『原作』の世界へとおっさんが転生
ジロジロと容赦の無い視線が自分らに突き刺さる。女子が強くなったというこの世の中で、こういったことに関わることになった男子が物珍しいのだろう。
二度目である自分でも正直辟易としているのだが、あちらのもう一人は平気そうにしている。というかアイツのほうはどうにもニヤニヤと笑っているような節が見えるから、能天気に女子高の空気の中に埋もれることを喜んでいるのかもしれない。
そんな態度でこれから先大丈夫なのだろうか、とよく知りもしない相手ながらに若干心配してしまう。いや、アイツも男だ。そういった心配は野暮だろう。こちらも気にしないように努めるとしようか。
二度目、と言ったが女子高に紛れるのが、である。前世でも女尊男卑の節が強くなった折、自分の勤めていた学校は共学から女子高へと校長が変わると同時に転向した。
正確には男子より女子を重点的に教育するように、というお達しを件の校長が下した後に学費やらを巻き上げ易い女子を重点的に『集客』するために女子高にしただけだというのが実情なのだが。その際に『年を取りすぎていて考え方が古臭そう』というくだらない理由でリストラされたのが前世での自分だ。五十だぞ、仕方なかろう。
結局その後はろくな職にもつけずに、元々冷遇されていた妻や娘からは家を追い出され、過労で倒れたまま死んだ。何が女尊男卑だ。自分の人生は元から変わらん。
だがまあ、もう終わったことだ。
再び生まれ直した世界でまた例の兵器が台頭したのは、まあ発表者である條ノ之という名が幼なじみにいたことから予想していたことではある。が、まさか自分が使えるようになるとは思っても見なかった。
理由も理屈も良くわからないが、心機一転を無理やりにでも興さんと生きてられん。こんな人生。
「明石崎 慎也です。趣味は――」
もう一人の男性IS適正者が自己紹介を始めた。『あか』だから自分より先か。
銀髪で両目の色が違うとは、珍しい。アレで日本人なのか? だがオッドアイというのは視力が弱いとか聞いた覚えもあるのだが。あれで兵器を扱えるのか、逆に尊敬するな。
しかし、なんか誰も聞いてる気配がないな。所謂いけめんという奴だと思うのだが。やはりこういう女子高ではそもそも男子が受け入れられにくいのか。
「えー、では織斑君。次自己紹介を、お願い……できますか?」
ん。もう自分の番か。
あの先生も男馴れしていなさそうだし、早めに応えておくか。
「織斑 一夏。趣味は空手。ISは初心者なので、期待はしないで欲しい。所詮珍しい適正値が出たというだけだ」
応え、見渡し、席に着くつもりだが、どうにも期待する目がまだある。
何故? そして明石崎、お前まで妙な目で見るな? まるで自分の発言が意外だとでも言いたげだぞ?
お前とは初対面のはずだが。
「何か質問でも?」
明石崎もそんな台詞を言っていた気がするのでこちらもしてみる。
途端に何人かが手を上げた。
ちなみに明石崎のときには誰も反応しなかったのだが……。自分の何が珍しいのか、気になったのでそばにいた女子を指してみる。
「ではそちら」
「あ、はい。えっと神谷 加奈です。あの、織斑って聞いたけど、千冬さま……じゃなくて、織斑千冬先生とは親戚か何かですか?」
何?
「姉弟だ」
応えたのは、自分ではなかった。
「久しぶりだな、一夏」
「――、ああ」
すぐ後ろに、実の姉であり、数年前に離れて暮らしていた女性がいた。
突然の登場に絶句してしまったし、姉のほうもその表情はぎこちない。いや、微笑ってはいるのだが。
まあ、互いに心地のいい別れ方ではなかったのだから、仕方がないのだろう。
しかしここにいるということは、しかも神谷嬢の台詞からして、教師ということか。
何の因果なのだろうか、と自分を転生させた神とやらがもしいるのなら、小一時間は滔々と説教してやりたい気分にさせられた。