紅魔館の長い廊下をフラフラと歩く影が一つ。
しっかりと整えた髪はぼさぼさで服もよれよれ。
顔にはひどく疲れの色が濃く残り酷い表情だ。
壁に手をつき身体を支えながら前に進む。その歩みは遅くとも確実に彼の自室まで向かっていた。
だが・・・、
「ラディア?ねぇどうしたの?」
「ちょっと、大丈夫?」
「フラン様とレミリア様?」
あと少しというところでレミリアとフランの二人に見つかった。
「に、逃げているのですよ。ふ、二人もパチュリー様がいる図書館・・へ」
「もしかして、敵襲!?フラン先にパチェの所まで行きなさい!!」
「で、でも・・・。ラディアはどうするの?お姉さまだけじゃ運べないだろうからフランも残る!!」
凛々しい表情で妹を庇うため先に逃げるよう指示するレミリア様とそんな姉に負けないぐらいの気持ちを持ったフラン様がそこに居た。
ああ、いつの間にかこんなにも成長していたのかと思いながらラディアは声をあげた。
「い、いや。二人とも敵襲じゃないです・・から」
「「え?」」
臨戦態勢のレミリア嬢とそのサポートをするつもりだったフラン嬢は間の抜けた声をあがる。
「おーう、ラディ!!こんなところに居ったか!ヒック」
「ッ!?」
二人に説明しようとしたところで聞きたくない声が。
「ひっく。いきなり逃げ出すから何事かと思ったぞ?さあ、ひっく。今宵は満月だ。まだ、酔いつぶれるには早いぞー!!」
「い、いい加減にしろよ。お、お前のペースで飲んだら今度こそ死ぬ。冗談抜きで・・」
そう。この駄目伯爵に酒を飲もうと誘われ奥様とラディア、そしてテロル伯爵で飲んでいたのだが。
特別ラディアが酒に弱い訳ではないのだが、残りの二人が強すぎた。
まあ、高級なワインをまるで水の様に飲む伯爵と上品な香りを楽しみながらも全く飲むペースが落ちない奥様。
そんな二人の飲みっぷりに引きながらも普通に自身が飲める量で飲んでいたラディア。
そして、時計の針が十二時なった時、惨劇がラディアを襲った。
『ラディア、あまり飲んでいませんね。いけませんよ遠慮するのは』
『え、いやこれ以上飲むと流石に…』
『そうだぞ、ラディ!!ほれこのワインなんか美味いぞ!!』
『ちょ、待てテロル!?おごゅ!??』
ものすごい力で頭を固定され、ワインの一気飲みをさせられた。
おかげで、頭はグラグラ。視界は歪みもはや何が何だかわからない状態だった。
このままでは死ぬと思いその場を風の様に離脱したものの反動で今は亀のように遅い。
「さあ、飲みなすぞ。よっこいせ」
「は、離せ!?マジで死ぬから、離してくれェ~」
猫の子ように服の襟を持たれ何とか逃げ出そうともがくが効果は薄い様だ。
「お、お嬢・・・。た、助けてください」
ラディアの声は二人に届くことなくそのままテロル伯爵に担がれ紅魔館の長い廊下に消えていった。
「・・・フラン」
「なあに、お姉さま?」
「ああ、ならないようにしましょう」
「うん。ぜったいならないようにする」
娘たちに反面教師として役に立ったテロル伯爵であった。
お酒は楽しく飲みましょう!!