モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

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前を向いて

 

『タクヤ君が見つかる前に、サナが言ってた事覚えてる?』

 何故か少し赤面しながら、アカリはスケッチブックにそんな事を書いて見せて来る。

 

 

「サナに愛の告白をされたわ」

 冗談だったらしいけど。

 

「……ふむぅ」

 なぜ頬を膨らませるんだ。

 

 

「し、、か、い、く、ん」

 ただ、彼女は一度首を大きく横に振ってからゆっくりと口を動かした。

 

 スケッチブックは使わずに。

 自らの伝えたい想いを、言葉にする。

 

 

「わ、た、し、ぁ、し、、か、い、く、、の、こ、、が、…………す、き…………ひすっ!」

「…………へ」

 え?

 

「はぁぁぁ?!」

「……ひっ?!」

 しまった、ついサナの時と同じ反応をしてしまった。

 

 そんな自分を見て、アカリは真っ赤になってて背中を向けた。

 珍しく長々とスケッチブックに書き連ねられる文字が横目で見ても凄い速度で増えて行く。

 

 

「……ん!!」

 そして、彼女はフルフル亜種みたいな色の顔で長々と文字の連なったスケッチブックを自分に押し付けた。

 

 

『こんな時にズルいかもしれないけど! これが私の気持ち! サナに言われてちゃんと言わないといけないって思った私の気持ち!』

 これが一枚目。何ページかに分けられているようで、アカリは少し経ってからそのページを破り捨てる。

 

 

 もし、タクヤの霊が居たとしたら自分は今すぐ呪い殺されるかもしれない。

 

 

『初めて会った時、助けてくれたのが嬉しかった。耳の事可愛いって言ってくれたのも嬉しかった。聞こえないのに気を使ってくれるのも嬉しかった。応援してくれるのも嬉しかった。ボウガンを教えてくれるのも嬉しかった。サナ達をちゃんと連れて帰って来てくれたのも嬉しかった。ティガレックスを一人で倒したのなんて格好良かった!』

 

 

『どこでかは分からない。でも、サナにいつか言われて私はシンカイ君が好きなんだって分かった。だから、タクヤ君には凄く酷い事をしちゃった。でも、この気持ちを伝える前に他の人の気持ちには答えたくなかった』

 

 

『私はシンカイ君の事が好きです』

 

 

「な、ぁ……ぁ……」

 アカリが……自分の事を?

 

 冗談じゃなくて?

 

 

 夢にも思わなかった。

 

 

「アカリ…………ワイ、なんかは―――」

「……って!」

 答えを伝えようとすると、アカリは慌てて自分の口を塞いだ。

 なんだ? と、思って首を傾げるとアカリはまた背を向いてスケッチブックに文字を書き連ねる。

 

「アカリ……?」

「……ん」

 ゆっくりと、落ち着いた表情。

 

 

 何か決意めいた表情で、彼女は文字の連なったスケッチブックを見せて来た。

 

 

『私も、サナも、タクヤ君も、皆、シンカイ君の事信じてるよ。ナタリアも言ってた。シンカイ君は、皆の中心に居られる人』

 自分の……役割。

 

 

『サナもね、きっと冗談じゃなくてシンカイ君の事が好きなんだと思う。私とは恋のライバルです』

 そんな事を恥ずかしげも無く良く書けたな。

 

 

 

「こんな奴を好きになりやがって……」

 勿体無い。

 

 タクヤの方が、よっぽど立派だ。

 

 

 自分には何もない。信念も、努力も、何も無い。

 

 

『シンカイ君。サナを助けて』

 真剣な表情で、アカリはそう『言った』。

 

 

「出来ると思うか?」

 一度、失敗した。

 

 そのせいで自分は、タクヤもサナも救えなかった。

 

 

『シンカイ君なら』

「根拠は?」

 

『サナがシンカイ君を信じてるから。サナだけじゃ無い。皆、シンカイ君を信じてる』

 信用、されてるんだな。

 

 

 

 別に、何もして無かった。

 

 

 何の目的がある訳でも。何か信念がある訳でも無かった。

 

 ただ、現状から逃げ出すように出た外の世界で自分は皆に出会っただけ。

 

 

 何も無かっただろうか?

 

 

『シンカイ君は凄いんだよ』

 皆に出会って、何も無かったか?

 

 

『本当に、凄いんだよ』

 そんな訳が無いだろう。

 

 

『お話は面白いし』

 皆と居るのは楽しかった。

 

 

『ボウガンも教えてくれたし』

 必要とされた。家族と思われたのは嬉しかった。

 

 

『すぐ皆と仲良くなれるし』

 自分でも誰かの心は開けるんだと、思えた。

 

 

『強くて、しっかりと皆を守ってくれた』

 戦う力を貰った。何のために戦うか理由を貰った。

 

 

『ピンチで一人でだって、戦ってくれた』

 それを実践する事だって、あの時は出来た筈だ。

 

 

 

「わ、た、、の、す、き、ぁ、し、ん、ぁ、い、く、、は…………み、んな、を……ま、も、、く、ぇ、る……す、て、きな、ひと」

 最後にそう言って、アカリは自分との距離をとる。

 

 

 答えを聞くように、真っ直ぐに自分を見詰めた。

 

 

「そ、ん、な、ぁ、な、た、が、……す、き、です」

「ありがとう」

 なら、今回だって出来る筈だろ?

 

 

「悪い、まだ気持ちには答えられない」

 だから……やろうじゃ無いか。

 

 

 何の為に自分がここに居るのか。

 

 何も無かった自分に何が出来るのか。

 

 

 ここで、見つけようじゃ無いか。

 

 

 

「……ん」

「こんな奴の事を好きになってくれてありがとな。でも、さ…………このままじゃ責任を取れない」

「……?」

 

 

「サナをしっかり助けて、生きて帰って来る。そうして自分の役割を果たしたら、またその時に返事をさせてくれ……」

「……う、ん。…………ご、ぇ、ん、ね?」

 少しだけ残念そうに、彼女は微笑む。

 

 

「なんでアカリが謝るねん」

「……ん」

『私にはシンカイ君に前を向いてもらえるような話は出来ないから……。せめて、自信を持って欲しくて……こんなズルい時に告白した事』

 それもタクヤの前でなぁ。

 

 

「自信……と、いうよりは。勇気……いや、違うな。やらなきゃいけない……そう思えたかな」

『そうなの?』

 

「ここまで言われて動かなかったら……男やないやろ」

 自分にできるだろうか……。

 

 

 

 いや、やるしか無い。

 

 それに、手札はある。

 

 

 

『シンカイ君なら、出来るよ。私は何も手伝えなくてごめんなさい』

「何言っとるんや。アカリには充分手伝って貰うで? 今からな」

「……ふぇ?」

 メンバーはガイルにケイスケにアニキ。ヒールと変わるとしたら上等なパーティーだ。

 問題はガイルが許してくれるか、だな。……いや、ガイルなら許してくれるだろ。

 

 

 自分にやれる事をやろう。

 

 

 自分のすべき事をやろう。

 

 

 その為の布石は、既に用意してある。

 

 

 

「アカリ、今から言うボウガンの弾用意してくれへんか? ワイは今から寝るから」

 そう言い終わってから、自分がとんでもない事を言っている事に気が付いた。

 

 自分はもう寝るから、狩りの準備を少女に頼む。なんて下劣な奴。

 

 

「……ん!」

 ただ、帰ってきた気前の良い表情での返事で発言を撤回する機会が潰れてしまった。何たることだ。

 

 

 ただ、まぁ……アカリには世話になろう。

 

「それじゃ、スケッチブック貸してくれへんか? それにメモるわ」

「ん!」

 元気に差し出されたスケッチブックに、必要なアイテムを書き連ねて行く。

 

 

「そいなら、頼むで」

「ん!」

 スケッチブックを返せば、アカリは直ぐにでも部屋を出ようと足を動かした。

 本当、一生懸命で頑張る皆のマスコットだな。

 

 

 そんな子に、好かれて期待されている。

 

 

 何も無かった自分に与えられたのがそれだけでも、充分に頑張る価値はあるだろう?

 

 勿論、それだけじゃ無いんだけどな。

 

 

「アカリ」

「……?」

 

「ま、サナの事は任せいや。絶対に連れて帰ったるでな」

「…………ん。し、か、、ん」

「なんや?」

『その変な喋り方の方が、シンカイ君らしくて良いね!』

「変な喋り方ぁ?!」

 いや、これはだな。かの有名な伝説のなんとかハンターの喋り方なんだぞ?!

 

 

 

「……し、ん、じ、て、る、ね」

「おぅ、任せろや」

 トテトテと部屋を出て行くアカリを見送って、部屋にはタクヤと二人きり。

 

 

 

「なぁ、タクヤ。どんな気持ちや」

 動かない彼に、話し掛ける。

 

 

「アカリ……自分の事が好きなんやと。悔しいやろ。ん?」

 返事がある訳が無い。

 

 ただ、頭に浮かぶのは泣きそうな顔で悔しがるタクヤの表情だった。

 丁度オセロで負けた時良くする表情。

 

 

「死んだら……言い返せられへんのやで」

 どれだけ悔しくたって。どれだけ辛かったって。

 死んだら何も言えない。

 

 

「それを分かってて、お前は自分を助けたんか? なぁ……タクヤ」

 何も、言えないんだよ。

 

 

 

 それだけは、皆と会う前から知っていた。

 

 

 

「ワイは、死なへんぞ」

 だから、誓おう。

 

 守れなかったお前に。自分を守って死んだお前に。

 

 

「誰も死なせへん。サナも、ガイルも、ケイスケもアニキも……自分も」

 タクヤの顔に近付いて、睨み付けてやる。

 

 

「そんで、皆でまた笑う。お前の分も、また……笑う。……だからさ―――」

 

 

 

 ―――だからさ。

 

 少しだけ、泣かせてくれ。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「おらよっと」

 今朝、ヒールを後ろから膝カックンで転ばせてアイテムの入ったポーチを奪って皆の前に姿を表す。

 

 

 いや、少し寝坊して危うく置いていかれるところだった。

 

 てか、待ってろよ。いや、待ってる訳無いか。

 

 

 

「来てくれるのか?」

 そう聞いてくるのは、ケイスケだった。

 

「要らんなら帰る。ただ、ワイはサナを助けたい。ケイスケにとって今ワイが必要なら……連れてってくれ」

「……ふ。その調子なら、大丈夫だな」

 あぁ、少なくとも今のケイスケよりは大丈夫だ。

 

 

 ケイスケだって辛くて、無理をしてる。

 

 自分だけ塞ぎ込んで……最低な奴だったな自分は。

 

 

 

「痛いっす……なんで朝から膝カックン…………痛いっすよぉ……」

「大袈裟やろ!」

「大袈裟じゃ無いっす! もうこれは許されないっすよ」

 そこまで?!

 

「だから、絶対に無事で帰って来て欲しいっす」

 立ち上がって、彼はそんな事を言った。

 

 

「おぅ。やってみろや」

「カナタの飯を食わせるっす」

「ゴメンナサイ嘘デス許シテ」

「どういう意味よ?!」

 しまった、見送りに来てたカナタに聞かれた。

 

 

 というか、自分はカナタに起こされたんだけどな。

 アカリが用意してくれたボウガンの弾を持って自分を呼んでくれたのはカナタだった。

 ちなみにアカリはその寸前まで起きてたようで。そんなアカリに用意をさせて最低だな自分は!

 

 それに……いやはや、昨日あれだけ格好を付けたのに恥ずかしい。

 

 ただ、アカリの想いは伝わった。

 

 

「立ち直したか、シンカイ」

 嬉しそうにそう言うのは、アニキ。

 

「皆のおかげや」

 本当、皆に救われた。

 

 

「……シンカイ」

 ガイルが、なんとも言えない表情で近寄って来る。

 

 また、殴られるだろうか?

 その覚悟も出来てる。でも、自分は皆を守りたい。

 

 

「……俺を殴れ」

「……アホかい」

 いやそっちかよ。何なんだガイルお前はいつもこうなんだか斜め横にズレた事を!!

 

 

「……だが―――」

「効いたで、ガイルの拳。迷ったら背中を預ける仲間に救ってもらえる……本当ここって、最高やな」

 きっとこの先、何度も迷う事があるかもしれない。

 

 

 そんな時、皆といれば……また歩き出せるんじゃ無いだろうか。

 

 

 

「大切な家族なんや……皆」

 それを教えてくれたのは、皆だ。

 

 

 救えなかった。

 

 

 でも、次こそは救ってみせる。

 

 

 もう、迷わない。間違わない。

 

 

 

「だから、サナを助けよう」

 あいつなら生きてるさ。

 

 

 絶対に生きている。

 

 

 

 

 空を見る。

 

 

 雲行きは怪しい。直ぐにでも雨が降って来そうな最悪な天気だった。

 

 嵐が来るかも知れない。

 

 

 

 関係無い―――

 

 

 

「行こうか、ケイスケ」

「……行こう」

「っしゃ、うちのエースを迎えに行くか」

「よし、完璧なパーティだ。……行くぞ。……クエストスタートだ!!」

 

 

 ―――サナ、今行くからな。




やっと立ち直ったよ……。ここ一ヶ月この作品を書くたびに気分が沈んでいたので解放されましたね!←


さて、クライマックスに入ると思うんですがもしかしたら来週から遅れてしまうかもしれません(´・ω・`)ストックが無いのです。
しかし、ぜったい完結させるので……。はい。頑張ります。


でわ、また来お会い出来ると嬉しいです(`・ω・´)
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