SAO-七つの魔剣~ギルド風林火山の狂戦士~   作:うおさ123

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ほぼ処女作です。一応、次からは文字数も増やしていくつもりです。


プロローグ

――2022年11月2日 午後9時20分――

 

 チラチラと散る光の粒。それが群れを成しているかのように溢れるその町の姿を、俺は電車の窓からウキウキしながら見ていた。少し前に十六になったばかりだというのに、我ながら落ち着きのない素振りである。

 

『~~秋葉原~~』

 

 と扉の上に存在する電光掲示板(?)にそう表示された。それが自分の降車駅であることを俺は確認し、背を向けて町を見ていた席から立ち上がった。明らかに邪魔くさい大きな青い登山用ザックを頭上の物置から重々しく――傍から見れば存外うやうやしく見えたりする――降ろした。

 あ……隣の人すみません。

 

 簡素な電子音によるアナウンスが降り、扉が開いた。それと同時にガヤガヤとした町の喧騒が大量の音を持って耳に入ってくるが、近所のちょっとした町とは全く違う賑わいの感覚に、どこか頬が緩むのを感じた。

 ……と、気を抜いた隙に俺と同じくしてこの駅で降りる濁流のような乗客達に身体を押し流され、訳も分からぬままホームまで降りる。思わず声を上げてしまった為か途中で流れから弾かれたが、ここがどこだかが判らない。

 困り果てた挙句使い慣れない携帯端末を起動させ、大きすぎる荷物と自分の細身を人ごみに滑り込ませて目的地に近い改札から外に出た。駅を出るだけでとんでもない苦労だ。田舎が半分混じったようなうちの市内とは大違いだ。疲れたため息と共に出口を後にした途端、巨大で明るすぎる位に煌々と輝く都会的な建物が一も二もなく目に入った。そう、こここそが俺の目的地である。

 

 やっとついたぁー! 

 

 っと、はしゃぎ過ぎちゃダメだ。落ち着こう。

 俺は一時間三十分の長時間乗車による疲れを吹き飛ばすように両手でガッツポーズらしき動作を取った。その後興奮のあまり手に握りしめていた、ぶかぶかなツバ付き帽子を深々とかぶると、夜ながらも恐ろしく明るい秋葉原の某大型家電量販店の前に座り込んだ。しかし、まだ三日前(・・・)の夜中だというのに既に三十人程の行列ができている。三日前でもダメかもと思っていた俺にとっては、これでもまだ僥倖(ぎょうこう)といった所だ。

 きっと彼らも、俺が買おうとしている三日後発売のゲーム――ソードアート・オンラインを狙って来ているのだろう。

 

 ソードアート・オンライン――|VRMMORPG《仮想大規模ネットワークロールプレイングゲーム》――通称SAO

 

 世界初の一般用ヴァーチャルゲームハード、《ナーヴギア》の開発者、天才ゲームデザイナー茅場明彦がプログラミングしたRPG。いままでも《ナーブギア》を使用したVRゲームは存在したが、そのほとんどが教育・パズル・自然系など、もう一つの現実という名目の仮想世界を狭苦しいと感じてしまう様な物ばかりだった。

 そんな中、満を持して発売される大規模ネットワークゲーム、それがソードアード・オンラインだ。

 

 最初にそのことを知ったのは、二ヶ月前に見たテレビの特番だったと思う。年甲斐もなくワクワクしたのは否定できない。

 ……そもそも性格上それ相応に大人かと言われれば、どうにも疑問が残るのは確かだが。

 そんなものをとある事情で求めた、特にゲームマニアでも何でもない俺は、すぐにある問題点にぶつかった。

 ネットの情報などを元に類推すると、どうも1万の初回ロットを手にするには恐らく三日前から徹夜で並ばないとダメらしい。しかし……というより当然、両親がそれを許すはずが無い。前日だけならまだしも、三日間は一介の高校生には無理がある。

 流石に初回版を買うのは諦めようと思ったが、なんと奇跡が起きた。本当にこればかりは奇跡と呼ぶにふさわしい事態だった。

 

 事の始まりは、母が商店街の福引きにやたらと張り切り始めた事にあった。

 母はあらゆる手段を以って抽選券を手に入れ、ついに25枚目にて温泉旅行のペアチケットを当てたのである。それだけ――といってもその手の看板景品が売れたのを滅多に見た事のない田舎者の俺からしたら、かなりの大事だ――なら特に引き合いに出す意味も無いのだが、なんと仕事人間の堅物親父すらも、その旅行に有給まで取って夫婦水入らずで行くという。さらに、予定日がSAO発売日から3日前の11月2日~5日までの二泊三日という話なのだ。

 

 いくらなんでも話が旨すぎる、といった予感めいた危うさなどもはや頭になく――この、神が用意した様なチャンスを必ずこの手で掴もうと心に誓い、手放しに俺は喜んだ。

 そうと決まれば行動に出るのは、我ながら驚くほど早かった。高校には風邪をひいたと、仮病を使ってどうにかすればいい。結構な金持ち学校だが、そこまでネチっこく問い詰めるタイプの学校ではないので問題は無い。

 あとはその他の家族、つまりは姉だが、ケーキを手土産に土下座と肩もみを繰り返したら何とかなった。むしろ一人ぐらい家にいないと、風邪をひいたという偽情報を聞いて親が急遽帰宅するかもしれない。電話が掛かってきても何とかしてやるとの頼もしい言葉を聞いてホッとしたのは、まだ記憶に新しい。協力者がいるのは実に有難い物だ。

 ……ケーキ代にナーヴギアとソフト代も合わせて、俺の財布が急激なダイエットを起こしたのは言うまでもない。

 

 そして、学校が終わると三日分の食糧と寝袋やその他諸々を用意して家を飛び出した。そりゃあもう全力疾走で。

 

 

 列に並んで十分が経ち、俺は夜風に身震いした。

 間もなく冬に入ろうとしているこの季節に野外にいるというのは、やはり厳しいものがある。寒さに耐えかねた俺は登山用の35Lザックからジャケットを取り出して羽織り、文明の利器に仄々と安堵した。

 この際持ってきたガスボンベでお湯を沸かして、温かいお茶でもめかし込んでしまおうという楽しげな発想が頭をもたげ始め……

 

 うん。やっちまおう。

 

 そうと決めたら、行動の早さには定評がある俺である。転じて考えなしなどと言われることもあるが、その辺の「流し」も俺の得意技の五本指には入る。

 鼻歌まじりにガスボンベと付随のガスコンロを取り出しつつ、容器に水を注ぎだすと、

 

「あなたも、SAO待ちですよね?」

 

 前に並んでいた男が突然話しかけてきた。現代的二枚目像とはかけ離れた山賊のような顔をしており、無精髭と尖った髪がちょうどいい具合に似合っている。中々カッコいい――一般的に言うと悪趣味な――柄のバンダナを着けたその人物は、二十代前半といった所の年代らしい。全体的には人の良さそうな顔をしていたが、現在時刻は九時を切っている上、見ず知らずの人間に声を掛けられたため、当然警戒する。

 

「そうですが、何か?」

 

 少しでも身の危険を減らすため、なるべく声を野太くして答えた。俺は元々少しハスキーな方らしいので大丈夫だと思ったが、念の為だ。

 

「いやー、特に何かある訳じゃあ無いんですが、話し相手がいないと暇で暇で」

 

 赤髪バンダナ男はこっちが警戒しているのも気付かずに、軽い口調で話し掛けてくる。どうも悪い人物では無さそうだ。腹に一物抱えている人間というのは、総じてこちらの警戒心には敏感なのである。

 

「こっちも一人なんで、同じく暇を持て余してます」

「そうすっか。こっちはネットで知り合ったダチと六人で来てます。今回はローテーションで眠って一人が見張りをする事になってて、そんでオレが一番最初に貧乏くじを引いちまったんですよ。オレがリーダーだってのに、酷いヤツらでしょう?」

「はは、そうですね」

「という訳でちょっくら落書きでもしてやろうかと……あ、マジックとか持ってません? よかったら是非ご一緒に」

「やりませんよ」

 

 ユーモア交えて喋る彼の話術に乗せられ、思わずこちらの面相も綻んでしまう。元々表情筋の緩い方とはいえ、こんなにも早く人の心に取り入る手管は感心に値する。

 

「そうっすか。あ、自己紹介がまだでしたね。オレ、クラインって言います。ゲームでもよろしく!」

「よ、よろしく!」

 

 気さくに笑いかけ、サムズアップされた。会釈では盛り上がるまいと、こちらもおずおずと同じ様に返した。気恥ずかしい想いもあったが、悪い気分でもなかった。

 それが、クラインとの出会いだった。




クラインさんが敬語使ってると変な気分になりますが、流石にリアルでは敬語ぐらい使うだろう思ってそうしました。
おかしな所があったら教えて貰えるとうれしいです。

七月六日(土) 修正
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