モンスターハンターStormydragon soaring【完結】 作:皇我リキ
「……クァッ、クァッ、クァッ―――」
「閃光来る! タクヤは盾!!」
その奇妙なカタチの鶏冠を嘴の先端に叩き付ける。
「クェェァァアアアッ!」
瞬間、辺り一面を瞼も貫通する閃光が包み込んだだろう。
幸いにも盾のある自分やタクヤはその盾で閃光を防げた訳だが。
「……っぁ?!」
「チッ、こればかりは避けられねぇな……」
背後から後方支援をしていてくれたアカリとアニキの二人はその閃光をもろに受けてしまう。
その光に眼を焼かれると、大概の生物は一時的に視界が真っ白になり行動出来なくなる。
要するに天然の閃光玉みたいな物なのだ。生物である以上、それはモンスターも人間も平等。
しかしゲリョスというモンスターはその閃光を産まれてから何度も、文字通り眼と鼻の先で放っている為その限りでは無いらしく。
「グェェェエエエッ!!」
巨大な翼を大きく広げ、ゴム質で青紫色の巨大な身体をより大きく見せる。
トサカが特直的なそのモンスターこそ、閃光を放った張本人。鳥竜種、毒怪鳥ゲリョスだ。
「おぉ……助かった。あ、アカリとアニキは?」
「閃光貰っとる、ゲリョスを近付けさせたらあかんで!」
そう言いながら辺りをキョロキョロと見回して現状確認中のタクヤの横を通り過ぎる。
そしてこの場にいる全員を自分の奥の手で行動不能にしてやったと思っていただろう、そのデカ物に右手に持った今日の得物を叩き付けた。
続けて左手の得物を振るおうと思うが、今日の自分の武器は片手剣デスパライズだ。左手には盾しかなく、黙って片手剣を二度振るう。
片手剣使いには申し訳ないが、やはり双剣使いからすれば片手剣は少し物足りない。
して、ゴム質な皮はその特性上打撃に滅法強いが斬撃には逆に滅法弱い。切り裂かれた傷口から体液が吹き出し当時に、その巨体が大きく横に倒れこむ。
「クェェッ?!」
油断していたのか、いとも簡単に横倒しになるゲリョス。
よし、これである程度時間は稼げるな。
「うし、俺も……っ!」
そんな掛け声と共に背後から剣モードのチャージアックスを構えて振り上げるタクヤ。
ここはタクヤに譲って、自分は砥石でもさせて貰うか。
「頼むで!」
「任せろ! アカリに格好良いところ見せてやるぜ!」
今、アカリは多分見えてないけどな。
「おらっ! はぁっ!!」
普段から片手剣を使っているタクヤだからか、剣モードのチャージアックスを振るう姿は自分より様になっている。
振り下ろし、横になぎ払い、その度に鮮血が飛び散った。
「———よし、どうだ!」
「グェェェッ」
そんなフラグめいた台詞のすぐ後にゲリョスは立ち上がり、眼を充血させて怒りを露わにする。
「嘘だろ?!」
「それがモンスターってもんや。でも終わらせるで!」
そう言いながらまたタクヤの横を通り、砥石で斬れ味を回復させたデスパライズを怒り狂るゲリョスに叩き付けた。
振り下ろして、振り上げて、回転切り。一度バックステップで距離を取ってから、足をバネにして踏み込んでもう一度斬り下ろす。
タクヤやアニキがこれまで付けて来た傷口を抉るように叩き込むデスパライズから、何度も斬りつけられる事によって注入される麻痺毒。
「グェォァッ?!」
それがここに来て遂にゲリョスの全身に回ったらしい。
自分の最後の斬撃が通ると同時に、ゲリョスは身体の節々を痙攣させてその動きを止める。
ゲネポスの強力な麻痺毒は、ゲリョス程のモンスターでも動きを封じる事が出来る。
もう少し早めに効果が現れてくれれば良かったのだが。やはり慣れていないと使い辛い物だ。
「よし、良くやった! タク、アレやるぞ!」
閃光の影響が薄れたのか、スラッシュアックスを剣モードにしながらアニキはゲリョスに肉迫する。
その剣でゲリョスを突く。するとスラッシュアックスにセットされた属性ビンが放出され、ゲリョスに直接叩き込まれた。
所謂、属性解放突きはスラッシュアックスの奥義とも言われる技だ。瞬発火力はガンランスの竜撃砲にも手が届く。
「お、俺も! え、えーと、これどうするんだっけ?! あ、こうか!」
一方でタクヤもゲリョスに詰め寄り、チャージアックスを斧モードにしてその斧を大きく振り回す。
属性解放切りはチャージアックスの奥義。ビンに溜まったエネルギーを解放しながら斬り付ける技で、斬り付けられた傷から漏れるエネルギーが小さな爆発を起こす。
の、だが。タクヤは言ってしまえば体格が良い方では無い。
大きく振り回した斧から放出されるエネルギーに、逆にタクヤが振り回されてしまって地面を転がって行く。
「アイエエエエ?!ナンデェェ?!」
格好悪!!
「何してんだタクぅ!!」
「グルェェェッ!!」
「うぉぉ?!」
麻痺毒の効果が切れて、スラッシュアックスの属性解放突きを受けてもなお倒れなかったゲリョスがアニキを怒りの眼で睨み付ける。
満身創痍。それでも生き物は、生きている限り生きるのを諦めないのだろう。まずは目の前の敵を排除しようと、その嘴をアニキに向ける。
「アニキ!!」
あのラッシュで倒せると思っていたからか、中々に不味い状況。クソ、どうする!?
しかし、そんな心配は杞憂に終わる。
「グルェ———グェォァッ?!」
アニキを突こうとしたその嘴に、突然何かぎ刺さったかと思えばそのまま爆発した。
徹甲榴弾。目標に突き刺さると爆発するボウガンの弾だ。
アカリ、超ナイス!
「おらぁぉっ!」
「グェェェァァァ……ッ」
嘴を爆破され怯んだゲリョスの喉をアニキの斧が掻っ切る。鮮血が飛び散り、その巨体はゆっくりと地面に倒れ伏した。
「あ、アニキ! ごめん!」
「気にすんな。ま、初めてはそんなもんだ。それに、属性解放切りの威力に身体が追い付かねぇかもなんてのはケイスケも予想してたからな」
「うぐ……」
「まーだお前は成長期だろ! 一回の失敗で気にすんな」
「お、おう!」
素直なのが、タクヤの良いところでもある。
「さっきはナイスやったで、アカリ」
「ん!」
とりあえず、大活躍のアカリの頭を撫でて褒め称える。アカリの援護が無かったらクエスト続行は不可能だったかもしれないからな。
「んし、んじゃ次行くぞ。タクとシンカイは武器変えろ」
そう、今回のクエストはゲリョス一匹では無いのだ。
ゲリョス二頭の討伐。もし道中またゲリョスに会う事があれば二頭以上でも可。
それが、今回のクエストになる。
なんでも最近この密林でゲリョスが良く見かけられるらしく、まだ被害は出ていないが村のすぐ近くにまで現れた事もあるらしい。
そんな訳で、このクエストだ。タクヤに新しい武器と片手剣を比べさせるにも都合の良いクエストである。
それでは、二体目行ってみようか。
「うぉっとぅ……」
チャージアックスの剣モードと片手剣を比べると一つ大きいのは盾だろう。
斧をそのまま盾にしているので幅が広くしっかりしていて、攻撃をきちんとガード出来る。
「グルェェェアアッ!」
こうやって伸縮自在の尻尾を鞭のようにしならせる攻撃も、この盾ならしっかりとガードする事が出来た。
一方でタクヤも、小さな片手剣の盾でなんとか受け止めている。アカリは尻尾の射程外。
「おらぁぉっ!」
そしてアニキはというと、鞭攻撃を転がって回避しゲリョスに肉迫。そのまま斧をゲリョスに叩き付ける。
……す、凄いな。流石アニキ。
「グルェェェッ!」
そんなアニキを追いやろうと、振り向いて当たりいっぺんに猛毒液を吐くゲリョス。
毒怪鳥の名は伊達では無く、この毒はそんじょそこらの毒より強力で頂くと非常に不味いので注意が必要だ。
「当たるかよ!!」
「グルェッ! クァッ、クァッ———」
尻尾も得意の毒も交わされ、遂にゲリョスはその奥の手を解放しようとする。
特徴的なトサカは音を立て、ゲリョスはタイミングを計るように同じタイングで鳴き声を上げる。
「閃光来る!」
確かにゲリョスの毒は非常に強力だが、当たらなければどうという事はないのだ。
しかし、この閃光攻撃はまず基本的に避ける事が難しい。ハンターからすればこの閃光攻撃の方が厄介だったりする。
いっそ、閃光鳥の異名で良いと思う。
さて、この閃光をどうするか。さっきはアニキが離れていたからこっちに引きつけられたが。
「やらせるかよ!!」
そんな事を考えていたのだが、タクヤは閃光に盾を構えるのでは無くお得意のブーメランを構えていた。
落ち着けタクヤ。確かにお前はブーメラン上手いけど、それで奴の閃光が止められるとは限らないぞ。
むしろ、無理だろ。
そう思っていた。
「おらっ!」
しかし、彼の投げたブーメランは綺麗な弧を描きゲリョスの頭部へ。
「クェェァァアアアッ! ———……クァォ…………?」
トサカと嘴がぶつかり閃光を起こすその部分に、ブーメランは挟まった。
トサカと嘴に挟まれて鈍い音を立てるだけのブーメラン。その頭部から目を焼く閃光が放たれる事は無い。
た、タクヤの野郎……凄い事やるじゃないか。
「くらぇぇ!!」
そして、自分の身体が思った通りの攻撃を発生させなかったのを不思議に思ったのか固まるゲリョスの身体をタクヤはデスパライズで切り裂く。
一段二段三段。斬り付ける度に注入される麻痺毒に、ついにゲリョスは動きを止める。
本日二匹目にも、ゲネポスの麻痺毒は有効。さて、絶好のチャンスだ。さっきのタクヤみたいにならないようにしないとな。
「「おらぁぉっ!」」
アニキと合わせて二人で大技を叩き込む。属性解放突きも切りも攻撃の範囲が大きい為、タクヤには退いてもらっているのだがその間タクヤはどうするか。
やっぱりというか、ブーメランをゲリョスに何度も与えてくれていた。
「グェェェァァァ……ッ」
アカリの援護射撃もあって、今回は麻痺毒が効いている間にゲリョスを倒す事に成功。
やはり、タクヤは片手剣なのだろう。危なっかしい場面も無く、むしろスムーズに倒せたからな。
「やるな、タク!」
「そ、そうかな?」
アニキも絶賛である。
『タクヤ君格好良かったよ!』
おぉ! アカリに褒めらたじゃないか!
そこで、クエストに出る前のタクヤの意気込みを思い出す。
俺、新しい武器を構えてアカリに格好良い所見せてさ……告白してみる!!
新しい武器で格好良いところは見せられなかったが、ここまで成長したタクヤの格好良い所はアカリに魅せられたのでは無いだろうか。
「今がチャンスやで」
「そーだ、ガツンと行け」
だから、自分とアニキは小声でタクヤを押す。
今が絶好の機会。此処を逃す手は無い!
「うぇ?! えぇ、い、いや、でも、さぁ……」
「そこで弱気になるなや」
「そうだぞ。男ならガツンと行け」
「……?」
そんなやり取りを見て、アカリは首を傾げる。
「あ、後で! 後でする! まだ心の準備がっ!! ほら、まだ狩場な訳だし。あぶないだろ?!」
ったく、タクヤの根性無し。
そんな訳で仕方が無く、今回はクエストをクリアして村に戻る事にしたのであった。
そして、カラドボルグへの帰り道。
自分達は異様な光景を目にして足を止める。
「…………なんだ、これは」
「うぇ……」
「ゲリョス……の、死体か」
木々が倒れ、少し広くなった空間に散らばる無数の肉片。
その中央には辛うじて鳥竜種の物だと分かる生き物の身体が横たわっていて、頭の方にあるトサカの形でようやくそれがゲリョスなのだと理解出来たのだ。
その死体は皮を剥がれ、肉を食い破られた形跡が残っている。
襲われて、食べられた? しかしゲリョスをこんな風に襲って食べる生き物が居るのか?
色々な思想が頭を回る。
「……ん」
不意に肩を突かれ振り返ると、不安そうな表情のアカリがスケッチブックを掲げていた。
『危なそうだから、早く帰ってお父さん達に相談しよ?』
そうだな、それが一番かもしれない。
「せ、せやな……。行くか」
「お、おぅ」
方向を変えて、カラドボルグへ向かう。
「ゲリョスの大量発生……か。そういや、今日のゲリョスは二匹とも死に真似をしなかったし…………何か、怯えてたような気がしなくも無かった」
「アニキ?」
「ん、ぉ、おぅ。悩んでても仕方ねーか。……こういうのはケイスケに任せれば良いしな」
ゲリョスに関してはアニキも何か思う事があるのだろうな。
ただ、自分達四人には何か重過ぎる事のような気がして。カラドボルグに戻るのであった。
白猫テニスで新しいシャルが出なくて添付された作品の編集を忘れていました。
メリークリスマース。この作品はそんなの関係無しに進んでいきます。
この作品もちゃんと進めたいのですが、モチベ的に中々危ないです(´・ω・`)
しかし、記念すべき四十話目でした。何か特別な事があると言う訳では無いですが(汗)
厳しくで良いので評価感想の程も暇があればよろしくお願いします。