言うが、お前の作った何かのせいやからね?

 

「ルーンという村だ。たまに世話になってるから何も遠慮せずに村を回ってきて構わないぞ、てか回ってこい」

 強制?!

 

「お前もだアカリ、シンカイを案内してやってくれ。早く俺とカナタを二人きりにさせろ」

「なんでだ!」

 本音がただ漏れやでケイスケさん。

 

「……んぇ?!」

 驚いて声を出すアカリは少し俯いた後スケッチブックを取り出す。

 

 

『着いてきて下さい!』

 兄の事を応援してるんだろうなぁ。

 

「おぅ。ほな御二人とも楽しんでー」

「よし、空気が読めるなシンカイ!」

「読まなくて良い!!」

「恥ずかしがるなよマイハニー」

「キ! モ! イ!」

 わー、仲が良いなぁ。

 

 そんな二人は置いておいて、自分はアカリに着いて村を回る事にする。

 しかし賑やか村だ。グングニールの商店街を見ているよう。

 

「アカリー!」

 唐突に背後からアカリを呼ぶ声が聞こえる。

 振り向くとそこには自分の前にこの猟団に入った先輩(年下)のタクヤが立っていた。

 

「あ、あのさ! 一緒にご飯とかどうだ?」

 タクヤは少しモジモジしながらもアカリにそう言う。ははーん、さてはこいつアカリの事が。

 

「わいは一人でも大丈夫やで。行ってきたらどうや?」

 そう考え大人の態度でアカリのエスコートを諦めタクヤに譲るとする。

 

「……」

 しかし何故かアカリは無言で俺の後ろに隠れた。

 

「ぇ」

 絶望したような表情をするタクヤ。

 なんでや! なんでやアカリ!

 

「シンカイ……」

「な、なんやタクヤ」

「てめぇは今日から俺のライバルだ糞野郎ぉおお!」

 そう言いながらタクヤはお店の裏まで走って行ってしまった。

 

「あいつバカだからほっとけば良いよ」

 これまた背後からサーナリアが表れてそう言ったかと思えば、彼女はタクヤを追い掛けて歩いていく。

 

「アカリの事は頼んだ。おーいタクー、サナちゃんが一緒にご飯してあげるから我慢しろー」

 サーナリアはそう言ってアカリを自分に任せると、タクヤが向かったお店の裏に向かって行った。あの二人も歳が近いし仲が良いのかな?

 

 

「アカリ、なんでや?」

 それを見送ってからアカリに聞いてみる。

 別にタクヤはアカリとも歳も近いし飯くらい逃げる必要は無いんじゃないか?

 

「……」

 申し訳なさそうな表情のアカリはいつも通りスケッチブックを取り出してこう書き連ねる。

 

『タクヤ君は悪い人じゃ無いんだけどちょっと苦手で。よく話しかけてくれるけど喋り方早くて声も小さくて聞きにくくて……絶対私と居たらつまらないから。私が悪いんだけど……。でもいつもなんでか誘ってくれて……それもちょっと苦手』

 また長文を。

 

 

「いや、なんやろな。アカリは悪くないで」

「……?」

 強いて言うならタクヤの気持ちが伝わってないのが問題だな、うん。

 

「……ん」

 もう一度背後を向いて、文字を書き出すアカリ。

 

『シンカイさんは声も大きいし優しいから安心する』

 タクヤ……なんかごめん。

 

 

「バカみたいにうるさいって事?」

「……っ?!」

 冗談でそう言うと首が飛んでいくんじゃ無いかという程首を横に振りまくるアカリ。しまいには首ではなく眼鏡が飛んでいく。

 

「……ぁっ!」

「あ、拾ったる拾ったる」

 聞こえなかったのか咄嗟だったからか、眼鏡に伸びる自分の手がアカリと重なった。

 

「おっとすまん」

「……っ?!」

 何をビックリしたのか、ウサギのように跳び跳ねるアカリ。

 

「ほれ眼鏡」

「……ほ、こゎ、く……っ?!」

 もしかして男性体制無いんだろうか……。

 

「す、すまんアカリ。で、デリカシー無かったな。うん。悪い」

「……ぅぅ」

 首を横に振るアカリ。

 続いていつも通りに。

 

『眼鏡ありがとうございますシンカイさん』

「んな事態々書かんでもええで」

 そう言いながら眼鏡をかけてあげる。眼鏡無しもありやけどやっぱ眼鏡有りやな。

 

 

「後その……シンカイさんは辞めようや。ここじゃ歳なんて関係無いやろ?」

「……ぇ…………」

 

「呼び捨てでええんやで。後一回でええから口で呼んでみてくれんか? 嫌なら良いけど」

「……ぅ…………」

 そこから結構間をあけてから。

 

 

「……し、し……か……ぃ」

「惜しい」

 

「……し……か……っ!」

「無理せんでええで……?」

 

「……し……ぃ…………」

「な、泣くくらいなら辞めようや!」

 無理言い過ぎたな……。

 

 

「……しん……か……ぃ…………」

「おぉ! ありがとうな、アカーーー」

「…………く……ん……っ!」

 後付けで君付けされた。

 

「あるぇ」

「……んっ!」

 ほぼ半泣きの表情でスケッチブックを突き出すアカリ。悪い事したなという反省の半面、文字書くの早いなと驚く。

 

『流石に呼び捨ては無理!!』

 そっちかい。

 

「ほ、ほな君から行こうか。無理矢理喋らせたのは怒ってないん?」

『私が悪いから』

 振り向かずにそんな事が書いてあるスケッチブックを見せてくる。

 流石に早業なんてレベルじゃない。良く見たらその紙は長年使い込んだ年期の入った感じだった。

 

 なるほどストックもあるのか。

 

 

「せやけどな」

 アカリからスケッチブックを取り上げて『私が悪いから』等と書かれたページを破り捨てる。

 

「……んぇ?!」

「この言葉はダメだ。自分が悪いとだけ考えるのはダメだ。分かったか?」

「……ぅ…………」

 アカリにスケッチブックを返すと徐にページを捲ってそれを見せてくる。

 

『ありがとう』

 そういうのは、ええな。

 

『シンカイくんは優しいね』

 そう書かれたスケッチブックを見せてくるアカリの表情は困ったような嬉しいような、少し複雑な表情だった。

 

 

「んならほら、飯でも食うか。オススメとかあるん?」

 それを聴いてアカリが振り向いてスケッチブックに文字を書き出したその時だった。

 

「ふざけんな!!!」

 近くで野太い大声がそう聞こえる。

 自分もアカリもビックリして跳び跳ねて声のした方を向く。

 

 

「そいつはマックスの仇かも知れないんだぞ! 俺に行かせろ!」

 ケイスケに向かってそう叫ぶのはあのラルフというチャージアックス使いだった。

 

「ダメだ。今のお前は熱くなり過ぎてとてもじゃないが信頼できない」

「て……めぇ……っ!」

「辞めなよラルフ」

 ケイスケの言葉に腕を振り上げたラルフをカナタが前に出て止める。

 一体なんの騒ぎだ?

 

「どうしたんや?」

 気になったので寄って行って聞いてみる。

 

 

「シンカイ? あ、いや村長からクエストを貰ったんだよ」

 カナタはこちらに気付くと背後に立っていたこの村の村長なる人物を紹介しながらそう説明してくれる。

 

 クエストとは簡単に言えばギルドや民間が発行するハンターへの仕事の依頼書のような物だ。

 

 

「彼が例の新人かい?」

「あぁ……そうだ、良い事を思い付いた」

 村長らしきふくよかな男性の質問を肯定するついでにケイスケは何かを思い付いたらしく。

 

「シンカイ、橘狩猟団入団後初めての仕事をしてみないか?」

「え?」

「おいケイスケ! テメェふざけてんのか!」

 ラルフの方が俺よりケイスケの発言に反応する。

 それはともかくもう初仕事か。短かったなニート生活。

 

「ラルフ、お前もやっぱり来い」

 意味ありげな笑みを浮かべながらケイスケはラルフにそう告げる。

 正直ケイスケが何を考えているのか分からなかった。さっきと言っている事が違う。

 

「カナタ、ガイルとサナに謝っておいてくれ。ラルフとシンカイは一時間後に準備を整えてここに集合だ。俺とカナタ、お前達でこのクエストを引き受ける」

 ともあれ、これからがこの生活の本番みたいな物だろうな。

 

「おいどういう事だこんな奴と一緒に狩りに行けって言うのか?!」

「嫌なら来なくて良いぞ。行きたいんじゃ無かったのか?」

 反抗するラルフにケイスケはあしらうようにそう言った。

 なんでこんなに毛嫌いされているのか。

 

「……っ。……くそったれ」

 ラルフは地面を蹴りながらその場を離れていく。それを見送ったケイスケはこう自分に話しかけて来た。

 

「マックスも双剣使いだったんだ……。マックスの事はカナタに聞いたな?」

「え、あぁ……うん」

 ラルフがそのマックスの代わりのように入ってきた奴を認められない気持ちは分かるけどもな。

 

 

「あいつは責任を感じて、仲間には当たらずに自分で背負おうとしてるんだ。だから、まだ仲間だと思ってないお前に当たる」

「それ、わいただの災難」

「だから今回のクエストでお前は自分を示せ、シンカイ」

 んな事言われても。

 

「……ん」

 後ろからアカリがちょんちょんと肩を叩いてくる。いつものスケッチブックにはこう書かれていた。

『大丈夫? シンカイくん』

 優しいな、アカリは。

 

「ま、大丈夫やろ」

 

「よし、なら一時間後にここに来い。狩りの目標はゲリョスだ。アカリ、シンカイの狩りの支度を手伝ってやるんだぞ?」

「……」

 こくこくと頷くアカリ。

 支度といっても自分防具もアイテムも無いんだけど。持ってるのは安上がりの骨の双剣のみ。

 

 しかしゲリョスか。

 マックスとラルフを襲ったのもゲリョス。ラルフが熱くなるのも仕方がないのかもしれない。そんな事を思いながら狩りの支度をするのであった。

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