モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

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Heavy Bowgun『第十章』
少女の行方


 あなたは、私と会った日の事を覚えていますか?

 

 

 私が密林で迷子になっていた時。

 

 ランポスに襲われて、私は死んでしまうかと思っていました。

 

 

 逃げてはいたけど、最終的には転んでしまって。

 

 恐怖で丸まってしまったの。

 

 

 

 そんな私を助けてくれたのが、あなたでした。

 

 

 

 いまさっきのあなたみたいに、仲間の死に耐えられなくなってしまっていたラルフを立ち直らせてくれたのもあなた。

 

 

 一緒に釣りをして、その時に出会ってしまったガノトトスを標的に私に戦う勇気をくれてボウガンを教えてくれたのもあなた。

 

 

 ガイル君の心を開いて、サナと私に卓球で勝ったのもあなた。

 

 

 サナと一緒にディアブロスと戦って、約束通り皆を守ってくれたのもあなた。

 

 

 ドスゲネポスのクエストで、怪我をしたカナタや私とタクヤ君を守る為に乱入して来たティガレックスと戦ってくれたのもあなた。

 

 

 一緒に氷結晶を集めたりもしたよね。

 

 

 水遊びで泳ぎを教えてくれたりもした。

 

 

 

 色々あった。

 

 

 あなたは、凄くて頼りになって優しくて物知りで何でも出来て……素敵な人。

 

 そんなあなたが、いつの間にか好きになってました。

 サナも、きっとそうなんじゃないかな。

 

 

 

 サナね、よくシンカイ君の事話すんだよ。

 

 本当に大好きなんじゃ無いかな。

 でも、私も負けないくらい大好きです。

 

 

 ねぇ、シンカイ君。

 

 我が儘を言っても良いですか?

 

 

 

「さ、な、を……た、、け、て」

 きっと、あなたなら出来るから。

 

 

 私は、信じてます。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 木々の隙間から時折水が垂れて来たかと思えば、次の瞬間それは大粒になって空から大量に落ちて来る。

 

 

 天候的には、最悪だ。

 せっかくアカリに用意してもらった火炎弾も、これでは威力が半減してしまう。

 

 用途的には問題無いかもしれないが、そこは何かカバーしなければならないかもしれない。

 

 

 ただ立ち止まっている訳にもいかず。自分達は歩き続ける。

 

 

 

 目的地はまず自分達がサナと別れたあの場所だ。

 

 タクヤが致命傷を負った、あの場所だ。

 

 

 

 理由は簡単。サナは最後に確認した所からそう遠くには離れてないハズ。

 だから、まずはその近くを捜す。

 

 それに、そこにはアカリやタクヤが落とした武器も落ちているハズだ。

 

 自分は今回、アカリが置いて行ったヘビィボウガンを使う。

 その為にアカリに弾丸を用意させた訳である。

 

 

 

「この辺りか?」

「こっちやな」

 ケイスケの問いに、自分は脚を動かしながら答えた。

 

 もしかしたら、そこにサナがまだ居るかもしれない。

 

 

 それは生きていても……死んでいても同じ事で。

 

 そこにサナの亡骸が無い事だけを信じて。

 サナを信じて、昨日ネルスキュラと戦ったその場所へと足を進めた。

 

 

 

「…………居ない、か」

 結果は言葉の通り。

 

 妙な安心感と、不安が混ざって気分が悪くなる。

 サナはあの後どうなった……?

 

 

 辺りを見渡しても、彼女の姿は何処にも見えない。

 

 

 昨日から動いていない、ゲリョスの死体。

 

 その近くに落ちているお目当のヘビィボウガン。

 

 

 と……あれ?

 

 

「どうだ? シンカイ———って、おい聞いてんのかぁ?」

「ちょい待ってくれ」

 違和感に気が付いて、自分は木々の間を抜けて平地に出る。

 警戒は怠らず、ネルスキュラの気配が無い事だけは確認しながら辺りを見渡した。

 

 やはり……無い。

 

 

 

「どうした? シンカイ」

 話しかけてきたのはケイスケだった。

 雨に濡れた髪を掻き分けながら、彼も何かを確かめるように周りを見渡している。

 

 

「無いんや。……タクヤのチャージアックス」

「何……?」

 この場所に落ちているハズのチャージアックスが、辺りをどれだけ見渡しても見付からなかった。

 

 

 ヘビィボウガンと、自分の双剣はある。

 

 

 それなのに、タクヤのチャージアックスだけが不自然に無くなっていた。

 

 

 

 何故だ……?

 

 

「……っ。…………皆、見てくれ……」

 そんな事を考えていると、ゲリョスの死体の裏側を見ていたガイルが雨音に消されそうな声を上げる。

 そこまでは自分も見ていなかったので、まさか……なんて不安が頭を過ぎった。

 

 ただ、その不安は半分だけ当たってしまう。

 

 

 

「こりゃ……斬破刀じゃねぇか」

 アニキの言うとおり。

 

 そこに落ちていたのは、サナの愛刀である太刀だった。

 柄から刃先までを真っ赤に染めたその刀が、ゲリョスの傍に倒れている。

 

 

 その血は、誰の物なのだろうか。

 

 

 

「く……そ…………サナ…………あ……ぁ……」

 太刀を抱きながら、崩れ去るガイル。

 

 諦めるな。まだ死体が見付かった訳じゃない。

 

 

 

 ただ、手掛かりが無いのも現状だ。

 

 どうする?

 

 

 いや、サナならどうした?

 

 

 

「ケイスケ」

「なんだ?」

「ケイスケがもし、満身創痍の状態で仲間を逃してから一人でモンスターと戦う事になったら……どうする?」

「……そうだな」

 自分の質問に一度キョトンとしてからも、ケイスケは少し考える為に瞳を閉じる。

 

 

「守りを固めて、隙を突いて逃げる」

「……だよな」

 つまり、そういう事だ。

 

 

「どういう事だ?」

「サナは、太刀から盾があるチャージアックスに武器を入れ替えたんや。そしてこの場に居ないって事はとりあえず一度は逃げられたって事にならへんか?」

 あの状況から一人でネルスキュラから逃げ切るのは至難の技だろうが……。

 

 

 サナなら……きっと……。

 

 

 

「……なるほどな」

「問題はサナが何処へ行ったかや。そして、ネルスキュラをちゃんと撒けたのか」

 かなり体力を消耗していたからな……。

 

 

 それもこれも、自分のせいなのだが。反省は後だ。

 

 まずはサナを助ける。

 

 

 

「なぁ、あの白いのはなんだ?」

 周りを見渡していたアニキが、ふとそんな事を言った。

 

 白いの?

 なんだろうとアニキの視線の先を見ると、そこにあったのはネルスキュラの出す粘着質な糸だった。

 

 それが、平地を囲う木の枝を何箇所か包んでいる。

 

 

 

「ネルスキュラの糸……」

「デカい蜘蛛って聞いてたが、あんなもん出すのかよ。ヤベェな」

 アレは確か、ネルスキュラが糸を使った高速移動をする為に高い位置に糸を伸ばた物だっただろうか。

 

 辺りを見渡せば、それが三つ。

 

 

 

 一つはタクヤと自分の猛攻から脱出に使った糸。

 

 もう一つは、アカリを背後から襲う時に使った糸。

 

 

 そして最後の一つには、自分は見覚えが無かった。

 

 それはつまり……。

 

 

 

「少なくとも、ネルスキュラはあの方角へ向かった」

 サナを追い掛けたのか、サナから逃げたのか。

 

 いや、流石にサナでもあの状況から巻き返せるとは……。なら、答えは———

 

 

「———サナはあっちやな」

「分かるのか?」

「アニキ、弱った相手が自分を出し抜いて逃げようとしたらどうする?」

「そりゃ、追い掛ける……だろ?」

「そういう事や」

「ん? あれが、サナを追い掛ける為に使った糸だってのか」

 それ以外だとしたら……それは最悪の事態だ。

 

 

 だったら、信じて進むしか無い。

 

 

 

「あっちは村の方角だな……」

 サナが逃げるとすれば、その方向だろう。

 

 

「……だが、獣道も無い木々の間だ。モンスターに背後から襲われる可能性も……」

 サナの太刀を拾いながら、ガイルはそんな言葉を落とす。

 

 確かに、これから進もうとする道は獣道すらない細い道だ。

 ネルスキュラにとっては木々を移動に使える最高の戦い場で、自分達にとっては都合最悪である。

 

 

 背後から忍び寄るモンスターに気が付かずに、そのまま首を持っていかれたっておかしく無い。

 

 

「そこは、仲間を信じるしか無いやろな。丁度四人……四方に集中出来る人数や。……信じられるやろ? ガイル」

「…………。……勿論だ」

 あぁ、そうだとも。

 

 

 仲間を信じろ。今は、特にな。

 

 

 

「ケイスケが先陣を頼む。左右にアニキとガイル。後ろからワイが行く」

 自分の双剣も拾いながら、そう提案する。

 

 

 

「……分かった」

「うし、行くか」

「了解した」

 ありがとう、三人共。

 

 

 準備だけを整えて、自分達は木々の間に入って行く。

 四人が固まって何とか通れる程の場所もあれば、広い空間もある。

 

 そんな、自然のままの道をただひたすら村の方角へと歩いた。

 

 

 

 手掛かりはそれしか無い。

 

 

 ただ、何か確信めいた物を感じながら前に進む。

 

 

 そこに、それはあった。

 

 

 

「アレは……」

 それを見付けたのはアニキだ。

 

 四人でアニキに従って歩くと、そこにあったのは鋭い鎌のような生き物の一部。

 

 

 ネルスキュラの……鋏角。

 

 

 その片割れが、無残な姿で地面に横たわっていた。

 

 

 

「なぁ……これって」

「ネルスキュラの身体の一部や……」

 それに近付いて、自ら確認する。

 

 鎌のような形状の先端は人の血で赤く染まっていて、その血を今雨が洗い流している所だった。

 

 

「……サナなのか?」

 あいつ、あの状況でネルスキュラの鋏角を一本へし折ったってのか?

 

 信じられないが、サナ以外にこれの犯人は思い付かない。

 

 

「だとしたら、希望が見えて来たな」

「さっさと見付けてやって、この化け物めって褒めてやるか。ったく、つくづく俺の立場がねぇよ」

 本当、あいつはスゲーよ。

 

 

「……何か来るな」

 喜びも束の間、そう言ったのはケイスケだった。

 

 

 何か。

 

 

 言うまでも無い。

 

 

「ネルスキュラか?!」

「この速度はゲリョスじゃないだろ。……ここじゃまずい、走るぞ!!」

 予め千里眼の薬を飲んでいたケイスケの指示でら自分達四人はとにかく走る。

 

 喜んでいる暇も、辺りにサナが居るか確かめる暇も無く走った。

 

 

 助けに来た自分達がやられたら、意味が無いんだ。

 

 

 

 死んだら、意味が無いんだ。

 

 

 

「近くに広い場所は無いんか?! アニキ!」

「この先に小さな洞窟の入り口がある! その周りなら少しは広いぜ!」

「ならそこだ! ラルフに続け!!」

 走りながら話、アニキを先頭にして四人で走る。

 

 

 そこで、ネルスキュラの気配が自分でも感じられる程近くなった。

 このままじゃマズいな……追い付かれる。

 

 

 そう思った矢先だった。

 

 

 

「待て待て止まれ止まれ止まれ!!」

 走りながら、突然アニキが大声を上げる。

 こんな時に止まれ? とは。

 

 ただ、アニキは眼が良い。

 思えばマックスの双剣を見付けた時も、ディアブロスを見付けた時も、一番先に反応したのはアニキだった。

 

 

 さっきだってネルスキュラの糸を見付けたのはアニキだったし、もしかして何かを見付けたのかもしれない。

 

 

「何か見付けたのか?!」

「ピンク色が見えた。この森の中でそんな色滅多に無いだろ」

 ピンク色。

 

 

 それは彼女の髪や防具の色と同じ色だ。

 

 

 それがサナなのかはまだ分からないが、ピンク色なんてのは自然にそう滅多には無いものだ。その可能性は高い。

 

 

 

「……どこだ!!」

 背後を向いてハンマーを構えるガイルは、自分達に背中を向けながら声を上げる。

 もしネルスキュラが追い付いても、自分が何とかする。そんな意思が彼の背中から伝わった。

 

「あっちだ、洞窟の方向!」

 そしてアニキが指差したのは、向かっていた小さな洞窟の方角。

 目を凝らせば、確かに不自然なピンク色が視界に映る。

 

 アレは……防具か? サナ……ッ!!

 

 

「自分とガイルで一旦囮になる。二人は行ってくれ!! ただ足止め出来るとは限らへん。ケイスケはネルスキュラに集中しながら向かってくれ!」

「おぅ!」

「分かった。任せたぞ!」

 自分の声に、アニキとケイスケは同時に答えて走ってくれた。

 

 

 さて、それがサナだったとしたら確実に守り切る必要がある。

 

 その為の眼であるアニキと、それに今千里眼でネルスキュラを補足出来て盾もあるケイスケを向かわせた。

 

 

 考えろ。最善策へ向かえ。

 

 もう失敗は許されない。何重にも保険を掛けろ。

 

 

 誰も殺させない。誰も死なせない。

 

 

 

「……来るぞ、シンカイ!」

 一気に気配が近付いて来る。

 

 ただ、妙な気配だ。まるでこちらに眼中が無いかのように、殺意を感じない。

 

 

「狙いはアニキ達か……?! と、なると……罠?! 走るでガイル!!」

「む?! 分かった!」

 踵を返して全速力で走った。アニキ達との距離はそう離れては居ない。

 

 声を上げれば聞こえるだろうが、そうすると今度は自分達が危険に晒される可能性がある。

 

 

 答えは……どっちだ?

 

 

 それは、ついさっき用意した答えだ。

 

 

 

「ケイスケ、頼んだで……っ!」

 小声でその答えを叫んだ。

 

 千里眼でネルスキュラを補足しているハズの仲間を信じる。

 

 

 

「キシャィィアアアアッ!!」

 木々を抜けた瞬間見えたのは、ランスの盾を構えてネルスキュラの攻撃を防いでいたケイスケの姿だった。

 

 それに合流する為に、自分とガイルは二手に分かれながらその場に立っていたネルスキュラに双剣とハンマーを叩き付ける。

 

 

 

「キシャィィアア?!!」

 突然の背後からの攻撃に驚いたのだろうか。

 

 ネルスキュラは大きく体制を崩して腹を地面に叩きつけた。

 

 

「すまんケイスケ!」

「この時の為に千里眼を使った俺を向かわせたんだろ? お前は間違っちゃ居ない……が」

 横眼でケイスケが見るのは、自分達のお目当のピンク色だった。

 

 

 それは———

 

 

「———な……」

 血のついたピンク色の防具。

 

 間違いなくそれは、アカリと色違いのお揃いであるサナのフルフル亜種装備。

 真っ赤な血に濡れたそれは、なんとネルスキュラの糸に包められてその場に持ち主無しに転がっていたる。

 

 

 

 まさか……。

 

 

「食べられたってんならこんな少量の血じゃねーだろ。サナは生きてる。絶対にだ……」

 自分の悪い考えを、アニキが吹き飛ばしてくれる。

 

 そう……だよな。

 

 だとしたら、サナはどうしたのだろうか。

 逃げる為に防具を捨てた。充分考えられる話だ。

 

 その防具を、まさかネルスキュラが囮に使うなんて……な。

 

 

 

 

「キシャィィアア!!」

 巨大な蜘蛛。

 四本の足と、片割れが折れた鋏角が特徴的なモンスター。

 

 持ち前の素早さと、ゲリョスの皮で自らの弱点をカバーする巧妙さを併せ持つテクニカルなそのモンスターの名は影蜘蛛———ネルスキュラ。

 

 

 

 サナを見付けるにしたって、まずはこいつとの戦いを避ける事は出来ないって事か。

 

 

 まぁ、元からそのつもりだったんだ。

 

 

 良いじゃないか。やってやる。

 

 

 

 天候も状況も何もかも最悪だ。

 

 

 でも、負けない。誰も死なせない。自分も死なない。

 

 

 

 さぁ———

 

「———一狩り行かせて貰おうやないか」




はい、最終章も見えて来ました。


ここにきて申し訳ないのですが、次回の少しの間更新を停止いたします。
理由は、ダブルクロスの発売ですね。

あ、遊び倒して更新をサボる訳じゃ無いです(´・ω・`)
せっかくネルスキュラが復活するので、新モーションも加えてこの作品を飾りたいと思ったからです。

なので、少しの間だけ更新をお休みいたします。
一月以内には再開するのでお待ち頂けると、幸いですm(_ _)m
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