「バス…なかなか来ないね。」
ザーザーと雨が小さなバス停の屋根に打ち付けている。
「うん。」
六時頃ということもあって車通りも少なく、世界で私たち二人だけになってしまったかのような錯覚を受ける。
「彼氏?」
「うん。」
「そっか。」
私は一向に止む気配がない空を見上げて呟いた。
「そろそろ一ヶ月だっけ。」
葵はスマホをしまうと私の方を向いて楽しそうに話し出す。
「そうそう。明日でちょうど一ヶ月だしどっか行こうかって話しててさ。」
「ふうん。…いいね。どこ行くの?」
何かがチクリと胸を刺す。
「ベタに遊園地にしようかなって。ほら日曜部活休みだしね。」
「先生の出張さまさまだね。」
「ホントそれね。」
LINEの着信音が鳴り、私がチラリとそっちを見るが葵は話続ける。そんなの小さなことだけど私は嬉しかった。今は私を見てくれている気がして。
「沙希もさ。彼氏作りなよ。ほら前に好きな人いるって言ってたじゃん。」
私は照れくさそうに頭をかく。そう努めた。
「…今でも好きなんだけど。その人もう恋が成就しちゃった感じでね。」
「 あーそういうパターンか。うーん難しいね。」
葵は苦笑する。
「私としてはその人が幸せなら今のままでもいいかなって思ってるんだけどね。」
「一概に正解はないと思うけど、私だったら自分の気持ちを伝えるかな。」
「もし駄目だったら?」
「 駄目だったら駄目でもう諦める!また次の恋を探す!」
葵は立ち上がってガッツポーズをとる。
相変わらず眩しいな。空はこんなにも曇っているのにそれがどうしたの?と言わんばかりの態度。試合で点差をつけられてお通夜ムードだったときもこんな風に明るくみんなを元気付けてくれたっけ。
そんな葵だから私は好きになったんだな。改めて自分の気持ちを再確認する。
「ねえ、キャプテン葵。」
「なに?副部長沙季。」
「好きだよ。」
「えっ?私も好きだよ?そんなの言わなくても分かってるって。」
「…それもそうか。あっようやくバス来たね。早く行こう!」
私はさっきの言葉で照れてしまった顔を隠すように急いで乗り込む。
「そこでも下がっちゃうのか。沙季らしいけど。実は私も待ってたりするんだけどな。」
沙季の隣の席に座ると彼氏ということになってる同級生にLINEを送る。
葵; 今日はいいとこまで行ったんだけど最後にもう一押しが欲しかったかな。
透; もうそろそろ受け入れてあげたら?葵だって好きなんだろ?
葵; だって苦悩してる沙季も可愛くってね☆
透; なんで俺はお前のこと好きになったんだろうな。
葵; そんなの知らないし、私は沙季一筋だもの。あっ日曜遊園地は決定ね。沙季に写メ見せないといけないから。
透; いつか振り向かせて見せるからな。日曜了解。
葵; ご勝手に☆
こういう関係好きです。