モンスターハンターStormydragon soaring【完結】 作:皇我リキ
「ここが一番船底に近い部屋だ」
アニキがそう紹介した部屋は船の一番下にある部屋だった。
周りには木箱に詰められた荷物が散りばめられ、他に何も無いかと思えばなぜか支給品ボックスと収納品ボックス、さらにベットが完備されていた。部屋と言うよりは倉庫に近い。
「場所にもよるが、ここを開けると大体水面や砂面から一メートルくらいの高さになってる」
いかにも開きそうな大きな壁を叩きながらアニキはそう言う。
なるほど、ここを狩りに出かける時の拠点に使える訳か。その壁を開ければ丁度壁が橋になって外に出られる仕組みなのだろう。それで支給品ボックス等が完備されて居る訳だ。
よく見たら男女一個ずつの更衣室と武器防具の収納ボックスまである。
ここだけで生活しろと言われてもハンターなら難なくこなせる設備が整っていた。
「分かったら次行くぞ次」
アニキに着いて橋の方にある階段を上っていく。上がると直ぐに大きな広間があった。
『ここは皆のたまり場です!』
今度はアカリがスケッチブックにそう書いて教えてくれる。
なるほど甲板にも繋がっていて、広くてたまり場には丁度良い。周りには人数分の椅子と大きな机が三つ置いてあった。
『お風呂とお手洗いと小さいけどキッチンも完備されています! 水回りは大体この辺りに固めてあります!』
自分の自慢をするような表情で説明してくれるアカリ。それだけ自分達の船が好きなのだろう。
「てか風呂あるんか?!」
単純に凄いな。
見てみれば二人くらいなら入れそうな木桶の風呂。出した物はそのまま自然にお帰り頂くお手洗い。料理猫は居ないけど中々の設備管理のキッチン。
本当に船の上なのか疑いたくなるが、このたまにくる不規則な揺れは船の上その物。
「ちなみに女の風呂覗いた日にはそこのトイレから流されるから、覚悟しろよ」
「なにそれバラバラになってない?」
砂漠にとんでもない物が撒き散らかされる。
『逆はOKです』
格差社会だ。
「男女差別反対」
他にも黒板や掲示板まで設置されている、もはや集会所と言っても可能なレベル。これが船の上なのだから驚きである。
しかし帆を貼ったり畳んだりするためのロープや舵までこの場に終結しており、ここが船の心臓だと言わんばかりの設備の整い方だ。
「んで次だ」
そう言うアニキに着いて小さな階段を上がって行く。すると長細い廊下に出た。
左右にそれぞれ四つずつと奥に一つドアが立っている。これは寝室かな?
『向かって左側は女子で右側が男子の部屋になってるよ! 一部屋二人ずつ寝れるの。男子側の四番目は書斎で逆は客室になってるよ! あと一番奥の部屋はお父さんの部屋です!』
いつ書いているのだろうか分からない、いつも通りのスケッチブックが掲げられる。
確か自分を入れて男子七人女子五人だったか。一番奥の団長は一人部屋だから男子は六人三部屋できちんと二人ずつか。
しかし女子は一人部屋が一人居る訳だが、はてはて誰なのだろう。
「んじゃ部屋割り説明すっか。まずはこっちだな。開けるぞケイスケ!」
一番階段に近い寝室の扉を開けると言った瞬間に開けるアニキ。ノックはした方が良いと思います!!
「お、来たか」
部屋に置いてある机で本を読んでいたケイスケは自分達が扉を開けると本を閉じてこちらを向く。
部屋は思ったよりは広く、二段ベットが端にあって机が二つベットの逆に並べられている。机とベットの間は人が二人並べるくらいのスペースがあって全然狭いと感じなかった。
「ここは俺とケイスケの部屋だ」
アニキとケイスケが一緒の部屋なのか。なら自分は誰と一緒になるのだろう?
自分が来る前は男子も団長のデルフさんを覗けば五人だった訳で一人余るハズだ。いや、マックスが居たのか。
つまり……マックスの代わりに自分が入る訳だ。
「まぁケイスケに話す事は何もねーだろ。次行くぞ次」
「そうだな、行ってこい。案内が終わったら下で晩飯にしよう」
「なら先に行ってろ。回りながら伝える」
「頼んだ」
二人はそう会話を終えると、アニキは自分とアカリを部屋から出す。その後にケイスケは部屋を出てきてそのまま下に向かって行った。
案内が終わったら晩飯か。タダ飯最高だが誰が作っているのだろうか?
カナタだけは勘弁して貰いたい。
「次は……おいタク開けるぞ! パンツ履けよ!」
そう言いながらアニキは次の扉を開ける。パンツ履けってドユコト?!
「待て待てそれじゃ俺がいつもパンツ履いてないみたいだろアニキ!」
部屋から出てきたタクヤ・アルファードは普通に上下服を着ていた。いやそれが普通なんだけども。
部屋には一人しか居ない、つまりはそういう事か。
「マックスに聞いたぞ。あいつが部屋開けた瞬間、お前ノーパンでアカリの名前を呼びながら———」
「あぁぁぁああああ!!! うぁぁあああ!!! な、なな、な、な、何言ってんだアニキ!! んな、んなな、んな事俺はしてねぇ! アカリの前で変な事言うんじゃねーよ!!」
もうほとんど口から出てしまった台詞を一生懸命大声を出して止めるタクヤ。
「?」
一方で振り向いてみると当のアカリさんは首を傾げて頭にはてなマークを浮かべて居た。
良かったなタクヤ。意味は伝わってないみたいだ。
「つまり、わいの寝室はここか」
「あぁそうだ。……前はマックスが使ってた。まぁ……タクと仲良くやれよ」
仲良くやれるかなぁ……。なんかライバル視されてた気がするし。
「まぁ、よろしく」
「おぅ」
普通に返事してくれたタクヤは手を伸ばしてくれる。おぉ、仲良くやれる気がする。
「んじゃ次だ。あー……タク、飯だから下降りてろ」
「ほーい」
タクヤが階段を降りていくのを見送ってから次の部屋へ。
「開けるぞガイル、ヒール」
言い終わる前に扉を開けるアニキ。パンツ履いてなかったらどうするねん。
「うぉぉ?!」
と、驚きの表情と声が出たのはヒールだった。ヒールは自慢のモヒカンを手入れしている最中だったらしい。
しかしそんな事で驚いていた訳では無く。多分ヒールが声を上げたのは、この床で腕立て伏せをしているガイルのせいだろう。
「……うす、アニキ」
「うす……じゃねーよパンツくらい穿けよ!!」
ガイルは全裸で腕立て伏せをしていた。腕立て伏せなので秘部は床方面に隠れているが、そういう問題では無い。本当にパンツ履いてない奴が居たよ。
アカリはスケッチブックを盾にして廊下から入ってこない。十四歳のアカリにはこの光景は完全に毒である。
「……汗でパンツが濡れては洗濯物が増えるだけだ」
「別に増やせよ!! 増やせば良いだろ誰も困らねぇよ!! お前いつもは履いてたろ!!」
「……隣からパンツの話題が聞こえて俺なりに考えた結果、全裸で筋トレする方が良いいう結論に至った」
「お前の脳ミソはどうなってんだ!!」
ガイル・シルヴェスタはどうやら想像以上にヤバイ奴だったらしい。ヒールの頭が可愛く見える。
「……分かった、考えを改めよう」
立ち上がりパンツを履くガイルは、これまですっと筋トレをしていたのか汗だくだった。
「ヒール、なんでこのバカを止めなかった」
「俺が言っても止まらなかったんすよ」
「そうだな。そうだよな」
だとしても平然とモヒカン弄ってる精神力は凄いと思うよヒール。
「ま、まぁ良い。お前ら飯だから下降りてろ」
「……うす」
「了解っす!」
二人が降りていくのを見送ってからアニキの顔を見るとかなり疲れた表情をしていた。
「あの人いつもあんな感じなん?」
「いや……悪い奴じゃ無いんだけどな。……なんて言うんだ? …………バカなんだよ」
気苦労お察しします。
「んし、次は左の女子部屋だな。頼んだぞアカリ」
「……ん!」
さっきまでスケッチブックシールドに守られていたアカリはスケッチブックシールドを解除して元気に頷いた。
流石に女子の部屋をさっきまでのように突然開ける訳にもいかないだろうし、ここはアカリに任せようという判断だろう。
そんな訳でアカリはまた階段に近い方の扉に向かってノックをする。すると誰も喋る事無く扉が開いた。
「どうしたの? アカリ」
「ラルフに……シンカイ?」
出てきたのはナタリアさんとカナタ。
『シンカイ君に船の案内のクエスト中です!』
と、書いて見せるアカリは責任を持ったハンターのようなきっちりとした表情をしていた。
そんな重要なクエストでは無いけども。
「それは偉いわね、アカリ」
「……んぇ」
ナタリアさんはそれを見てアカリの頭を撫でながら誉める。アカリが不満そうな表情をしているのはおつかいに行く子供のような対応を取られたからだろうか?
「見ての通りカナタとナタリアの部屋だ。うちの看板娘共のな」
「誰が看板娘だ!」
「ケイスケの嫁って言った方が良かったか?」
「ぶっ飛ばすぞ」
怖いよカナタ。
「か、看板娘なんて……そ、そんな……」
反対にナタリアさんはそんな恥じらいの表情を見せ、お嬢様のような見た目通りの可憐な少女だった。
「ぶっ飛ばすな。……後飯だから下降りてろ」
「三人は?」
「後で行く」
「ふむ、分かった。行くよナタリア」
「看板だなんて……そんな……。えへへ」
「ナタリアー……」
ずっと恥じらってるナタリアさんをカナタは引っ張って階段を降りていく。普通に転げ落ちる音が聞こえたのだが大丈夫だろうか?
「次だアカリ」
アニキのその言葉にアカリは頷くと次の部屋の扉を叩く。すると出てきたのは小さなピンク髪の少女だった。
「デカブツと新入り連れてきてどったの? アカリ」
「誰がデカブツだ」
「え? 私何も言ってないよ! きゃは!」
きゃはってなんやねん。彼女はサーナリア、腹黒ピンクと名付けよう。
『シンカイ君に船の案内のクエスト中だよ!』
使い回せば良いのに『です』を『だよ』に書き換えてスケッチブックをサーナリアに見せるアカリ。
単に歳が近いからか普通に仲が良いのか。部屋の中を見るに二人で使っているようなので多分アカリとサーナリアの相部屋なのだろう。
自分とタクヤの部屋の正面がこの部屋で、自分の部屋から見て左側ケイスケ達右側はヒール達左前がカナタ達。
となると残る右前の部屋はサーナリアの姉のクーデリアさんか。
「可愛い部屋しとるのぉ」
そう言って部屋を覗いてみる……と、
「こ、こら見るなぁ!!」
サーナリアが突然必死になって部屋から自分を押し出そうとする。しかし悪いがそんな小さな身体ではモンスターはおろか自分を押す事すら無理だね。
「…………サボテン?」
はて、部屋の机を見てみると。どう考えてもアカリの机だろうスケッチブックが大量に並べられている机の隣、消去法でサーナリアの机には三つばかりサボテンが綺麗に並べられていた。
人形とか置いてある女の子の部屋の片隅に自然と置いてあるこの三つのサボテンが気にならない訳も無く、思わず口に出してしまう。
「わ、悪いか……?」
「ん?」
「盆栽が趣味で悪いかぁぁあああ?!」
「えぇええ?!」
腹黒ピンクの意外過ぎる趣味に仰天である。
なんで? なんで盆栽?! なんかそういえばカラドボルグのあの巨大サボテンをニヤニヤと見ていた気がする!
「可愛いじゃんサボテン! 分かんないかな?! 分かんねぇわなぁ!」
「いや別に否定してないで?! 可愛いか可愛くないかはともかく別に盆栽を否定するつもりは無いで!!」
「そ、そう……なら良いけど」
むすーっと頬を膨らませるサーナリア。こんな一面もあるんだな。
『サボテン可愛いよ』
笑顔で肯定するアカリ。マジか可愛いのか。
「サボテンはどうでも良いからサナ、飯だから降りてろ」
「どうでもよくねーよ!」
「はいはい」
プンプンしながら降りていくサーナリアを見送ってから、アカリは次の扉を叩いた。
「アカリちゃん? に、ラルフ君とシンカイ君。どうしたの?」
さっきのピンクとは打って変わった大人びたピンク髪の女性。クーデリアさんが一人部屋なのか。
『シンカイ君に船の案内のクエスト中です!』
ですに戻った。
「あら、偉いわね」
ナタリアさんのようにアカリの頭を撫でるクーデリアさん。アカリはというと、さっきと同じ表情をしていた。
「クーデリアさんは一人なんやな」
「お、おいシンカイ!」
クーデリアさんに聞くとなぜか焦ったような態度でアニキが自分を制すような声を出す。え? 何?
「ひ、独りで悪かったわね! どうせ私は二十過ぎたのに未だに恋人も居ないボッチよ! 男なんて知るか!!」
「別にそんな話はしてないんやけどぉおお?!」
「処女はステータスよ!!!」
「もう……喋らない方が良いぜクー姉」
まるで死に際の人に言うようにクーデリアさんを諭すアニキ。優しい。
「う……」
「飯だから……下行ってて下さい」
「はい……」
見てはいけないものを見てしまった感じがする。
「良いかシンカイ。クー姉に独身だの彼氏だの結婚だのの言葉はタブーだ、分かったな?」
「肝に命じるわ……」
大人は怒らせない方が良い。
「よし、最後に親父の部屋だが」
二部屋分の大きさの書斎と客室を挟んだ廊下のその先。一番奥にある団長の部屋にアニキが振り向きながらそう言うが、言った瞬間部屋の扉が開く。
「その前に出てきちまったな」
「おぅおめぇら! 飯のようだな!」
飯に反応して出てきたというのか。
「シンカイ、船の中は把握したか?」
「ちょいちょいやな」
「はっはは! やっぱりお前の喋り方はおもしれーな!」
またバカにされた?!
「ほら飯だ飯! 行くぞおめーら!」
そう言って、意気揚々と下に降りていく団長を追って自分達も階段を下るのであった。
拠点キングダイミョウの見取りのお話みたいな
お話では説明が無かったのですが捕獲したモンスターの収納スペースや、帆の上には見張り台等も完備されております
大きさは我らの団の船の四倍程度だと認識してもらえれば!!