『プロローグ』
「もういやだぁーーーー!!!」
絶叫しつつ転げ廻り床に倒れ伏してさめざめ泣く少年を発見。見ると青系のパーカーを着ている彼はとある物語の主人公・平賀サイト君ではなかろうか。
「『どうしたんだいサイ太くん』『またルャイズアンに虐められたのかい?』」
「いろいろ突っ込みどころもありそうな上にその発音がどうなっているのかはともかく、それに近いかな……。もう何度目の二次創作だよ。もう繰り返すのはごめんだよ。疲れたんだよ球磨ラッシュ……」
「『このしゃべり方は趣味だから』『僕は球磨川 禊じゃないよ』『こう見えて神様なのさ』」
「神様……。その名前にも碌な覚えがないな……。あっちの世界の神とか名乗る奴にも虐められるようなやり直しを押し付けられたこともあったし……。いや、かわいい子が多いしフラグを立てられるからさ、それは別にいいんだけど。時にはそれを上書くような手酷い展開に持っていかれることも多聞にあったし、ヒロインを寝取られたり、ヒロインに裏切られたり、ルイズにご褒美も貰えずにただただ虐められたり……」
「『わお』『心が死に掛けているねぇ。』『そうだ』『それなら今回の二次創作はキミの休日に当てればいいよ』『召喚されてもキミ自身は何も代償を支払う必要もない』『だってキミが召喚されるわけじゃないからね』」
「……それだってよくあった話だよ。でもそうなるともう『俺の物語』じゃないからな、そうなったらすぐさま次のハナシへと『俺』がシフトされるんだよ。休憩なんてねえ、ブラックなデスマーチの連続勤務だ」
「『だからね』『キミ自身に別人を上書きするんだよ。』『そうすればキミがアクションを起こすこともなく』『平賀サイトを失効することもなく』『キミの中身は悠々と休日を満喫できると言う寸法さ』」
「――っ! ……あなたが、神か……っ!」
「『だからそう言ったじゃないか』」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「『――と、いうわけで』『白羽の矢が当たったのがキミたち二人さ。』『どちらか片方』『サイト君の代わりに使い魔になってよ!』」
ちょうど死んだ青年二人を引っ張ってきた。
死因は地下鉄。ガンツ第一話みたいな死に方をした青年らだ。
一人でも良かったけれど、連れてこれたのだから問題はない。どっちかがハナシを受けてくれたらいいのだし。
ちょうど其処で「テンプレ展開キターーーー!」って絶叫しているオタク的な仔豚くんでもいいし、「え、いやこれテンプレか……? っつうかどこの世界のテンプレなんだよ……?」と疑問符を上げている地味男くんでも可。地味男くんはこういう知識はないのかな? 駄目だぞぅ、知っとかないと。転生するなら神様世界の流行ぐらい一般常識さ!
「そんな世界知らねえよ……、えーっと、ちょい待って、その話を断るとなんか問題あるの?」
特には。だってこれも趣味だからね救済という名の。君たち二人のうちどちらかがサイト君になる、それさえ決めてくれたらどっちも転生させてあげるよ?
もちろん神様特典付きさ。
「その神様特典っていうのがよくわからんのだけど……お前、どういうものか知ってる?」
「はいはいはい! 僕! 僕がなりますサイト君に!」
「聞けよ」
仔豚くんが立候補。OK、それじゃあキミには三つまで特典をあげよう。残念だけど立候補しなかった地味男くんには一つだけだ。
「よっしゃあああ! ありがとうございます!」
「いや、意味わからねーんだけど。お前もガッツポーズしてないで教えてよ。あとお前そういう大声出せたんだ? 何、今日はっちゃけすぎじゃね?」
「あ、ストーリー改変とかやってもいいっすか!?」
「だから……、ああ、もういいや。でも後で絶対教えろよ?」
二次の醍醐味は改変して「俺TUEEEE!」だもんね。何でも好きなものを選ぶといいよ。
「? 選ぶ?」
「それならば! ネギまのネギ、Fateのエミヤ、そしてヘラクレスの魂をコピーして僕にくっつけてください! もちろん三つとも完成形で!」
ほほー、ありふれているけれど面白いこと考えるね。確かにそれだけくっつけたら「最強」だ。
「ふひひ、転生するならどんな能力かとか、ずっと考えていたからな。よく訓練されたオタクである僕様には隙がなかった!」
「どゆこと?」
「ネギのスペックは『天才』に『魔法』がつくし、エミヤなら『無限の剣製』で武器チート、ヘラクレスなら『十二の試練』でほぼ死なない無敵ボディ! 更にはエミヤとネギのイケメンスペックもくっついてニコポもナデポもいらぬいらぬぅ! 僕の武勇伝が始まるお!」
「え、お前そんなん普段から考えてたの……? えー……?」
ドン引きだね。で、キミはどんな特典にする?
「んー、要するに漫画のキャラとか能力とかを自分にくっつけられるってこと?」
そういうこと。仔豚くんの場合は物語が始まってから使えるようになるけれどね。どんなものにでも相応のリスクはあるものだよ。
「それがコイツのリスクってことか」
「あ、それでいいです。それぐらいなら召喚されればすぐに勢いつくだろうし。十分俺Tueeee!できるスペックだし。何より日本の惨事女よりハルケギニアの美少女たちしか興味なし。ふひひ、ルイズたんのちっぱいやティファたんの爆乳を堪能できるぅ!」
「………………」
心なしか先ほどよりも距離が離れている地味男くん。引くのはわかるけど、とっとと特典決めてほしいなあ。
「あ、スイマセン。えーと、じゃあH×Hの「念」で」
それでいいのかい?
「っつうか俺よく漫画とかわからないし。使えたら面白いかなーっていう程度ですし。というか、俺はその「サイト君」の代わりとかをやる必要ないんですよね? だったら特典も別にいいんですけど……」
まあまあ、そこは僕からのささやかな気まぐれだとでも思って受け取っておいてよ。
というかその特典じゃささやか過ぎるから、召喚されなくても鍛えれば覚醒できるようにしておいてあげよう。
「あ、ども。っていうか、召喚って何?」
「サイト君は高校生ぐらいに召喚されて使い魔をやることになるんだよ。つまり僕がそれをやるのだ! 美少女の使い魔=ご褒美。おわかり?」
「ああうん、お前が変態候補生だったってことを今よく理解したわ……」
「そんな褒めるなよう」
「褒めてねえよ」
キミら仲いいねえ、どういう関係?
「いちお、幼なじみっす」
「美少女でないならば幼なじみとは呼べぬ」
「コイツ昔っからこんな感じだから、誰かストッパーがいないと言動が心配で……」
キミも中々に苦労性のようだねえ。
下手な転生神以上だね。