モンスターハンターStormydragon soaring【完結】   作:皇我リキ

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Lite Bowgun『第三章』
砂漠の夢


 何もかも他事だと思っていた。

 これまでもこれからも、僕らは二人だけで生きていくんだ。

 

 誰も助けてはくれない。家族は一人、僕らは二人。

 死ぬ時は一緒だろう。だから、生きてる時はもっと一緒に居よう。

 

 二人だけの世界で僕達はもう残り少しの時間を生きようと決心していた。

 

 

「俺の、俺達の家族にならないか?」

 それは、救いの手とかそんなんじゃなくて。そう、心地好い。

 

 家に帰ってきた子供を迎えるような、当たり前に差しのべられるような手だった。

 だから僕達はその手を取ったのだろう。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「こんな事やってられるかぁ!!」

 もう我慢出来ないと釣竿を地面に叩き付け、自分はその場で仰向けになってカンカンに照り付ける太陽の御機嫌を伺う。

 

 

 今日も今日とて冬なのに、太陽は頑張って砂漠を照らし続けていた。

 このオアシスでなければ木々に日光が遮られる事も無く、地面は熱した鉄板のように熱くなっているのだろう。

 

 

「何言ってるんすかシンカイさん! 釣りは我慢っすよ!」

「出来るか! かれこれ何時間釣竿持っとんねん! アホか! 釣りバカか! ワイは釣り人やないハンターやボケェ!!」

 ダイミョウザザミの素材を使った防具を着た金髪のモヒカンの男———ヒールは真面目にそうに言いながら釣竿と睨めっこを続けている。

 本来の体型は決してゴツい訳では無いのだが、その防具と髪型が相まって見た目がどこかの悪い人みたいだ。

 

 あ、アレに似てる。子供の頃に読んで貰った、世紀末ヒーロー北斗君っていう絵本に出てくる悪役キャラ。

 

 

「でもちゃんと釣らないと帰れないっすよ?」

「う……」

 いや、それはそうなんだけどもな?

 でもさ、なんでハンターが態々釣りなんかしないといけないんだ。

 

 

「そんなんじゃ一流のハンターにはなれないぜシンカイ」

『これも立派なお仕事だよ!』

 と、口とスケッチブックが語るのも今は耳に入ってこない。

 釣りとハンターになんの関係があるんですか。そのゲネポスとフルフル防具使うんですか?

 

 

 そもそも、なぜこんな事になったか。それから説明しなければならないか。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 それはキングダイミョウに乗船して三日後の事だった。

 

 

「シンカイ、少し良いか?」

 そろそろ船にも慣れて、一人でトイレに向かおうとする途中だ。

 丁度ドアノブに手を掛けた瞬間、ケイスケがそう言って自分を引き止める。

 

「おしっこの後で良い?」

「いや、今すぐに」

「マジか……」

「冗談だ」

「なんやねん!」

「俺の部屋で待ってるから終わったら来てくれ」

「……へーい」

 その後身体の水分を砂漠に返して、早々にケイスケの部屋に向かう事にした。

 

 さて、なんの話だろうか?

 ここ数日ただただ船に揺られる生活をしてきて、たまに他の誰かが船から出ていったり帰ってきたり。そんな光景を見るだけ見ていた。

 

 つまり、皆はクエストに出掛けているのに自分はのうのうと暮らしていてた訳で。

 ケイスケから呼び出しがあったという事はそういう事なのだろう。ついにクエストに連れていって貰える!

 

 

 そうワクワクしながら部屋に入ったのだった。

 

「よし来たなシンカイ。お前に乗船後初めてのクエストを任せたい」

 よし来たビンゴ。ドスゲネポスかドスガレオスか? いや、ダイミョウサザミでもラングロトラでも良い!

 

 

「今近くにオアシスがあるんだが、そこで白金魚を八匹釣ってきてくれないか?」

「……はい?」

 一瞬———どころか数秒間何を言っているのか分からなかった。

 クエストって狩りじゃないの? 釣ってくる? 釣りするの? そもそも白金魚って何?

 

「どういう事だって顔をしているな。だがこれも立派なクエストだ。依頼人はダイダロスっていう大きな街のお偉いさんだからな」

「ハンターってハンティングする人だから……ハンターや無いんか?」

「こういう納品クエストも立派なハンターの仕事だ。なんせ釣り場にだってモンスターは出てくるんだからな」

 確かにそうだけども。

 

「メンバーはお前とアカリ、タクヤにヒールの四人だ」

 アカリもクエストに出るんか。魚釣りだけども。

 

「大丈夫なんか? そのメンバー」

「事前調査でそのオアシスの辺りには大型モンスターは確認されていないからな」

 そりゃ、準備がよろしくて何より。

 

「そろそろ船が白金魚の釣れるオアシスに近付くから用意だけしてこい。他の皆にはもう下に行って貰ってるからな。ハンターたるもの用意は怠るなよ?」

「うぐ……」

 本当に釣りしに出掛けるのか……。

 

 そう考えていると、断る暇も無いまま船が止まる。

 

 

「よし、クエストスタートだ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 そんな訳で、今自分達は砂漠のとあるオアシスの湖で釣りをしているのだ。

 

 

 白金魚は黄金魚の親戚のような物なのだが、黄金魚が好むツチハチノコが大して好きでもないらしく。

 黄金魚が簡単に食い付いてくれるツチハチノコを混ぜた黄金ダンゴという餌に食い付こうともしない。

 

 かれこれ三時間、池に釣竿を垂らす遊びをしているが白金魚は一匹も釣れていなかった。

 

 

「帰りたい……」

 正直言ってとてもつまらない。釣りが趣味の人とか居るけど自分には全く理解出来なからな。別に否定するつもりは無いけども。

 

「全く素人かよ! 見てろ、俺が格好良く白金魚釣ってやるからよ!」

 そう言いながら、タクヤは釣竿に餌を着けて池に沈めた。格好良く魚釣るってどうやったら格好良いの?

 

 

「は! 来たぜ来た! 見てるかアカリ?! 俺が今から釣るからなぁ!!」

 早々に何かが引っ掛かったらしく、アカリにアプローチしながら竿を持ち上げるタクヤ。

 アカリは呼ばれると自分の後ろになぜか隠れるが、タクヤは竿に夢中でそれには気が付かなかったようだ。

 

 

「ぐ……ぬ、お、重いな……大物か?!」

 確かに白金魚は大きな部類の魚らしいが……。入れて直ぐに引っ掛かってあの引き具合からするにあまり良い予感はしない。

 

 

「よっしゃぁ! きったぁ!!」

 力一杯ふんばってタクヤは竿を引き上げる。しかし、針についていたのはどこからどう見ても魚どころか生き物ですら無かった。

 

「木?!」

 水面に沈んだ木の破片かな。釣糸にぶら下がるそれを見て、タクヤは大きく口を開いて固まる。

 格好良く釣ると言いながらこの失態は流石に恥ずかしい。アカリも自分も、悲しい眼でタクヤを見ていた。

 

「み、見るな! 俺を見るなぁ!」

「そう言っとるでアカリ。見んといてやれや」

「……ん」

「ぐはっ……」

 こくんとゆっくり頷くアカリを見て、タクヤは顔面真っ青になってその場で倒れる。

 もうなんか可愛そうっていうかなんていうか。格好つかないなぁ、タクヤは。

 

 

「で、自分はまだ粘るんか?」

「俺っすか? まぁ、クエストっすからね」

 未だに水面を見ているヒールに聞くと、そんな真面目な返事が返ってきた。

 頭の上のトサカ、じゃなくてモヒカンは飾りなのだろうか。見た目とは全く違う真面目で良い奴なんだよな、こいつ。

 

 

「そーかいそーかい。ワイは昼寝でもさせて貰うでー」

 流石に馬鹿馬鹿しいから寝るか、良い天気やしな。砂漠だから。

 

「おやすみ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 はっきりとでは無いが、意識はあったのだろう。記憶はしているのだろう。

 忘れよう忘れようと強く思うほど、人の記憶は深く刻まれていくからだ。

 

 

 これは夢だ。

 まっ広い空間に自分と彼女は立っていた。訓練所という、街にあるハンターのための施設である。

 

 彼女は言う。

「こうやって、狙いを定めて」

 自分には無い綺麗な銀髪の髪。今の自分と変わらない歳の少女は、小さな子供にヘビィボウガンのスコープを除かせて居た。

 

 彼女はハンターだ。

 夢はギルドナイトという、ハンターでも強いハンターだけがなれるっていう良く分からない奴。

 良く分からないけど、それに向かって努力している彼女が自分は誇りで仕方がなかった。

 

 

「当たった! 当たったよ! おねーちゃんは最強のハンターだ!」

「えっへへ、そんな事無いよ。シンカイもいつか、私と狩りに出ようね」

 その優しさも強さも、自分は大好きだった。

 

 

 

 ある日だ。

 

 砂漠に強力なモンスターが現れたと情報があった。父もハンターだったから、それと戦って半殺しにあって帰ってきていた。

 父がモンスターに負けるのはいつもの事だったから気にしなかったが。父のやられ具合は過去最高の物だった。死んでないのがおかしい。

 

 

 後から聞いた話だが、そのモンスターはディアブロスという飛竜らしく。特に大きく強く育ったその一個体を周囲の村の人達はマ王と呼んだらしい。

 

 

「行ってくるね、シンカイ」

「おねーちゃん……?」

 彼女はいつもより強く自分の頭を撫でると、いつも教えてくれてたヘビィボウガンを抱えて家を出ていく。

 

 いつもみたいに帰ってくると信じていた。

 彼女は最強のハンターだと信じていた。

 またヘビィボウガンを教えてくれると、信じていた。

 

 

「おねーちゃん……?」

 帰ってきたのは、彼女の死体だった。

 

「なん……で……? おねーちゃん……は……最強の……」

 ギルドナイトになるんじゃ無かったのか。

 

「おねーちゃん……」

 一緒に狩りに出るんじゃ無かったのか。

 

「おねーちゃん……っ!!」

 起きろよ。生きて帰ってこいよ。ハンターってなんだよ。何がハンターだよ! 勝手に死ぬんじゃねぇよ……っ!!

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おねーちゃ———……っ。はぁ……はぁ…………夢」

 何分間か何十分間か何時間か。下らない夢を見ながら寝ていたようだ。

 せっかく気持ちの良い日差しの下だというのに勿体無い。あるいはここが砂漠だから……かな。

 

 そうか……ここは砂漠か。

 そんな事を思いながら、眼を開けた。

 

 

 




第三章の始まりです。
いきなり変な終わらせ方してすみません。

一章丸ごと書いてから分けてるんで、どうも区切りとか文字数だとかが変になってしまいます……。直さないとね。


今章はヒール君のお話です。見た目的には一番インパクトのあるキャラクターだと思ってます、はい。
戦闘シーンはラフになってしまうと思います。ちゃんと戦闘するのはいつになるのか……。応援して下さると嬉しいです。

オマケ絵はヒール君。格好良く描けねぇ……。

【挿絵表示】



厳しくで良いので評価感想の程も暇があればよろしくお願いします。
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